巨泉×前武ゲバゲバ90分!
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『巨泉×前武ゲバゲバ90分!』(きょせん・まえたけゲバゲバきゅうじゅっぷん)は、1969年10月7日から1970年3月31日、および1970年10月6日から1971年3月30日まで日本テレビ系列局で放送されたバラエティ番組である。
解説
放送作家出身の大橋巨泉・前田武彦が司会。生放送内での2人の掛け合いで番組が進行し、録画撮影によるナンセンスなショートコントをアイキャッチで挟んで矢継ぎ早につないでいく演出手法をとった。番組自体は当時米NBCで放送されていたコント番組『ラフ・イン(Rowan & Martin's Laugh-In)』がモデルとなっている。ハナ肇の「アッと驚く為五郎」や巨泉の「うーしししし」は流行語にもなった。
予算をふんだんに掛け、制作時間をたっぷり取り、収録中一度でもNGを出したネタは二度と収録しないといった、豪華な造りであった。放送作家陣が作り上げるネタの台本は、ディレクターの一人である齋藤太朗によれば「通常の番組の台本がB5版のところ、『ゲバゲバ』の台本はB4版で3センチぐらいの厚さだった」という[1]。当然ボツになったネタも膨大な量に上り、齋藤は「1回分のボツ原稿を積み上げると1メートルぐらいになった」と語っている[1]。
進行は台本に完全に忠実でアドリブは一切許されず、一見雑談に見えるような所でも全て台本どおり展開されていた。前田武彦が一言二言アドリブをいれただけで「台本どおりにやれ。」と怒鳴られた程であったという。ただし藤村俊二は当時を振り返った際に、台本を譜面に例えた上で「僕らはそこで、いかにアドリブで演奏するか、という作業が面白かった」と語っており[2]、実際には出演者のアドリブによる演技も多々行われていたようだ。基本的に1回の収録には丸二日間を費やしていたが、1日の収録では約100本のギャグを収録し、セットチェンジや照明の直し・リハーサルを含めると1本録るのに約7分かかる計算であったため、休憩を考慮に入れずNGが全くなかったとしても最低で11時間半はかかるという長丁場であった[3]。
また、後に大橋巨泉は日経BPのインタビュー記事(2006年1月27日付)で「ゲバゲバでもアドリブを言っていいのは僕と前田(武彦)さんと欽ちゃん(萩本欽一)だけだったんです」と語っている。
プロデューサーの井原高忠はあまりの手間のかかりように「あんな番組はバカバカしくて俺達が若返らない限り誰もやろうとする奴はいないだろう」と後に述べている。ディレクターの齋藤も当時の井原の様子を「サブコン(副調整室)でブドウ糖を打ちながら、酸素ボンベを脇において、酸素を吸いながらやってた」「(スタッフへの指示のため)とにかくしゃべり続けてないといけないから、酸欠になっちゃうのだ」と回想しているところからも[3]、その過酷さがうかがえる。
3回目となる1969年10月21日放送分では、生放送部分に新宿駅前で全学連がデモ行進する模様(10.21国際反戦デー闘争 (1969年))を挿入し、スタジオの巨泉・前武と小田急百貨店屋上からリポートするNTVアナウンサーであった久保晴生との掛け合いも放送された。
この番組の後、『ゲバゲバ一座のちょんまげ90分!』というタイトルに変更し、内容を時代劇風にアレンジした番組がつくられている。さらに、1982年3月30日にリバイバル作品『ゲバゲバ90分!+30』が製作された。またこの間の1976年4月29日には、日本の当時のアイドル歌手・野口五郎と、アメリカの操り人形「マペット」による特別版『輝け!五郎・マペット ゲバゲバ90分!』が、同局の『木曜スペシャル』で放送された。
『巨泉×前武ゲバゲバ90分!』は、ナイターオフ編成の番組であり、ナイター時期は放送されず、ナイター時期は、毎週日曜日の昼下がりに『巨泉×前武ゲバゲバ60分!』あるいは『巨泉×前武ゲバゲバ30分!』とギャグの部分だけを編集した再放送番組を放送した[4](下記を参照。現在、横浜市の放送ライブラリーにおいて『ゲバゲバ60分!』の1本分が公開されている)。
タイトルの由来
「ゲバゲバ」は小林信彦が命名。「ゲバゲバ」の「ゲバ」は「ゲバルト」(独:gewalt、暴力。当時の学生運動などで国家権力に対する実力闘争を表す言葉として多用された。)からきている。当時既に低予算・タレント任せの安易な企画で粗製濫造されていたテレビバラエティ番組に対する警鐘として「ゲバルト」を用いた。
スタッフ
- プロデューサー→企画:井原高忠
- 演出→プロデューサー:仁科俊介
- 演出:齋藤太朗・田中知己
- 音楽:宮川泰・前田憲男
- 総監修:三木鶏郎
- 構成:井上ひさし・奥山侊伸・田村隆・松原敏春・喰始・林家こん平・キノトール・浦沢義雄・河野洋・津瀬宏、他合計42名の放送作家を動員
- 製作著作:日本テレビ
出演
- 小松方正、宍戸錠、常田富士男、藤村俊二、萩本欽一、坂上二郎、大辻伺郎、熊倉一雄、朝丘雪路、松岡きっこ、小川知子、岡崎友紀(第2期のみ)、うつみみどり(現・うつみ宮土理)(第1期のみ)、吉田日出子(第1期のみ)、野川由美子、宮本信子、沖山秀子(第1期のみ)、小山ルミ、キャロライン洋子(第2期のみ)、ジュディ・オング(第1期のみ)、太田淑子(第1期のみ)、七海水帆子、野呂圭介(第1期のみ)、石崎恵美子(第1期のみ)、左卜全(詳細不明)、ハナ肇
- 出演者についての備考
コーナー
- アッと驚くタメゴロー
- アニメ「ゲバゲバ・ピー」
- テレビ番組パロディ
- 第1期のみ。『なんでもやりまショー』ならぬ『いい加減にやりまショー』(当時ワンコーナーの「どっきりカメラ」は「びっくりカメラ」に)、『象印スターものまね大合戦』ならぬ『カバ印スターものまね大乱戦』、『肝っ玉かあさん』ならぬ『肝っ玉父さん』、『サインはV』ならぬ『サインはH』(これはDVDにも収録されている)、『お笑い頭の体操』ならぬ『大笑い頭の運動』(巨泉は出ず)や、『夜のヒットスタジオ』と『11PM』の合体パロディ『夜のヒットイレブン』(前武は出演)など。最終回はセルフパロディ『巨泉×前武ゲバゲバ90秒』で、巨泉・前武を始めとする全出演者がチャカチャカ動き回っていた。
- ある異常な団体に起った普通の出来事
- 一日一善友の会会員たちのコント。
- 言いたいこと言ってら〜Say Say
- iFもし……
- 「もし…だったら」をテーマにしたコント。「ドアが開かなかったら」などがある。
- エンディング開けのギャグ
- 「剣の達人」などがある。
- OH!マイホーム
- 「なぐりあい家族」や「神頼み家族」などがある。
- 大人のための子供のうた
- 「かくれんぼ」や「春よ来い」、「春が来た」などがある。
- 巨泉のある人生
- ゲバゲバ今週の大クイズ!
- コドモとオトナのトーク
- キャロライン洋子が大橋巨泉や朝丘雪路などとトークをする。
- 今週のおすすめ
- 「内職」などがある。
- 今週の時代劇
- 「加賀の千代女」などがある。
- 今週の特集
- 「メロドラマ」や「極悪非道オールスター」、「別荘悲話」、「イエロー・リボン賞受賞前夜」などがある。
- CM開けギャグ
- 「ネズミの巣」や「剣の達人」、「時代劇」、「タンカ」、「喫茶店」などがある。
- ショート・アニメ
- 「ゲバゲバおじさんの連ギャグ」や「ミュージック・ギャグ」などがある。
- ショート・ギャグ
- 「ボクシング」や「マニキュア」などがある。
- タップダンス
- 宍戸とゲバゲバおじさんが出演する、アニメ合成作品。
- タメゴロー
- 「花畑のタメゴロー」や「ロバとタメゴロー」、「マネキンとタメゴロー」、「雪中のタメゴロー」、「雲上のタメゴロー」などがある。
- 生放送エンディング・トーク
- 生放送オープニング・トーク
- 生放送トーク
- 日本わらべ唄考
- フィルム・トーク
- 「寒い」などがある。
- 武道
- 大橋巨線主演。
- モノマネ・トーク
- 前田が永六輔のものまねをして、巨泉主演の「武道」を紹介する。
- ロケ・フィルム
- 「ゴーゴー・ダンス」や「公園のオブジェ」、「釣り」、「水着でジャンプ」、「海岸のアベック」などがある。
ショート・ギャグ
- 家風呂
- ソファ
- 萩本出演。
- エレベーター
- アニメ合成作品。
- 回転ドア
- キャロラインらが出演。
- 歌舞伎
- ガンマン
- アニメ合成作品で、宍戸が出演。
- 逆回転工事現場
- 靴磨き
- 小松らが出演。
- 玄関
- 高座
- 工事現場
- 作曲
- アニメ合成作品。
- サンタクロース
- 自画自賛
- 前田出演。
- 指揮者
- 熊倉出演。
- 受話器
- 宍戸出演。
- スタジオ内大移動
- 朝丘出演。
- タイプライター
- テレビ
- 萩本出演。
- 投げキッス
- 藤村と松岡が出演するアニメ合成作品。
- ハンター
- 巨泉出演。
- 火の用心
- 萩本出演。
- ブラで目かくし
- フルート
- アニメ合成作品で、藤村が出演。
- ベッドと電話
- ボクサー
- ボクシング
- 藤村らが出演。
- マニキュア
- 無線
- 大辻出演のアニメ合成作品。
- 餅
- 藤村出演のアニメ合成作品。
- ランプ売り場
- 坂上と吉田が出演。
- 列車の椅子
- 萩本と熊倉が出演。
アニメーション
アイキャッチなどのこの番組で流れるアニメーションは木下蓮三とスタジオロータスが製作。主に登場したのは「ゲバゲバおじさん」と呼ばれるキャラクターだが、関係者の話によると、ゲバゲバおじさんのモデルは木下本人であるという。その後、木下蓮三とスタジオロータスは後に『カリキュラマシーン』などのアニメーションも制作した。
アイキャッチで「ゲバゲバおじさん」がアカンベーをする時のサウンド・ロゴ「ゲバゲバ“ピィーッ”」の「ピィー」は、アポロ11号の交信音(“Go Ahead”の信号)からとっている。後にNTTドコモのPHS「ドラえホン」のCMでパロディ化された。
テーマ曲
宮川泰の作曲した印象的な行進曲調のオープニングテーマは、1998年にバップより『ゲバゲバ90分!!ミュージックファイル』としてCD化された。また、CMやテレビ番組のBGMに使われていることもある。
- 1998年 アメリカのバンドセイヴ・フェリス(en:Save Ferris)によるカヴァー。ホンダ・HR-Vで使用。
- 1999年 OVA『てなもんやボイジャーズ』のオープニングテーマ。
- 2005年 キリンビールのビール風味アルコール飲料『キリン のどごし<生>』(山口智充出演)のCM。
- テレビ東京「ペット大集合!ポチたま」のまさお君が行くポチたまペットの旅のオープニングテーマ(2006年秋まで)
- 関西を中心に展開するドラッグストアチェーン「ダイコクドラッグ」の店内BGM(但しメロディーが微妙に異なる)。
DVD-BOX
長年に渡って当時のVTRがあまり残っていないとされてきたが、日本テレビが東京都千代田区麹町の旧社屋から東京都港区汐留の現社屋「日テレタワー」へ移転する作業の際に倉庫を整理していた所、当番組の旧式ビデオテープが発掘された。これを受けて日本テレビの技術スタッフが映像の修復作業を試み(修復を担当したのは現在でも旧型機材を保有する「有限会社レトロエンタープライズ」である)、再生に成功した映像を集めたDVD-BOX傑作選が2009年4月22日に発売された[5]。これに先立ち、2009年4月19日の14:00‐15:00に、日本テレビローカルで『あの伝説のお笑い番組がよみがえる!巨泉×前武のゲバゲバ90分!』というスペシャル番組が放送された。司会進行は中山秀征と夏目三久(当時日本テレビアナウンサー)で、アンジャッシュと大島麻衣が出演。
脚注
関連項目
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