オートマチックトランスミッション
オートマチックトランスミッション(テンプレート:Lang-en-short、自動変速機)とは、自動車やオートバイの変速機の一種で、車速やエンジンの回転速度に応じて変速比を自動的に切り替える機能を備えたトランスミッション(変速機)の総称である。
概要
狭義には変速機自体を指すが、発達の経緯が変速操作の自動化のみならず、マニュアルトランスミッション車(以下、MT)からクラッチペダルを取り去ることでもあったため、必然的にクラッチの自動化を伴っている。そのため、広義にATを称する場合は、各種の自動クラッチ機構を含めることが多い。
日本では「オートマチックトランスミッション」という呼び方が長く煩雑であることから、文章表記ではA/T、ATと略記されることが多い。口語ではオートマチックないしはオートマが通用している。古くはノークラ(ノークラッチペダル)、ノンクラ、トルコンなどと呼ばれた。
歴史
史上初の全自動変速機「ハイドラマチック」
テンプレート:要出典範囲これは4段式の遊星歯車変速機とトルク増幅作用のないフルードカップリングを用い、発進時や変速時のクラッチ断接、回転差の吸収をフルードカップリングが行うものであった。この変速機は、遊星歯車機構の切り替えに油圧が用いられ、自動で切り替えができた。キックダウン機構をはじめとする後年のATでも採用される機能を有していた。テンプレート:要出典範囲
以後、アメリカの主要な自動車メーカーは1940年代から1950年代にかけてATの開発を促進し、この分野で世界をリードした。排気量が大きな乗用車が普及しテンプレート:独自研究範囲。
トルクコンバータ導入
トルク増幅作用を備えたテンプレート:要出典範囲は、ゼネラルモ-ターズが1948年に発表し、ビュイックに搭載した「ダイナフロー」である。このATは2速であったが、変速は自動ではなく通常は2速に固定され、テンプレート:要出典範囲、駆動力の必要な場合に手動で1速に切り替えるというものであった(後述のトヨグライドと同様)。その後、他社からも同様のトルコン式ATが続々と発表された。
この当時のトルコン式ATは、テンプレート:独自研究範囲常にトルコンがスリップした状態で走行していた。それまでのフルードカップリング式に比べると、変速機の構造がシンプルで走りが滑らかになるメリットがあった一方、トルコンスリップに伴って生じるロスが大きく、燃費やスロットルに対するレスポンスが悪かった。
テンプレート:独自研究範囲、1950年代後半には3段以上のトルコン式ATが登場し、その後更なる多段化やロックアップクラッチの装備といった改良が加えられ、現在に至っている。
ヨーロッパ
アメリカでは1960年代までにはATが一般的になったが、ヨーロッパ車や日本車はテンプレート:独自研究範囲MTが主体であった。
ヨーロッパでは主として対米輸出用の中型車・大型車で、1950年代中期からATの装備から始まった。古くはアメリカのビッグ3(デトロイトの大手3メーカーは、自社あるいは系列企業の手で早くからATユニットを開発・自製し、他社にも販売した)やボルグワーナーなどの変速機メーカーから製品を購入するケースが多かったが、ダイムラー・ベンツ(現ダイムラー)等のように自社開発に取り組んだケースも見られるテンプレート:いつ。
ATの量産化や小型化はテンプレート:要出典範囲、やがて安価な車種や横置きエンジン前輪駆動の小型車にも搭載されるようになった。その結果、現在では一部のスポーツカー指向の車種を除き、高級車から軽自動車に至るまで乗用車の変速機構の主流となっている。
日本
日本でのトルコン式AT車はその初期テンプレート:いつには2速式か、変速自体が無いトルコン単独作動式のいずれかであった。テンプレート:要出典範囲。テンプレート:独自研究範囲
テンプレート:要出典範囲しかしその後、多段ATの軽自動車での採用例は、本田技研工業(ホンダ)が1967年のN360以降に採用した一時的なケースに留まり、ホンダの軽乗用車生産中止後は1970年代末期までATの軽自動車は途絶えた。
大手メーカーの一般的な四輪車では1959年にトヨタ自動車が自社の商用車「マスターライン」に搭載したのが最初で、同系列の乗用車であるクラウンに先立つテストケースとなった。AT採用の動機は、競合各社に先駆けたイージードライブ化と北米輸出を意識したものである。搭載された2速半自動式ATは、当時実績のあった2速ATの一つであるゼネラルモーターズ「パワーグライド」(1953年発表)を細部にわたり模倣し、2,000cc未満の自社エンジンに適合させる改良を施したもので、トヨグライドと称した[1]。
競合各社もこれを追うように1960年代以降、上級モデルを中心として日本国外メーカーとのライセンス契約での製造を図り、或いはボルグワーナー製3速AT「BW35」[2]を輸入搭載するなどの対抗策を採った。
トヨタは上級車に限らず早くからATの普及を真剣に考えており、クラウン系に続いて1962年には同社でもっとも小形(排気量700cc)の低価格大衆車であるパブリカ(P20系)にトヨグライドを搭載した。その後も1963年にコロナ(T20系)、1967年にはカローラ(E10系)と、小型車、大衆車をはじめ、商用車にも積極的に搭載車種を拡大している。この動きには1,000cc超のモデルを生産する他社も、対米輸出を睨んでの追随を余儀なくされた。
しかしトルコン式遊星歯車ATの基礎技術の多くはアメリカのメーカーに特許を押さえられている部分が多く、結果として多くの日本メーカーは日本国外メーカーと提携したうえで、ATメーカーの協同設立という形で特許を利用して変速機の量産に当たることになった。それらの例外は本田技研工業のホンダマチックで、同社は常道である遊星歯車変速機でなく、トルコンと組み合わせた通常の手動変速機(常時噛み合い式)に各段間の湿式多板クラッチ機構を追加、これを自動変速制御する独自設計を用いて、既存特許を回避した。
現在の日本ではAT車が主流であり、車種の設定上AT専用車が多く、同一車でもグレードの高いクラスではAT車のみという事例も数多い。
オートマチックトランスミッションの種類
オートマチックトランスミッションは、クラッチ機構や変速機構の違いにより分類される。
クラッチ機構の分類
トルクコンバータ式
ATには幾つかの方式が存在するが、このうち乗用車で最も普及しているのは動力の断続にトルコンを用い、多段変速機と組み合わせたものである。トルコン式と呼ばれるが、後述のトルクコンバーターを備えたCVTの普及によりトルコン式の呼称が適当ではなくなっており、自動車メーカーや部品メーカーではステップATという呼称を用いる場合がある[3]。
駆動力の伝達は一般にATフルードと呼ばれる液体で行っている。ATフルードは駆動力の伝達の他に、変速機構を動作させるための油圧回路の作動油としての機能や、変速機構に組み込まれているリングギアのブレーキに発生する摩擦力を安定化する機能なども求められる。ATFは(Automatic Transmission Fluid) の略であり、出光興産の登録商標である。国内自動車メーカーの約6割が同社の製品を使用している。JASOにおいては自動変速機油の日本語訳が用いられている。車両部位に用いる油脂類の区分として、エンジンオイル、ミッション(MT)オイル、デフオイルなどに倣いATオイルと呼ぶ例もある。
長期間の使用によりフルードの劣化が進んだ場合には、伝達効率の低下による燃費悪化や変速ショックが大きくなるという現象が起きる。しかし一方で、新しいフルードによってAT内部の壁面に付着したスラッジが剥離して細い流路に詰まるリスクがあり、最悪の場合、変速機を損傷して走行不能に陥る。こうしたリスクを回避することを理由に、自動車用品店の中には多走行の車両については交換を勧めない場合がある。あるいは長期間交換しなかった車両で交換する場合は一度に全量を入れ替えず、3回程度に分けてフルードを交換する場合がある。取扱説明書にフルードの交換について記載されていない車種も多い。一般的に交換作業は専用の機械でフルードを循環させながら行うが、一部の輸入車にはAT内部にフルードのフィルターがあるため、オイルパンを外す分解整備並みの手順を要する車種も存在する。
ATフルードにはエンジンオイルのグレードのような負荷指標が無く、各メーカーは自社製ATに合わせてそれぞれ独自のブレンドを行っているため、純正以外のATフルードを使用する場合、フルードの化学特性の違いによってAT内部にある樹脂部品(バルブやワッシャ)に不具合を生じさせることがある。
ATの多くは本体下部にATフルードを蓄えるオイルパンを持ち、内蔵するポンプでフルードを吸い上げて各部に送る。油量はディップスティック式のオイルレベルゲージで、オイルパン内部の液面高さを計るものがほとんどである。一般的にはエンジンを始動している状態でレベルゲージを引き抜いて測定を行うように指示されている場合が多く、これはエンジンを停止した状態で行うエンジンオイルの残量測定とは異なる。もしも測定方法の誤りなどが原因で規定量を大幅に超えるATFを注入してしまった場合、内部のギアによりATFが撹拌されて発熱し、急速に劣化が進むen:Windageと呼ばれる現象を引き起こしてしまう。
湿式多板クラッチ式
トルコンの代わりに湿式多板クラッチを用い、遊星歯車式変速機を組み合わせた方式。メルセデス・ベンツ SLクラス(R230系)のSL63AMGに、「AMGスピードシフトMCT」として搭載されたのを皮切りに、現在では多くのAMGモデルに採用されている。ダブルクラッチ制御やレーススタートモードなどによる、ダイナミックな走行が可能。1990年代以降は、スポーツ性を演出する目的で、運転者がギアを選択できるマニュアルモードを備えたものも増えている。これは英語圏では「Manumatic」という混成語による呼び方がなされており、後述のセミオートマチックトランスミッションとの区別を図っている。操作方法はシフトレバーによるものやステアリング上のスイッチによるもの、パドル式などがある。テンプレート:See also
変速機構の分類
遊星歯車式
遊星歯車複数とトルコンを組み合わせ、これを油圧等で制御し、自動的に変速段の切り替えを行う仕組みである。
遊星歯車は歯車セットの外側から多板ブレーキ(古くはバンドブレーキ)を掛けることで変速段の切り替えができるため、制御機構の単純化に最適で、ATの内部機構における長年の主流である。ただし、歯車のセットが容積を取り、また重くなるため、これに伴う重量ロスや、駆動力の慣性ロスが生じる欠点もある。
油圧制御のため変速機の内部には多数の圧力調整バルブがあるが、1980年代まではガバナ機構を利用し、機械的にバルブの切り替えと変速制御を行っていた。しかし1980年代後半、ソレノイドにより電気的にバルブを駆動するものが登場し、高効率で多彩な機能をもつATが世に出まわるようになった。コンピュータ制御により、アクセルの踏み加減や車両速度など様々な要素を勘案して、変速のタイミングがきめ細やかに設定されている。
過去に販売されていたアメリカ車や日本車では、前進の変速段数は3段を経て4段が主流だったが、2007年時点で安価な大衆車でも5段や6段が普及しはじめている。比較的高級な車種(特に日本車やドイツ車)では5段、6段、さらには7段(ダイムラー・ベンツの7G-TRONICなど)、8段(レクサス・LS)などがある。反対に軽自動車など、小型・廉価な車種では3段のものがある。変速段数が多いほど変速ショック(変速時のトルク変動)が少なく、また変速比の選択肢が増えるため、燃費の向上が期待できる反面、部品点数増加による重量及び製造コストが増えるというデメリットがある。
一般に4ATや5ATなどと表記された場合の数字部分は、前進変速段数を表す。また、後進についてはほぼ全ての車種で1段であるが、一部高級車(上述の7G-TRONIC搭載車など)では2段などの例も存在する。
かつては普通車のMTが4、5段に対しATは3、4段程度が主流だった理由は、段数が多くなるとそれだけコストや重量がかさむためと、低速時や発進時などトルコンがロックアップしていない状態ではトルコンスリップによるトルク増幅作用が得られ、少ない段数でも走行をカバーできたためである。
平行軸歯車式
テンプレート:See also 本田技研工業が1960年代後期に開発し、長年使用している方式。動力の断続にはトルコンを用いるが、遊星歯車を持たず、MTのような常時噛合式ギアに油圧式湿式クラッチを組み込んでいる。現在は4軸のものもあり、リニアソレノイドを用いてダイレクトに油圧制御を行う。
遊星歯車式が先行メーカーの特許多数で拘束されていたため、ホンダが自力開発を志した結果の特許回避設計ではあったが、遊星歯車式よりもギア比の選択肢に自由度が高いメリットがある。
ホンダ以外に近年では、メルセデス・ベンツ Aクラス(初代)の5段ATでも採用されていた。
無段変速機 (CVT)
テンプレート:Main 無段変速機(以下、CVT)は、ギアの組み合わせを替えて変速する多段変速機と異なり、連続的に無段階で変速比を変更できる構造を有する。本来は回転数と出力に一定関係があるエンジンから、エンジン回転数によらず効率よく希望の出力を取り出すための機構であるが、その効果から人間が意識的に変速操作に介入する意義が稀薄であるため、結果的に変速操作の自動化というメリットも付随する。一方で、ギアの組み合わせではなく摩擦により動力を伝達する方式であるため、歯車式の変速機より駆動力の損失が大きいというデメリットも存在する。
乗用車に用いられるCVTは、動力の断続のために自動クラッチと組み合わせられる。近年は、従来のトルコン式AT同様のクリープ現象を実現するため、トルコンと組み合わせて搭載される例が多い。また、一部のオートバイや原動機付自転車のスクーターに応用されているCVTは、ほとんどが遠心クラッチと組み合わせたものである。
セミオートマチックトランスミッション
テンプレート:Main AMT(オートメーテッドMT) 、ロボットミッション、機械式ATとも呼ばれ、クラッチおよび変速機自体はMT同様の構造を持つ。登場当初はクラッチのみ自動化されていたが、現在ではスロットル操作や変速操作も含めて、完全に自動化されたものも普及している。ATは上述のトルコン式が主流となって発展してきたため、トルコン式に対してMTベースであることを区別するかたちで用いられるカテゴリである。
デュアルクラッチトランスミッション (DCT)
テンプレート:Main ツインクラッチトランスミッションとも呼ばれる。構造はMTと似ているが、クラッチとメインシャフトが奇数段と偶数段の2系統に分かれており、次のギアを予めセットしてクラッチを交互に繋ぐことにより、素早い変速が可能である。
オートマチックトランスミッションの基本操作
ATの操作レバーは、セレクトレバーまたはセレクターと呼ばれる[4]。セレクトレバーには複数の操作位置(ポジション)が存在し、車両の走行状態に応じて切り替える必要がある。その操作位置をレンジと呼ぶ。
大型車では、セレクトレバーに代わって押しボタンを採用するものもある。1950年代にはアメリカ製大型乗用車やそれをコピーした旧ソ連製大型乗用車で、プッシュボタン変速を採用した事例もあったが、操作の確実性ではレバー式に分があり乗用車では一般化しなかった。
レンジの概要
- 「P」パーキングレンジ
- 駐車中に使用する。変速機内部で駆動系が固定され、動かせなくなる。エンジンやハイブリッドシステムの始動・停止が可能である。スタータースイッチからキーを抜くことができる。
- 駆動系の固定は変速機内部のみであるため、車体に外部より過度な力がかかると、変速機内のストッパーとなる部品(パーキングロックポール)が破損し、車両が動き出す事がある。このため安全策として、駐車時にはパーキングブレーキもしくは輪止めを併用するのが一般的となっている。ただし厳冬期、特に積雪地帯の低温下の駐車の際には、凍結によってパーキングブレーキが解除できなくなる恐れがある。このような場合、パーキングブレーキを使わず、パーキングレンジのみで駐車し、必要に応じて安定した輪止め等で補うことが推奨されている。大型トラックやバス用のATでは、上述の駆動系固定部の強度の問題から、Pレンジを持たないものが多い。
- 「R」リバースレンジ
- 後退時に使用する。Pレンジと前進用のポジションとの間に位置するものが多い。このポジションでは電子音でブザーやチャイムが鳴り、運転者に警告する車種が多い[5]。
- 「N」ニュートラルレンジ
- 変速機内部がフリー状態となり、エンジンおよびタイヤからのトルクが駆動系に全く伝わらないポジション。しかし「P」レンジとは違い、変速機内部で駆動系が固定されないので、場合(坂道、追い風など)によっては動いてしまうこともある。走行中のエンジン再始動に備えエンジンを始動できるが、安全のため停車時の始動はPレンジで行うことが推奨される。
- 「D」ドライブレンジ
- 通常走行時に使用する。このポジションに切り替えておけば、自動変速機能が完全に作動し、発進時から高速巡航時、停止時に至るまで基本的にステアリングホイールに加えアクセルペダルとブレーキペダルの操作だけで走行できる。
- 段数固定レンジ
- 下り坂などエンジンブレーキを使用する際に使用する。変速の上限が2速や1速になる。一部車種では2速発進時に使用する。基本的に3速以上へ変速しないが、アクセルを過剰に開けてエンジン回転が限界に達した場合は、エンジンや変速機保護のために変速する仕様になっているものが多い。 1速にロックするためか、「L」をロックレンジと称する場合があるが誤用である。[8][9][10]。
- ホンダの軽自動車など、Lまたは1レンジがない車種がある。また日産・ローレル(6代目、5速AT車)やホンダ・オデッセイ(2代目、V6)やホンダ・インスパイア(4代目)などでは、「2」レンジに入れてから「1」ボタンを押して1レンジに入れる。
- モードをメーター類に表示する場合には省略されている場合が多い。
安全装置
AT車の多くの車種では急発進などの危険を防止するため、ブレーキペダルを踏んで停止させた状態で、なおかつレバーにスイッチが設置されていればスイッチを押すなどでそれを作動させた状態からでなければ、「P」レンジから他のレンジへの切り替え操作ができないようになっており、この機能をシフトロックと呼ぶ。このシフトロックは多くの場合、電気的に制御されている[11]ため、回路異常やバッテリー上がりなどでブレーキを踏んでいても切り替わらなくなってしまうことがあるが、その際にはシフトロックを手動で解除してから切り替える[12]。
AT車は通常「P」レンジか「N」レンジでのみエンジンを始動できる。他のレンジでは安全装置(インヒビター)の作用でスターターが回らず、エンジンは始動しない。通常は安全のため「P」レンジでエンジンを始動する。「N」レンジでエンジン始動が可能なのは、走行中にエンジンが停止してしまった場合に備えての設定である[13]。
セレクトレバーの操作方法
AT車のセレクトレバーは、ドライバーから見て車体中央に配置する方式(MT車におけるフロアシフト等にあたる)と、ステアリングポストの横に取り付けられたコラム式がある。さらに中央配置式には、操作方向が前後に一直線になっている単純な形式以外に、左右にジグザグの凹凸を持つゲートを配して故意にセレクトレバー移動を支障させ、横方向にも動きを持たせた「ゲート式」とがある。
不意のレンジ変更を防ぐ為に、特定のレンジ間(PとRの間など)のレンジ変更を行う場合は、操作方向が一直線になっているものはレバーに付いたボタンを押しながら、コラム式ではレバーを手前に引きながら、またゲート式ではゲートに沿うようにレバーを倒しながら、操作を行う構造となっている。特定のレンジ変更以外でもその操作をしながらレンジ変更を行う事は可能であるが、誤操作を防ぐために必要ないときは操作をせずにレバーを動かす事が望ましい。
セレクトレバー以外の操作
AT車の多くの車種には、オーバードライブスイッチ(O・Dスイッチ)が搭載されている。オーバードライブとは変速比が1.000未満のギア段を指し、スイッチを切っておくと一定のギアから上に変速しなくなる(多くの車種では3速が上限となる)。普段このスイッチはオンの状態にしておくと、加速に応じてギアが最上段まで切り替わり、高速域でのエンジンの回転数を抑えられ省燃費になる。一方、山道のアップダウンなどで頻繁に変速するような場合は、オフにするとスムーズに走行できるようになる。また渋滞や混雑などでも無用なシフトアップを避け、適度なエンジンブレーキで惰性走行を抑える効果がある。エンジンを切ってもオフの状態が維持されるものが多いが、ホンダ車などで一旦エンジンを切ると、次の始動時に自動的にオンに復帰するものもある[14][15]。
また、スタッガード・ゲート型ではないフロアシフト式セレクターを持つか、またはコラムシフト式[16]であるマツダ(OEM調達である車種を除く)の4速AT車[17]にはオーバードライブ・スイッチではなくホールドモード・スイッチが装備されており、ホールドモードをオンにするとDレンジでは2速と3速の間で自動変速となり、Sレンジでは2速、Lレンジでは1速にそれぞれギアが固定される。
脚注
関連項目
- トランスミッション
- マニュアルトランスミッション
- 日本の法規上AT車とされるもの
- シフトレバーの配置
- オートマチック限定免許
- ブレーキとアクセルの踏み間違え事故
- ↑ 2速半自動式とは、通常は発進から最高速まで2速のみで走行し、登坂や牽引などで力が必要な際に手動で1速を選択する方式で、トルコン依存の根本的思想は1948年のダイナフローと大差ない。
- ↑ 変速機メーカーであるボルグワーナーが1950年代末期に、アメリカ市場の3000cc級乗用車(当時のアメリカにおいて「コンパクトカー」にカテゴライズされた、比較的小型の6気筒クラス)向けに開発した、小型・中型車に適合するトルコン式3速ATで、基本機構の完成度が高く、ほぼ30年に渡って生産された傑作製品である。世界各国のメーカーがこれを購入して自社のモデルに搭載したほか、各社でのAT自力開発の際にもしばしば手本となった。
- ↑ http://www.jatco.co.jp/monozukuri/introduction/cvt.html
- ↑ 変速は変速機が自動で行なうため、MTに倣って「チェンジレバー」「シフトレバー」と呼ぶことは本来誤用とされた。しかし近年ではセレクトレバーにシフト機能(運転者の任意によるギア選択)を持たせた車両も多数現れており、明確な区別はなくなりつつある。
- ↑ メーカーの判断により、音の鳴らない車種もある。日本車の多くの車種では「ピーピー」というブザーだが、ホンダ車のほとんどの車種は「ピンポン、ピンポン」と鳴る。またBMW、フォードやマツダの一部車種などに「ポーン、ポーン」と鳴るものもある。
- ↑ メーカーによって異なり「3」(トヨタ・日産・三菱・スバル)、「D4」(ダイハツ・ホンダ)、「D3」(ホンダ)、「S(スロープ = 坂)」(マツダ)、「L」(トヨタ・日産のCVT車・ホンダのCVT車・三菱)、「1」(日産の非CVT・ホンダの非CVTなど)となっており、マニュアルモード付きについては「S」(トヨタ・ホンダ)、「M」(トヨタ・日産・ホンダ)となっている。
- ↑ 「Ds(スポーツドライブモード:ギア比が通常より大きくなり、山道や高速道路での追い越しが楽になり、エンジンブレーキもDより強くかかる)」(三菱・ランサー)もしくは「S(スポーツ)」(ホンダ・フィット)となっていたり、「D」から唐突に「L」に飛んだりしている。また、特に強いエンジンブレーキ・回生ブレーキを手に入れる為の「B(ブレーキ)」(トヨタ・プリウスやヴィッツ)というレンジを持つものもある。
- ↑ テンプレート:Cite book
- ↑ テンプレート:Cite book
- ↑ テンプレート:Cite book
- ↑ トヨタのコラムAT車(初代ノアや2代目イプサムなど)や、初代RVRはブレーキペダルから伸びたワイヤーにて機械的に制御していた。バッテリー上がりに影響を受けず、手動の解除機構も備える必要が無いシンプルな構造であった。
- ↑ シフトロック解除は専用のボタンを押したり、シフトレバー付近にキーを差し込んだりして行う。メーカーによってはエンジンキーの位置がアクセサリー (ACC) の場合のみシフトロックが働かず、ブレーキペダルを踏まなくてもパーキングを解除できるものがある。また一部外国車には、バッテリーからの電源供給が絶たれた状態でエンジンキーを運転位置にすれば、自動的にシフトロックを解除するものもある。
- ↑ 「P」レンジでしかエンジン始動が出来なければ、停止したエンジンを再始動させるためには停止する必要がある。しかしエンジン停止状態ではパワーステアリングやブレーキブースターが機能せず、安全な停止自体が困難になる。
- ↑ 最近のホンダ車ではD3スイッチという名称を用いている。O・Dスイッチと異なる点は、オンとオフの関係が逆になる。また、エンジンを切ると自動的にオフになる。
- ↑ オーバードライブとなる変速段があり、かつオーバードライブスイッチのないAT車では、マニュアル変速が可能かもしくは「D3」(あるいは「3」)レンジが設定され、セレクトレバーによってオーバードライブスイッチと同等の操作を可能にしている。一部の車種ではセレクトレバーとは別にスイッチがついており、それを選択する事で変速パターンを複数のものから切り替える事ができる。例えば日産車では「POWER」「AUTO」「SNOW」、ダイハツ車では「ECONO」「AUTO」「SNOW」といったスイッチがあり、状況に応じて切り替えられる。
- ↑ 誤操作を防止するため、コラムシフト式のATセレクターはすべてスタッガード・ゲート型である。
- ↑ 5速以上の前進段を持つマツダのAT車はすべてアクティブマチック仕様であり、スタッガード・ゲート型のセレクターを採用している。