気象レーダー

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ファイル:Berrimah-radar-darwin-nt.jpg
気象レーダー。オーストラリア、ノーザンテリトリー準州・ダーウィンにあるオーストラリア気象局のベリマーレーダー

気象レーダー(きしょうレーダー)は、気象状況を観測するためのレーダーである。アンテナから電磁波を放射し、反射して返ってくる電磁波を分析することで、の位置と密度、風速風向などを観測している。レーダーの種類にはいくつかあり、それぞれ観測できるものが異なる。

気象学においては、気象現象の観測に重要な役割を果たす機器であり、1950年代から普及し始めた。工学においては、リモートセンシング技術の1つに位置づけられる。

気象レーダーの種類

名称 観測・推定する要素
雲・霧 地上降水量
位置 密度 水滴の</br>大きさ 水滴の</br>形状 位置 密度 水滴の</br>大きさ 風向・</br>風速 位置 強度
マイクロ波(雨量) × △(雨雲のみ) × × × ×
ミリ波(雲量) × × × × ×
ドップラー(電波) × △(雨雲のみ) × × × ×
ドップラー(音波)</br>ドップラー・ソーダー × × × × × × × ×
ドップラー(光)</br>ドップラー・ライダー × × × × × × × ×
二重偏波 ○(雨雲のみ) × ×
× × × × × × × × ×
広帯域 × × ×


  • このほかの帯域のレーダーについては気象衛星の各記事等を参照。

マイクロ波レーダー

ファイル:Darwin Ap WF3 Radar.jpg
気象レーダーのアンテナ。オーストラリア、ダーウィン空港

電磁波を放射し、大気中の粒やなどの結晶によって反射して返ってくる電磁波を分析することで、雨や雪の位置と密度を観測している。

原理的には、波長3〜10cmのパルス状のセンチメートル波を発射し、降水粒子で散乱される電波を受信し、戻るまでの時間などを計測している。降水粒子の半径は1mm程度であり、レーリー散乱によるもので、探知可能距離は数十〜数百km程度。気象庁の標準的な値としては探知範囲は300km程度であり、波長5.7cm、パルス幅2<math>\mu </math>sのものが利用されている。

障害物があるとその影となる部分の観測がしづらいため、高い山の山頂などに設置されることが多い。1999年まで富士山頂で稼動していた富士山レーダーは最大で800km先まで観測が可能で、台風の観測などに大きな役割を果たした。

設備の規模が大きいため地上にしか設置されていなかったが、1990年代ごろから軽量化と小型化が進み気象衛星にも搭載できるようになった。気象衛星は観測範囲が広く、地上の障害物の影響を受けない利点がある。熱帯降雨観測衛星(TRMM)はマイクロ波レーダーを搭載している。

ミリ波レーダー

電磁波を放射し、大気中の雨や雪によって反射して返ってくる電磁波を分析する点はマイクロ波レーダーと同じである。異なるのは波長1mm~10mm程度のミリ波を用いる点である。

波長が短いため、マイクロ波レーダーよりも小さな物体を捉えることができる。雨粒などよりも小さい、の粒子や雲粒を観測するのに適している。地上に設置するタイプのほか、気象衛星に搭載されることもある。

ドップラーレーダー

テンプレート:Main 電磁波を放射し、大気中の雨や雪によって反射して返ってくる電磁波を分析する点はマイクロ波レーダーと同じである。雨や雪の位置と密度も観測することができるが、最大の特徴はドップラー効果に伴う周波数の偏移を観測できる点である。小さな雨粒や雲粒は、風に乗って動くため風と同じ動きをする。この雨粒や雲粒に当たって反射してくる電磁波の周波数の偏移を観測することで、その場所の風速や風向を推定することができる。

通常は、風速や風向を立体的に捉えるために、2つ以上の複数のレーダーから得られた情報を解析して推定する。

風速や風向を捉えることで、気象レーダーでは分かりにくかった細かいスケールでの気流の流れや雲の動きを把握できる。そのおかげで、乱気流につながるウインドシアダウンバーストの観測、竜巻などにつながる上空の気流の乱れを観測することができる。

荒天時に雨雲と風の移動を観測するのに適したドップラーレーダーだが、晴天時は電波を反射する雨粒が無いため風の観測ができない。これを補うために、音波を用いたドップラーソーダー(レーザー)を用いたドップラーライダーが併用されることがある。

偏波レーダー

二重偏波レーダーは、垂直偏波と水平偏波の2種類の電波を発射し、雨粒の形状を利用して2種類の電波の反射率の差から降水強度を求める。

コヒーレント二重偏波レーダは、垂直偏波と水平偏波の2種類の電波を発射し、2種類の電波の位相の差から降水強度を求める。送信電力の大小、雨粒の大きさ、降雨による減衰などの影響を受けにくいため、定量的な観測が可能だとされる。

雷レーダー

電磁波を発射して、反射してきたものを分析するレーダーでもを観測することはできるが、雷が他の観測の妨げになるためあまり用いない。雷を観測する場合は、雷だけを観測するためのレーダーを別に設置することがある。

レーダーエコーと気象の関係

ファイル:Kong-rey TRMM 2007.jpg
熱帯降雨観測衛星が撮影したレーダー画像、2007年4月2日。2007年台風1号がグアム付近を通過した際の画像。

レーダーエコーの画像は雨雲の位置や雨量などの分布を示している。エコー画像からは、それがどういった気象現象であるかを推定することができる。気象衛星の可視光・赤外雲画像では一部しか把握できなかったり、上層雲に隠されて見えなかったりする気象現象も、レーダーエコー画像により観測できる。

エコー画像では、降水強度(降水量)が色分けされて表示されることが多い。この強度の分布から、降雨のパターンを推定することができる。

降水強度がどの地点でも同じような分布でほとんど同じ色が広がっているような場合、温暖前線やあまり強くない低気圧の通過に伴い、層雲乱層雲などからあまり強くない雨がしとしとと降っていることが多い。一方、降水強度が地点によって大きく異なっていて画像上にさまざまな色がまばらに分布しているような場合、寒冷前線や発達した低気圧の通過、あるいは大気が不安定となっていることに伴い、乱層雲や積雲積乱雲などから強度変化が激しいやや強めの雨がザーッと降っていることが多い。

また、エコー画像の時間変化からも気象現象の特徴をつかむことができる。エコー画像で色が着いている部分を降水域(こうすいいき、降雨帯とも)というが、この降水域の移動や生滅の様子から、降雨の元となっている気象現象のパターンを推定することができる。

降水域が大きくまとまって同じ方向に移動し続けている場合、降雨の原因は前線性の対流か大気の不安定のどちらかであることが多い。前線性の対流では、前線の移動に伴って雨雲が同じように移動していく。大気の不安定な時は、多数の雨雲が離れてばらばらに分布しているものの、大規模な大気の流れによって同じように移動していく。また、寿命数十分-数時間程度の局地的な強い降水域がいくつか現れ、そこでは大雨が降る。降水域が回転しながら移動している場合、低気圧性の対流であることが多い。低気圧の周囲では反時計回り(北半球の場合)に回転しながら大気が集まってきているため、雨雲も同様に移動する。熱帯低気圧台風などの場合は、回転速度が速く、中心には台風の目にあたる空白ができる。

ドップラーレーダーでは、マイクロ波レーダーの降水強度にあたるものとして風速、時間変化に当たるものとして風向を把握することができ、これらからも気象現象の特徴をつかむことができる。

エコー画像では時に、特徴的な画像が見られることがある。

ラインエコー

ファイル:Veterans Day Weekend Outbreak Radar Map.PNG
ラインエコー、アメリカ東部、2001年11月10日。

ラインエコー、線状エコーなどと呼ぶ。降水強度の強い部分が線(ライン)状に分布しているものを言う。寒冷前線やシアーライン上にできる例が多く見られる。雨雲を成長させる空気の対流がコンパクトながらも激しいことを示している。線を挟んで両側から雲を作り出す水蒸気が供給されることで雨雲が長く持続しエコーも残る。線の幅が狭いほど、降水強度が強いほど、雨雲の周囲では雨風が強い。

テーパリングクラウドと呼ばれる細長い発達した積乱雲の発生時には、必ずと言ってよいほど見られるエコー。

ボウエコー

ボウエコー、弓状エコー、弧状エコーなどと呼ぶ。降水強度の強い部分が弓(ボウ)状に分布しているものを言う。複数の積乱雲(降水セル)が接近して発生した場合、それらが集まってメソサイクロンと呼ばれる循環を始めることがあるが、このようなときに見られるエコーである。ドップラーレーダーで観測した場合も同様に見られ、降水セルの中の気流の分布を解析することで、セルの中での循環の様子や降水の程度などを推定することができる。

アメリカでは、発達したボウエコーをデレチョ (derecho) と呼んでいる。デレチョは持続時間が長い上に激しい気象現象をもたらし、災害を引き起こすことが多い。多数のボウエコーが直線的に並んだものをシリアルデレチョ、持続時間が長く非常に長い距離を移動するボウエコーをプログレッシブデレチョ、両者の性質を持ったボウエコーをハイブリッドデレチョと呼ぶ。

フックエコー

フックエコー、鉤状エコー、釣り針状エコー、クロワッサンエコーなどとよぶ。降水強度が強い部分が鉤(フック)または釣り針状に分布しているものを言う。フックエコーの規模は数km~数十kmと小さく、この規模に合わせて観測しなければならない。フックエコーは竜巻の前触れとされるエコーである。竜巻の原因は、発達した積乱雲の中でメソサイクロンと呼ばれる循環が局地的に強まって、コンパクトにまとまった渦巻きが発生することである。レーダーが捕捉する雨粒は風の影響を強く受けるため、竜巻の発生時やその前後に竜巻の周囲で強い気流の引き込みが発生すると雨粒が引き寄せられて密度が高まり降水強度が強くなったように見える。これは、竜巻の親雲である積乱雲のこう水域から竜巻の方向に向かって鉤状に伸びる。

ブライトバンド

ファイル:Radar-bright-band.png
ブライトバンド、カナダ東部、2001年11月29日。上空の雪が地上までの間に溶けて雨になっている様子がよくわかる。

ブライトバンドとは、雪(固体)が解け始めて雨(液体)に変わりつつあるような状態変化中の粒を観測したときに現れるエコーである。特に雨が強く降っているわけでもないのに、屈折率の関係で強く反射されて、エコー画像では明るく映ることからそう呼ばれている。水平方向では円形(ドーナツ状)に映り、その中心にレーダーの設置場所があることを表している。

エンゼルエコー

エンゼルエコーとは、雨や風など以外に起因するエコーのことである。昆虫などに反射するものや、気温湿度の変化によって電波の屈折率が変化して反射するものなどがある。電波屈折率の変化によるものは、波長がセンチメートル単位のドップラーレーダーで観測できることが知られている。地面に反射したものが映り込むグラウンドエコー、建物などの障害物が移りこんだものなどがある。

異常伝播

気象レーダーも、無線などと同様に異常伝播が起こることがある。デリンジャー現象は、気象レーダーに使用される波長は影響を受けにくいが、磁気嵐の影響、スポラディックE層の影響は気象レーダーでも発生することがある。

また、レーダーの技術的な不具合が異常伝播のように映ることもある。

日本の気象レーダー

日本では、これまでマイクロ波レーダーのみが広く用いられてきたため、マイクロ波レーダーを気象レーダーということが多い。本来は気象観測に用いるレーダー全般を「気象レーダー」という。 無線局の種別としては、無線標定陸上局に分類される。

日本の気象レーダー網

気象庁の運用する気象レーダーは以下の20箇所である(2005年12月現在)。

以上、20か所のレーダー観測を合成して小笠原諸島北方領土の一部等を除く日本列島のほぼ全域及び沿岸の海域がカバーされており、気象庁は10分ごとに1km四方の降水強度と2.5km四方の雲頂高度を作成している。2009年7月より5分間隔の観測.

また、上記以外にも各地の航空地方気象台・航空測候所等に空港気象レーダーが設けられている。

国土交通省では、河川ダムを運用・管理する為に多くの気象レーダーを気象庁とは別に独自に設置している。全国に合計26か所設置されている。レーダーの運用・管理は地域の河川事務所、ダム管理所や地方整備局が多い。なお、国土交通省解析雨量は、かつては気象レーダーとして気象庁レーダーのみを利用していたが、現在は国土交通省レーダーの観測を取り込んでいる。

気象レーダーのドップラー化

竜巻をはじめとした突風をもたらす現象を監視するため、気象庁ではドップラー・レーダーへの更新が行われている。

  • 2005年度 東京
  • 2006年度 新潟、仙台、名古屋
  • 2007年度 釧路、函館、松江、福岡、種子島、沖縄、室戸岬
  • 2008年度 札幌、福井、大阪、広島、石垣島

なお、ドップラーレーダーの風データをメソ数値予報モデルに取り込むことができることから、現在より短い時間間隔でより細かい範囲の風を状況を把握することで、集中豪雨等の予測精度向上に寄与することが期待されている。

航空地方気象台・航空測候所では、10か所前後の空港で空港気象ドップラーレーダーを設置しており、順次ほかの空港へも拡大していく予定である(2007年末現在)。

また、国土交通省では、深山レーダ雨量計(大阪府能勢郡能勢町)でドップラーレーダーが併設されている。

出典

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参考文献

関連項目

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外部リンク

各国の気象レーダーのデータ


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