スーパーカミオカンデ

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スーパーカミオカンデ(Super-Kamiokande、Super-Kと略されることもある)は、東京大学宇宙線研究所によって岐阜県飛騨市神岡町(旧吉城郡神岡鉱山内に建設されたニュートリノ検出装置。

概要

小柴昌俊東京大学名誉教授ノーベル賞受賞研究の元となったカミオカンデと同じ原理で、大きく高性能化されている。

50,000トンの超純水を蓄えた直径40m、深さ41.4mのタンクと、その内部に設置した11,200本の光電子増倍管からなり、カミオカンデよりも性能が大幅に上がっている。この光電子増倍管でチェレンコフ放射を観測することにより、様々な研究を行う。

1996年にスーパーカミオカンデが稼動したことにより、カミオカンデはその役目を終え、カムランドとして生まれ変わった。

2001年11月12日11時01分に光電子増倍管の70%を損失するという大規模な破損事故が発生した。光電管爆縮時の衝撃波による連鎖破壊で、原因は補修作業時の負荷で基部にクラックが入ったためとされている。破壊された数量の光電子増倍管の生産には約4年を要するため、2002年光電子増倍管にプラスチックカバーを被せる防爆措置を行った上で、予備を加えた5,200本の光電子増倍管を再配置し、部分復旧された。これを「Super-Kamiokande II」と呼称する。この破損事故の震動は、近くの高感度地震観測網 (Hi-net) 神岡観測点 (KOKH) において観測されている[1]

また、2005年7月より、スーパーカミオカンデの完全再建計画の実行が東京大学本部を通じて文部科学省によって承認され、同年10月から観測を中止して破損光電管の交換作業を開始、2006年4月にほぼ完了した。2006年7月11日に建造時と同数の光電管を備えた「Super-Kamiokande III」として観測を再開した。

さらに、2008年夏には、さらなる性能向上のために、信号読み出し回路の総入れ替えを行った。以降を「Super-Kamiokande IV」と呼ぶ。

目的

主な目的は、次の通り。

ニュートリノの性質の研究
ニュートリノの質量やそれらの混合行列に関する詳細な分析を、大気ニュートリノ、太陽ニュートリノ、人工ニュートリノなどを用いて研究している。ニュートリノが質量を持っている場合には世代間の混合が生じる。これはニュートリノ振動と呼ばれる現象である。一例をあげると、飛行中の電子ニュートリノがミューニュートリノへ変化する。このニュートリノ振動を詳しく調べることにより、ニュートリノ同士の質量の2乗の差を測定できる。また、ニュートリノと反ニュートリノの振動の違いを測定することにより、ニュートリノの混合行列に含まれる複素数の位相も決定できるかもしれない。ニュートリノに質量があることが明確となった今、このような詳細な研究はニュートリノになぜ質量があるのかなどを理解するためには必要不可欠なことである。
ニュートリノ宇宙物理学
カミオカンデによる超新星からのニュートリノを観測することに成功したことは、超新星の理論の妥当性を裏付けるものであった。超新星は重い元素を生成するのに極めて重要な役割を果たしているため、我々を形作る元素がどのように生成されてきたかを理解するのに大事な研究である。他にも太陽からくるニュートリノを観測することで、太陽のような星の理論的な理解が高い精度で可能となってきた。最近では宇宙での高エネルギー現象がニュートリノを発生している可能性があったり、超新星爆発起源の残存ニュートリノを探索するなど、活発な研究が進められている。
大統一理論の実験的検証
旧カミオカンデ建設当時に大統一理論の有力な候補と考えられていたSU(5)理論の予想する陽子の寿命は1030 - 1032年であったが、2004年現在まで陽子崩壊は観測されず、陽子の寿命は1034年以上であることが分かった。これにより、SU(5)理論は否定された。なお、"大統一理論"という考え方が否定されたわけではない。スーパーカミオカンデにおいても、陽子崩壊の観測が引き続き行われている。

名称

陽子崩壊観測を主目的としたカミオカンデは、Kamioka Nucleon Decay Experiment(神岡核子崩壊実験)の略した名称だった。

上記の目的に加え、ニュートリノによる天体観測を当初から目的のひとつとしていたスーパーカミオカンデは、Super-Kamioka Neutrino Detection Experiment(超神岡ニュートリノ検出実験)とSuper-Kamioka Nucleon Decay Experiment(超神岡核子崩壊実験)の双方を略した名称となっている。

神岡宇宙素粒子研究施設

スーパーカミオカンデを、東京大学宇宙線研究所附属神岡宇宙素粒子研究施設と紹介する文献もある。

しかし、正確には東京大学宇宙線研究所附属神岡宇宙素粒子研究施設に存在する「装置の名前」がスーパーカミオカンデであり、同施設はスーパーカミオカンデを中心に、ニュートリノや陽子の研究を行うための施設となっている。

補足

別項目[2]に記載があるが、本実験施設と KEK-PS(陽子加速器)を用いたニュートリノ振動実験によって、ニュートリノに質量があることが判明した。今後は、J-PARC にて大強度加速器を用いた同実験によって、ニュートリノの正確な性質について明らかになる。

本実験プロジェクトでは、今後も太陽ニュートリノ観測、宇宙由来ニュートリノ観測、陽子崩壊観測[3]、また東北大学がカミオカンデの跡地に設置したカムランド検出装置とも、密接に連携しニュートリノ物理学を発展させる予定になっている。また、国際プロジェクトとして進められている、ニュートリノ観測網の一部として、今後も素粒子物理学の重要な実験装置となるはずである。

関連項目

脚注

  1. Hi-netが観測したスーパーカミオカンデ事故による震動防災科学技術研究所
  2. 高エネルギー加速器研究機構#主な実験施設 ニュートリノビームラインの項、およびニュートリノ振動#諸実験 スーパーカミオカンデの項
  3. 陽子崩壊に関しては、現在も検出ができていない。上述にもあるが、大統一理論が否定されているわけではなく、陽子崩壊がもしも生じるとするならば、どれだけの期間なのか等の観測をこれからも実施する予定である。なぜならば、観測期間が延びれば延びるほど、たとえ極小の確率であっても検出が可能になるためである。

外部リンク

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