ガス人間第一号
テンプレート:Ambox-mini テンプレート:Infobox Film 『ガス人間第一号』[1](がすにんげんだいいちごう、英題:The Human Vapor)は、1960年12月11日に公開された、東宝製作の特撮映画。イーストマン・カラーの東宝スコープ。上映時間は91分。併映は『金づくり太閤記』(主演:加東大介。監督:川崎徹広)
概要
俗に言う変身人間シリーズの第3作[2]。怪奇空想科学映画シリーズと銘打たれた検討用台本が『電送人間』の検討用台本とほぼ同時期に完成しており、当初よりシリーズ物として製作が進められた[3]。
『電送人間』では当時多忙であった本多猪四郎に替わり福田純が監督を務めたが、本多が監督する予定であった『今日もわれ大空にあり』が製作中止になったため[4]本作の監督を務めることとなった[3]。
当作品はオリエントな要素が受け、アメリカで大ヒットした。そこで、アメリカの映画会社によって、『フランケンシュタイン対ガス人間』という続編が企画された。アメリカで企画書を見た田中友幸が土屋に語ったところによれば「藤千代を蘇らせる為にガス人間がフランケンシュタイン博士を探す」というものだったという[5]。この企画は後の『フランケンシュタイン対地底怪獣』へとつながる。
本作のBGMは、後に宮内國郎が音楽を担当した『ウルトラQ』『ウルトラマン』に流用されている。
特撮
本作で最もスタッフが苦労したのは、人体がガス化したりガスが固まって人体に戻ったりという視覚効果である。特殊撮影の責任者である円谷英二は、過去に『美女と液体人間』で使用した「膨らませたゴム人形の空気を抜いてしぼませる」という方法で人間が溶かされていく描写を表現したが、本作でも同様の方法を採用した。
ガス人間役の土屋嘉男の顔面および全身から形取りした本物そっくりの空気ゴム人形を作り、膨らませた状態で衣裳を着せ、ピアノ線で吊り上げて補助しながら立たせておく。衣裳の内側にはドライアイスの粒がいくつも仕込まれており、人形の足元にはぬるま湯を入れたタライがある。人形の空気を抜いてしぼませると衣裳内側のドライアイスが落下し、ぬるま湯の中に沈む。空気の減り具合に合わせてピアノ線の補助を緩めて下ろしていけば、ゴム人形は衣裳と共にゆっくりとその場にへたり込み、襟や袖の隙間からモクモクとドライアイスの蒸気を吐き出す。この仕掛けを足元のタライが写り込まない様に撮影し、その上に光学合成で青白く光るガスを焼きつけ、「自由にガス化する超能力」を表現した[6]。
コンピューターが未発達でCGなど無かった時代に、円谷英二は持ち前の創意工夫によって「誰も見たことの無い不思議な映像」に挑戦した。しかし、このゴム人形を使った効果は予告篇でしか見られず、完成版では演技する土屋嘉男本人の上に直接ガスを合成している。ただし、衣裳がへたり込んで襟からドライアイスの蒸気が出る場面は完成版でも残されている。
ストーリー
東京で不可解な手口による銀行強盗が頻発する。警察は容疑者を半ば強引に逮捕するが、そこに真犯人を名乗る男・水野があらわれる。男は違法な人体実験の果てにガス人間にされてしまった犠牲者だった。水野は自分が愛する女性、零落した日本舞踊・春日流の家元・藤千代のために、銀行強盗を働いて大金を貢いでいたのである。水野は自らをガス化して悠々と脱獄。そして世間の顰蹙を買う中で、藤千代の発表会が開かれる。しかし観客は藤千代の踊りが目的ではなく、「ガス人間を出せ!」などと罵声を浴びせる。怒った水野が本性を現し、逃げまどう観客たち。
観客がいなくなったホール内には警察の策略によってUMガスが充満していたが、それでも藤千代は水野の為に踊り続けるのだった。そして、藤千代は水野と抱擁を交わしながら自らライターを点火したのだった。
スタッフ
本編
- 製作:田中友幸
- 脚本:木村武(馬淵薫)
- 撮影:小泉一
- 美術:清水喜代志
- 録音:藤好昌生、宮崎正信
- 照明:高島利雄
- 音楽:宮内國郎
- 作詞:片山貞一
- 作曲:杵屋勝四郎(5代目)
- 作調:堅田喜四郎
- 振付:若柳美東理樹
- 監督助手(本編チーフ):梶田興治
- 監督助手(本編):中野昭慶 ※クレジット表記なし
- 編集:平一二
- 現像:東京現像所
- 製作担当者:坂本泰明
- スチール:副田正男 ※クレジット表記なし
- 特技監督:円谷英二
- 監督:本多猪四郎
特殊技術
※映画クレジット順
キャスト
- 岡本賢治警部補:三橋達也
- 春日藤千代:八千草薫
- 甲野京子(東都新報記者):佐多契子
- ガス人間・水野:土屋嘉男
- 田宮博士:伊藤久哉
- 田端警部:田島義文
- 稲尾刑事:小杉義男
- 佐野久伍博士:村上冬樹
- 猫背の老鼓師:左卜全
- 警視庁幹部:佐々木孝丸
- 葉山(東都新報重役):山田巳之助
- 池田デスク:松村達雄
- 銀行の支配人:宮田羊容
- 藤田刑事:三島耕
- 川崎(東都新報記者):野村浩三
- 西山(強盗殺人犯):山本廉
- 紋太夫:松本染升
- 相見巡査:堤康久
- 図書館の男:山田彰
- 看守:広瀬正一
- 戸部編集局長:中村哲
- 里代:塩沢とき
- 梶本(東都新報重役):熊谷二良
- 大崎刑事:坪野鎌之
- 中谷巡査:緒方燐作
- 看守:榊田敬二
- 観客の男:岡豊
- 警視庁幹部:山田圭介
- 堀田刑事:権藤幸彦
- 警視庁幹部:草間璋夫
- 鎌田(検死官):松本光男
- 観客の男:佐藤功一
- 図書館員:安芸津広
- 銀行員:澁谷英男
- 東都新報記者:橘正晃
- 観客の男:黒田忠彦
- 留置所の女:藤野珠美
- 記者:伊藤実、大前亘
- 藤千代の車の運転手:速水洸
- 殺される出納係長:鈴川二郎
- 留置場の男:広田新二郎
- 長唄:富士田吉四郎、柏庄太郎、杵屋胡十郎、芳村久太郎
- 三味線:杵屋勝四郎、杵屋和喜輔、杵屋和四之、杵屋和四三郎、杵屋和之助
- 囃子 笛:鳳声信秀、小鼓:堅田喜四郎、太鼓:堅田喜三郎、堅田喜三久、大太鼓:福原宏
※映画クレジット順
※以下ノンクレジット出演者
- 銀行員・野次馬:日方一夫
- 記者:荒木保夫、今井和雄、勝部義夫、河辺昌義、川又吉一、佐竹弘行、清水良二、千葉一郎、夏木順平、松下正秀、吉田新
- 記者・留置所の男:大塚秀男
- 警官:川村郁夫
- 双葉会館前の警官:砂川繁視、鈴木治夫
- 田宮博士の助手:越後憲三、小松英三郎
- 観客の男:伊原徳、中西英介、成田孝
- 留置所の男:天見竜太郎、坂本晴哉、向井淳一郎
- 留置所の女:谷和子
- 銀行員:東静子、大西康雅、寺沢広美、由起卓也
- 野次馬:大江秀
- カメラマン・野次馬:光秋次郎
- 協同銀行新宿支店のサングラスの男:中島春雄
- 協同銀行新宿支店の客:小野松枝
- 鑑識課員:大仲清治
- ガス銃を持った警官:桂伸夫
- 刑事:須田準之助
舞台版
2009年10月、シアタークリエにて舞台化。脚色・演出は後藤ひろひと。原作の「異端者の悲恋」をテーマに、設定を現代におきかえ、コメディ要素もふんだんに取り入れた作品となっている。
出演は、高橋一生、中村中、中山エミリ、伊原剛志、水野久美、三谷昇など。
脚注
- ↑ 予告篇および完成版の題字では「1号」と算用数字なのだが、公開当時の宣伝ポスターでは漢数字の「一号」となっており、以後、書籍資料などではそれが公式表記とされている。
- ↑ 公開当時のポスターなどでは「空想科学映画第三弾」と表記されている。
- ↑ 3.0 3.1 テンプレート:Cite
- ↑ その後監督を古澤憲吾に変更して1964年に公開された。
- ↑ 『怪獣大戦争』のDVDでの土屋嘉男のオーディオコメンタリーより
- ↑ 参考文献「円谷英二の映像世界」(実業之日本社・1983年)