惑星大戦争
テンプレート:Infobox Film 『惑星大戦争』(わくせいだいせんそう)は、1977年12月17日に公開された東宝製作の特撮SF映画。同時上映は『霧の旗』。
目次
解説
映画『海底軍艦』の宇宙版リメイク。1988年、太陽系外宇宙から飛来した異星人の侵略に対抗するため、宇宙防衛艦「轟天」が金星に本拠を構えた異星人の「大魔艦」に立ち向かう。
本作製作の背景には、1977年はアメリカでSF映画『未知との遭遇』『スター・ウォーズ』、アニメ映画『宇宙戦艦ヤマト』が公開され、日本は空前のSFブームを迎えていたことがあった。翌年1978年夏の『スター・ウォーズ』の日本公開を控えて、東宝は本作を急遽製作して正月映画として公開した[1]。正月映画として年末から公開の予定でありながら脚本が仕上がったのはその前の10月に入ってからで、クランクインが公開の2カ月前というタイトな製作期間であった[2]。監督の福田純も、のちに「もっと時間があったら、単なる便乗ではなく、いろいろな工夫ができたと思う。」と述べている[3]。
監督と特技監督には、1970年代の東宝でゴジラシリーズとSF作品を手がけてきた福田純と中野昭慶のコンビがあたった。福田と脚本の中西隆三はゴジラシリーズの新作『ゴジラの復活』の企画に、中野は日英合作映画『ネッシー』の制作準備にそれぞれあたっていたが、製作が急遽決定した本作へとスライドする形となった[4]。福田は本作監督の後、東宝との専属契約を打ち切ったため、本作が最後の監督作品となった。
『惑星大戦争』のタイトルは、当初『スター・ウォーズ』の邦題として予定されていたが、ジョージ・ルーカス側の意向で全世界でタイトルを統一しようということで没となったため、本作のタイトルとして流用されたものである。
制作期間が非常に短いことから、それを補うために本編は3班、特撮は2班で撮影された[4]。破壊される各国の都市などは『宇宙大戦争』、『世界大戦争』、『ノストラダムスの大予言』からの流用である。これは前述したようなあまりに短すぎる製作期間のため、苦肉の策であった。
当初は小松左京に原作の依頼が持ち込まれたが、小松のブーム便乗企画でない本格的なSF映画を作りたいという希望により別途企画が立てられ、『さよならジュピター』が製作されている。『海底軍艦』の宇宙版という企画自体はプロデューサーの田中友幸がかねてから温めていたもので、実現の機会を伺っていた[4]。
国内での評判はおおむね芳しくないが、海外、特にドイツでは大ヒットを記録した。有名人の賛辞としては、矢作俊彦の、なぜ日本アカデミー賞が『惑星大戦争』であってはいけないのか、という一文がある[5]。
ストーリー
1980年代、世界各地でUFO騒ぎがおき、また電波障害により大混乱が発生した。これを宇宙からの侵略の前兆と捉えた国連宇宙局・宇宙防衛軍 (UNSF) は、宇宙防衛艦の設計建造を滝川正人に依頼、一方で隊員の訓練を開始した。しかし次第にその騒ぎは収まり、滝川は平和な地球には必要ないとして宇宙防衛艦の建造を中止、退任してしまった。
1988年秋、再びUFO騒動と大規模な通信障害が発生。国連宇宙局の三好は宇宙防衛艦「轟天」を完成させる使命を帯び、滝川博士を説得するため日本に帰還する。滝川は消極的だったが、彼を暗殺しようとした刺客から三好、室井、冬木によって救われる。さらに、宇宙ステーション・テラが「巨大なローマ船」という通信を残して爆発。国防軍は滝川に轟天の建造の再開と乗員の編成を要請した。
敵のUFOヘル・ファイターによって世界各地の大都市と地上の国連軍基地が壊滅状態となる中、滝川は隊員達を再招集、太平洋マウグ島で轟天の完成を急ぐ。侵入した工作員の妨害も排除しつつ轟天は完成、地球上を飛び回っていたヘル・ファイターを全滅させ、侵略軍の前線基地がある金星へと進撃を開始する。しかしその途中、三笠の遺体に扮して侵入した敵兵によって滝川の娘・ジュンが拉致されてしまう。三好は冬木達とともに、敵艦の心臓部爆破とジュンの救出のため大魔艦に潜入する。
犠牲を払いつつもジュンを救出した三好は大魔艦からの脱出に成功。轟天と大魔艦は金星の空で激突する。
登場キャラクター
ヨミ惑星人
太陽系から2万2千光年、地球がメシエ13と呼ぶ球状星団、恒星ヨミの第3惑星から来た侵略宇宙人。惑星自体が年老いたため新しい星を求め、第3惑星に似た地球に目をつけた。金星に大魔艦で根城を構え、地球をヘル・ファイターで攻撃する。大魔艦、司令官ヘル(演:睦五郎)の装束ともにローマ帝国風にまとめられている。ヘルの兜は小林知己らによってFRPで作られた。地球人と風貌は似ているが、体色が緑色をしている。兵士は全員、布製の覆面をかぶっている。つま先が丸く反り返った兵士の靴は、『怪獣大戦争』のX星人のものの流用。光線銃は『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』の赤イ竹の自動小銃の小道具を流用。
宇宙獣人
大魔艦内で警護に当たる全身毛むくじゃらの怪物。脱走しようとするジュンと三好に襲いかかる。
演技者はプロレスラーのマンモス鈴木。東宝特美スタッフによる造形。頭の角や、鉞状の武器はFRPで作られた。
登場メカニック
地球側
- 宇宙防衛艦「轟天」
- テンプレート:Main
- スペース・ファイター
- 全長 17メートル
- 全幅 3.8メートル
- 最大速度 195,000km/s
- 備砲 レーザーカノン砲(2門)
- 轟天に21機が艦載されている宇宙戦闘機。轟天側面のリボルバー式カタパルト射出口から発進する。
- デザイン・造形は井上泰幸。2尺ほどのサイズのミニチュアが数機作られた。
- ランドローバー
- 全長 27メートル
- 全幅 5.7メートル
- 最大速度 (陸上)350km/h、(空中)マッハ3.8
- 備砲 レーザーカノン砲(2門)
- 轟天から発進する、金星探索車。ホバークラフトで空中も移動できる。武装として車体前上部にレーザーカノンを有する。
- デザイン・造形は井上泰幸。3尺サイズのミニチュアが作られた。
ヨミ惑星人側
- 金星大魔艦
- 全長 230メートル
- 全幅 72メートル
- 最大速度 ワープ航法可能
- 航続距離 無限
- 備砲など
- 主砲~スペース・ビーム砲(1門)
- 副砲~艦橋ビーム砲(9門)、艦尾ビーム砲(8門)、艦側オール状ビーム砲(左右18門、合計36門)
- ヘル・ファイター(75機)
- ヘル・ミサイル(64発)
- 重力砲(あらゆる物質を破壊する重力波を出す)
- デザイン原案は井上泰幸で、帆船のイメージだったものを、鯨井実がローマ戦艦のイメージで仕上げた。造形は井上、アルファ企画。6尺ほどのスケールのミニチュアが作られた。
- ヘル・ファイター
- 全長 9メートル
- 全幅 6メートル
- 最大速度 ワープ航法可能
- 備砲 50ミリバルカン砲(1門)、コスモ・レーザー砲(2門)、パルス・レーザー砲(1門)
- 大魔艦から発進する小型戦闘機。地球に飛来して円盤騒ぎと電波障害を引き起こし、パルス・レーザー砲で大都市を攻撃した。
- 1尺サイズのミニチュアが数機作られた。透明ポリ樹脂のセパレート式で、ボルトで上下を固定して球体型にしている。その形状から、スタッフから「お釜ファイター」と呼ばれた。電飾を仕込んであり、発光する。
スタッフ
※映画クレジット順
本編
- 製作:株式会社東宝映画、東宝映像株式会社
- 製作:田中友幸、田中文雄
- 原案:神宮寺八郎
- 脚本:中西隆三、永原秀一
- 撮影:逢沢譲
- 美術:薩谷和夫
- 録音:伴利也
- 照明:小島真二
- 音楽:津島利章
- サントラ盤:東宝レコード
- 電子音響デザイン:大野松雄
- 効果:東宝効果集団
- 整音:東宝録音センター
- 監督助手:今村一平
- 編集:池田美千子
- スチール:石月美徳
- 現像:東京現像所
- 製作担当者:橋本利明
特殊技術
キャスト
※映画クレジット順
- 三好孝次(国連宇宙局):森田健作(松竹)
- 滝川ジュン(国連宇宙局):浅野ゆう子
- 冬木和夫(空挺隊員):宮内洋
- 三笠忠(宇宙ステーション):新克利
- 松沢博士(国連宇宙局):大滝秀治
- 大石国防軍司令:平田昭彦
- 研究員:橋本功
- 国防軍幕僚:中山昭二
- 銀河帝国司令官ヘル:睦五郎
- 轟天号操艦士:山本亘
- 研究員:遠藤剛
- 宇宙獣人:マンモス・鈴木
- シュミット博士:ウィリアム・ロス
- ジミー(国連宇宙局):デビット・ペーレン
- 日下鉄夫(空挺隊員):兼松隆
- 湊吾郎(空挺隊員):菊池太
- 轟天号管制員:早田文次
- パイロット:村嶋修
- 轟天号通信士:竹村洋介
- 轟天号管制員:川端真二
- 石山(轟天砲術班長):森田川利一
- 轟天号管制員:吉田耕一
- パイロット:大谷進
- パイロット:江藤純一
- 轟天通信士:吉宮慎一
- レーダー係:瀬戸山功
- 轟天副操艦士:直木悠
- 技斗:ジャパン・アクション・クラブ
- 室井礼介(パイロット教官):沖雅也
- 滝川正人(轟天艦長):池部良
※以下クレジット表記なし
映像ソフト
脚注
関連項目
外部リンク
テンプレート:福田純監督作品- ↑ 東映も1978年4月に『宇宙からのメッセージ』を公開している。
- ↑ もっとも、当時のプログラムピクチャーとしては前年の東映映画『河内のオッサンの唄』が、第1作11月27日公開のヒットを受けて製作した第2作の公開日が12月25日という例をはじめ、1本立て大作であった金田一耕助シリーズですら4カ月スパンと、続編も1年以上先でないとキャストを押さえることができない今日の製作事情とは大幅に事情を異にする。ただ、少なくとも特撮映画には過酷な日程であったことは事実である。
- ↑ 福田純・染谷勝樹『東宝映画100発100中!映画監督福田純』ワイズ出版 ISBN 4898300634
- ↑ 4.0 4.1 4.2 テンプレート:Cite
- ↑ 『複雑な彼女と単純な場所』
- ↑ テンプレート:Cite book