渡邊守章
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テンプレート:存命人物の出典明記 渡邊 守章(わたなべ もりあき、1933年3月20日 - )は、演出家、演劇研究者、フランス文学研究者。東京大学名誉教授、放送大学名誉教授。
略歴
東京出身。都立日比谷高校、東京大学教養学部教養学科フランス分科卒業。同大学大学院仏文科修了(文学博士)。1971年東京大学教養学部助教授、78年教授、88年教養学科表象文化論専攻研究室を創設し初代主任を務めた。93年定年退官、名誉教授、放送大学教養学部教授、副学長、2007年名誉教授。フランス芸術文化勲章、国家功労賞オフィシエ受章。2006年、クローデル『繻子の靴』の翻訳で、日本翻訳文化賞、毎日出版文化賞受賞。2007年、ロラン・バルト『ラシーヌ論』の翻訳で読売文学賞を受賞。2008年京都造形芸術大学特任教授。2014年3月末まで京都造形芸術大学舞台芸術研究センター長を務めた。
クローデル、ラシーヌなどのフランス演劇を専門としたが、能楽など日本演劇にも造詣が深い。1970年には観世寿夫らと冥の会を結成して演劇の実践も行い、1979年より演劇集団 円の演出家として活躍。ラシーヌの『フェードル』を能様式で演出、フランスでも上演した。ほかに『能ジャンクション・葵上』のような実験的な能や、クローデル、コクトーのほか、多くの近代演劇の上演を行い、1996年から演劇製作「空中庭園」に拠って演出活動を行う。野村萬斎が武司といった時代にいち早く起用し、渡辺謙も守章演出で初舞台を踏んでいる。演劇企画『空中庭園』主宰。
またフランスの哲学者ミシェル・フーコーの日本への紹介にも尽くした。
主な演出作品
- 1972年 冥の会『アガメムノーン』(作=アイスキュロス)
- 1975年 冥の会『メーデーア』(作=セネカ)
- 1980年 演劇集団 円『悲劇ブリタニキュス』(作=ラシーヌ/出演=藤田宗久、橋爪功、後藤加代)
- 演劇企画「会」『女中たち』(作=ジャン・ジュネ)
- 1981年 演劇集団 円『バジャゼ 後宮悲劇』(作=ラシーヌ/出演=渡辺謙、後藤加代)
- 1983年 演劇集団 円『アンドロマック』(作=ラシーヌ/出演=後藤加代)
- 演劇企画「会」『バルコン』(作=ジュネ/出演=仲谷昇、後藤加代)
- 1984年 演劇集団 円『女王ベレニス』(作=ラシーヌ/出演=後藤加代)
- 1986年 演劇集団 円『悲劇フェードル』(作=ラシーヌ/出演=後藤加代、松本留美、井上倫宏)
- 1987年 パルコ・能ジャンクション『葵上』(出演=後藤加代、野村武司)
- 1988年 パルコ・能ジャンクション『當麻』(出演=野村武司)
- 1989年 演劇集団 円・シアターサンモール『天守物語』(作=泉鏡花/出演=後藤加代)
- 1990年 東京グローブ座『ハムレット』(作=シェイクスピア/出演=野村武司、後藤加代)
- 銀座セゾン劇場『かもめ』(作=チェーホフ)
- 1992年 演劇集団 円 円『愛の勝利』(作=マリヴォー/出演=平栗あつみ)
- 1993年 銀座セゾン劇場『ロレンザッチョ』(作=ミュッセ/出演=堤真一、佐藤オリエ)
- 1994年 シアターΧ『アガタ』(作=マルグリット・デュラス/出演=范文雀)
- 1995年 武生市『源氏物語』(構成=渡邊守章/作曲=松平頼則)
- 1997年 空中庭園・六行会ホール『声』(作=コクトー/出演=剣幸)
- 1998年 空中庭園『天守物語』(作=泉鏡花/出演=後藤加代、平栗あつみ)
- 1999年 空中庭園・青山円形劇場『悲劇フェードル』(作=ラシーヌ/出演=後藤加代、平栗あつみ
- 2001年 演劇集団 円『シラノ・ド・ベルジュラック』(作=エドモン・ロスタン/出演=橋爪功、仲谷昇)
- 2004年 空中庭園・世田谷パブリックシアター『内壕十二景』(作=渡邊守章/出演=観世栄夫、野村萬斎)
著作
単著
- 『ポール・クローデル』(博士論文)中央公論社, 1975
- 『空間の神話学 対談集』朝日出版社, 1978 (エピステーメー選書)
- 『仮面と身体 対談集』朝日出版社, 1978 (エピステーメー選書)
- 『虚構の身体』中央公論社, 1978
- 『時間の部屋 対談集』朝日出版社, 1980
- 『芝居鉛筆書き』冬樹社, 1983
- 『劇場の思考』岩波書店, 1984
- 『パリ感覚』岩波書店, 1985 (旅とトポスの精神史)、岩波現代文庫 2006
- 『劇場の余白に』青土社, 1985
- 『演劇的欲望について』筑摩書房, 1987
- 『フーコーの声』哲学書房, 1987
- 『踊ること・劇』新書館, 1987
- 『「フェードル」の軌跡』新書館, 1988
- 『演劇とは何か』講談社学術文庫(オリジナル) 1990
- 『快楽と欲望 舞台の幻想について』新書館 2009
- 『越境する伝統 渡辺守章評論集』ダイヤモンド社 2009
共著、編著
- 『幽玄-観世寿夫の世界』リブロポート 1980
- 『フランス』(山口昌男、蓮實重彦共著)岩波書店 1983
- 『演戯する都市』(如月小春対談)平凡社 1986
- 『ミシェル・フーコーの世紀』(蓮實重彦共編)筑摩書房, 1993
- 『舞台芸術論』放送大学 1996
- 『演劇を読む』渡辺保,浅田彰(共著)放送大学教育振興会 1997
- 『フランスの文学』塩川徹也(共編著)放送大学教育振興会 1998、日本放送出版協会 2003
- 監修『ミシェル・フーコー思考集成』1-9(蓮實重彦)筑摩書房, 1998-2001
- 『舞台芸術の現在』放送大学 2000
- 『表象文化研究 文化と芸術表象』放送大学 2002
- 『フランス文学』柏倉康夫, 石井 洋二郎(共著)放送大学教育振興会 2003
主な翻訳
- 「アンドロマック」 ラシーヌ戯曲全集 第1巻.人文書院、1965
- 「倒れる者すべて 燠火」 サミュエル・ベケット、筑摩書房.世界文学大系95 現代劇集、1965
- 「ブリタニキュス、ミトリダート」 ジャン・ラシーヌ、世界古典文学全集48.筑摩書房、1965
- 「エスキュリアル」 ミッシェル・ド・ゲルドロード、今日のフランス演劇1.白水社、1966
- 「悪は走る」 ジャック・オーディベルティ、今日のフランス演劇2.白水社、1966 加藤晴久共訳
- 「黄金の頭」 ポール・クローデル、今日のフランス演劇4.白水社、1967
- 「バルコニー、屏風」 ジャン・ジュネ全集4巻.新潮社、1968
- 「カリギュラ」カミュ、新潮世界文学49.新潮社、1969、「カリギュラほか」同文庫 1971、のち全集3
- 「オルメドの騎士」カミュ全集9.新潮社、1973
- 「女中たち」ジャン・ジュネ、筑摩世界文学大系85.現代劇集、1974
- 「メーデーア セネカ」 世界文学全集1.集英社、1974
- 「流謫の詩、詩神讃歌他」 筑摩世界文学大系56.ポール・クローデル、1976
- 『仮面の道』レヴィ=ストロース 新潮社、1977、山口昌男共訳
- 『哲学の舞台』ミシェル・フーコー 朝日出版社(エピステーメー叢書) 1978
- 『ブリタニキュス、ベレニス、バジャゼ、ミトリダート』 ラシーヌ戯曲全集2巻.白水社 1979-この巻のみ刊行
- 『闇を熔かして訪れる影 オランダ絵画序説』クローデル、朝日出版社 1980
- 『マラルメ論』サルトル、中央公論社 1983/ちくま学芸文庫 1999(平井啓之共訳)
- 『ベジャールによるベジャール』コレット・マソン編、新書館 1984
- 『性の歴史Ⅰ 知への意志』ミシェル・フーコー、新潮社 1986
- 『カミーユ・クローデル』アンヌ・デルベ 文藝春秋 1989
- 『マラルメ全集 Ⅰ-Ⅴ』(共訳)ステファヌ・マラルメ 筑摩書房 1989-2010
- 『フェードル、アンドロマック』ラシーヌ、岩波文庫 1993
- 『舞踊評論』(共訳)、ゴーチエ、マラルメ、ヴァレリー、新書館 1994
- 『女中たち・バルコン ベスト・オブ・ジュネ』 白水社 1995/改訳版.岩波文庫 2010.12
- 『繻子の靴』クローデル、岩波文庫、2005 日本翻訳文化賞
- 『ラシーヌ論』ロラン・バルト みすず書房 2006-読売文学賞
- 『ブリタニキュス、ベレニス』ラシーヌ、岩波文庫 2007
- 『シラノ・ド・ベルジュラック』ロスタン 光文社古典新訳文庫 2008
- 『アガタ/声』 デュラス/コクトー共著 光文社古典新訳文庫 2010.11
外部リンク
渡邊守章・空中庭園に関する未公認ブログ http://blogs.yahoo.co.jp/moriakiteien