架空の武器
架空の武器(かくうのぶき)とは、主に神話・伝説や文学作品、あるいは小説・漫画・演劇・映画・テレビドラマ・アニメ・コンピュータゲームなどのフィクションに登場する武器のことを指す。実用化され実際の戦争に使用されているものは含まない。主要な架空の武器には以下のようなものがある。
目次
架空の武器一覧
この一覧では主に、神話・伝説や近代以前の創作に登場するものを列挙し、現代の創作に関しては、複数の創作に共通して用いられている概念や、詳細な設定があり物語の中で大きな役割を担っているものなどに限定して記載する。
西洋
北欧神話(ゲルマン神話)
主に北欧神話など、ゲルマン人の神話や伝説に登場するもの。選定の剣(ヨーロッパにおける神話の中で、「これを抜いたものが王となる」もしくは「これを抜いたものが英雄となる」といった、選定に関する逸話にかかわる剣のこと)など、ケルト神話に共通する逸話を持つものも存在する。
- ガンバンテイン - スキールニルが持っているとされる武器。
- グラム - 『ヴォルスンガ・サガ』など北欧の伝承に登場するオーディンが木に刺した剣。逸話としては選定の剣に相当する。
- グングニル - オーディンが所持している槍(投げ槍)。
- ダーインスレイヴ - 血を求めるとされる剣。
- ティルヴィング - 呪われた剣。アンガンチュールやヘイズレクが所有した。
- フロッティ - ファーヴニルの宝物のひとつとして登場する剣。
- ミスティルテイン - フロームンドが持つ剣。オーディンの息子バルドルの命を奪った。
- ミョルニル - トールが所持している鎚。
- リジル - ファーヴニルの心臓を切り取った剣。
- レーヴァテイン - ルーンを唱えて作りあげた剣(とされる)。ヴィゾーヴニルを唯一殺すことができる。
ケルト神話
一般にケルト神話と称される神話、伝説に登場するもので、北欧神話と関連するものも存在する。アイルランド、ウェールズなどケルト人の神話がこれに属する。アーサー王に関する伝説もこれに当たる。
- オルナ
- カラドボルグ - アルスター伝説において英雄が使用する剣。アーサー王伝説に登場する剣エクスカリバーの原型ともされる。
- クラウ・ソラス - ヌアザが所有する剣。
- ゲイ・ボルグ - クー・フーリンが持つ槍。
- タスラム - ルーが持っているとされる投擲用弾丸。
- フラガラッハ - ルーが所有する剣。
- ブリューナク - ルーが所有する槍。槍ではなく投擲技術であるとする説も。
- マック・ア・ルイン - フィン・マックールの剣。主にフィニア伝説に登場する。
- ルーン (槍) - ケルトハルが持つ槍。かつてはルーの槍だったともされる。
『アーサー王物語』に登場するもの。
その他の神話
文学作品・その他の伝説
中世文学などに登場する武器。神話由来の物も多く存在する。中世以降に成立したとされる伝説もここに含める。
- アシュケロン (剣) - キリスト教の聖人ゲオルギウスが、ドラゴン退治に用いたとされる剣。
- バルムンク(『ニーベルンゲンの歌』) - 北欧神話のグラムがモデルとされる剣。ジークフリートが使用。
- アロンダイト - ランスロットが所持する剣とされているが、アーサー王伝説に属する作品には一切登場せず、ランスロットが所持していたという記述も皆無に等しい。
『ベオウルフ』に登場するもの。
- ネグリング - ベオウルフが使用した、ドラゴン退治の剣。ただし劇中では打撃を与えられなかった。
- フルンティング - ベオフルフが使用した剣。ウンフェルスより借り受けた。
- ヨートゥンの剣 - 劇中でグレンデルの母親を打ち倒した剣。ヨートゥンは北欧神話の巨人。
『ディートリッヒ伝説』に登場するもの。
- エッケザックス - ディートリッヒが巨人エッケから手に入れた剣。
- ナーゲルリング - ディートリッヒが巨人グリムから手に入れた剣。のちにハイメの剣となった。
- ブルドガング - ハイメが所有している剣。
- ミームング - ウィーランド(ヴェルンド)が鍛え、彼の息子ヴィテゲに与えた剣。のちにディートリッヒ(シズレク、シドレク)がシグルドとの試合で用いた。
- ラーグルフ - ヒルディブランド(ヒルデブラント)の剣。
『ローランの歌』に登場するもの。
東洋
日本
日本神話(記紀神話)に登場する武器。
- 天鹿児弓(あまのかごゆみ)と天羽羽矢(あまのはばや) - 天稚彦が高皇産霊神より賜った弓矢。
- 天之尾羽張(あめのおはばり) - 日本神話で、イザナギがカグツチを斬ったときに用いた十束剣。
- 天沼矛(あめのぬぼこ) - 日本神話の国産みで、イザナギとイザナミがオノゴロ島を造るときに用いた矛。
- 天羽々斬(あめのはばきり) - スサノオが八岐大蛇を斬り殺した剣。後述の十束剣のひとつであり、大蛇を斬ったことでこの名が付けられた。尾を斬った際に刃が欠けたので裂いて確かめたところ、中から出て来たのが下述の天叢雲剣である。
- 天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ) - スサノオが八岐大蛇の尾から取り出した剣。のちに「草薙剣」(くさなぎのつるぎ)と呼ばれるようになる。三種の神器の一つであり、熱田神宮に奉納されている。
- 十束剣(とつかのつるぎ) - 拳10個分の長さの刀身を持つ剣。十握剣とも。神話中には複数登場するため、単に剣の長さを示す一般名詞だと考えられている。
- 布都御魂(ふつのみたま) - 神武東征の際にタケミカヅチから神武天皇に与えられた剣。
- 八握剣(やつかのつるぎ) - 十種神宝の一つ。
伝説的な逸話が残るもの。
- 髭切(ひげきり) - 源氏の宝刀の一つ。「鬼切」「獅子ノ子」「友切」など多くの別名を持ち、また渡辺綱が一条戻橋にてこの刀で鬼(茨木童子)の腕を斬り落としたなど、多くの逸話が残る。
- 膝丸(ひざまる) - 源氏の宝刀の一つ。「蜘蛛切」「吠丸」「薄緑」など多くの別名を持ち、また源頼光がこの刀で土蜘蛛を斬ったなど、多くの逸話が残る。
- 雷切(らいきり) - 元の名は「千鳥」。立花道雪がこれを用いて雷(または雷神)を切ったとされる逸話が残る日本刀。
中世、近世における創作に登場するもの。
- 今剣(いまのつるぎ)(義経記) - 源義経が持っていたとされる短刀。
- 岩融(いわとおし)(義経記) - 武蔵坊弁慶が持っていたとされる薙刀。
- 大通連(だいつうれん) - 鎌倉期にいたとされる鬼の姫(あるいは女盗賊)鈴鹿御前が振るったとされる空を飛ぶ魔剣。同様に、『小通連』(しょうつうれん)という剣も持っていたという。
- 物干竿(ものほしざお) - 佐々木小次郎が使用していたとされる、刀身3尺3寸余(約1m)の長刀。巌流島の決闘ではその長さゆえ鞘を持ったまま戦えず、鞘を投げ捨てた小次郎を見て宮本武蔵は「小次郎敗れたり!」と語ったといわれている。
- 村雨(むらさめ)(『南総里見八犬伝』) - 犬塚信乃が持つ刀。
- 村正 - 実在する刀だが、徳川家に仇なす存在として「妖刀」伝説が流布する。
アイヌの神話に登場するもの。
- エペタム ‐アイヌの民間伝承に登場する刀。『人喰い刀』の意。使いこなせれば優秀な戦士となれるが、特別な秘術を用いて鎮めなければ、ひとりでに飛び回って人を斬って回ると言う魔剣。
- クトネシリカ ‐アイヌの口伝叙事詩『ユーカラ』に登場する刀。ポイヤウンペという英雄の刀で、刀身や柄に龍や狐の姿をした神が宿っており、有事の際にそれら獣神達が顕現し持ち主を救うという。金田一京助がアイヌ人達と協力してユーカラを蒐集・編纂した『虎杖丸の曲』では『虎杖丸』(いたどりまる)という銘でも呼ばれる。
中国
中国の伝承に登場する武器。
中国の小説類に登場する武器。
- 倚天の剣(いてんのけん)(『三国志演義』) - 曹操が造らせたという宝剣。天をも貫く剣の意。
- 青紅の剣(せいこうのけん)(『三国志演義』) - 倚天の剣と同じく曹操が造らせた剣。鉄を泥のように両断できたという。曹操の親族でもある家臣・夏侯恩に預けられるが、夏侯恩は長坂の戦いで蜀の武将・趙雲に斬られ、剣は奪われてしまう。
- 青龍偃月刀(せいりゅうえんげつとう)(『三国志演義』) - 関羽がふるう大刀。
- 蛇矛(だぼう、じゃぼう)(『三国志演義』) - 張飛がふるう先の刃の部分が蛇のように曲がっている矛。
- 方天画戟(ほうてんがげき)(『三国志演義』) - 呂布がふるう方天戟。
- 劈風刀(へきふうとう)(『水滸伝』) - 方臘配下の将軍石宝の持つ宝刀。三重の鎧であろうと風を断つがごとく斬り破る鋭さを持つ。
- 吹毛剣(すいもうけん)(『新・水滸伝』) - 百八星のひとり、天暗星の青面獣楊志が所持する楊家伝来の宝剣に、吉川英治が原作の内容を借用してつけた名。
- 黄金丸(こがねまる)(『水滸伝 (漫画)』) - 百八星のひとり、「豹子頭」林冲が、軍での上官である高俅のさしがねの者から、三千貫の価値のものを千貫で買い叩いた刀。ただし横山光輝の漫画版で創作された剣名。正子公也・森下翠共作の『絵巻水滸伝』でも使われる。
- 宝貝 (パオペエ)(『封神演義』) - 武器を含めた道具の総称。劇中で仙人や道士らが使用する。
- 如意金箍棒(にょいきんこぼう) - 如意棒とも。孫悟空が所持している武器。長さや大きさを自在に変えることが出来る。
- 釘鈀(ていは) - 猪八戒が所持している武器。九本の歯を持つ馬鍬(まぐわ)。九歯馬鍬とも。
- 降妖宝杖(ごうようほうじょう) - 沙悟浄が所持している武器。
- 七星剣 - 金角と銀角が太上老君から盗んだ5つの宝の内の一つ。
インド
インド神話に登場する武器。
近代の創作
近代における創作に登場する武器。
『指輪物語』など、J・R・R・トールキンの小説に登場するもの。
- オルクリスト(ホビットの冒険) - 「かみつき丸」とも。
- グラムドリング(ホビットの冒険・指輪物語) - 「なぐり丸」とも。
- スティング(ホビットの冒険・指輪物語) - 「つらぬき丸」とも。
- ナルシル(指輪物語) - 一度折れた後に鍛え直され、「アンドゥーリル」と呼ばれるようになる。
現代の創作
複数の作品に近い概念(もしくは同名の品)として使用されているもの。
- 光線銃 - 弾丸ではなく光線などを放つ銃。『スタートレック』シリーズのフェイザーなど。ガンダムシリーズのビームライフルや、スター・ウォーズ・シリーズに登場するブラスター(熱線銃)や銀河鉄道999に登場する戦士の銃もこれの一種といえる。変わったところでは、弾丸を用いる銃と光線銃の中間とも言える『ブルースワット』のBW-01ディクテイターのような例もある。
- 斬鉄剣 - 本来は鉄をも切れる日本刀のことを指す。同名の刀が、『ルパン三世』に石川五ェ門の愛刀として登場する。またファイナルファンタジーシリーズなどにも登場する。
- 振動剣 - 刀身を高速で振動させ、切断する力を増した刀剣。
- ガリアンソード - 刀身に複数の節に分離するギミックを搭載し、通常の剣と刃のついた鞭のような状態とを使い分けられるようにした刀剣。創作した高橋良輔監督の、『機甲界ガリアン』に登場する鉄巨人 ガリアンの持つ武器が代表的。
- 単分子ワイヤ - ラリー・ニーヴンのノウンスペースシリーズに登場する自在剣あたりを祖とする対人武器。実際に研究が行われている単分子ワイヤ(線全体が1分子で構成されているワイヤ)を武器に転用したもの。非常に細いため視認が困難でかつ切れ味が鋭い上に単分子であるため頑丈であるが、扱いが難しい暗殺具として描写される。また、高周波振動を与える事で切れ味を高めた作品も存在する。
- ドリル - 本来のドリルを武器に転用したもの。『海底軍艦』等の東映のSF映画に登場する『超兵器』に最強の武器として搭載される事が多く、後の作品でも『最後(最強)の武器』として用いられる事が多い。
- パイルバンカー - 杭や金属槍などを、火薬などによって高速で射出するもの。創作した高橋良輔監督作品の、アニメ『装甲騎兵ボトムズ』(サンライズ)など。
- ライトセーバー - 『スター・ウォーズ・シリーズ』などに登場する。作品によってレーザー剣、光線剣などとも呼ばれる。またガンダムシリーズのビームサーベルや重戦機エルガイムのセイバー(HM用ビーム兵器)もこれの一種といえる。
非常に有名、あるいはその作品の中で大きな役割を担っているもの。
- ストームブリンガー - マイケル・ムアコックの小説『エルリック・サーガ』に登場するエルリックの剣。エターナル・チャンピオンシリーズに共通して登場する「黒の剣」の一つの姿。