成駒
成駒(なりごま)とは、将棋などのボードゲームにおいて、ある特定の行動をした駒が、別の動きが出来るように変化したものである。一度成ると、本将棋で敵に取られて持ち駒とならない限り、元の駒には戻れない。
世界の将棋類の「成り」
将棋
将棋では駒を裏返すことで成駒になったことを示す。駒の裏には成駒の名前が書かれており、成れない駒は裏に何も書かれていない。成駒になる前の駒を「生駒」、駒が成駒に変わることを「成る」、成れる状況ながら作戦上あえて成らないことを「不成」(ならず)という。不成が認められていない(成れる状況では必ず成らなければならない)駒も存在する。
駒により成駒は様々で成駒になって強くなるものもあるが、なかには全く動きが変わらない駒や弱くなる駒もある。駒の成り方は将棋によって二つに分けられる。
- 敵陣に侵入したとき。
- 本将棋・中将棋・大将棋・天竺大将棋・大局将棋等の多くの将棋がこれに相当する。不成を選択することができる(不成の結果、行き所がなくなる場合は成らなければならない)。また侵入後に敵陣内で駒を移動させている限り何度でも移動後成るかを選択できるほか、敵陣内から出した直後にも成ることができる。持駒を相手の陣地に打ったからと言っても成った状態では打てないが、相手の陣地に打った後すぐに移動させれば成れる。
- 駒を取ったとき。
- 大大将棋・摩訶大大将棋・泰将棋の場合がこれに相当する。また中将棋では敵陣の駒を取ったとき、廣将棋では特定の駒を取ったときに成ることもある。中将棋で敵陣の駒を取ったときを除き、不成を選択することはできない。
将棋類の成駒は、成駒の動きと元の駒の動きとの関係で次の4つに分類することができる。多くは類型1または類型2である。
- 類型1:成駒の動きが元の駒の動きを完全に含んでいるもの。つまり成ると完全に強くなるもの。
- 類型2:成ると新しい動きが加わると同時に元の駒の動きの一部または全部を失うもの。
- 類型3:成っても動きが全く変わらないもの。
- 類型4:元の駒の動きが成駒の動きを完全に含んでいるもの。つまり成ると完全に弱化してしまうもの。
これらの他に、成ることのできない駒がある。
本将棋の場合は次の通り。
- 類型1:飛車→竜王(斜めに1マス動けるようになる)、角行→竜馬(縦横に1マス動けるようになる)、歩兵→と金(斜め前、横、後ろに1マス動けるようになる)、
- 類型2:銀将→成銀(横、後ろに1マス動けるようになるが、斜め後ろに動けなくなる)、桂馬→成桂(前後左右、斜め前に1マス動けるようになるが、元々の桂馬の動きは失われる)、香車→成香(斜め前、横、後ろに1マス動けるようになるが、1手で2マス以上前進できなくなる)
- 類型3・類型4:該当なし
- 成ることのできない駒:玉将、金将
中将棋の場合は次の通り。
- 類型1:醉象→太子(後ろに1マス動けるようになるだけでなく、玉将と同じ働きを持つようになる)、香車→白駒、麒麟→獅子、盲虎→飛鹿、角行→龍馬、反車→鯨鯢、龍王→飛鷲、龍馬→角鷹、飛車→龍王、歩兵→金将(と金)
- 類型2:金将→飛車、銀将→竪行、銅将→横行、猛豹→角行、鳳凰→奔王、竪行→飛牛、横行→奔猪、仲人→醉象
- 類型3・類型4:該当なし
- 成ることのできない駒:玉将、獅子、奔王
大将棋の場合は次の通り。
- 類型1:中将棋のものに加えて、鐵将→金将、石将→金将、悪狼→金将、嗔猪→金将
- 類型2:中将棋のものに加えて、桂馬→金将、猫刄→金将、猛牛→金将(特に敵陣の最も奥の段で成る場合は類型4と同じになる)、飛龍→金将
- 類型3・類型4:該当なし
- 成ることのできない駒:中将棋と同じ
類型4の例としては次のようなものがある。
- 摩訶大大将棋:夜叉→金将、狛犬→金将、金剛→金将
- 泰将棋:夜叉→金将、狛犬→金将、金剛→金将、飛鷲→金将、角鷹→金将、奔獏→金将、奔鬼→金将、鳩槃→金将、天狗→金将、金翅→金将、白象→金将、青龍→金将、白虎→金将、前旗→金将、玄武→金将
- 大局将棋:禽曹→禽吏
また、類型2であるが、成ることによるメリットが極めて少なく、デメリットの特に大きいものの例として、次のようなものが挙げられる。
- 平安大将棋:飛龍→金将、横行→金将
- 摩訶大大将棋:角行→金将、飛車→金将、鉤行→金将、右車→金将、左車→金将、摩羯→金将
- 泰将棋:角行→金将、飛車→金将、鉤行→金将、右車→金将、左車→金将、摩羯→金将、白駒→金将、鯨鯢→金将、飛牛→金将、走車→金将、孔雀→金将、兵士→金将、朱雀→金将
- 大局将棋:猛龍→大龍
チェス
チェスでは「プロモーション」(昇格)と呼ばれていて、ポーンだけが成ることができる。敵陣の最終行に達したポーンは、次のいずれかの駒に昇格できる。
通常は最強のクイーンに昇格するが、戦略的にクイーン以外の駒に昇格する場合もある。詳細は「プロモーション」を参照のこと。
シャンチー・チャンギ
シャンチーおよびチャンギには成って駒を裏返すことはないが、シャンチーでは河界を越えた兵(卒)はそれまでの前方1目に加え、左右にも1目動けるようになる。チャンギには本来成れる駒は存在しないが、最近提案された韓国将棋協会東京支部新ローカルルールでは、兵・卒が敵陣の一番奥まで前進したと同時に、自分のそれまでに取られた駒(「士」以外)のどれかと交換することができる。
マークルック
マークルックでは、ビア(歩兵およびポーンに相当)が敵陣の3段目に到達したら、裏返してビアガーイと呼ばれる駒になる。ビアガーイの動きはメット(斜め四方に1マスずつ進める)と同じ動きになる。
シットゥイン
シットゥインでは、敵陣の対角線上のマスに到達した兵が、将に成ることができる。ただし将が盤面に残っているときは成ることはできない。また、成れる場面であっても「不成」を選択することもできる。成るときには兵と将の駒を取り替える。
シャトランジ
シャトランジでは、敵陣の一番奥に達したバイダーク(兵)がフィルツァーン(将)に成る。いくつでも成ることができる。
チャトランガ
チャトランガでは、敵陣の一番奥に達したパダチ(兵)は、初期配置で同じ列にあった種類の駒に成る。すなわち、左から3列目のガジャ(象)のいる列のパダチは、ガジャに成る。