特殊作戦群
テンプレート:軍隊資料 特殊作戦群(とくしゅさくせんぐん、JGSDF Special Forces Group:SFGp)とは、千葉県船橋市の習志野駐屯地に駐屯する、中央即応集団の隷下部隊である。
陸上自衛隊初、かつ唯一の特殊部隊である[1]。現時点における主要任務は対テロ及び対ゲリラ作戦であるとされるが、将来的にはアメリカ陸軍特殊部隊(グリーンベレー、デルタフォース等)と同様、他国における特殊偵察や直接行動、情報戦などの多様な任務を遂行可能な世界水準の特殊部隊を目指しているといわれる。報道陣の間では特戦群、特戦、特作とも略され、一般隊員からはSと呼ばれることもある。
特殊作戦群の想定している任務や訓練の内容、保有する装備などは創設時から一切公表されていない。公の場に姿を見せたのは中央即応集団の式典のみで[2]、その際も一部の隊員を除き顔をバラクラバで覆っている。これは、瀬戸内シージャック事件の際に犯人を狙撃した警察官が殺人罪で起訴された事例や、第1空挺団乗っ取り計画のような隊員やその家族を狙ったテロを防ぐためとされている。
概要
2004年(平成16年)3月27日に設立され、第1空挺団の拠点である習志野駐屯地に群本部を置く。初代群長は直接部隊創設に携わった荒谷卓が就任した。対テロをはじめとする各種特殊任務を実際に遂行する必要性から、従来の陸自では考えられないほど高度な情報管理体制下におかれており、編成や装備、訓練内容・想定任務についてはほとんど明らかになっていないが、アメリカ陸軍の特殊部隊であるグリーンベレー、デルタフォースを編成・装備・訓練の手本として発足し、隊員数は約300人(戦闘要員は約200人)とされている。
特殊作戦隊員選抜試験の受験資格者は原則として空挺及びレンジャー資格を有する優秀な3等陸曹以上の隊員であるが、グリーンベレーに準じた厳しい選抜試験と長期の課程教育が行われる結果、最終的に特殊作戦群の戦闘要員となれるのは志願者全体の1割程度である。また戦闘要員として入隊を認められた隊員も、自由降下か潜水、或いは山岳潜入のいずれかの特殊潜入技能を必須として修得する必要がある。各人の特性にあわせて各種語学やCQB、狙撃、NBC、情報、心理戦等の専門技能を修得する必要がある為、その育成にはかなりの時間とコストがかかる。軍事評論家の小川和久は、特殊作戦群は規模・錬度・訓練時間等の全てにおいて未だ発展途上であるとの見方を示しているが、初代群長の荒谷卓は、訓練や練度は部外者が知り得ない防衛秘密であり、守秘義務に抵触するとして言及を避けている。
発足当時の陸上幕僚長、先崎一陸将は記者団に対し会見で「(隊員には)ハードな知識や技能、メンタルな部分が要求されるので(特殊作戦群の実戦化には)10年 - 15年はかかると思う」と述べている。有事の際は、他の中央即応集団隷下部隊(第1空挺団、第1ヘリコプター団(第102飛行隊)、中央即応連隊等)と連携し全国規模で行動する。
2006年(平成18年)11月27日に、自衛隊イラク復興支援群の編成を担任した22個部隊等に対して、陸上幕僚長から第2級賞状又は第3級賞状が授与されたが、特殊作戦群にも第2級賞状が授与された。現地治安に関する情報収集や危険地域での警備及び要人警護、対テロの観点からの意見具申、一般隊員に対する教育訓練等の任務に従事したと思われる。
イラク派遣前に普通科部隊と合流して訓練した際には、生身の隊員を的の両わきに立たせて10m以上離れた場所を移動しながら拳銃の弾を的に命中させるなど、一般部隊ではありえない訓練を行っていたという証言もある[3]。隊員の研究意欲は高く、休暇に自費で100万円を払い米英の民間軍事会社 (PMC) で研修を受ける隊員も多く存在する[3]。
年表
- 1998年(平成10年)頃:第1空挺団内に編成準備室と特殊作戦研究部隊(G、Sの2つの対抗部隊)が極秘裏に設置される。
- 2000年(平成12年):関連施設等の要望。
- 2001年(平成13年):予算要求開始。留学要員の帰国、それに合わせて施設の確保とプレ準備隊(群本部基幹要員と訓練支援小隊)編成を完結。
- 2002年(平成14年):夏から翌年春頃:1次から3次までの準備隊の編成完結。それと平行して、要員選抜基準、訓練要領および基準の設定。群本部要員と中隊要員の2系統で隊員の募集・選抜開始(前者はレンジャー未修了者の志願可)。
- 2003年(平成15年)12月:極少数の準備隊員が第1次イラク復興業務支援隊としてイラク入り(後に特殊作戦群に引き継がれる)。
- 2004年(平成16年)3月27日:防衛庁長官(当時)直轄部隊として習志野駐屯地で編成完結。
- 2006年(平成18年)5月:第10次イラク復興支援群に含まれる事が防衛庁(当時)より発表される。
- 2007年(平成19年)3月28日:防衛大臣直轄から「中央即応集団」隷下に編成替え。
- 2008年(平成20年)
- 1月17日から2月2日まで特殊作戦群隊員20名が沖縄キャンプハンセンの市街地戦闘施設でアメリカ陸軍特殊部隊群(グリーンベレー)と実戦訓練研修を行ったと沖縄の現地マスコミが報道。
- 3月26日:特殊作戦群の英記名がSpecial Operations Group: SOGからSpecial Forces Group:SFGpに変更される。
服制
- 特殊作戦に関する教育等を受けた特殊作戦群の隊員は、「特殊作戦き章」を、自衛隊の施設内及び特に群長が必要と認めた場合にのみ着用する[5]。特殊作戦き章は、左胸ポケットに着用する[6]。この特殊作戦き章は、日本の国旗である日の丸、正義や軍事力等を意味する剣、急襲が得意な鳶、陸上自衛隊の徽章である桜星及び古来から神聖な木とされてきた榊からなっている[7]。
部隊編成
- 群本部
- 第1科(総括、庶務等)
- 第2科(情報)
- 第3科(作戦立案、部隊運用、訓練計画)
- 第4科(補給)
- 本部管理中隊
- 第1中隊
- 第2中隊
- 第3中隊
- 特殊作戦教育隊
代 | 氏名 | 在任期間 | 後職 |
---|---|---|---|
1 | 荒谷卓 | 2004.3.27 - 2007.3.22 | 研究本部主任研究開発官 |
2 | 古田清悟 | 2007.3.23 - 2009.11.30 | 統合幕僚監部運用部 運用第1課特殊作戦室長 |
3 | 青木伸一 | 2009.12.1 - 2012.3.31 | 中央即応集団司令部幕僚副長 |
4 | 平田隆則 | 2012.4.1 - |
主要装備
- 軍用光学照準器等を米政府に無許可で日本に輸出、起訴された米陸軍大尉:飯柴智亮の声明文により
陸上自衛隊がM4カービンを購入、採用していたことが判明した[8]。
また、2007年と2008年にQDSS-NT4サプレッサーやM203A2とともにFMSでM4カービンを購入していることも確認されている[9]
- 2007年3月31日の中央即応集団編成完結式で報道陣の前に姿を現した際にレッグホルスター(サファリランド6004)に入れて携帯していた。
- 元力士、水戸泉政人のブログ「水 戸 泉 メ モ リ ー」の[11]に写真が掲載されている。
- 迷彩塗装が施されている[10]
- スタングレネード
- 中央即応集団編成完結式で第1空挺団で使用されているものと同じ3点式あご紐を装備
配備されている可能性のある装備品
これらは名称に試験用という記載が無く、一般部隊における配備が確認されていないにもかかわらず調達が行われている装備である。
- 特殊拳銃(J.P.Sauer&Sohn社製)
- 2005年度40丁、2007年度83丁が調達された(2006年度と2008年度にも調達されているが調達要求番号が記載されていないため陸自向けなのかは不明)。
2007年度随意契約にはJ.P.Sauer&Sohn社製であることが記載されている。[12]
- 11.4mm大口径拳銃[13]
- 4.6mm短機関銃(B)
- 特殊小銃
- ヘッケラー&コッホ社製との記載[15]があるが機種は不明。
特殊小銃(B)という記載も見られるため仕様や口径の異なる複数の型式を調達している可能性も考えられる。
- バレット社製
- ウィルソン・コンバット社製(レミントンM870のカスタムモデルを販売)
登場作品
- 小説
- 『北朝鮮ゲリラ侵攻〜自衛隊特殊部隊ブラックアウルズ』 砧大蔵
- 『交戦規則-ROE』 黒崎視音
- 『瀕死のライオン』 麻生幾
- 『北朝鮮核侵略』 霧島那智
- 『テロ・クルーズ〜血塗られた航海〜』 高貫布士
- 『ゴルゴタ』 深見真
- 『ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』 柳内たくみ
- 『Op.ローズダスト』 福井晴敏
- 漫画
- 『日本国大統領 桜坂満太郎』 日高義樹原作、吉田健二作画
- 『BUGS -捕食者たちの夏-』 七月鏡一原作、藤原芳秀作画
- 『オメガ7』 小林源文原作
- 映画
注釈
- ↑ 特殊作戦群設立以前にも、第1空挺団や冬季戦技教育隊、西部方面普通科連隊など特殊部隊的な役割を担う部隊はいくつか存在したものの、公式に特殊部隊と発表されたのは特殊作戦群が初である。
- ↑ 2007年3月28日の中央即応集団司令官着任式、同年3月31日の中央即応集団編成完結式、それ以降の中央即応集団司令官着任式、2013年5月18日の座間駐屯地開設及び中央即応集団創隊6周年記念行事など。
- ↑ 3.0 3.1 【仕事人】陸自特殊作戦群の初代群長・荒谷卓さん、信念を貫き新たな戦場へ(MSN産経、リンク切れ)
- ↑ 陸上自衛官服装細則(陸上自衛隊達第24-8号)別表第1。
- ↑ 「き章の付与及び着用について(通達)」(昭和53年7月25日陸幕人計第215号)によると、着用資格者は「陸上自衛隊の教育訓練実施に関する達(陸上自衛隊達第110-1号)に定める特殊作戦に関する教育訓練を修了した者又は外国軍隊において特殊作戦に関する教育訓練を修了した者のうち、特殊作戦群に所属する者」とされている。
- ↑ 自衛官服装規則(昭和32年2月6日防衛庁訓令第4号)附図第1第12項。
- ↑ 「赤色の金属製の日の丸、いぶし銀色の金属製の剣、金色及び銀色の金属製のとび並びに銀色の金属製の桜星を組み合わせたものを中心にして、その両側にいぶし銀色の金属製のさかきを配したもの又は緑色の布製台地に黒糸で縫取りをした日の丸及び剣並びに茶糸で縫取りをしたとび及び桜星を中心にして、その両側に黒糸で縫取りをしたさかきを配したものとする。形状及び寸法は、図10-2のとおりとする。」(自衛官の職務又は技能を識別するために用いるき章の制式等に関する訓令(昭和49年3月12日防衛庁訓令第6号)別表第1)。
- ↑ [1]
- ↑ [2][3]。
- ↑ 10.0 10.1 ARMY第47号
- ↑ 11.0 11.1 2004年12月16日の記事
- ↑ [4]
- ↑ 広告 第 輸調-343号 平成24年9月14日
- ↑ 公告 第 輸調-350号平成 24年9月14日
- ↑ 補給統制本部公示第132号 平成23年1月28日
- ↑ 16.0 16.1 平成21年(2009年)度装備品等(火器車両関係)に係る各種契約希望募集要項