コールタール
コールタール(coal tar)とは、コークスを製造する時にコークス炉で石炭を乾留して得られる副生成物の一つ。黒色の液体で芳香族化合物に独特の臭気(タール臭)を持つ。芳香族化合物を多量に含み、ナフタレン(5%–15%)、ベンゼン(0.3%–1%)、フェノール(0.5%–1.5%)、クレゾール、ペンゾ[a]ピレン(1%–3%)、フェナントレン(3%–8%)などが含まれている。
コールタールの2008年度日本国内生産量は 1,578,612 t 、工業消費量は 1,643,788 t である[1]。
応用
石炭起源のコールタールと、石油起源のアスファルトは外見は似るものの、性質や用途は別物なので使い分けが必要である。
古代哺乳類などが自然に地上に噴き出た天然アスファルトの池(ピッチ湖)に落ち、何万年も腐敗せずに発見されることもあるように防腐作用がある。かつては枕木や木電柱など、木材の防腐剤として、またトタン屋根の塗料として表面に塗布されて使われたが、それぞれコンクリート製の普及や建材の移り変わりにより、使われなくなってきている。
第二次世界大戦前は石炭化学プラントでの重要な製品であった。大戦後に石油化学が盛んになってからは重要度が低下しているものの、現在でも分留して芳香族化合物やクレオソート油、ピッチなどが生産され、染料やカーボンブラックの原料として利用されている。
医薬
- 乾癬(かんせん):皮膚疾患の一つ。治療にコールタールを外用するゲッケルマン療法という治療が昔、行われていた。しかし、現在は発癌性の問題から行われなくなった。(現在は松を由来とし、多環芳香族炭化水素の含有が少ない木タールを使う傾向がある)
- 米国では大手ブランドのNeutrogenaによりコールタールを含む頭垢用シャンプー (製品名 T/Gel) が販売されている。
- コールタールの軟膏やシャンプーなどの製品があり、乾癬、脂漏性皮膚炎、頭垢などの治療に対して効果が非常に高く、濃度が低い安全性の高いものが使用されている。現在は発癌性の問題はないといわれている。
- コールタール製剤には角質溶解・形成作用、止痒作用がある[2]。
安全性
コールタールは最初に確認された発癌性物質であり、世界保健機関の下部組織IARCはコールタールには発癌性がある(Type1)と勧告している(発癌性も参照)。山極勝三郎はウサギの耳にコールタールを塗擦し続けるという実験を3年以上に渡って反復することで、1915年に世界ではじめて化学物質による人工癌の発生に成功した。 一方、メイヨー・クリニック でゲッケルマン療法を行った乾癬患者280人を25年間追跡調査した結果、皮膚癌の発生率は一般と比べて増加してなかった。米FDAもまた、治療レベルでリスクの上昇は認められなかったとしている。
脚注
関連項目
- ↑ 化学工業統計月報 - 経済産業省
- ↑ テンプレート:Cite journal