リーフ式サスペンション
リーフ式サスペンション(リーフしきサスペンション、Leaf suspension)は、車台と車軸をつなぐサスペンション方式の一種で、リーフスプリング(重ね板バネ)により車台を支えるものをいう。 リーフスプリングを車台の支持に用いるサスペンションには多くの種類[1]があるが、本項ではリンク(ロッド)やアームではなく、板ばねで直に固定車軸の位置決めを行う形式について述べる。
概要
構造が単純かつ堅牢(頑丈)であり、ほかの方式に比べ安価であるため、自動車では主にトラックやバス(とりわけ路線バス)などの大型輸送車、小型商用車(特に軽トラックや小型トラック)に使用される。1970年代後半まではカローラやサニー、ランサー、コロナ、ブルーバードなどの小型乗用車の後輪部(ただしコロナとブルーバードの各タクシー仕様車は1990年代半ばまで)に、1980年代前半まではダイハツ製の一部の軽乗用車(例・2代目クオーレ)および小型乗用車の初代シャルマンに、1980年代後半まではスズキ製の一部の軽乗用車(例・6代目フロンテの前期モデル、2代目セルボ)および小型乗用車のカルタスなどの前輪駆動車の後輪に一枚リーフ板ばねを多く用いており、コストは安く性能上も十分としていたが営業上の理由からその後取りやめている.自動車の他にも、鉄道車両や建設機械、戦車などでも使用される。
この方式の構造上、ばねの振れ幅分のストロークしか取れず、また車軸を押さえる物がばねであるため、ロール時など左右のたわみ量が異なる場合、車軸のずれも左右で異なりアクスルステアが発生する欠点を持つなど乗り心地や操縦安定性に劣る事などから最近の乗用車ではごく一部のオフロード向け四輪駆動車やビジネス用1ボックスミニバン(両者とも堅牢性を買われ採用されている)を除いてもはや使用されないものとなった。バスでも近年は路線バスにおいてはバリアフリー化や乗降性確保の観点(ニーリング装置の装備)から空気バネ(エアサスペンション)を採用する車種が増え、リーフサスペンションを採用する車種は減少している(2000年代以降は小型車である初代日野・ポンチョや一部のマイクロバスなどに限られる)。
構造
リーフ式サスペンションは車両用では板ばねを数枚重ねたものが一般的で、最も長いばねを親ばねと呼ぶ。親ばねの両端は、後述のピボットやシャックルの軸を受けるブッシュを包み込む形に丸め加工されており、これをアイ(目玉)と呼ぶ。このばねを平面視で車体中心線と並行、あるいは並行に近い角度で配置し、一端を固定軸であるピボットで支持し、他端はばねのたわみによるアイ間の長さ変動を吸収するため、シャックルと呼ばれるリンクで車台に吊られる。弓形になった板ばねのほぼ中央に固定車軸を固定するが、板ばねの位置は車軸の上に来る「オーバースラング」と下側の「アンダースラング」とがあり、車両メーカーの都合や用途により使い分けられている。アフターマーケットでは車軸位置の上下を入れ換えて車高を下げる「フリップキット」もある。
ばね自体がアクスルの位置決めリンクを兼ねるため、通常は補助リンクの必要が無く簡素な構成となる。ただし、極端にばね定数が低い場合、駆動トルク、反トルクがもたらすアクスルハウジングの前後回転運動によるリーフスプリングのワインドアップが起こる。この現象は側面視でアクスルを中心にリーフスプリングがS字形に変形するもので、その場合、ばねとしての働きがなくなるばかりか折損の危険も有り得るため、小型ピックアップやクロスカントリー車(四輪駆動車、オフロード車)、SUVのなかには、これを防ぐため、前後方向にトルクロッドが追加された車種がある。