日本の租税
テンプレート:Pathnav テンプレート:Ambox 日本において租税は、日本国憲法第30条で、「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。」と規定されている。日本の租税は国税と地方税からなる。
日本の消費税増税議論については「日本の消費税議論」を参照。
目次
租税の基本原則
納税の義務
日本国憲法第30条では、「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う。」と納税の義務について規定している。同条は国民に納税の義務を課したものとして国家による徴税の根拠となっている。
租税法律主義
租税法律主義とは、租税は、民間の富を強制的に国家へ移転させるものなので、租税の賦課・徴収を行うには必ず法律の根拠を要する、とする原則。現代では、ほとんどの民主国家で租税法律主義が憲法原理とされており、日本国憲法では第84条がこれを定めている。
この原則が初めて出現したのは、13世紀イギリスのマグナ・カルタである。近代以前は、君主や支配者が恣意的な租税運用を行うことが多かったが、近代に入ると市民階級の成長と法治主義の広がりに伴い、課税に関することは課税される国民側の代表からなる議会が制定した法律の根拠に基づくべしとする基本原則、すなわち租税法律主義が生まれた。
租税公平主義
租税公平主義とは、租税は各人の担税力(租税負担能力)に応じて公平に配分されるべきであり、租税に関して全ての国民は平等に扱われるべきだという原則である。この原則は、日本国憲法第14条第1項が定める平等原則が、租税の分野に適用されたものである。
徴税(納税)の方法
賦課された租税を徴収(納税)する方法として、普通徴収、特別徴収、源泉徴収などの方法がある。賦課された租税が滞納された場合、徴収権者は一定の要件により、滞納者の財産を差し押さえ換価するなどの方法により、滞納された租税を強制的に取り立てることができる。詳細は滞納処分を参照のこと。
日本の租税
ここでは日本の租税の概要を、主として内部リンクを区分して示す。
直接税 | 間接税 | |||
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国税 | 所得税 法人税 地方法人特別税 復興特別所得税 復興特別法人税[2] 相続税 贈与税 (地価税)[3] |
消費税 酒税 揮発油税 地方揮発油税 石油石炭税 航空機燃料税 石油ガス税 電源開発促進税 たばこ税 たばこ特別税 とん税 特別とん税 自動車重量税 登録免許税 印紙税 関税 | ||
地方税[4] | 道府県税 | 普通税 | 道府県民税 事業税 自動車税 鉱区税 固定資産税(特例分等) |
地方消費税 不動産取得税 道府県たばこ税 ゴルフ場利用税 自動車取得税 軽油引取税 |
目的税 | 狩猟税 水利地益税 |
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市町村税 | 普通税 | 市町村民税 固定資産税 軽自動車税 鉱産税 特別土地保有税 |
市町村たばこ税 | |
目的税 | 事業所税 都市計画税 水利地益税 共同施設税 宅地開発税 国民健康保険税 |
入湯税 |
法定外普通税 | 法定外目的税 | |
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道府県税 | 石油価格調整税(沖縄県) 核燃料税(福井県、愛媛県、佐賀県、島根県、静岡県、鹿児島県、宮城県、新潟県、北海道、石川県) 核燃料等取扱税(茨城県) 核燃料物質等取扱税(青森県) |
産業廃棄物税(三重県・青森県・岩手県・秋田県・滋賀県・奈良県・山口県・新潟県・京都府・宮城県・福岡県・佐賀県・長崎県・大分県・鹿児島県・宮城県・熊本県・福岡県・愛知県・沖縄県・山形県) 産業廃棄物処理税(岡山県) 産業廃棄物埋立税(広島県) 産業廃棄物処分場税(鳥取県) 産業廃棄物減量税(島根県) 循環資源利用促進税(北海道) 資源循環促進税(愛知県) 宿泊税(東京都) 乗鞍環境保全税(岐阜県) |
市町村税 | 別荘等所有税(静岡県熱海市) 砂利採取税(神奈川県山北町) 歴史と文化の環境税(福岡県太宰府市) 使用済核燃料税(鹿児島県薩摩川内市) 狭小住戸集合住宅税(東京都豊島区) 空港連絡橋利用税(大阪府泉佐野市) |
山砂利採取税(京都府城陽市) 遊漁税(山梨県富士河口湖町) 環境未来税(福岡県北九州市) 使用済核燃料税(新潟県柏崎市) 環境協力税(沖縄県伊是名村・同県伊平屋村・同県渡嘉敷村) |
廃止されたものなど
- 国税
- 道府県税
- 市町村税
租税納付方式
- 決定方式
- 申告納税
- 賦課課税
- 自動確定方式
- 納付方式
- 申告納付
- 賦課徴収
- 源泉徴収
- 普通徴収
- 特別徴収
- 証紙徴収
日本における租税の歴史
ここでは、「中央政府の財源となるもの」と「地方政府の財源となるもの」を合わせて示す[6]。
弥生
- えつき(労役、兵役、絹、綿など税の総称)
- 税(たちから:穀物による物納)
- 調(みつぎ:穀物以外の物税)
- 役(えだち:労役)
飛鳥時代-奈良時代
- 公事(くじ:税の総称)
- 租(そ:口分田収穫の3%)
- 庸(よう:布の物納、男子のみ)
- 調(ちょう:絹、地方特産物を運搬納税)
- 調副物(ちょうのそわつもの:紫、紅、茜、麻、胡麻油、紙、鹿角、鳥の羽、砥石、塩、漆などから一種類を納入)
- 雑徭(ぞうよう:年60日間の労役)
- 歳役(さいえき:年10日間労役、庸との選択性)
- 兵役(へいえき:宮中警護、九州警護)
- 仕丁(しちょう:政府雑用)
- 出挙(すいこ:稲を種もみ用に貸し付け秋に5割の利息を回収)
- 義倉(ぎそう:雑穀を飢饉用に供出)
平安時代
鎌倉時代
- 年貢(ねんぐ:全収穫高の30~40%、別当とも)
- 公事(くじ:雑税。藁、むしろ、薪、炭、布、絹、塩、魚類など)
- 加地子(かじし:年貢以外の、小作料。下地とも)
足利時代
- 公用銭、臨時役(守護、地頭に課税、労役のかわりに金銭納付)
- 土倉役(どそうやく:質屋営業に課税)、酒屋役(さかややく:酒造業の酒壷数に応じて課税)
- 五山官銭(五山各寺の住持就任に対する謝礼金)、五山献銭(献上金)
- 段銭(たんせん:一国平均に田地の段数に応じてかけられた臨時税)、棟別銭(むねべつせん:社寺、朝廷の造営や修復許可料)、徳政分一銭(徳政令の手数料)
- 年貢、公事、夫役
- 関銭(せきせん:関所通行税)、津料(つりょう:入港税)
- 間別銭(都市居住税)
- 明朝頒賜、銅銭、抽分銭(外国貿易許可税)
- 勅役、天役、院役、神役、寺役、本家役、領家役、国役、武家役、守護役、陣夫、御家人役
- 座役(ざやく:座での独占販売権に対する免許税)
- 地子(じし:田、畑、林、家屋などの不動産保有税)
織豊時代
- 年貢(ねんぐ:収穫の3分の2)
- 夫役(ふえき:築城などの労役提供)
徳川時代
江戸時代後半の発展の理由の一つに、抜け穴だらけの検地(山奥の隠し田・米以外の畑は対象外)の結果、低税制であったからという事実がある[7]。
- 本途物成(ほんとものなり:年貢、米収穫の40-50%、一部銀、大豆による石代納が認められた)
- 小物成(こものなり:山林でのまき、炭、草の収穫に対して物納又は金銭で納税)
- 伝馬宿入用(宿場経費、高掛三役の一つ)
- 六尺給米(江戸城台所人夫費、高掛三役の一つ)
- 蔵前入用(浅草米蔵人夫費、高掛三役の一つ)
- 伝馬役(宿駅に人馬を提供、助郷役もこの一種である)
- 国役(朝鮮使節の道中入用や河川の修理費)
- 上納(参勤の期間短縮の見返りの米年貢、上げ米とも)
- 運上(農業以外の営業税)、冥加(本来は献金、後に営業税)
帝国時代
帝国時代初期には、税収に占める地租の割合が圧倒的であった。その後、1899年(明治32年)には、酒造税が税収に占める割合がトップに立った(28%)。また、消費税や課税等を合せた広義の消費税は、1907年には過半数を占めるまでになった。すなわち、明治年間を通じた税収の変化としては、地租優位から間接税優位の時代への移行が見られたといえる。
- 1873年 地租(国税、地租改正、地券表示の土地価格3%、現金納付)、地租付加税(地方税)、印紙税、駕篭税(1年間で廃止)
- 1875年 煙草税導入
- 1878年 船舶付加税
- 1882年 家屋税
- 1885年 醤油税(1926年廃止)
- 1887年 所得税
- 1888年 家屋税付加税
- 1896年 営業税(1926年廃止)、登録税、酒造税
- 1899年 法人税
- 1901年 砂糖消費税(1989年廃止)
- 1904年 消費税(石油と織物のみ)、非常特別税(第1次):戦費調達
- 1905年 相続税、非常特別税(第2次):戦費調達
- 1919年 戦時利得税:第一次世界大戦で多額の所得を得た者に課税
- 1927年 営業収益税、資本利子税、清涼飲料税、船舶付加税、電柱税導入:戦費調達
- 1937年 有価証券移転税、外貨債特別税、揮発油税、セメント税、麦粉税、南洋群島臨時通行税導入:戦費調達
- 1937年 揮発油税導入
- 1940年 法人税法が所得税法から独立。 物品税(1989年廃止)、通行税、入場税(1948年に地方移譲、1954年から1989年までは国税として再度課税)導入:戦費調達
- 1941年 写真撮影税、馬券税、美容整形税導入:戦費調達
- 1942年 広告税(1946年廃止)、馬券税(1948年廃止)
国民主権時代
- 1946年 財産税:10万円以上の財産を所有する個人に一度限りの課税。戦時補償特別税:戦時補償請求権に100%課税。
- 1947年 贈与税、事業税、電気ガス税、軌道税、軌道税付加税の創設
- 1948年 固定資産税の創設:前年に国税の地租が廃止された。取引高税創設:主食、味噌、醤油、家賃、入浴料を除く取引高に1%の税率で課税され、取引高税印紙で納入。1年で廃止された。
- 1949年 シャウプ勧告。日本の戦後税制の土台となった。第二次世界大戦後、連合軍は、民主的な政府の下で平等な生活をさせたい考え、当時としては実験的な直接税中心の税制を日本に持ち込んだ[8]。
- シャウプ勧告以降
- 1950年 付加価値税の創設(実施されず。)
- 1951年 国民健康保険税の創設
- 1952年 漁業権税の廃止
- 1954年 不動産取得税、道府県たばこ消費税、市町村たばこ消費税の創設。付加価値税の廃止。
- 1956年 軽油引取税、都市計画税の創設
- 1963年 狩猟者税の廃止と狩猟免許税及び入猟税の創設
- 1968年 自動車取得税の創設
- 1969年 宅地開発税の創設
- 1971年 自動車重量税の創設
- 1973年 特別土地保有税の創設
- 1974年 電気ガス税から電気税とガス税が分離
- 1975年 事業所税の創設
- 1978年 石油税の創設:オイルショックに基因
- 1979年 狩猟免許税が狩猟者登録税に名称変更
- 1985年 たばこ消費税の創設:日本たばこの創設に基因
- 消費税施行以後
- 1989年 消費税の創設。砂糖消費税、物品税、入場税、トランプ類税、通行税(以上、国税)、電気税、ガス税、木材引取税(以上、地方税)の廃止。料飲飲食等消費税が特別地方消費税に、娯楽施設利用税がゴルフ場利用税に、道府県たばこ消費税が道府県たばこ税に、市町村たばこ消費税が市町村たばこ税に変更
- 1992年 地価税の創設
- 1997年 地方消費税の創設
- 1998年 日本銀行券発行税の廃止
- 1999年 有価証券取引税、取引所税の廃止
- 2000年 特別地方消費税の廃止
- 2003年 石油税が石油石炭税に変更
- 2004年 狩猟者登録税、入猟税の廃止と狩猟税の創設
税収の推移
国税(一般会計・特別会計)収入
財務省の統計を参照(単位:億円)
- 平成17年度 522,905(同年度租税総額の60.0%)
- 平成16年度 481,029
- 平成15年度 453,694
- 平成14年度 458,442
- 平成13年度 499,684
- 平成12年度 527,209
- 平成11年度 492,139
- 平成10年度 511,977
- 平成9年度 556,007
地方税収入
総務省の統計を参照(単位:億円)
- 平成17年度 348,044(同年度租税総額の40.0%)
- 平成16年度 335,388
- 平成15年度 326,657
- 平成14年度 333,785
- 平成13年度 355,488
- 平成12年度 355,464
- 平成11年度 350,261
- 平成10年度 359,222
- 平成9年度 361,555
脚注
- ↑ 石川県租税教育推進協議会ホームページ「税の種類とあらまし(48種類)」2014年4月25日閲覧(国税全般の直間内訳および地価税・国民健康保険税の分類の出典)。財務省ホームページ「国税・地方税の税目・内訳」2014年4月25日閲覧(復興特別所得税の出典)。総務省ホームページ「地方税の概要」(租税体系・道府県税の概要・市町村税の概要)2014年4月25日閲覧(地方税の普通税・目的税および直接税・間接税の内訳の出典)。
- ↑ 課税対象は2012年4月1日から2014年3月31日までに開始した事業年度。(「所得税法等の一部を改正する法律案要綱」2014年、p.53)
- ↑ 1999年度以後は課税が停止されている。(国税庁ホームページ「平成10年度 地価税 - 概要」2014年4月25日閲覧<)
- ↑ 法定外税を除く。
- ↑ 総務省ホームページ「地方税の概要」(法定外税の概要)2014年4月27日閲覧。
- ↑ なお、「中央政府の財源となるもの」と「地方政府の財源となるもの」の区分について、「庸・調は中央政府の財源になるのに対して、田租は、主として地方財政の財源とされた」とする説もある。『続日本紀1』直木孝次郎 他 訳注,平凡社(東洋文庫)1986年、19頁より
- ↑ 若田部昌澄 『もうダマされないための経済学講義』 光文社〈光文社新書〉、2012年、54頁。
- ↑ 中谷巌 『痛快!経済学』 集英社〈集英社文庫〉、2002年、188頁。