天体望遠鏡

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テンプレート:出典の明記 天体望遠鏡(てんたいぼうえんきょう)とは、天体[1]を観察するための装置である。

光学的な装置で肉眼に見えるようにするものは「光学望遠鏡」と呼ばれるほか、「電波望遠鏡」「赤外線望遠鏡」など、可視光線外の電磁波を観測対象にしたものもある。

光学望遠鏡

光学望遠鏡は、その光学系の原理によって大きく反射式屈折式カタディオプトリック式の3種類に分類される。また望遠鏡を載せる架台の違いによって、赤道儀式経緯台式に分かれる。

屈折望遠鏡

屈折望遠鏡(refracting telescope)はレンズを組み合わせた望遠鏡である。レンズによって分散が起こるため色収差を生じる。ほとんどの場合、色収差を抑えるために分散が異なる硝材で作られた複数のレンズを組み合わせて使用する。通常は可視光のうちC線(赤、656.27nm)とF線(青、486.13nm)の2つの波長に対して球面収差コマ収差を取り除いたものをアクロマート、これらにg線(紫、435.83nm)も加えた3つの波長に対して球面収差とコマ収差を取り除いたものをアポクロマートと呼ぶ[2]

オランダ式(ガリレオ式)

歴史上最初に作られた望遠鏡は屈折式で、凸レンズを対物レンズに、凹レンズを接眼レンズとして使用したものだった。この望遠鏡の発明者は諸説があって明確ではないが、1608年オランダのメガネ職人ハンス・リッペルスハイが特許申請した記録が残っている。このため、この方式の望遠鏡はオランダ式望遠鏡と呼ばれる。ただ日本などではこの方式の望遠鏡で多くの発見をしたガリレオ・ガリレイの話と共に伝来した歴史からなのかガリレオ式望遠鏡と呼ばれることが多い。現代の屈折望遠鏡は後述するケプラー式望遠鏡が主流だが、ガリレオ式は高倍率を出しにくい反面、低コストで正立像を得られることからオペラグラスなどに用いられている。

ケプラー式

ケプラー式望遠鏡ヨハネス・ケプラーが考案した屈折望遠鏡で、対物レンズ、接眼レンズの両方に凸レンズを用いるものである。高い倍率にしても視野が狭くならないという利点がある。このため反射望遠鏡の出現以前には天体観測に広く使われた。倒立像になるのが欠点とも言えるが、天体用としては倒立像で問題はない。

ケプラーは経済的に苦しかったので良質なガラスが入手できず仕舞いで、実現したのはガラス技術が急速な進歩をとげた後年、他者の手によってであった。

ガリレオ式に勝ることが知られるとすぐに改良がなされて、光路の途中に正立レンズや反射系を挿入して正立像が見られる(これもケプラー自身の発明)ようにしたものは地上用として世界的に普及した。現在でも野外観察や射撃用の望遠鏡などはこの形式を踏襲しており、スポッティングスコープw:Spotting scope)やフィールドスコープと呼ばれる。

反射望遠鏡

反射望遠鏡(reflecting telescope)は凹面鏡などの反射鏡を組み合わせて遠方の像を拡大する望遠鏡である。レンズを用いないため色収差を生じず、また大口径の望遠鏡を作ることが可能という利点がある。

ニュートン式

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ニュートン式望遠鏡
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ニュートン式望遠鏡

ニュートン式望遠鏡またはニュートン式反射望遠鏡と呼ばれる。凹面鏡(主鏡)で反射させた光を、光軸上前方に置いた斜め45度の平面鏡で横方向に取り出したあとレンズを通して覗く方式である。別記のジェームス・グレゴリーが考案して著書に記載した方式をもとに改造した。 従来日本ではアイザック・ニュートンが反射望遠鏡の発明者であるとして奉られることが多かったが、正しくは反射望遠鏡の発明者はグレゴリーであり、ニュートンはあくまでも「ニュートン式の考案者」である。 ニュートン式は放物面鏡(口径比が大きいものは球面鏡でも代用可能)1枚と平面鏡1枚とレンズだけという簡素な構成であり、低コストで比較的大口径のものを製作可能であることから個人での自作を試みる者も多く、古くから製作、観測の両面からアマチュアの入門用として愛用されている。接眼部が鏡筒の前方に位置するため、大型のものでの観測は困難である。

カセグレン式

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カセグレン式望遠鏡

カセグレン式望遠鏡は主鏡の光軸上前方に双曲面の凸面鏡(副鏡)を対向させ、主鏡の中央の開口部から鏡面裏側に光束を取り出して接眼レンズに導く方式の望遠鏡である。17世紀のフランスの司祭ローラン・カセグレンによって発明された。またカセグレン式から派生した光学系として、広い視野に渡って良い星像を確保するために、主鏡に双曲面、副鏡に高次非球面を用いて収差を高度に除去したリッチー・クレチアン式光学系や、主鏡に楕円面、副鏡に球面を用いて鏡面研磨を容易にしたドール・カーカム式光学系もある。これに対して古典的な放物面主鏡+双曲面副鏡の組み合わせによるものをクラシカル・カセグレン光学系と呼ぶことも多い。

カセグレン式光学系を用いたアマチュア向けの市販品小型望遠鏡は少ないが、大型望遠鏡の場合には鏡筒後部の低い位置に撮像装置などを取り付けられるため、カセグレン焦点はほぼ必ず設けられている。

グレゴリー式

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グレゴリー式望遠鏡

グレゴリー式望遠鏡はイギリスのジェームス・グレゴリーによって考案され1663年の著書に記載されて公表された。反射望遠鏡の発明者はニュートンではなくグレゴリーである。主鏡は放物凹面鏡、副鏡は楕円凹面鏡。主鏡の中央に穴があってそこから光を後方に導く方式である。 アイザック・ニュートンはこの著書を参考に、1672年に楕円凹面鏡を簡単な平面鏡に変えた小型望遠鏡を製作した。

グレゴリー式は正立像となるために地上用望遠鏡として多く用いられた。江戸時代に日本の鉄砲鍛冶であった国友一貫斎が日本で初めて製作した反射望遠鏡はグレゴリー式であった。

ナスミス式

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ナスミス式望遠鏡

ナスミス式望遠鏡はカセグレン式と同様に放物面の主鏡と双曲面の副鏡を用いて反射させた光をさらに平面鏡を使って鏡筒の直角方向に導く方式の望遠鏡である。19世紀のイギリスの技術者ジェームス・ナスミスによって考案された。ナスミス式では望遠鏡架台にフォーク式架台を用い、鏡筒から取り出した光を架台の高度軸(フォーク式赤道儀の場合は赤緯軸)内に通す。これによって接眼部の高さが望遠鏡の姿勢によらず常に一定となり、観測装置の取り付けが容易になる利点がある。このため大型望遠鏡の多くはナスミス焦点を持っている。

また、ナスミス式から派生した光学系として、鏡筒外に導いた光をさらに数枚の鏡やプリズムを用いて赤道儀の極軸内に導くクーデ式望遠鏡もある。クーデ式では接眼部が高度方向だけでなく水平面内でも完全に不動となるため、観測に非常に好都合である。しかし多数の鏡で光路を曲げるために光量の損失が大きく、視野が狭くなる短所もある。

カタディオプトリック式望遠鏡(反射屈折式望遠鏡)

反射望遠鏡をベースとして、そこに補正レンズを組み込んで収差を補正した天体望遠鏡をカタディオプトリック式と呼ぶ。catadioptriccatoptric(「反射光学の」) と dioptric(「屈折光学の」)の合成語である。ベースとなる光学系と補正レンズの組み合わせによって様々な方式のものが考案されている。

シュミット式

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シュミット・カメラ

シュミット式望遠鏡は主鏡に球面鏡を用い、対物側に高次非球面の補正レンズ(シュミット補正板)を置いて球面収差やコマ収差を除去した望遠鏡である。専ら写真撮影専用の光学系として用いられ、シュミット・カメラと呼ばれることが通常である。 ベルンハルト・シュミットによって発明された。 口径比が小さく、広視野のものを作ることができる。ただし像面が強く湾曲しているため、通常は写真乾板フィルムなどを専用のホルダー等で像面に合わせて湾曲させて用いる。

シュミット・カセグレン式

ファイル:Schmidt-Cassegrain-Teleskop.svg
シュミット・カセグレン式望遠鏡

テンプレート:Main シュミット・カセグレン式望遠鏡はカセグレン式の放物面主鏡と双曲面副鏡を共に球面鏡で代用して研磨を容易にしたものである。球面鏡を用いたことによって生じる収差はシュミット・カメラと同様の高次非球面の補正レンズによって低減する。比較的安価に大口径のものが製作でき、またコンパクトな形になるので市販品も多く作られている。

マクストフ・カセグレン式

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マクストフ・カセグレン式望遠鏡

マクストフ・カセグレン式望遠鏡はシュミット・カセグレン式のシュミット式補正レンズの代わりにメニスカスレンズを補正レンズとしたものである。主鏡・副鏡共に球面で製作することが出来るため、コストが安くなり、かつ精度を高く作ることが出来る。副鏡はメニスカスレンズの中央部をメッキして代用することが多い。最近ではさらに設計の自由度を増やし、よりよく収差を補正するために、副鏡をメニスカスレンズから独立させたものもある。

シュミット・ニュートン

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シュミット・ニュートン望遠鏡

ニュートン式と同様の光学系で、放物面鏡の代わりに量産性に優れた球面鏡を使用する。開口部にシュミットカメラと同様の補正板がある。球面鏡の代わりに偏球面鏡を使用して、より収差を補正したものはライトシュミットとも呼ばれる。高次非球面のシュミット補正板で球面収差を補正し、主鏡に放物面を使用する場合に較べてコマ収差が低減される。通常、コマ収差は同じf比の場合、約半分である。小口径の場合、補正板に副鏡を設置することで副鏡支持架による回折を抑えることができる。光学系の特性上、シュミットカセグレン式よりも短焦点化が容易でシュミットカメラの広視野の特性を活かしつつニュートン式ならではの利点を活用できるため、写真撮影用としても用いられる。

マクストフ・ニュートン

ニュートン式と同様の光学系で放物面鏡の代わりに量産性に優れた球面鏡を使用する。開口部にマクストフ・カセグレンと同様のメニスカスレンズがある。

ベーカー・ナン・カメラ

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堂平観測所で使用されたベーカー・ナン・カメラ(現在は姫路科学館にて展示)

シュミットカメラの補正板の代わりに3枚の補正板を開口部に備える。高視野角での観測に適する。人工衛星の追尾のために日本の堂平観測所(現ときがわ町星と緑の創造センター)にも配置された。

天体望遠鏡の架台

天体望遠鏡は、(1)全天のどこへも向けられること、(2)地球の自転運動による天体の動き(日周運動)を常に追尾できることの2点が必要である。そのために天体望遠鏡を載せる架台は、(1)の目的達成のために少なくとも直交する2軸を持つ必要があり、(2)の目的達成のために、1軸だけで天体追尾を行う赤道儀式と2軸以上を使う経緯台式に分かれる。人工衛星観測用望遠鏡など特殊な用途では3軸以上の自由度を持つ架台もある。

赤道儀式架台

地球の自転軸と平行な極軸と、それに直交した赤緯軸の2軸で構成された架台である。 極軸を回転させることにより、天体追尾を行なう。動作は単純であり、自動追尾を行なう際は、1軸のみをほぼ等速で回転させれば、かなりの観測精度を得られる。駆動機構を単純化できるため、古くから自動追尾を行なう場合に広く用いられてきた。赤径赤緯を指定することにより、目標天体を比較的簡単に導入できる。

観測を開始する前には、極軸を天の北極、または南極へ向けて固定する(極軸合わせ)必要がある。これが正確でないと、追尾が正確に行なわれなくなり、観測精度に影響する。補助として、軸の中心に小型の望遠鏡を備えたものもあり、この望遠鏡で北極星を捉え、極軸合わせを行なう。

設計、製作において高精度が要求されることが多く、低コストでの生産は難しい。このため個人使用のものでは比較的高級な部類であり、鏡筒と三脚をセットにしたものの他、オプションや単体で販売される場合も多い。

主に以下のような種類がある。

ドイツ式赤道儀 
赤道儀式架台で最もポピュラーな形式。シンプルな2軸機構であるが、欠点として鏡筒とのバランスを保つ重り(バランスウェイト)が必要となる。
イギリス式赤道儀 
ドイツ式の極軸方向を延長して2点で極軸を支える方式。大型となり設置スペースを要する。日本の国立天文台岡山天体物理観測所の188cm望遠鏡はイギリス式である。
フォーク式赤道儀 
U字型のアームの間に鏡筒を取り付け、U字アームが極方向に回転する方式。鏡筒が短い望遠鏡に適する。最近の50cmクラス公共天文台のほとんどはフォーク式赤道儀である。また、一般的なフォーク式では鏡筒を左右両側で支持するが、片側のアームを省略し、1箇所で支持する「片持ちフォーク式」も存在し、軽量な鏡筒の望遠鏡に用いられることがある。
ヨーク式赤道儀 
フォーク式のU字を極方向に延長し極軸を2点で支持する形。欠点として、広い設置スペースが必要。極方向とその周辺が観測できない。
ホースシュー(馬蹄)式赤道儀 
パロマー天文台200インチ望遠鏡がこの形式である。フォーク式の変形であり鏡筒の自重による極軸のたわみを軽減している。

経緯台式架台

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片持ちフォーク式経緯台(ポルタ架台)と屈折式望遠鏡

鏡筒の水平回転(経線)を受け持つ軸と、それと直交した俯仰角を受け持つ軸(緯線)の2軸を持つ架台である。観光地などに設置されている有料の大型双眼鏡の架台としても使われており、また同様の構造を持つものに、測量に用いられるトランシットがある。

この形式の利点は、設計が容易なことが挙げられる。これは望遠鏡の向く方向によらず望遠鏡の重量負荷が常に同一方向にかかるため、一方向の負荷のみを考慮すればよいからである。また構造が単純で部品が軽量であり、個人での使用では高精度を要求される場合も少ないため、一般的に赤道儀と比較すると低コストでの製作が可能であり、大量生産に向いている。 欠点としては、まず天体の日周運動を追尾するためには、2軸を同時に不等速度で動かす必要がある点があげられる。手動での追尾は非常に困難であり、自動追尾の場合でも、制御および駆動システムが複雑となる。また最も観測条件の良い天頂が特異点(方位回転速度が無限大)となるために、天頂付近が死角となり観測をあきらめなければならない点もある。そして追尾により視野が回転するため写真撮影を行なう場合にはカメラを回転させる必要があることも欠点のひとつとしてあげられる。

前述の低コストな面に加え、観測前に極軸を北極星に合わせる、といった初心者にとって煩雑な作業が不要であるなどから、高い精度が要求されない、眼視による観測、観望を主にした入門者向きの製品に使用されることが多い。

近年建設される大型望遠鏡では、経緯台が採用されていることが多い。これは望遠鏡の重量負荷の面で有利なこと、そして計算機やGPSなどを応用した制御および補正技術の発達により、その制御が容易になったことが主な理由と考えられる。なおすばる望遠鏡でも採用されている。

経緯台を応用したもので1980年代ごろからアマチュア天文家の間で普及したものに、ドブソニアン望遠鏡がある。経緯台をもつニュートン式反射望遠鏡の一種と言えるが、極めて軽量かつ単純な構造の架台のみで構成されており、比較的大口径の望遠鏡を安価に使用できる。日曜大工で自作も可能であり、工作用キットも販売されている。 ドブソニアン望遠鏡で簡易的に星の動きを追うために、ポンセットマウント、もしくはジョンソニアンのような可動式の台座を使用する場合がある。あくまでも簡易的なものであり、赤道儀ほどの精度は得られないものの、短時間の眼視による観望には充分な機能を持っている。

可視光以外の電磁波を観測する望遠鏡

単に望遠鏡と言えば通常は光学望遠鏡を指すが、他にも電磁波のほとんど全ての波長域について、それぞれの電磁波を観測するための望遠鏡が存在する。

電波望遠鏡

テンプレート:Main

X線・ガンマ(γ)線望遠鏡

X線望遠鏡やガンマ線望遠鏡にはいくつかの困難がある。これらの高エネルギ電磁波はたいていの金属やガラスを透過してしまうので、光学式の反射望遠鏡のような、面にほぼ垂直に入射する構成の反射鏡は作ることができず、屈折望遠鏡のようなレンズも、屈折率が1より小さいので作れない。そのためX線望遠鏡では、などの重金属でリング状の回転放物面を同心円状に多数配置し、面にほぼ水平に近い角度で電磁波を入射させることで全反射させて像を結ぶ。だが、ガンマ線望遠鏡にいたっては、それさえできず、各種の素粒子を検出する方法と同様にガンマ線で電離した粒子を検知する、のような方法をとらざるを得ないのが現状である。半導体検出器も参照のこと。

また、X線やガンマ線は地球の大気で吸収されるため、観測には望遠鏡を搭載した人工衛星を大気圏外に打ち上げる必要がある。

他の宇宙望遠鏡

更に、マイクロ波赤外線紫外線でも、一部の波長領域を除き、大部分は地球大気によって吸収されるため、精密観測を行うためには、望遠鏡を搭載した人工衛星を大気圏外に打ち上げる必要がある。

現在までに、この領域でも、古くは有人スカイラブ計画やサリュート計画を初めとし、日本を含む無人の人工衛星が多数打ち上げられている。太陽観測を初めとして、宇宙誕生時に生じた黒体輻射、銀河系のガス分布、彗星の発見などで活躍している。

電磁波以外を観測する望遠鏡

素粒子や重力波など、宇宙からやってくる電磁波以外の粒子や波動を検出・観測する装置のことを広い意味で望遠鏡と呼ぶ場合がある。例として下記のような装置が存在する。

ニュートリノ望遠鏡

ニュートリノは電気的に中性で質量がほとんど0に近い、極めて軽い粒子である。通常物質とまったく反応せず、地球すらたやすくすり抜けるので容易に観測されないが、巨大な水槽に水などの液体を大量に溜め、そこを通り抜けるニュートリノがごくわずかな確率で物質と反応した際に発生するチェレンコフ光を検出することで間接的に観測している。日本では、岐阜県の神岡鉱山地下深くに超純水を用いたニュートリノ観測装置「カミオカンデ」及び「スーパーカミオカンデ」を作り、超新星爆発によって生じるニュートリノを観測するニュートリノ天文学を発展させた。

重力波望遠鏡

超巨大ブラックホール中性子星のような非常に重い天体が回転・衝突する時、重力波が発生すると考えられており、実際に連星パルサーの周期の変動などによって間接的に観測されている。この重力波の直接検出を試みる装置を重力波望遠鏡と呼ぶことがある。1960年代にアメリカのウェーバーが巨大なアルミニウム円筒の伸縮を精密に観測して重力波を検出しようと試みたのが始まりで、現在ではレーザー干渉計によって空間のわずかな歪みを観測するなどの方法で重力波を直接キャッチしようという試みが世界各地でなされている。代表的な観測装置としてアメリカの LIGO や日本の国立天文台TAMA300、ドイツのGEO600 などがある。

大型望遠鏡

大型の研究用望遠鏡はほとんどの場合、カセグレン式望遠鏡としてもニュートン式望遠鏡としても使用できる。長い焦点距離で狭い視野を高倍率で観測したい場合には前者を、より明るい視野を使いたい場合には後者を用いる。これらの大型望遠鏡には穴の開いた主鏡とニュートン焦点、そして様々な位置に脱着可能な副鏡とそれを支えるスパイダーなどが設けられている。

1987年には MMT が建設され、望遠鏡開発の新しい時代を迎えた。この望遠鏡は口径1.8mの鏡6枚からなり、これらの鏡を合成して口径4.5m相当の集光力を得る仕組みになっている。この方式はケック望遠鏡に受け継がれている。ケック望遠鏡は口径1.8mの鏡を36枚組み合わせた合成口径10mの望遠鏡である。

現在建設されている世代の望遠鏡は、口径6~8mの主鏡を持っている(地上望遠鏡の場合)。この世代の望遠鏡では反射鏡はたいてい非常に薄く、多数並んだアクチュエータによって最適な形状に保たれる仕組みを備えている(能動光学を参照のこと)。この技術は口径30m、50m、100mといった未来の望遠鏡計画の設計を推進する原動力となっている。

望遠鏡で使われる検出器は、初めは人間の目であった。後に、写真乾板がその地位に就き、分光計が導入されてスペクトルの情報を得ることを可能にした。現在では写真乾板に続いて電荷結合素子 (CCD) のような電子検出器の世代が後を受け継ぎ、感度と解像度の両面で完全な性能に達しつつある。

現在の研究用望遠鏡には以下のようないくつかの装置が付いている。

  • さまざまな波長に対応した撮像用カメラ
  • さまざまな波長域のスペクトルを得るための分光計
  • 光の偏光を検出する偏光計
  • その他

近年、地上の望遠鏡において地球大気の悪影響を克服するためのいくつかの技術が開発され、良い成果を挙げている。これについては補償光学を参照のこと。

回折という光学現象があるために、望遠鏡が到達できる解像度や画質には制限がある。一般に点光源は回折によって有限の面積を持つ円盤状に広がって見え、これをエアリーディスクと呼ぶ。エアリーディスクの有効面積で解像度は決まり、これによって、近接する2つのディスクの角距離がどれだけあれば両者を分離できるかが決まる。この絶対的な限界値をスパローの限界と呼ぶ。この限界値は観測する光の波長と望遠鏡の鏡の直径に依存する。(赤い光は青い光よりも早くこの限界に達する。)これは、ある直径の鏡を持つ望遠鏡はある波長ではある一定の限界値までしか像を分解できないことを意味する。従って、その波長でより高い分解能を得ようとすれば、より大きな鏡を作るしかない。

有名な光学望遠鏡

  • アメリカヤーキス天文台の 1.02m 望遠鏡は現在使われている最も大きな口径の屈折望遠鏡である。1897年につくられ、レンズは1mの直径を持ち、重さは0.5tにもおよぶ。[3]
  • アメリカのウィルソン山天文台の100インチ (2.54m) フッカー望遠鏡はエドウィン・ハッブル銀河赤方偏移を発見した望遠鏡である。反射鏡はサンゴバン社製の緑色ガラスで作られている。現在では他のウィルソン山の望遠鏡とともに開口合成望遠鏡アレイの一部となっており、今でも最先端の研究に役立っている。
  • アメリカパロマー山天文台の200インチ (5.08m) ヘール望遠鏡は1948年完成以来、長年にわたって世界一の口径を誇った歴史ある研究用望遠鏡である。ボイジャーなどの惑星観測機やハッブル・すばる望遠鏡など近年の活躍により差し替えられるまで、天文書に載せられる多くの天文写真がヘールによるものであった。この反射鏡はホウケイ酸ガラスパイレックス)の単一鏡で、開発に困難を極めたことが知られている。架台もユニークで、赤道儀式だがフォーク式ではなくホースシュー式である。この方式もフォーク式と同様に天の北極近くを撮像できる利点がある。
  • ロシア共和国(旧:ソビエト)のゼレンスカヤ天文台の6m光学反射式望遠鏡BTA-6は、大型望遠鏡では初の経緯台式だったようだが、制御やその他でうまくいかなかったようで、観測成果は聞こえてこない。
  • ハッブル宇宙望遠鏡 (HST) は地球大気の外の軌道上にあり、大気による屈折で像の歪みを受けることなく観測を行うことができる。この意味でこの望遠鏡は回折限界までの性能を得ることが可能であり、紫外線や赤外線の波長域でも使われている。
  • ハッブルの後継機として、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の打ち上げが2013年に予定されている。ただしこれは赤外線望遠鏡であり、近紫外線、可視光の観測能力は持たない。
  • Very Large Telescope (VLT) は2005年現在最も口径の大きな望遠鏡である。口径8.1mの望遠鏡4台からなる。チリアタカマ砂漠に建設され、ESO が保有している。4台の望遠鏡は独立して操作することも同時に使用することもできる。同時に使用した場合、口径 16.2m 相当の集光力となる。
  • 日本の国立天文台ハワイマウナケア山に建設したすばる望遠鏡は口径8.2mで、単一鏡の望遠鏡としては2007年に大双眼望遠鏡が建設されるまで最も口径が大きかった。

将来計画・構想

日本

  • 京都大学や企業を中心とするグループが、日本初の分割鏡方式による口径3.8m新技術望遠鏡の建設を予定。
  • 東京大学では、東京大学アタカマ天文台計画を検討しており、将来アタカマ砂漠内に口径6.5m光学式赤外線反射望遠鏡の開発・設置に向けた準備中。
  • 国立天文台では、ELT計画を立案・準備しており、口径30m光学式赤外線反射望遠鏡の開発・設置に向けた予備調査及び研究開発を実施。

アメリカ

ヨーロッパ

  • VLT、そしてALMA後の計画として、次のような計画が立案され、検討が進められている。
  • 最初に計画が始まったのは、超大型天体望遠鏡 (OWL) 計画である。この計画では口径100m相当の超大型赤外線望遠鏡開発計画を検討を実施。
  • 現在は、これをより現実かつ実現可能な規模にした、E-ELT計画へと検討が進み、口径42m大型赤外線望遠鏡計画の準備中。

関連項目

総合概論

活用目的解説

開発メーカー

大航海時代に生まれた星座

技術面

設置場所並びに機器の基本構成要素

脚注

  1. なお、天体のうち太陽については光量が非常に大きく、通常の天体望遠鏡では失明など極めて重大な健康被害を生じるおそれがあるため、太陽の観察には専用の太陽望遠鏡を用いる必要がある。
  2. 現在販売されているアポクロマートレンズは、3色以上の波長に対して収差補正を図ったものも多い。このようなものもアポクロマートとよばれる。またアクロマートとアポクロマートの中間の性能の物をセミアポクロマートと呼ぶ。ただしこれは学術用語ではなく商業上使用されている言葉である。
  3. 最新天文百科 宇宙・惑星・生命をつなぐサイエンス HORIZONS Exploring the Universe p86 ISBN978-4-621-08278-2

外部リンク