電送人間
『電送人間』(でんそうにんげん)は、1960年に東宝が製作した特撮スリラー映画。 英題は、 The Secret of The Telegian 、 The Telegian 、 The Electrical Facsimile 、 Transmission Man 、 The Telegraphed Man など。上映は1960年4月10日。併映は宝塚映画作品『爆笑嬢はん日記』(主演:佐原健二。監督:竹前重吉)。
概要
『美女と液体人間』に続く変身人間シリーズの第2作。検討用台本の段階で怪奇空想科学映画シリーズと銘打たれており、第3作『ガス人間第一号』も本作とほぼ同時期に検討用台本が完成しているなど、当初よりシリーズ物として製作が進められた[1]。原作表記は無いが、海野十三の小説『電送美人』が下敷きになっていると考えられている[1]。
本来は本多猪四郎が監督を務めるはずであったが、『日本誕生』の製作遅延により順延となった『宇宙大戦争』の製作に追われていたため、『空の大怪獣ラドン』などで助監督を務めた福田純が監督に選ばれた[1]。特撮班も『宇宙大戦争』の後に『ハワイ・ミッドウェイ大海空戦 太平洋の嵐』が控えていたため、その合間の年末年始にかけて特殊技術の撮影が行われた[1]。
福田純はこれが監督作品2作目。この作品が概ね好評であったため、以後、アクション作品を中心に監督していく。主演の鶴田浩二は、福田が助監督時代からの親友であり、テンプレート:要出典範囲。
電送人間を演じた中丸忠雄はこれを「お化け役」のように感じたそうで、当時、試写を見て「とんでもない作品に出てしまった」と真っ青になったという。田中友幸プロデューサーが「『ガス人間第一号』のガス人間・水野役をやってくれないか」と声をかけてきたときは、思わず断ってしまい、しばらく干されてしまったという[2]。
視覚効果
本作品における重要な道具立てとして「物体電送機」というものが挙げられるが、この機械自体はSFとしてそれほど珍しいものではなかった。本作以前のアメリカ映画『ハエ男の恐怖』に同様の機械が登場しているが、円谷英二は「物体が電送される原理を観客に眼で見て解らせる」為の映像を作り上げることにこだわった。そのヒントとなったのが、当時多くの映画関係者が「電気紙芝居」と呼んで馬鹿にしていた「テレビ」である。当時のブラウン管方式のテレビ映像は画面上にある「走査線」と呼ばれる細かい横縞模様に沿って管内の電子ビームが映像信号をスキャンしていくことによって映像を再生していたのだが、送受信の不具合によっては乱れた縞模様が発生する場合があった。円谷はこれに着目し、電送人間役の中丸忠雄の上に光学合成で青白く光る細かい横縞模様を焼き込み、「脳天から足の爪先へと徐々に消えていく」という映像を完成させた。また、電送機で瞬間移動した直後の犯行中でも、ときどぎ全身に横縞模様が走ってバリバリと雑音を発するという、芸の細かいところを見せている。テンプレート:要出典範囲
ストーリー
姿なき犯人に銃剣で刺殺されるという不可思議な銃剣魔連続殺人事件が発生。事件を追う新聞記者・桐岡は現場に残された遺留品クライオトロンから物体電送を研究する仁木博士の関与を推察する。その過程で敗戦時に博士の護衛を務めていた須藤兵長の存在が浮かび上がり、一連の銃剣魔事件が電送装置による須藤の復讐計画である事が判明する。実は須藤は、敗戦時のどさくさにまぎれて軍の資金と金塊を横領した元上官や同僚から、口封じの為に仁木博士ともども殺されかけた過去があった[3]。戦後は博士と二人でひっそりとくらし、博士の研究完成を機に次々と復讐を果たし、最後のターゲットである元陸軍中尉大西正義に迫る須藤。命を狙われた大西は別荘へ身を隠した。それを察知した捜査陣も須藤を現行犯逮捕すべく、大西の別荘へ急ぐ。
スタッフ
本編
特殊撮影
※映画クレジット順
キャスト
※映画本篇クレジット順
- 桐岡勝(東都新聞学芸部の記者):鶴田浩二
- 中条明子(日邦精機営業部の社員):白川由美
- 大西正義(海南貿易社長):河津清三郎
- 岡崎捜査主任:土屋嘉男
- 中本伍郎(須藤兵長):中丸忠雄
- 小林警部:平田昭彦
- 仁木嘉十郎(電気工学博士):佐々木孝丸
- 隆昌元(キャバレーの経営者):田島義文
- 三浦(電気工学博士):村上冬樹
- スリラーショウの呼び込みの親父:沢村いき雄
- 滝(土建屋):堺左千夫
- 塚本(ブローカー):大友伸
- 丸根刑事:山本廉
- 志村(東都新聞の記者):松尾文人
- ことぶき荘の管理人:水の也清美
- 別荘の婆さん(源三の妻):馬野都畄子
- 音吉(小篠島の漁夫):大村千吉
- 本田次席:佐田豊
- 源三(小篠島の漁夫):瀬良明
- 海南貿易社員:天本英世、広瀬正一、桐野洋雄
- 多摩川園園長:土屋詩朗
- スリラーショウの客:熊谷二良
- 甲府の警官:岩本弘司
- 検問の警官:岡部正
- 大野(キャバレーのボーイ):中山豊
- トラック運転手:宇野晃司
- 井田(東都新聞学芸部のデスク):松村達雄
- 東都新聞学芸部の記者:堤康久
- 甲府署署長:桜井巨郎
- トミ子(キャバレーの女給):小西瑠美
- おばけの易者:北野明
- キャバレーのボーイ:三浦敏男
- 東都新聞社の給仕:西條康彦
- スリラーショウの客(女学生):上野明美
- ユミ子(日邦精機の社員):樋口年子
- 警戒の警官(多摩川園):重信安宏
- 花屋の配達人:土屋靖雄
- 警視庁部長:向井淳一郎
- 大西の失踪を知らせる刑事:松本光男
- パトカーの警官:澁谷英男
- 小谷牧場の警官:上村幸之
※以下クレジット表記なし
- 悪魔の洞窟から出てくる客:小川安三、津田彰、毛利幸子
- スリラーショウの客:記平佳枝、児玉清、中西英介
- スリラーショウの客(女学生):丘照美
- おばけの易者:伊藤実
- 記者:岡豊、川又吉一、河辺昌義、清水良二、須田準之助
- 多摩川園の刑事:桂伸夫
- 多摩川園の警官:夏木順平
- 鑑識係員:橘正晃
- 日邦精機社員/小篠島の警官:大塚秀男
- キャバレーの客:安芸津広、天見竜太郎、大西康雅、勝本圭一郎、吉頂寺晃、榊田敬二
- キャバレーのボーイ:日方一夫
- キャバレーのボーイ/甲府署の警官:今井和雄
- 非常線の警官:門脇三郎
- パトカーを運転する警官:川村郁夫
- 電柱を登る警官:緒方燐作
- 芝浦倉庫の管理人:光秋次郎
- 殺される警官:砂川繁視
- トラックの運転手:篠原正記
- 甲府の刑事:吉田静司
- 捜査本部の刑事:生方壮児、宇留木耕嗣、草間璋夫、千葉一郎、松下正秀、石川隆昭
- 小谷牧場の警官:勝部義夫、鈴木孝次、関田裕
- ラジオのアナウンサー(声のみ):池谷三郎
- ジープを運転する警官:越後憲三
- 小篠島の警官:小松英三郎、権藤幸彦、中島春雄