統合幕僚監部

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統合幕僚監部(とうごうばくりょうかんぶ、テンプレート:Llang)は、日本防衛省特別の機関である。

陸海空自衛隊を一体的に部隊運用することを目的とした機関であり、陸上幕僚監部海上幕僚監部航空幕僚監部と併せ、高級幹部の間では「四幕」と称される。前身は統合幕僚会議(とうごうばくりょうかいぎ、テンプレート:Llang、略称:統幕会議)及び同事務局である。

概要

前身である統合幕僚会議と比べ、大幅に権限を強化された。すなわち、統合幕僚会議では、各自衛隊の行動等において統合部隊(2以上の自衛隊から成る部隊)が編成された場合のみ、当該部隊の運用(作戦)に関する指揮命令を執行していたが、統合幕僚監部では、有事・平時、数及び規模を問わず各自衛隊の運用に関する防衛大臣の指揮・命令が全て(単一の自衛隊の部隊のみの運用であっても)統合幕僚監部を通じることとなった。運用形態の変更に伴い、陸上・海上・航空の各幕僚監部の防衛部運用課の人員が統合幕僚監部運用部に集約され、各幕僚監部に運用支援課が編成された。また、作戦立案を担当する運用部の部長職は、他の部長級が将補によって充てがわれるのに対し、一段上の師団長級のを以て原則着任することとされた。陸海空各幕僚長は、運用以外の隊務について防衛大臣を補佐するが、各々の立場から統合幕僚長に意見を述べることができる。

防衛省において防衛大臣を補佐する機関には、2種類ある。一つは、「文官」として「政策的補佐」をする「内局」(大臣官房と各局からなる内部部局)であり、もう一つは、「自衛官」(武官)として「軍事専門的補佐」をする各幕僚監部である。

なお、防衛省の前身である保安庁の時代から、指揮権を統一する機関を創設する構想はあったが、旧海軍関係者の猛烈な反発により頓挫したという経緯がある[1]

沿革

  • 1954年7月1日:統合幕僚会議および同事務局が新設。
  • 1961年6月12日:統合幕僚会議の権限が強化される(防衛2法改正)。8月1日:統合幕僚学校を統合幕僚会議に附置新設。
  • 1997年1月20日:第二幕僚室を陸上幕僚監部の調査部調査第2課調査別室と合同させた情報本部を統合幕僚会議に新設。
  • 1998年:出動時以外でも、必要に応じて統合幕僚会議が長官を補佐できるように防衛庁設置法などが一部改正(1999年3月施行)。
  • 2006年3月27日:統合幕僚会議及び同事務局を廃止し、統合幕僚監部を新設。情報本部は、防衛庁内各機関に対する情報支援機能を広範かつ総合的に実施し得る「庁の中央情報機関」としての地位・役割を明確にするため、統合幕僚監部から分離、防衛庁長官直轄組織に改編。
  • 2008年3月26日:初の3自衛隊共同部隊である自衛隊指揮通信システム隊を統合幕僚監部に配備。
  • 2009年8月1日:陸海空の情報保全隊を統合し自衛隊情報保全隊が発足。
  • 2012年
4月1日:統合幕僚監部最先任下士官を新設。
8月1日:運用部副部長(将補(二))職及び総務調整官を新設し、総務部人事教育課を廃止[2]
  • 2014年3月26日:防衛計画部副部長職及び、総務部に連絡調整課、運用部に運用第3課を新設[3]
    (スクラップ・アンド・ビルドの観点から陸幕装備部副部長職と陸・海・空幕の課を各1廃止)。

統合運用

テンプレート:Main 「統合運用」とは、特定の目的のために異なる軍種(陸・海・空など)の部隊を組み合わせて動員すること。または、そのような動員において成立する部隊間の協力関係。

運用例としては、個別の運用で対応に限界のある場合、すなわち防衛出動治安出動警護出動災害派遣、地震防災派遣訓練海外派遣など。統合運用に際して特別編制の部隊に対する防衛庁長官の指揮命令は、統合幕僚会議議長を通じて行われてきた。

自衛隊の統合運用は、2006年3月27日に本格的に導入され、陸海空自衛隊の運用を一元化し、一括して指揮する統合幕僚監部が創設された。従来、防衛庁長官は、統合運用の場合を除いて3幕僚監部の幕僚長を通じて命令してきたが、統合幕僚監部を設置して以降、個別運用の場合でも統合幕僚長を通じるように変更された。

幕僚と参謀

テンプレート:独自研究 この二つの語は軍事用語でそれぞれ別の意味をもつのだが、同義語として使っている国も多い。アメリカでは幕僚と言う代わりに参謀の語を使い、自衛隊の場合は参謀と言う代わりに幕僚という語を使う。参謀とは司令官の作戦補佐を担当するいわゆる「軍師」の役割を持つが、幕僚も同じ役割を持つ。この為、言い方が違うだけで指している役割は同じであるが、これは日本の場合で、アメリカやロシアでは両方で別々の意味を持っていたりする。自衛隊用語を参照)

戦前の日本でも幕僚という語が使われたが、軍師の意味で使われたのは参謀。戦後の日本では自衛隊の参謀にあたる役割を持つ自衛官は存在するが、参謀という語が軍事的なニュアンスを含むので、その名称を全部幕僚と言い替えた。よって今の自衛隊に参謀という職名は存在しない。ただし、海上自衛隊においては、通信時の簡略名称において、幕僚長を「サチ(ンボウョウ)」首席幕僚を「セサ(ンニンンボウ)」と旧海軍時代の伝統に則って定めており、幕僚を参謀と逆に言い換えているという事例もある。(旧海軍時代の伝統

組織編成

テンプレート:See also

  • 統合幕僚長
  • 統合幕僚副長
統合幕僚長を助け、統合幕僚監部の部務を整理・監督する。統合幕僚長に事故があるとき、あるいは欠けたときはその職務を行う。
  • 総務部(J-1):統合幕僚監部の予算、職員人事教育等を担当する。
    • 総務課
    • 連絡調整課
  • 運用部(J-3):陸海空自衛隊の運用、統合訓練等を担当する。
    • 運用第一課
    • 運用第二課
    • 運用第三課
  • 防衛計画部(J-5):統合運用の見地からの防衛力整備の指針等を担当する。
    • 防衛課
    • 計画課
  • 指揮通信システム部(J-6):統合システムの整備を担当する。
    • 指揮通信システム企画課
    • 指揮通信システム運用課
      • 自衛隊指揮通信システム隊
  • 報道官:統合幕僚長の命を受け、統合幕僚監部の所掌事務に関する広報に関する事務をつかさどる。
  • 首席法務官:統合幕僚長の命を受け、次に掲げる事務をつかさどる。なお、自衛隊の法務官も参照。
  1. 統合幕僚監部に係る訴訟損害賠償及び損失補償に関すること。
  2. 例規案その他特に命ぜられた重要な文書の審査に関すること。
  3. 統合幕僚監部の所掌事務の遂行に必要な法令の調査及び研究に関すること。
  • 首席後方補給官(J-4):統合幕僚長の命を受け、次に掲げる事務をつかさどる。
  1. 統合運用による円滑な任務遂行を図る見地からの防衛及び警備に関する計画(調達、補給、保健衛生、整備、輸送及び施設に係るものに限る。)に関すること。
  2. 行動の計画に関し必要な調達、補給、保健衛生、整備、輸送及び施設の計画に関すること。
  • 自衛隊情報保全隊
  • 統合幕僚学校
  • 情報本部
情報本部は防衛大臣直轄の機関[4]であって統合幕僚監部の一部ではないが、情報本部の統合情報部はあたかも統合幕僚監部の組織であるごとく運用される。これはアメリカ軍において国防情報局(DIA)が統合参謀本部の情報部(J-2)を構成するという運用方法に範をとったものといえる。

旧統合幕僚会議の組織・任務

統合幕僚会議議長(専任の自衛官で、陸海空各幕僚長経験者から任じられる。)と陸上自衛隊海上自衛隊航空自衛隊各隊のトップである3人の幕僚長、計4人で構成され、防衛庁長官の補佐機関として、隊の枠を超えた「統合運用」、具体的には「統合防衛計画の作成」、「出動時の自衛隊に対する指揮命令の調整」等を行う。議長は専任の自衛官で、「自衛官の最上位」である(防衛庁設置法第27条)。

「統合幕僚会議」という時、「幕僚長+議長からなる会議(4名)」を指す場合と、事務局・情報本部・統合幕僚学校も含めた組織全体を指す場合とがある。

統合幕僚会議に関する法律
  • 特別の部隊の編成:自衛隊法第22条
  • 会議の所掌事務:防衛庁設置法第26条 
  • 議長の職務:防衛庁設置法第27条、国家安全保障会議設置法第8条、自衛隊法第22条の3
  • 組織概要:防衛庁設置法第27条、防衛庁設置法第28条、防衛庁設置法第28条の2、防衛庁組織令第155条

統合幕僚監部新設に伴う変化

新たに置かれる統合幕僚長が、従来の統合幕僚会議議長と異なり、隊務等監督権(自衛隊法第9条第1項)、長官補佐任務(第9条第2項)、命令執行権(第9条第3項)を有することとなったことから改正が行われている。変更点を斜字で表す。

自衛隊法の変更点(平成17年7月29日法律第88号による改正)
条数 旧法 新法
第2条第1項 この法律において「自衛隊」とは、防衛庁長官(以下「長官」という。)、防衛庁副長官及び防衛庁長官政務官並びに防衛庁の事務次官及び防衛参事官並びに防衛庁本庁の内部部局、防衛大学校、防衛医科大学校、統合幕僚会議、技術研究本部、契約本部その他の機関(政令で定める合議制の機関を除く。)並びに陸上自衛隊、海上自衛隊及び航空自衛隊並びに防衛施設庁(政令で定める合議制の機関並びに防衛庁設置法 (昭和二十九年法律第百六十四号)第五条第二十四号 又は第二十五号 に掲げる事務をつかさどる部局及び職で政令で定めるものを除く。)を含むものとする。 この法律において「自衛隊」とは、防衛庁長官(以下「長官」という。)、防衛庁副長官及び防衛庁長官政務官並びに防衛庁の事務次官及び防衛参事官並びに防衛庁本庁の内部部局、防衛大学校、防衛医科大学校、統合幕僚監部、情報本部、技術研究本部、契約本部その他の機関(政令で定める合議制の機関を除く。)並びに陸上自衛隊、海上自衛隊及び航空自衛隊並びに防衛施設庁(政令で定める合議制の機関並びに防衛庁設置法 (昭和二十九年法律第百六十四号)第五条第二十四号 又は第二十五号 に掲げる事務をつかさどる部局及び職で政令で定めるものを除く。)を含むものとする。
第2条第2項 この法律において「陸上自衛隊」とは、陸上幕僚監部並びに陸上幕僚長の監督を受ける部隊及び機関を含むものとする。 この法律において「陸上自衛隊」とは、陸上幕僚監部並びに統合幕僚長及び陸上幕僚長の監督を受ける部隊及び機関を含むものとする。
第2条第3項 この法律において「海上自衛隊」とは、海上幕僚監部並びに海上幕僚長の監督を受ける部隊及び機関を含むものとする。 この法律において「海上自衛隊」とは、海上幕僚監部並びに統合幕僚長及び海上幕僚長の監督を受ける部隊及び機関を含むものとする。
第2条第4項 この法律において「航空自衛隊」とは、航空幕僚監部並びに航空幕僚長の監督を受ける部隊及び機関を含むものとする。 この法律において「航空自衛隊」とは、航空幕僚監部並びに統合幕僚長及び航空幕僚長の監督を受ける部隊及び機関を含むものとする。
第8条 長官は、内閣総理大臣の指揮監督を受け、自衛隊の隊務を統括する。ただし、陸上幕僚長、海上幕僚長又は航空幕僚長の監督を受ける部隊及び機関(以下「部隊等」という。)に対する長官の指揮監督は、それぞれ当該幕僚長を通じて行うものとする。 長官は、内閣総理大臣の指揮監督を受け、自衛隊の隊務を統括する。ただし、陸上自衛隊、海上自衛隊又は航空自衛隊の部隊及び機関(以下「部隊等」という。)に対する長官の指揮監督は、次の各号に掲げる隊務の区分に応じ、当該各号に定める者を通じて行うものとする。

一 統合幕僚監部の所掌事務に係る陸上自衛隊、海上自衛隊又は航空自衛隊の隊務 統合幕僚長
二 陸上幕僚監部の所掌事務に係る陸上自衛隊の隊務 陸上幕僚長
三 海上幕僚監部の所掌事務に係る海上自衛隊の隊務 海上幕僚長
四 航空幕僚監部の所掌事務に係る航空自衛隊の隊務 航空幕僚長

第9条第1項 陸上幕僚長、海上幕僚長又は航空幕僚長(以下「幕僚長」という。)は、長官の指揮監督を受け、それぞれ陸上自衛隊、海上自衛隊又は航空自衛隊の隊務及び所部の隊員の服務を監督する。 統合幕僚長、陸上幕僚長、海上幕僚長又は航空幕僚長(以下「幕僚長」という。)は、長官の指揮監督を受け、それぞれ前条各号に掲げる隊務及び統合幕僚監部、陸上自衛隊、海上自衛隊又は航空自衛隊の隊員の服務を監督する。
第9条第2項 陸上幕僚長は陸上自衛隊の隊務に関し、海上幕僚長は海上自衛隊の隊務に関し、航空幕僚長は航空自衛隊の隊務に関しそれぞれ最高の専門的助言者として長官を補佐する。 幕僚長は、それぞれ前条各号に掲げる隊務に関し最高の専門的助言者として長官を補佐する。
第9条第3項 幕僚長は、それぞれ部隊等に対する長官の命令を執行する。 幕僚長は、それぞれ、前条各号に掲げる隊務に関し、部隊等に対する長官の命令を執行する。
第9条の2 (旧法に規定なし) 統合幕僚長は、前条に規定する職務を行うに当たり、部隊等の運用の円滑化を図る観点から、陸上幕僚長、海上幕僚長又は航空幕僚長に対し、それぞれ第八条第二号から第四号までに掲げる隊務に関し必要な措置をとらせることができる。
旧第22条第3項 前二項の規定により編成された部隊が陸上自衛隊の部隊、海上自衛隊の部隊又は航空自衛隊の部隊のいずれか二以上から成る場合(当該部隊が前項の規定により編成されたものであるときは、防衛庁設置法第二十六条第一項第六号 の規定によりその運用に係る長官の指揮命令に関することについて統合幕僚会議が長官を補佐する場合に限る。)における当該部隊の運用に係る長官の指揮は、統合幕僚会議の議長を通じて行うものとし、これに関する長官の命令は、統合幕僚会議の議長が執行する。 (削る)
第22条第4項→第22条第3項 第一項又は第二項の規定により編成され、又は同一指揮官の下に置かれる部隊が陸上自衛隊の部隊、海上自衛隊の部隊又は航空自衛隊の部隊のいずれか二以上から成る場合における当該部隊に対する長官の指揮監督について幕僚長の行う職務に関しては、長官の定めるところによる。 前二項の規定により編成され、又は同一指揮官の下に置かれる部隊が陸上自衛隊の部隊、海上自衛隊の部隊又は航空自衛隊の部隊のいずれか二以上から成る場合における当該部隊の運用に係る長官の指揮は、統合幕僚長を通じて行い、これに関する長官の命令は、統合幕僚長が執行するものとするほか、当該部隊に対する長官の指揮監督について幕僚長の行う職務に関しては、長官の定めるところによる。

本省運用企画局との統合議論

南直哉を座長とする防衛省改革会議は2008年7月15日、防衛省再編に関する最終報告書をまとめ、福田康夫内閣総理大臣に提出した。内局の運用企画局を廃止し部隊運用を統合幕僚監部に一本化、統合幕僚副長の文官起用など、背広組と制服組の混合が柱となっている[5]

また、2008年12月22日には、防衛省内の省改革本部会議が「基本的な考え方」を発表。同報告書の内容を発展的に踏襲し、他省庁との調整も含む運用部門の統幕への一本化を盛り込んだ。しかし、2009年8月に執行された第45回衆議院議員総選挙により生じた政権交代の結果本項を含む組織改編は見送られ、同会議は同年11月17日もって廃止された[6]。その後民主党政権において発足した新たな検討委員会での議論を経て2012年8月1日付で運用部に自衛官(将補(二)を指定階級)による副部長を新設し、これが事実上の統合議論の後身と見られるものの、内局運用企画局の廃止は背広組の強い反発により頓挫した。

脚注

テンプレート:Reflist

関連項目

外部リンク

テンプレート:防衛省
  1. 太平洋戦争時に統帥権を盾に暴走した旧日本陸軍参謀本部にその原因があるとされる。(陸上総隊陸軍悪玉論も参照)
  2. 防衛省人事発令、2012年8月1日付将補人事
  3. 防衛省組織令等の一部を改正する政令(平成二十六年一月三十一日公布政令第二十号、防衛省HP)
  4. 防衛省の特別の機関であるという点では、統合幕僚監部と同格。
  5. 報告書――不祥事の分析と改革の方向性』防衛省改革会議、2008年7月15日
  6. 閣僚会議等の廃止について