冷麺
日本語の「冷麺」は大きく分けて、次の2つの意味で使用される。
東日本では、朝鮮半島の冷麺、もしくは盛岡冷麺等の料理を指すことが多い。西日本の特に近畿地方では、冷やし中華を指すことが多い[1]。西日本では従来から朝鮮半島由来の冷麺は、「韓国冷麺」「平壌冷麺」と呼び区別されているテンプレート:要出典。 本項では前者について、朝鮮・韓国式、日本式、中国式に分けて解説する。
朝鮮・韓国式冷麺
冷麺(れいめん、ネンミョン / レンミョン)は、 19世紀の書籍、1849年に成立した『東国歳時記』の記録で、平安道の名物として最初に言及される(「冷麺」という用語は19世紀以前にも使われた)。主にムルレンミョン(スープ付き冷麺)と、ピピムネンミョン(スープ無し混ぜ冷麺)の2種類がある。ムルは「水」の意で、ネンミョンの冠にムルが付加されると朝鮮語特有の連音化(リエゾン)によりムルレンミョンという発音になる。ピビムとは「混ぜ」の意味で、ビビンバのビビン(ピビム)と同じ意味である。
蕎麦粉を主原料とし、つなぎとしてでんぷんや小麦粉を入れて練り、穴の開いたシリンダー状の容器で麺状に押し出してそのまま熱湯に落としてゆで、ゆで上がった麺(ネンミョンサリという)をすぐに冷水で冷やす。
ムルレンミョンは金属製の専用器等に固く締めた麺を入れ、その上に具として下味をつけた肉類・ゆで卵・キムチ・錦糸卵・ナシなどを盛り付け、最後に鶏肉や牛肉でとったスープとトンチミ(大根の水キムチ)の汁を合わせた透明な冷たいスープ(ユッス)をかけて供される。
ピピムネンミョンは、コチュジャンや酢、ごま油、砂糖などを混ぜ合わせた辛いヤンニョムで麺を和え、肉類、ゆで卵、きゅうりの千切り等を形良く盛り付けて供し、食べる際によくかき混ぜる。これにヤンニョムをからめた魚の刺身(フェ)を乗せたものがフェネンミョンで、魚はエイ、カレイ、スケトウダラなどが使われる。
ともにルーツは現在の北朝鮮にあり、首都の平壌と、日本海に面した咸興(ハムフン)が冷麺の本場として知られる。日本、韓国では長い間、「平壌冷麺=ムルレンミョン」、「咸興冷麺=ピピムネンミョン」とされてきた。しかし、韓国で脱北者が開いた北朝鮮料理チェーン店によれば、平壌冷麺はそば粉と緑豆粉を用い、太くて黒っぽく、噛み切りやすい麺であり、咸興冷麺はジャガイモ・トウモロコシなどのデンプンを使用した、細くて白っぽく、噛み切りにくい麺であるという。しかし、実際には、平壌冷麺にも白っぽく細い麺の店もあり、咸興冷麺にもそば粉入りの黒っぽい太い麺で出す店もある。人力で操作する木製の押し出し機が使われていた時代は太い麺だったが、電動の製麺機が登場して以降の麺は徐々に細くなっていった。実際の冷麺の種類は、葛を材料にしたチック冷麺、そば粉だけで作ったメミル冷麺など多種多様。しかも現在は北朝鮮の冷麺事情がよく分からないので、厳密な分類はできないとされる。ただし、咸興冷麺はコシが強く、噛み切れないほどだという点はどの資料でも一致する[2]。
大韓民国の冷麺
韓国・朝鮮料理ではよく用いられる金属の器にうず高く盛られた彩り良い具材が美しいが、麺は製麺機から押し出したままの長い状態で器に盛られているため、調理用鋏で食べやすい長さに切り、好みによりキムチや調味料などを加えて全体に味がなじむよう混ぜてから食べる。なお、朝鮮半島の食文化では食器を手に持って食べることはマナー違反とされているが、ムルレンミョンに限ってはスープを飲む際に器を手に持ち、口をつけて啜っても良しとする韓国人も少なくない。
本来は寒い冬に暖かいオンドル部屋(温度調節がこまめに出来ないのでやや暑くなる)の中で食べる料理であったといわれる。韓国では大衆食堂においては夏の間しか出さないが、冷麺専門店では冬にも出している[3]。
韓国では地方により、ドングリ(トトリ)の粉を練り込んだトトリ冷麺があるほか、最近では緑茶や薬草など、さまざまな材料を練り込んだ冷麺を出す店もある。
韓国食品医薬品安全処の衛生調査で、冷麺は775件中47件で大腸菌が検出され、注意が喚起されている[4]。
朝鮮民主主義人民共和国の冷麺
平壌直轄市で著名な冷麺専門店に玉流館がある。韓国紙の報道によれば、平壌市の冷麺の殿堂として1日に1万人が訪れるといわれ[5][6]、2000年に金大中が訪れるなど海外からの旅行客や要人が案内される著名店となっている。2007年9月に改装工事が始まり、2008年4月15日の金日成生誕日に新装開店した[7]。東亜日報の取材によれば、「韓国よりも麺が1.5倍くらい太くて、麺とスープの色が黄土色」で「スープは濃い鶏肉の香りを漂わせ、あたかも蔘鶏湯(サムゲタン)を冷やしたような感じ」であるという[6]。
日本式冷麺
朝鮮・韓国式の冷麺は焼肉屋で提供される事が多い料理となっている。また、朝鮮・韓国式冷麺を基にした冷製麺料理が日本各地で郷土料理として定着している。有名な料理として盛岡冷麺と別府冷麺が挙げられる。盛岡冷麺は岩手県盛岡市の名物で、朝鮮半島の冷麺と原料・製法などが異なる(盛岡冷麺参照)。別府冷麺は大分県別府市の名物であり、もちもちした太麺が特徴となっている。別府冷麺は冷麺専門店をはじめ多くのラーメン屋のメニューにも加わっている(器は金属製のものではなくラーメン用の丼鉢などに盛りつけられる。別府冷麺参照)。
中国式冷麺
一般的に冷麺(冷面)と表記された場合、腰のない茹でた乾麺にピーナッツソースと黒酢を混ぜたタレをかけ、好みの冷たい具を和えて出される麺料理を指す事が多いが、地域により、日本の冷やし中華に近いものも存在する。朝鮮料理店では、朝鮮半島の冷麺と同様のものを提供する店もある。テンプレート:要出典
中国での朝鮮半島風の冷麺は「朝鮮式冷麺」や「韓国式冷麺」などと表記される。テンプレート:要出典
脚注
関連項目
外部リンク
テンプレート:Sister- ↑ 冷やし中華 各地の呼び方 - トクする日本語 - NHK アナウンスルーム、日本放送協会、2010年7月27日(火)
- ↑ 韓国の麺類 その1 夏の名物冷麺(韓国放送公社(KBS)、2008年6月24日)(2009年5月19日時点のアーカイブ)
- ↑ 韓国の麺類 その2 冷麺の歴史(韓国放送公社 (KBS) 、2008年7月1日)(2009年5月19日時点のアーカイブ)
- ↑ 在韓日本大使館 安全情報[1]
- ↑ 冷麺の殿堂―玉流館(平壌)(朝鮮新報、2000年6月5日)
- ↑ 6.0 6.1 冷麺…同じようだが(東亜日報社、週刊東亜、2001年7月291号) 引用エラー: 無効な
<ref>
タグ; name "tonga"が異なる内容で複数回定義されています - ↑ 玉流館がリニューアル 15日から営業再開(朝鮮新報、2008年4月)