ヴァージン・アトランティック航空
ヴァージン アトランティック航空(ヴァージン アトランティックこうくう、Virgin Atlantic Airways)は、イギリスの航空会社で、大陸間の長距離国際線をメインに運航している。
日本へは成田国際空港へ乗り入れており、営業事務所は東京都渋谷区東3丁目にある。
沿革
- 1984年6月22日 : ロンドン・ガトウィック - ニューアーク線をボーイング747で運航開始。
- 1988年10月 : 日本支社開設(所在地・東京都港区南青山)。
- 1989年5月 : ロンドン・ガトウィック - 東京(成田)線をボーイング747で運航開始。
- 1991年 : ヒースロー空港の使用許可を受ける。
- 1997年 : ブリティッシュ・エアウェイズが機体からユニオンジャックの塗装を消したことに伴い[1]、自社の機体の機首部分に描かれている「スカーレット・レディ」およびウィングレット(主翼先端部)にユニオンジャックを入れる。
- 1998年 : 全便禁煙化。
- 1999年 : 全株式の49%をシンガポール航空に譲渡。
- 2012年12月11日 : シンガポール航空が保有する49%の株式をデルタ航空が買い取り、大西洋路線で合弁事業を行い将来的には合弁会社を設立する予定。[3][4]
- 2013年4月8日 : 当社初の英国国内線サービス「リトル・レッド」をヒースロー-エジンバラ線にて開始[5]
歴史
ヴァージン・グループを率いるリチャード・ブランソンが、大西洋横断路線を運航する格安航空会社として知られたものの、大手航空会社による圧力を受けて1982年に破産したイギリスのレイカー航空のフレデリック・レイカーや、同じく格安航空会社として同路線に参入したピープル・エキスプレス航空の成功にインスピレーションを受けて、ヴァージン・アトランティック航空を設立し、1984年6月22日にロンドン・ガトウィック空港-ニューアーク国際空港線で運航を開始した[2]。なお運航開始当初は、中古のボーイング747-200型機1機のみでの運航であった。
その後、さまざまな機内サービスを積極的に導入したことが多くの乗客からの好評を受けて業績を伸ばしたが、レイカー航空同様にイギリスのフラッグ・キャリアであるブリティッシュ・エアウェイズから執拗な妨害を受けた。しかしその後も乗客数は伸び続け、機材を買い足すとともに、ロサンゼルスや東京などの主要都市にも路線網を拡大した。
さらに1991年にはヒースロー空港への乗り入れも開始したほか、ボーイング747-400やエアバスA340などの当時の最新機材を導入した。なお、世界初のエコノミークラスへの個人用テレビの導入やプレミアムエコノミークラスの導入を行ったほか、バーや理髪店も設けた空港ラウンジ、オートバイによるロンドン市内と空港間の移動サービスの提供など、様々なサービスを積極的に導入することでも知られるようになった。
1999年には、49%の株式をシンガポールのフラッグ・キャリアであるシンガポール航空に譲渡したが、その後もニューデリーやシドニー、上海、ナイロビなど世界各国へと路線網を伸ばした。現在では世界30都市へ乗り入れるほか、関連会社として、格安航空会社のヴァージン・エキスプレス(現ブリュッセル航空)やヴァージン・アメリカ、ヴァージン・ブルーを持つほか、エア・ナイジェリア(旧ヴァージン・ナイジェリア航空)もある。
かつては、ロンドン以遠の英国内接続路線はブリティッシュ・ミッドランド航空(bmi)とのコードシェア提携で実現していたが、2012年にbmiがブリティッシュ・エアウェイズの親会社であるインターナショナル・エアラインズ・グループ(IAG)に売却され、BAに統合されて以来、国内線を持たない状況となっていた。その後、同年11月に旧bmiが保有していたヒースロー空港の国内線発着枠を落札[6]し、それを用いて2013年4月に初の自社国内線サービス「リトル・レッド」をロンドン-エジンバラ線で開始した。[7]
就航都市
同社は、2014年に予定している羽田空港国際線旅客ターミナルの拡張に合わせ、成田 - ロンドン・ヒースロー線を羽田発着に移行する計画[3]。この際に、最新鋭機材のボーイング787-9を受領する予定である。就航当時から日本人の客室乗務員を採用し、成田 - ロンドン・ヒースロー線を中心に乗務している。
保有機材
ヴァージン・アトランティック航空の機材は以下の航空機で構成される。(2013年4月現在):
- エアバスA340-300型機 4機
- エアバスA340-600型機 19機
- エアバスA330-300型機 10機
- エアバスA380型機 0機(6機発注中、2015年より就航予定)
- ボーイング747-400型機 12機
- ボーイング787-9型機 0機(15機発注中、2014年より就航予定)
同社は最新鋭のワイドボディ機しか保有していない。
保有する37機全てにニックネームをつけている。リチャード・ブランソンによれば、アッパークラスのサービスにおいて「個人的な『クラブ』でくつろぐような雰囲気に浸ることが出来る」ことを目指していた[4]ことから、その感覚の延長として各機体にニックネームをつけるようにしたという[4]。
機材登録記号についても遊び心を盛り込んでいるものがある。例えば、既に退役した機材では、1号機が「G-VIRG」で2号機が「G-VGIN」となっていたほか[5]、東京線開設時に導入した機材では「G-TKYO」、ロサンゼルス乗り入れ時には「G-VLAX」(LAXはロサンゼルス国際空港の3レターコード)と、新たに乗り入れを開始した都市名にちなんだ登録記号を選んだ[6]。また、「G-VLIP」(リップ)、「G-VGAL」(ギャル)、「G-VAST」(バスト)など、女性に関連する言葉を登録記号に盛り込むこともある[6]。
なお、ヴァージン・アトランティック航空が自社で発注したボーイング製航空機(1997年以降受領の747-400が該当)のカスタマーコードは1Rで、航空機の型式名は747-41Rとなる。2001年に導入した747-400の中にはアリタリア-イタリア航空の43を付けた747-443が5機あるが、これは同社が建造開始後にキャンセルした機体を引き取ったものである。
機材コード | 名称 | 機種 | エンターテイメント・システム | 運用開始年 |
---|---|---|---|---|
G-VAIR | Maiden Tokyo | A340-300 (Suite) | ODYSSEY | 1997 |
G-VAST | Ladybird | 747-400 (LGW1) | ODYSSEY | 1997 |
G-VATL | Miss Kitty | A340-600 | V:PORT | 2003 |
G-VBIG | Tinker Belle | 747-400 (LHR) | V:PORT | 1996 |
G-VBLU | Soul Sister | A340-600 | V:PORT | 2006 |
G-VBUG | Lady Bird | A340-600 | V:PORT | 1997 |
G-VEIL | Queen Of The Skies | A340-600 | V:PORT | 2004 |
G-VELD | African Queen | A340-300 (Suite) | ODYSSEY | 1998 |
G-VFAB | Lady Penelope | 747-400 (LHR) | V:PORT | 1994 |
G-VFAR | Diana | A340-300 (Suite) | ODYSSEY | 1998 |
G-VFIT | Dancing Queen | A340-600 | V:PORT | 2006 |
G-VFIZ | Bubbles | A340-600 | V:PORT | 2006 |
G-VFOX | Silver Lady | A340-600 | V:PORT | 2002 |
G-VGAL | Jersey Girl | 747-400 (LGW2) | NOVA | 2001 |
G-VGAS | Varga Girl | A340-600 | V:PORT | 2005 |
G-VGOA | Indian Princess | A340-600 | V:PORT | 2003 |
G-VHOL | Jetstreamer | A340-300 (Suite) | ODYSSEY | 1997 |
G-VHOT | Tubular Belle | 747-400 (LHR) | V:PORT | 1994 |
G-VLIP | Hot Lips | 747-400 (LGW2) | NOVA | 2001 |
G-VMEG | Mystic Maiden | A340-600 | V:PORT | 2002 |
G-VNAP | Sleeping Beauty | A340-600 | V:PORT | 2005 |
G-VOGE | Cover Girl | A340-600 | V:PORT | 2002 |
G-VRED | Scarlet Lady | A340-600 | V:PORT | 2006 |
G-VROC | Mustang Sally | 747-400 (LHR) | V:PORT | 2003 |
G-VROM | Barbarella | 747-400 (LGW2) | NOVA | 2001 |
G-VROS | English Rose | 747-400 (LGW2) | NOVA | 2001 |
G-VROY | Pretty Woman | 747-400 (LGW2) | NOVA | 2001 |
G-VSEA | Plane Sailing | A340-300 (Suite) | ODYSSEY | 1997 |
G-VSHY | Claudia Nine | A340-600 | V:PORT | 2002 |
G-VSSH | Sweet Dreamer | A340-600 | V:PORT | 2005 |
G-VSUN | Rainbow Lady | A340-300 (J2000) | ARCADIA | 1996 |
G-VTOP | Virginia Plain | 747-400 (LGW1) | ODYSSEY | 1997 |
G-VWEB | Surfer Girl | A340-600 | V:PORT | 2006 |
G-VWIN | Lady Luck | A340-600 | V:PORT | 2006 |
G-VWKD | Miss Behavin | A340-600 | V:PORT | 2006 |
G-VWOW | Cosmic Girl | 747-400 (LHR) | V:PORT | 2001 |
G-VXLG | Ruby Tuesday | 747-400 (LGW1) | ODYSSEY | 1998 |
G-VYOU | Emmeline Heaney | A340-600 | V:PORT | 2006 |
後部のメッセージ
すべての航空機には常にメッセージが書いてある(現在のメッセージはロンドン五輪のマークとともに"Backing the bid"と"No Way BA/AA"、"Love at first flight"の三種)。
- “Mine's Bigger Than Yours”
- ヴァージン・アトランティックが保有するエアバスA340-600が世界で最長の胴体を持つ旅客機だったことから。
- “4 Engines 4 Longhaul”
- もともとはエアバスがエアバスA340登場時に用いていたキャッチコピーをそのまま使ったもの。競合相手であるブリティッシュ・エアウェイズが、長距離路線にボーイング777やボーイング767といった双発機を用いたことに対抗し、4つのエンジンを持つエアバスA340を強調したものである。なお、このメッセージは2006年、ヴァージンが双発機であるボーイング787の導入を決定した後に順次消された。
- “Avoid The Q”
- ヴァージンがロンドン-香港-シドニー線に就航したときに使われていたメッセージ。この「Q」には2つの意味が込められており、“queues”=行列(このときヴァージンは、空港で並ばずにすむオンラインチェックインサービスを開始していた)と、同じルートを飛行するカンタス航空="Qantas"の2つを避けよう、とアピールしたものである。
- “Keep Discovering - Until You Find The Best”
- ヴァージンがロンドン-ドバイ線に就航したときに使われたメッセージ。“Keep Discovering”は、ドバイを拠点とするエミレーツ航空が用いているスローガンであり、それをもじったものである。
- “BA can't keep it Concorde up!”
- 2003年夏にエールフランスとブリティッシュ・エアウェイズがコンコルドの運航を停止したが、その際、ヴァージンは1機1ポンドで購入する意向を示し、強気な姿勢で臨んだ。しかし結局購入できず、飛行機の後部に「ブリティッシュ・エアウェイズはコンコルドを保有する余裕は無いはずだ!!」と書いたのである。
- “No Way BA/AA”
- ブリティッシュ・エアウェイズとアメリカン航空の提携(現在のワンワールドに発展する)が発表された際に、"NO WAY BA/AA(NO WAYとは、「とんでもない」といった意味)"と提携を非難するメッセージを書いた。これは、英米間で高い路線シェアを持つ2社(例:ダラス-ロンドン線は当時この2社が100パーセント独占していた)が組むことに反発したものである。それ以降も航空連合の加入には否定的であり、特に両社によって結成されたワンワールドの加盟会社とは一切提携を行なっていなかったが、マイレージ提携先のマレーシア航空が2013年にワンワールドに加盟した。[7]その後このメッセージは他のメッセージに換えられたが、2008年にブリティッシュ・エアウェイズ、アメリカン航空及びイベリア航空の三社による業務提携が発表された際に、英米二社による大西洋路線の独占に繋がることを危惧して一部機材にてこの表示を復活させている。ヴァージンの公式サイトには“No Way BA/AA”専用ページまで用意されている。[8]
- “More experience than the name suggests,”
- 社名の「ヴァージン」という言葉は「処女」を示すものだが、その名前とは裏腹に同社が経験を積んだエアラインであるとアピールするものである。
- “(ロンドン五輪のマーク)Backing the bid”
- 2012年にロンドンで行われるオリンピックの協賛企業になっていることから。(公式ホームページによればVSはオフィシャルパートナーにはなっていないらしい。しかし、決戦投票の際はパートナーになっていた模様。)Backing the Bidとはそのまま「入札を支援する」という意味。
- “Still Red Hot For 25 Years”・“Love at first flight”
- 2009年6月22日にヴァージン・アトランティック航空が運航開始25周年を迎えることとなり、25周年記念のCM[8]などに用いられたコピーが“Still Red Hot For 25 Years”と“Love at first flight”だったことから。前者はヴァージンのコーポレートカラーである赤をモチーフとし、後者は“Love at first sight”(一目ぼれ)をもじったと思われる。
- “Your Airline's Either Got It, Or It Hasn't”
- 2010年にコーポレートロゴを変更したことに伴い使用を開始したスローガン。「あなたのエアラインには、こんな(ヴァージンのような)サービスはありますか?」と問いかけ、同社のサービスがユニークであることをアピールしたものである。また、これに伴ってグローバル向けCMの放送を行った。
マイレージプログラム
「フライングクラブ(Flying Club)」を運営している。
提携航空会社
かつての大株主・シンガポール航空などスターアライアンスの加盟会社が多い。
- テンプレート:Flagicon 中国国際航空
- テンプレート:Flagicon エア・ジャマイカ
- テンプレート:Flagicon ニュージーランド航空
- テンプレート:Flagicon 全日本空輸
- テンプレート:Flagicon bmi
- テンプレート:Flagicon デルタ航空
- テンプレート:Flagicon ガルフ航空
- テンプレート:Flagicon ハワイアン航空
- テンプレート:Flagicon ジェットエアウェイズ
- テンプレート:Flagicon マレーシア航空
- テンプレート:Flagicon スカンジナビア航空
- テンプレート:Flagicon シンガポール航空
- テンプレート:Flagicon 南アフリカ航空
- テンプレート:Flagicon USエアウェイズ
- テンプレート:Flagicon ヴァージン・アメリカ
- テンプレート:Flagicon V オーストラリア
- テンプレート:Flagicon ヴァージン・オーストラリア
[9] ヴァージン・アトランティック航空に搭乗してシンガポール航空の「クリスフライヤー」にマイルを加算すれば、スターアライアンスゴールド会員になることもできる。
なお、提携先のニュージーランド航空は系列会社ヴァージン・ブルー、パシフィック・ブルー、ポリネシアン・ブルーの競合相手である。テンプレート:要出典範囲
2003年に全日本空輸 (ANA) とマイレージプログラムで提携開始。2009年8月3日より、ANAと成田-ヒースロー線でコードシェア提携開始[10]。
関連文献・雑記
- リチャード・ブランソン 『ヴァージン-僕は世界を変えていく』 阪急コミュニケーションズ、2003年。ISBN 4484031027
- ヴァージンアトランティック航空発足当時に起きたブリティッシュ・エアウェイズとの攻防の記録が記されている。
- つばさ出版『月刊翼』1989年9月号(通巻279号)
- イカロス出版『月刊エアライン』2006年1月号(通巻319号)
関連会社
脚注
- ↑ イギリス国民からの評判が悪かったため、ブリティッシュ・エアウェイズは2001年からユニオンジャックをモチーフにしたデザインに戻している。
- ↑ 「エアライン Empires of the Sky」アンソニー・サンプソン著 大谷内一夫訳(早川書房 1987年)
- ↑ ヴァージン アトランティック航空 羽田空港への乗り入れ計画を公表 VS1224 / 2012.09.14
- ↑ 4.0 4.1 『月刊翼』1989年9月号 p55
- ↑ 『月刊エアライン』2006年1月号 p108
- ↑ 6.0 6.1 『月刊エアライン』2006年1月号 p109
- ↑ スターアライアンス加盟会社とは、全日本空輸、英国・欧州内の短距離区間を補完するbmi、資本関係を持つシンガポール航空など、数社との間で提携がある。
- ↑ 2009年にデルタ航空が日本航空に提携を申し入れた際に、日本航空と提携しているアメリカン航空が「デルタ/日航では太平洋線での独禁法適用除外 (ATI) の申請は却下される」と喧伝して提携阻止を目指した活動を行った事に対し、リチャード・ブランソンはアメリカン航空とブリティッシュ・エアウェイズの大西洋線での業務提携に反対している立場から、「太平洋線でDL/JLのATI申請が却下されると言うなら、大西洋線でのBA/AAのATI申請も当然却下されるはずだ」と激しく非難している。[1]
- ↑ [2]
- ↑ ANAとヴァージン アトランティック航空コードシェア提携(ANA公式サイト)