印紙税
印紙税(いんしぜい)は、印紙税法(昭和42年5月31日法律第23号)に基づき、課税物件に該当する一定の文書(課税文書)に対して課される日本の税金。
目次
印紙税の歴史
世界の印紙税
- 1624年 - オランダで八十年戦争の戦費調達のため、税務職員ヨハネス・ファン・デン・ブルックが発明。
- 1660年 - デンマークで導入
- 1673年 - フランスで導入
- 1694年 - イギリスで導入
- 1765年 - イギリスで印紙法成立。アメリカ植民地で導入
日本の印紙税
課税文書
課税文書は、印紙税法の別表第一に掲げられている1号から20号までの文書である。以下、課税文書につき簡記する。
- 不動産等の譲渡契約書、地上権または土地の賃借権の設定または譲渡の契約書、消費貸借契約書、運送契約書[1]
- 請負契約書
- 約束手形、為替手形
- 株券、出資証券、社債券、投資信託等の受益証券
- 合併契約書、分割契約書、分割計画書
- 定款
- 継続的取引の基本契約書
- 預貯金証書
- 貨物引換証、倉庫証券、船荷証券
- 保険証券
- 信用状
- 信託契約書
- 債務保証契約書
- 金銭、有価証券の寄託契約書
- 債権譲渡契約書、債務引受契約書
- 配当金領収証、配当金振込通知書
- 金銭又は有価証券の受取書 但し、医療法に基づく医療法人が作成した受取書は非課税(印紙税法基本通達別表第一 第17号文書の27[2])
- 預貯金通帳、信託通帳、銀行・無尽会社の掛金通帳、生命保険会社の保険料通帳、生命共済の掛金通帳
- 1・2・14・17の文書により証されるべき事項を付け込んで証明する目的で作成する通帳
- 判取帳
上記の文書に該当しないものは非課税である。また課税文書でも各号ごとに非課税要件を定めている。主なものを挙げると、
- 5万円未満の17号に該当する契約書(売上代金に係る金銭の受取書等)。2014年3月31日までは「3万円未満」だった[3]。
- 1万円未満の1号、2号、8号、15号に該当する契約書
- 建物の賃貸借契約書
- 委任状または委任に関する契約書
- 営業に関しない金銭の受取書(個人が生活の用に供している土地建物を譲渡する場合等)
- 質権・抵当権の設定または譲渡の契約書
課税標準・税額
課税標準および税額は、同法の別表第一に掲げられている各号ごとに細かく分けられている。税額で最も安価なのは、上記8~16号・18号や、契約金額の記載されていない文書[4]等の200円である。なお、契約金額を変更する契約書の場合、変更前の契約金額を証明した契約書が作成されていることが明らかな場合、契約金額を増加させる場合はその増加金額を記載金額とし、契約金額を減少させる場合は契約金額の記載のない文書として扱う。
不動産の譲渡に関する契約書に2つ以上の記載金額がある場合(一度に複数の物件を譲渡する場合等)、これらの金額の合計額が不動産の譲渡に関する契約書の記載金額となる。不動産の交換契約の場合、交換対象物の双方の価格が記載されている場合は、交換差金の額にかかわらず、いずれか高い方の金額が記載金額となる。交換差金の額のみが記載されている場合は、その交換差金の額が記載金額となる。
課税主体・納税義務者
課税主体は、国である。
納税義務者は、課税文書の作成者である。なお、例えば契約書のように2以上の者が共同して作成した課税文書に対する印紙税については、その2以上の者が連帯納税義務を負うこととされる。代理人が代理人名義で作成した文書の場合は、納税義務者は本人ではなく代理人となる。また、文書の作成ごとに課税されるため、例えば仮契約・本契約というように二度文書を作成すれば、それぞれに課税される。
国・地方公共団体が作成する文書は非課税である。なお国・地方公共団体と私人が共同作成した文書の場合、私人が作成して国・地方公共団体が保管するものは課税されるが、国・地方公共団体が作成して私人が保管する文書は非課税である。およそ2通作成して各自1通ずつ保有する場合、国・地方公共団体側が印紙税の消印をされている方を保有する。
過怠税
過怠税(かたいぜい)は、印紙税法20条に基づき、印紙税をその課税文書作成時までに納付しなかった場合に課せられる。
過怠税の金額は、原則としてその納付しなかった印紙税額の3倍(最低額は1,000円)とされる。ただし、自主的にその不納付を申し出るなど一定の要件を満たせば、不納付額の1.1倍とされる。また、印紙を適切な方法で消印しなかった場合には、消印されていない印紙の額面に相当する金額の過怠税が徴収される。印紙税は原則、税法上その期の費用(損金)として認められているが、過怠税は税法上、費用(損金)に算入することができない。
納税方法
印紙税の納税方法にはいくつかの方法がある。申告納付にする場合は管轄税務署の承認を受ける必要がある。
- 課税文書に収入印紙(切手と酷似した額面が印刷された金券で、郵便局の郵便窓口や郵便切手類販売所などで販売されている。ただし郵便には使用できない)を貼り、消印する。消印は印章または署名で行わなければならない。ただし消印は作成者自身のものである必要はなく、代理人や使用人のものでもよい。
- ただし、規定の位置に収入印紙を貼り付ける代わりに「印紙税申告納付につき○○税務署承認済」印を押印する場合があり、その場合は3乃至4の方法と同様となる
- 税務署に課税文書を持ち込んで、税額を納付して税印を押してもらう。
- 印紙税納付計器(郵便でいうメータースタンプに相当)の設置許可を受け、税額を納付して納付印を押す。
- 毎月継続的に作成されたり、特定日に大量に作成される定型的な課税文書につき、書式表示を行い、毎月作成数量を申告するとともに税額を納付する。
- 預貯金通帳等につき、4月1日から3月31日までの1年間に作成するものに係る税額を金銭で納付する[5]。
過誤納となったときの処理
課税文書が何らかの理由(書損じた場合等)で使用する見込みがなくなった場合や、課税文書に正しい金額を超えて収入印紙を貼ってしまった場合は、印紙税法第14条第1項・第2項、印紙税法施行令第14条第1項・第4項の規定により「印紙税過誤納[確認申請・充当請求]手続」を管轄税務署で行うことにより、印紙税の還付や充当を受けることができる。この場合、確認申請書又は充当請求書と一緒に過誤納となった事実を証明するために、その文書を提示しなければならない。税務署で確認後、1か月程度で確認申請書又は充当請求書で指定した方法で、印紙税が還付又は充当される。なお、印紙部分には確認印が押され、返却される。以下の場合に過誤納となる。
- 書損等
- 課税文書の用紙が、用紙の書損、損傷、汚染などにより使用する見込みがなくなった場合。
- 納付額超過
- 印紙税の額が、印紙税法に規定する正しい税額を超える場合。
- その他の事由
- 課否判定誤り
- 印紙税の納付の必要がない文書に誤って収入印紙を貼付したり納付印を押した場合(例えば5万円未満の領収書に印紙を貼付してしまった場合など)。
- 二重納付
- 印紙税納付等の特例を受けた課税文書について、特例方法以外の方法により相当金額の印紙税を納付した場合。
- 税印の取りやめ等
- 税印による納付の特例を受けるために印紙税を納付したが、税印の押捺の請求をしなかった又は請求を行ったが棄却された場合。
- 被交付文書
- 印紙税納付計器の設置者が被交付文書に対する納付印押捺の承認を受けていないにもかかわらず、交付を受けた課税文書に納付印を押した場合。
- 納付計器の廃止等
- 印紙税納付計器による納付の特例を受けるため印紙税を納付したが、印紙税納付計器の設置の廃止等により当該納付計器を使用しなくなった場合。
税収の推移
印紙税の税収がいくらかを正確に把握することは困難である。なぜならば、印紙税の納税は、印紙を購入することにより行われるのではなく、原則的には印紙を文書に貼って、消印することにより行われるからで、これらの行為を逐一把握することは事実上不可能だからである。収入印紙も参照。
ここでは、下記に参考として財務省の統計から、印紙の売り捌き(うりさばき)収入の推移を掲げる。
年度 | 収入額(単位:100万円) |
---|---|
1997 | 1,681,076 |
1998 | 1,608,442 |
1999 | 1,561,493 |
2000 | 1,531,799 |
2001 | 1,428,773 |
2002 | 1,363,750 |
2003 | 1,165,079 |
2004 | 1,135,024 |
2005 | 1,168,832 |
脚注
関連項目
外部リンク
- 印紙税(国税庁タックスアンサー)pl:Opłata skarbowa