知床半島
知床半島(しれとこはんとう)は北海道東部、斜里郡斜里町と目梨郡羅臼町にまたがり、オホーツク海に長く突き出た半島である。半島の南側は根室海峡に面し、その対岸に国後島が伸びている。名前の由来は、アイヌ語の「シレトク (sir etok)」で、地山の先、あるいは地山の突き出た所を意味する[1]。原生的な豊かな自然を擁し、1964年に知床国立公園が設定され、2005年には世界遺産に登録された。
目次
地理・地質
先端に知床岬が位置する。半島中央部は知床火山層からなり、北から順に知床岳 (1,254m) 、知床硫黄山 (1,562m) 、羅臼岳 (1,660m) 、遠音別岳 (1,331m) 、海別岳 (1,419m) とつらなる。半島東側の羅臼町側には羅臼湖、半島西側の斜里町側には知床五湖、カムイワッカの滝、オシンコシンの滝がある。
火山地帯となっていることから、羅臼温泉、瀬石温泉(セセキ温泉)、岩尾別温泉など、自噴する温泉も多くあり、観光客も多く訪れる。特に、滝自体が天然の温泉になっているカムイワッカの滝は、野趣溢れる秘湯として、マスコミなどでも取り上げられるほどに有名である。また、半島の中央部の斜里町ウトロ地区には、知床観光の一大拠点となっているウトロ温泉がある。
知床連峰を構成する火山群
北部山岳より記す。小数点以下が記載された座標は最高点に位置する三角点の座標。三角点の等級は本来漢数字であるが、再配列可能な表のためアラビア数字で表記している。
知床半島
名 称 | 標 高 | 三角点 | 点 名 | 位 置 | 湧出温泉 |
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ウイーヌプリ | 651.5m | 3等 | 赤岩 | テンプレート:ウィキ座標2段度分秒 | -- |
ポロモイ岳 | 992.1m | 3等 | 萌礼牛 | テンプレート:ウィキ座標2段度分秒 | -- |
知床岳 | 1,253.9m | 1等 | 知床岬 | テンプレート:ウィキ座標2段度分秒 | (相泊温泉) |
トッカリムイ岳 | 560.4m | 2等 | 突狩向 | テンプレート:ウィキ座標2段度分秒 | (セセキ温泉) |
知床硫黄山 | 1,562m | 1等 | 硫黄山 | テンプレート:ウィキ座標2段度分秒 | (カムイワッカ温泉) |
東岳 | 1,520m | -- | -- | テンプレート:ウィキ座標2段度分秒 | -- |
知円別岳 | 1,544m | -- | -- | テンプレート:ウィキ座標2段度分秒 | -- |
南岳 | 1,459m | -- | -- | テンプレート:ウィキ座標2段度分秒 | -- |
オッカバケ岳 | 1,462m | -- | -- | テンプレート:ウィキ座標2段度分秒 | -- |
サシルイ岳 | 1,564m | -- | -- | テンプレート:ウィキ座標2段度分秒 | -- |
三ッ峰 | 1,509m | -- | -- | テンプレート:ウィキ座標2段度分秒 | -- |
羅臼岳 | 1,660.4m | 2等 | 羅臼岳 | テンプレート:ウィキ座標2段度分秒 | 岩尾別温泉</br>羅臼温泉 |
天頂山 | 1,046m | -- | -- | テンプレート:ウィキ座標2段度分秒 | -- |
知西別岳 | 1,317m | -- | -- | テンプレート:ウィキ座標2段度分秒 | (ウトロ温泉) |
遠音別岳 | 1,330.2m | 1等 | 遠音別岳 | テンプレート:ウィキ座標2段度分秒 | -- |
奥遠音別 | 1,019.3m | 3等 | 奥遠音別 | テンプレート:ウィキ座標2段度分秒 | -- |
海別岳 | 1,419.3m | 1等 | 海別岳 | テンプレート:ウィキ座標2段度分秒 | -- |
斜里岳周辺
名 称 | 標 高 | 三角点 | 点 名 | 位 置 | 湧出温泉 |
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瑠辺斯岳 | 659m | 2等 | 瑠辺斯岳 | テンプレート:ウィキ座標2段度分秒 | -- |
斜里岳 | 1,547m</br>(1,535.8m) | 2等 | 斜里岳 | テンプレート:ウィキ座標2段度分秒 | 清里温泉 |
江鳶山 | 712.9m | 1等 | 糸部山 | テンプレート:ウィキ座標2段度分秒 | -- |
サマッケヌプリ山 | 1,062.3m | 1等 | 砂馬毛岳 | テンプレート:ウィキ座標2段度分秒 | -- |
武佐岳 | 1,005.2m | 3等 | 武佐岳 | テンプレート:ウィキ座標2段度分秒 | 中標津温泉 |
標津岳 | 1,061m | -- | -- | テンプレート:ウィキ座標2段度分秒 | 養老牛温泉 |
生物
山間部には針葉樹のエゾマツ、トドマツや広葉樹のダケカンバ、ミズナラの原生林がしげり、山頂部や稜線には高山植物群落がみられる。キタキツネ、エゾシカ、ヒグマといった野生動物が多く生息し、エゾシマフクロウ、オジロワシ(ともに国の天然記念物)などの野鳥類も豊富。沿岸にはアザラシ、トド、鯨類なども生息する。
環境保護
北海道でも数少なくなった野生動物や原始的な自然景観が残る秘境として、半島中部から先の山岳部と海岸部が1964年(昭和39年)に知床国立公園に指定された。その後、知床岬周辺は規制の厳しい特別保護地区に指定されるとともに観光目的での立ち入りが規制されている。また、1982年(昭和57年)3月31日に、国指定知床鳥獣保護区(希少鳥獣生息地)に指定された(面積44,053ha、うち特別保護地区23,630ha、特別保護指定区域1,156ha)。
2005年(平成17年)7月14日に南アフリカ共和国ダーバンで開催されていた第29回ユネスコ世界遺産会議において知床として世界遺産(自然遺産)への登録が決定され、2005年(平成17年)7月17日に正式登録された。
日露領土問題と生態系
根室海峡はロシア語地名でクナシルスキー海峡 (Кунаширский пролив)といい、その対岸には、ロシア連邦が実効支配し日本が返還を要求している島の一つである国後島(ロシア語地名、クナシル島 Остров Кунашир)が伸びている。
国後島の自然は、ソ連政府が1984年に設立した国立クリリスキー自然保護区によって厳しく保護されており、自然が原初のまま維持された国後島の生物は、根室海峡をはさんで知床半島と交流して知床半島の植物・動物相を維持することにも貢献している。鳥類や魚類の移動はもちろんのこと、冬季には、流氷を越えて動物が往来することもあるテンプレート:要出典。このため、環境保護を国際的な連携の中で行う必要があり、知床半島を世界遺産に推薦した国際自然保護連合 (IUCN)は、知床半島と国後島とをあわせ、「保全の促進を(日露)両国で同意することが可能であれば、(世界遺産としての知床半島を)広範な『世界遺産平和公園(World Heritage Peace Park)』として発展させる」のがよいと提言している。
現在、日本が主張するところの北方領土問題の対象範囲とされる海域(ロシア連邦が実効支配)では、外国漁船の操業がロシア連邦政府によって認められている。知床半島の周辺で、2006年2月以降、5,000羽以上の海鳥の油にまみれた死骸が打ち上げられ、同時にハングルが書かれた重油のドラム缶が流れ着いているとの情報があるが、外国船の漁業活動と関連している可能性がある。実質的な「国境」の半島ともいえる知床半島において、自然環境保護のため、いま、国際的連携が急務となっている。
備考
南樺太には北知床半島と中知床半島があり、3つをあわせて「三知床」と呼ばれることもある。
その他
知床半島において、道外の観光客やカメラマンがヒグマを撮影しに多数訪れるようになり、ヒグマを至近距離から多人数で取り囲んだりするなどの行為が報告されるようになり、環境省や学識経験者などは、いずれは人身事故が起こりかねないとして、こうした危険行為を慎むよう警告している[2]。
脚注
参考文献
関連項目
外部リンク
- 知床半島を世界遺産に推薦することにたいするIUCN の技術評価書
- 知床博物館(斜里町)
- 知床の森 開拓史の真実を探る医師 栂嶺レイ
- 地図閲覧サービス(ウォッちず)
- 国土地理院 基準点成果等閲覧サービス
- 日本の主な山岳標高 ―日本の山岳標高一覧(1003山)―
- ↑ 山田秀三「北海道のアイヌ語地名十二話」、『アイヌ語地名の研究』第1巻43頁(山田秀三著作集)、草風社、1982年。初出は『アイヌ民族誌』、1969年。
- ↑ 知床:「ヒグマ撮影、危険行為やめて」 学識経験者ら自重求め声明 毎日新聞 2013年10月19日