煙突
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煙突(えんとつ)とは、燃焼等の過程で排出されるガスを上昇気流の原理で上方へ導くための長い筒状の装置。
工場、事業場、事務所、家庭などへの設置、燃焼装置に付加したものなどがある。
概要
煙突は高熱による上昇気流の原理で排気を上方に導き上空に排出させる。歴史的にみると本格的な煙突が登場するのは記録上は14世紀のヨーロッパであるとされる[1]。
煙突の高さが高いほど、排出ガス中に含まれる大気汚染物質濃度は、地表に到達するまでに拡散されることから、排出ガス濃度そのものの低減対策(脱硫、脱硝、集塵など)に加えて煙突の高さを高くする対策が広く推奨されてきた。ただし、煙突の高さを高くしても大気汚染物質の総量削減効果がないことに留意する必要がある。
理論
煙突からの排出ガスは、ガスそのものが持つ熱による浮力、煙突頂部から排出されるときの吐出速度による運動量、外気の風速や気温などにより、一定の高さまで上昇したのちに、有風時には風下側に流れていく。そのときの煙流の上昇高さ(ΔH )に、煙突そのものの高さ(実煙突高)を加えたものを有効煙突高(He )と呼ぶ。
風下に流れた排出ガスは、煙突から離れるに従って拡散し濃度が薄くなっていく。その濃度分布を表す式を大気拡散式といい、正規分布形で表される。
煙突の高さの設計にあたっては
- 地上での排出ガス濃度の許容値を設定
- 大気拡散式により、煙突の有効煙突高を決定
- 有効煙突高より、吐出速度やガス温度を決定
といった手順を踏む。
世界の煙突の高さ
テンプレート:See also 330mを越えるもの(およそ上位20位まで)、および各国で最も高い煙突などの重要性・著名性の高いものを掲げた。日本の煙突は、200m以上で資料等で確認出来たもののみを掲載した。
煙突に関連する逸話
- サンタクロースはクリスマスに煙突から部屋に入り子供達にプレゼントを渡す、とされている。これは聖ニコラウスが貧しい少女の家の煙突から金貨を投げ入れたという逸話が由来である。
- ドイツでは、ヒトラーが政権をとった1930年代に「煙突掃除法」が制定された。これは、「煙突掃除職人を生粋のドイツ人に限る」という内容で、各家庭が「ナチスに反抗的かどうか」の監視も兼ねていた。戦後、西ドイツでは条文が改正されて形式上は外国人も参入可能になったが、東西ドイツ統一後も煙突掃除業界によりドイツ国内が7888の「煙突掃除区」に区分され、事実上、各家庭が掃除を頼む時は地域の職人に依頼しなければいけない状態が続いていた。しかし、EUの圧力により2008年に法改正が行われ、既得権益が解体され、自由化が行われた(出典:MSN産経ニュース2008.11.19 18:54)。
- イギリスなどの煙突掃除夫たちの「陰のう」付近に癌が多発していた(当時は陰のうのしわの中にすすがたまって腫瘍ができるので「すす病」と呼ばれていた)ことをきっかけとして、東京帝国大学の山極勝三郎教授と大学院生の市川厚一が660日にも及ぶ、ウサギの耳へのコールタール塗布実験により、1915年、世界初の皮膚癌発症実験に成功した。
煙突に関連する俗語
次のものを俗に「エントツ」と呼ぶ。
- 売店などの店頭において丸めて筒状に積み重ねた新聞。
- 新聞の見出しの配置において避けられるレイアウトの一つで、複数の縦見出しが直列に並んでしまうこと。
- タクシーメーターの不正行為の一つ(タクシーメーターの項目参照)。
- 麻雀においてシャンポン待ちと両面待ちを併用する聴牌形を「煙突待ち」と呼ぶ。