韓国GM
韓国GM(かんこくジーエム, GM Korea)はゼネラルモーターズ子会社の韓国の自動車メーカー。2011年第一四半期にGM大宇自動車技術 (GM Daewoo Auto and Technology) から当社名へ変更すると発表され[1][2]、2011年3月1日より正式に現在の社名での展開をスタートした。
スローガンは「CHEVROLET FIND NEW ROADS」。
目次
概要
2000年に大宇自動車が経営破綻すると、アメリカのゼネラルモーターズ(GM)が旧大宇自動車の大部分を買収し、後に「GM大宇オートアンドテクノロジー」となる。「GMDAT(ジーエムダット)」とも呼ばれる(GMDATはGM Daewoo Auto & Technology Companyの略)。GMグループ内でコンパクトカー・サブコンパクトカーの生産・開発を行っていた。2009年に親会社のGMが破綻の危機に瀕すると、GM大宇もまた経営危機に陥っていた[3]。2011年1月には「韓国GM」 (GM Korea) へと改称することが発表された[1]。なお、後述のようにこの会社は大宇の名が使われる以前にGMコリアという社名を使用していた時期があり、皮肉にも今回の大宇の名称が消えた名称変更でまたGMコリアを名乗ることとなった。
歴史
- 1937年 National Motorとして、仁川にて設立。
- 1962年 セナラ自動車(새나라자동차)と改称。日産自動車と提携し、ブルーバードを「セナラ」の名称でノックダウン生産する。
- 1965年 新進自動車設立(신진자동차)。日産自動車との提携を解消し、トヨタ自動車と提携。クラウン、コロナ、パブリカ、トヨエースをノックダウン生産する。(トヨエースは『エース』の車名で新進ブランドで販売)
- 1972年 トヨタが撤退後、GMが資本参加し、社名「GMコリア」(GM코리아)に変更する。シボレー1700(ホールデン・トラーナがベース)やレコード1900、ロイヤル(オペル・レコルトDがベース)をノックダウン生産する。
- 1976年 韓国産業銀行がGMコリアの持ち株を購入し、セハン自動車(새한자동차、Saehan Motor Company)に社名変更。いすゞ・ジェミニ、いすゞ・エルフをノックダウン生産する。
- 1978年 7月、大宇財閥が産業銀行から持ち株を購入、セハン自動車は大宇傘下に入る。
- 1983年 韓国の大宇財閥が資本参加するが、GMとの提携は続く。社名を「大宇自動車」に変更する。ルマン(オペル・カデット)、ローヤル(オペル・レコルトE)などを生産する。
- 1991年 スズキ・アルト(3代目)を「ティコ」の車名で生産。本国では国民車として税金が優遇された。
- 1990年代中盤 ホンダと技術提携。アカディア(2代目レジェンド)をノックダウン生産する。
- 1997年 雙龍自動車を買収する。以後、雙龍の車種は大宇が2000年に経営破綻(はたん)するまで大宇ブランドでも販売される。
- 1998年 コンパクトカーマティスがヨーロッパを中心に売れ、経済危機に陥った韓国でも価格の安さで大ヒットする。
- 2000年 大宇自動車が経営破綻。
- 2002年 GMが旧大宇自動車の大部分を買収して「GM大宇自動車技術」を発足させる。また旧大宇自動車のトラック部門とバス部門がそれぞれ「大宇商用車」(後にインドのタタ・モーターズに買収されて「タタ大宇商用車」となる)、「大宇バス」として分離独立する。
- 2004年 海外市場では自動車販売ブランドとしてのDaewooの名前が消えてChevrolet (シボレー)となる(韓国国内では引き続きDaewooブランドで発売。日本に輸入されているマティスについても引き続きDaewooブランドで発売している)。よってDaewoo MatizはChevrolet Matizと変更になる。なお、ラセッティは国によってブランドを換えて販売している。(欧州、日本およびアジア諸国:シボレー、北米:スズキ、豪州:ホールデン、中国:ビュイック)
- 2006年 7月の海外市場での販売台数が初めて現代自動車を上回る。これは現代自動車でのストライキによる生産停止と、新型SUVの売れ行きが好調だったことによる。
- 2011年 1月19日、GMは韓国市場において大宇ブランドを廃止し、今後導入する新車をシボレーブランドとすることを正式に発表した。シボレーのハングル表記が시보레から쉐보레に変更された。また、これに伴いGM大宇自動車技術の社名も韓国GMに変更される。また、社名変更を機にコルベットやカマロも夏期までに導入する[1][4][5]。GMは高級車の「アルフェオン」と軽商用車の「ダマス」「ラボ」については、今後もシボレーブランドを冠せず独立ブランドで市場に投入することを伝えている[6]。
- 2011年3月1日 社名変更。以降に登場する車種ならびに一部既存車種は上述の「アルフェオン」「ダマス/ラボ」以外の全車種をシボレーブランドに切り替えて発売する。また、カマロとコルベットに加え、クルーズ(旧車名:ラセッティプレミア)ベースのミニバン「オーランド」を発売することも発表された。 シボレーの販売台数は約500万台/2013年、韓国GMでの生産台数は約90万台/年
- 2013年12月6日 GMは2015年末で欧州での「シボレー」の販売を終了して、「オペル」と「ボクソール」に資源を集中すると発表。 韓国GMの生産車種は90%以上がシボレーブランド。 2012年、韓国GMが欧州に輸出したのは18万6000台だった。[7]
生産拠点
- 富平(仁川)工場:自動車の組立およびガソリン/LPGエンジンの製造(生産能力:年44万台)
- 群山工場:自動車の組立及びディーゼルエンジンの製造(生産能力:年26万台)
- 昌原工場:自動車の組立及びガソリン/LPGエンジンの製造(生産能力:年21万台)
- 保寧工場:トランスミッション及びエンジン部品の製造
- VIDAMCO (Vietnam-Daewoo Motor Company) :自動車の組立(生産能力:年1.1万台)
車種一覧
シボレーブランドを名乗る車種
- スパーク(コンパクトカー。旧車名:マティスクリエイティブ)
- アヴェオHB(サブコンパクトカー。旧車名:ジェントラX)
- アヴェオセダン(カロス後継のサブコンパクトセダン。旧車名:ジェントラ)
- クルーズ(ラセッティの後継車である準中型セダン。旧車名:ラセッティプレミア)
- クルーズ5(クルーズの5ドアハッチバック版)
- マリブ(トスカ後継の中型セダン)
- キャプティバ(中型クロスオーバーSUV。旧車名:ウィンストーム)
- オーランド(クルーズがベースのミニバン)
- トラックス(オペル・モッカ/ビュイック・アンコールのシボレー版)
- カマロ
- コルベット
シボレーブランドを名乗らない車種
過去の生産車種一覧
セナラ自動車時代の生産車種
- ブルーバード(初代日産ブルーバードのライセンス生産車)
- 新星号(6人乗り大型高級セダン。中古ジープのシャーシ上にボディを架装した再生車)
新進自動車時代の生産車種
- パブリカ(初代トヨタ・パブリカのライセンス生産車)
- コロナ(3代目/4代目トヨタ・コロナのライセンス生産車)
- クラウン(2代目/3代目/4代目トヨタ・クラウンのライセンス生産車)
- エース(トヨタ・トヨエースのライセンス生産車)
- ジープ(アメリカン・モータース製ジープのライセンス生産車)
GMコリア時代の生産車種
- シボレー1700/カミーナ(ホールデン・トラーナのライセンス生産車)
- レコード
- セマウル
- ジープ(アメリカン・モータース製ジープのライセンス生産車)
セハン自動車時代の生産車種
- ジェミニ(初代いすゞジェミニ/オペル・カデットのライセンス生産車)
- メプシ(ジェミニのマイナーチェンジ版)
- ローヤル(オペル・レコルトがベースの中型セダン)
- エルフ(いすゞエルフのライセンス生産車)
- シボレー1700/カミーナ(ホールデン・トラーナのライセンス生産車)
- ジープ(アメリカン・モータース製ジープのライセンス生産車)
大宇自動車設立以後の生産車種
- メプシ(セハン・ジェミニのマイナーチェンジ版)
- メプシーナ(ジェミニ/メプシのマイナーチェンジ版)
- ルマン(オペル・カデットがベース。ポンティアックブランドでアメリカとニュージーランドにも輸出された)
- シエロ(オペル・カデットがベース)
- ネクシア(シエロの5ドアハッチバック)
- ラノス(サブコンパクトセダン)
- ラノスロミオ(ラノスの3ドアハッチバック)
- ラノスジュリエット(ラノスの5ドアハッチバック)
- ラノスII(ラノスのMC版)
- エスペロ(小型セダン。ベルトーネがデザイン)
- ヌビラ(小型セダン。シエロ/ネクシアの後継車)
- ヌビラII(ヌビラのMC版)
- ローヤル/ローヤルサロン(オペル・レコルトがベースの中型セダン。ローヤルサロンは当時のトヨタ・クラウンに酷似していた)
- プリンス/ローヤルプリンス(オペル・レコルトがベースの中型セダン)
- レガンツァ(中型セダン。エスペロの後継車)
- スーパーサロン(プリンスがベースの高級セダン)
- インペリアル(プリンスがベースの大型高級セダン)
- アカディア(ホンダ・レジェンドのライセンス生産車)
- バネット(日産バネットのライセンス生産車)
大宇国民車の生産車種
- ティコ(3代目スズキ・アルトがベース)
GM大宇に名称変更されてから生産が終了した車種
- ステーツマン(大型セダン。豪州ホールデン・ステーツマンからのOEM供給)
- レッツォ/タクマ(小型MPV)
- マグナス(中型セダン)
- ラセッティ(小型セダン/ステーションワゴン)
- ラセッティ5/ラセッティEX(小型ハッチバック)
- G2X(サターンスカイのバッジエンジニアリング車、北米生産。車名はGo to(=2) Extreme(=Xterme)の頭文字)
- ベリタス(中国版ビュイック・パークアベニュー/ホールデン・ステーツマンのGM大宇仕様)
- ウインストームMAXX(中型SUV)
- トスカ(中型セダン)
雙龍自動車の生産車種
日本メーカーとの提携
設立当初のセナラ自動車時代は日産自動車と提携しブルーバードを生産、新進自動車時代はトヨタ自動車と提携しクラウン、コロナ、パブリカなどを生産。GMコリア/セハン自動車/大宇自動車の時代はGMと関係が深い日本のメーカーの車種を生産。いすゞ(エルフ、ジェミニなど)やスズキ(アルト、キャリイ)を生産していた。また非GM系メーカーの車種も生産、2代目ホンダ・レジェンドや日産バネットがあった。
「セナラ自動車(現、GM大宇)疑惑事件」
1961年の朴正熙軍事クーデターの後、韓国経済復興策の一つとして、韓国を代表する自動車産業を育成しようという国策により、当時のKCIA(韓国中央情報部)部長の金鍾泌から協力要請を受けた在日韓国人実業家、朴魯貞(ホテル経営など)。後妻は金剛山国際グループのマダム・パクこと朴敬允)が日本の日産自動車の部品を使ったノックダウン(現地組立て)の自動車会社「セナラ自動車」を設立。ところが、韓国初の自動車会社だったセナラ自動車は金鐘泌の資金源として利用される。ノックダウンの車は生産コストの安さから価格操作を行いやすいため、セナラの車にも金鐘泌の取り分が上乗せされた。金鐘泌は配分増加や企業献金を強引に要求し、朴がこれを拒絶すると彼のパスポートを取り上げ、拘束し、拷問にかけた。 朴は傷だらけで釜山港から漁船に隠れ、密入国で日本へ逃げる。事件後に韓国入国禁止となった。
入国禁止が解けた後再び韓国に渡り現地で1987年に死亡。およそ350億円の遺産を残す。
この事件は企業と政府の癒着疑惑として韓国では社会問題となった。[9]
その他
- 韓国ドラマ「パリの恋人」に登場する「GD自動車」はGM大宇がモデルとされている。
- アメリカ映画「TAXI NY」ではラノスのハッチバックと思われる車が出てくる。(このハッチバックのことをベル(主人公)が"大宇"と言っている。「こんなクルマ乗れるか」というニュアンスが含まれる。)
関連項目
出典・脚注
外部リンク
- Chevrolet Korea Home Page
- Chevrolet Europe Home Page
- 株式会社オートレックス(マティスの輸入元)
- GM Daewoo Vidamco Home Page
- Daewoo Automobile Romania Homepage
テンプレート:自動車de:GM Korea fa:جیام دوو
uk:GM Daewoo- ↑ 1.0 1.1 1.2 テンプレート:Cite web
- ↑ もっとも、1971年に新進自動車とGMが共同で設立した際も、1978年に大宇グループに買収されて大宇自動車となるまでの間も「韓国GM」だったため、33年ぶりの社名復活ともいえる。
- ↑ 米GM首脳「GM大宇への新規投資は韓国政府の支援が先決」 donga.com 2009年4月29日
- ↑ 「大宇」の名前消滅、韓国GMに社名変更 朝鮮日報 2011年1月20日
- ↑ その後、カマロは2011年7月、コルベットは2012年5月より導入開始された。
- ↑ テンプレート:Cite web(英語)
- ↑ 米GMが欧州でシボレー撤退へ、オペル・ボクソールに資源集中」 ロイター 2013年 12月 6日
- ↑ シボレー、2013年度の世界販売台数を発表」 GM・デトロイト 2014年1月13日
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