スズキ・フロンテ

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フロンテ (Fronte) は、鈴木自動車工業(現・スズキ)が生産していた軽自動車である。なお、本項目ではフロンテシリーズの基本形となるセダンを中心に記述し、フロンテハッチを含む商用モデルライトバン)についても記述する。

車名の由来

フロンティア精神」の「フロンティア」(業界の先駆者)から[1]。初代モデルが採用した駆動方式のFFにも通ずる車名だが、それとは裏腹に2代目から4代目にかけてはRR(リアエンジン・リアドライブ)を採用。

概要

1979年に派生車アルトが登場し大ヒットとなるまでは、長年にわたりスズキを代表する軽乗用車だった。フロンテが乗用モデル(5ナンバー)であったのに対し(後記のフロンテバン・フロンテハッチを除く)、当初のアルトはフロンテとプラットフォームを共用した商用モデル(4ナンバー)として発売された。

1989年にフロンテはアルトに統合され、かつてのフロンテに相当する乗用車仕様は5ナンバーの「アルト」、商用車仕様は4ナンバーの「アルトバン」となっている。

東京モーターショー2005では、フロンテ360をモデルにしたスズキLCが出品された。

歴史

初代 TLA/FEA/FEA-II型(1962年 - 1967年)

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  • 1962年3月 - スズライトバンTL型(1959年9月登場)の乗用車版「スズライト・フロンテTLA型」として登場。駆動方式はFF。エンジンは空冷2ストローク直列2気筒360cc。
  • 1963年3月 - FEA型になる。ガソリンエンジンオイル自動混合方式「セルミックス」を採用。
  • 1965年10月 - FEA-II型になる。エンジンオイル直接噴射方式「CCI (Cylinder Crank Injection) 」を採用。

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2代目 LC10型(1967年 - 1970年)

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ファイル:Suzuki Fronte 360SS.jpg
アウトストラーダ走行テスト車両

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3代目 LC10 II型(1970年 - 1973年)

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  • 1970年11月 - 3代目フロンテ(フロンテ71)発売。形式名はLC10-II型。グレード構成は、スタンダード、デラックス、ハイデラックス、スーパーデラックス、ハイスーパー、S、SSS、SSS-R。SSS-Rの「R」は、ラジアルタイヤ(135SR10サイズ)標準装備の意味。エンジンは基本的には従来の空冷エンジンを使用。スタンダード、デラックス、スーパーデラックスは31馬力。ハイスーパー、Sは34馬力。SSS系は36馬力。ボディスタイルは全く新しいものとされ、直線基調の2ボックススタイルとされた。車高は1260mm(スポーツ系)とかなり低く設定され、フロントのトランクは拡大された。通称「スティングレイ・ルック」と呼ばれた。また、軽自動車としては初めて吊り下げ式クーラーが設定された。
  • 1971年5月 - フロンテ71W追加発売(空冷車と併売)。フロンテ71のボディはそのままに、新しい水冷エンジンを搭載したモデル。形式名はLC10W型。グレードは当初GL-W、GT-W、GT-RWの3機種。「W」は水冷(Water cooled)、「R」はラジアルタイヤ(135SR10サイズ)標準装備を表す。エンジンは新開発の水冷2ストローク3気筒を搭載。冷却には独自の「デュアル・ラジエター方式」を採用。GL-Wは34馬力、GT-W系は37馬力となる。
  • 1971年7月 - 水冷GS-W、GO-Wを追加。GS-WはGT-W同様のシャシに34馬力エンジンを搭載したムード・スポーツ。GO-WはGL-Wから装備を簡略化した廉価モデル。
  • 1971年9月 - 3代目フロンテをベースにした、軽自動車枠のスポーツカー、「フロンテ・クーペ」発売。セダン系とは別に、独自の車種構成を展開していく(詳細はフロンテ・クーペを参照)。
  • 1971年11月 - マイナーチェンジで72(セブンティ・ツー)フロンテに名称変更。フロントグリルのデザイン変更、ダッシュボードやシート等、内装の変更が施される。スポーツ系のホイールキャップデザイン変更。空冷エンジン車のスポーツ系は廃止。空冷車は「ビジネス・シリーズ」、水冷車は「ゴージャス・シリーズ」、水冷スポーツ車は「スポーツ・シリーズ」と称される。
  • 1972年3月 - 水冷シングルキャブ31馬力のGD-WとGU-Wが追加。GD-Wはデラックス、GU-Wはスタンダードに相当。
  • 1972年10月 - マイナーチェンジで73年型としてニューフロンテシリーズを発売。外観はバンパーからフロントグリル、ボンネットに至る大変更を受ける。ヘッドランプは角型2灯式から丸型2灯式に変更。上級グレードはリアコンビランプ横にガーニッシュ(化粧板)を装備。三角窓廃止。空冷車はスタンダードとオートクラッチのみとなる。タンデムブレーキマスターシリンダーとフロントディスクブレーキ装備のGT-TYPE IIを新設定。

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4代目 LC20/SS10/SS20型(1973年 - 1979年)

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  • 1973年7月 - 発売。先代の「スティング・レイ・ルック」のデザインから、「オーバル・シェル」の丸みあるスタイルへと変化した。空冷エンジンは消え、水冷エンジンのみのラインナップとなる。4ドアモデルを設定してファミリーユーズに対応すると共に、実用性の更なる拡大を図り、リアウィンドゥを閉開式のガラス・ハッチにしてエンジンルーム上部にラゲッジスペースを設けた。これによりフロントとリア両方にトランクを持つこととなる。従来のスポーツシリーズに相当するグレードは2ドア/4ドアセダンシリーズとは別にツーリスモシリーズとして設定。
  • 1974年 - 一部改良。黄色ナンバープレートの対応化とグレード名称の変更、エンジンのパワーダウン(37ps車は35ps、34ps車は32ps)の実施。従来のツーリスモシリーズはGTtypeIIのみとなり、2ドアセダンに統合。
  • 1976年5月 - マイナーチェンジ。前年に運輸省告示により軽自動車の規格が改定されたことを受け、全長を195mm、全幅を100mm拡大し、排気量を443cc(T4A)にアップし、内外装も変更を行っている。型式もSS10となり、これ以降の4代目モデルは「フロンテ7-S(セブン・エス)」と呼ばれていた。GTtypeIIが廃止され、全車全輪ドラムブレーキに戻る。
  • 1977年6月 - 一部改良。2サイクルエンジンの昭和53年排出ガス規制適合と同時に、ダイハツ製550cc直列2気筒4サイクルSOHCエンジン(AB型エンジン)を一部のグレードに搭載[2]。このダイハツ製エンジンはあくまでも「つなぎ」で、4代目の4サイクル仕様は1978年の改良で正式に自社製のF5A型に完全移行している。
  • 1977年10月 - マイナーチェンジ。2サイクル車のエンジンを539ccのT5Aに変更。型式もSS20となる。

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5代目 SS30/40型(1979年 - 1984年)

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  • 1979年5月 - 発売。駆動方式を初代と同様のFFに戻す。このときに姉妹車として商用車バージョン(軽ボンネットバン)の「アルト」が登場。アルトがシンプルさ・低価格さでのアプローチに対して、フロンテは5ナンバーならではの居住空間の広さ、豪華さをアピールした。エンジンは、常用回転域でのトルク特性と高回転域でのパンチに秀でた2ストロークエンジンT5Bと、燃費経済性と静粛に優れ、かつアイドリングのスムーズな4ストロークエンジンF5Aの二種類が用意された(2ストローク車の型式はE-SS30S、4ストローク車の型式はE-SS40S)。2ストロークエンジンT5BはRR用だったT5AをFF用に設計変更したものであり(トランスミッションとの結合部が大きく異なるが、シリンダーブロックは基本的に共通)、排出ガス規制をクリアするため、初代セルボ同様、触媒活性化用に排気に空気を混入するエアポンプが追加されていた(規制基準の異なる商用車アルトのT5Bにはない)。一方、4ストロークエンジンのF5Aはこの後、スズキの各車種に広く搭載されるようになる。グレードは2ストローク車がFX系、4ストローク車がFS系。従来の吊り下げ式クーラーに代わり、エアミックス式のエアコンが設定された。
  • 1981年5月 - 一部改良。2ストロークエンジン搭載車のFX系が廃止され、4ストロークエンジンのFS系に統一。
  • 1982年10月 - マイナーチェンジ。ヘッドライトを角型に変更し、デジタルメーターを一部グレードに採用。
  • 1983年12月 - インドマルチ・800(初代)として販売開始。

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6代目 CB71/72型(1984年 - 1988年)

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  • 1984年9月 - 発売。乗用シリーズのフロンテとしてはこの代よりハッチバックボディとなる。一部のグレードにはアルトと同様に回転ドライバーズシートを装備。最上級グレードのFGに限り、5速MTとフロントディスクブレーキを装備し、それ以外のグレードは全て4速MT、全輪ドラムブレーキとなる。
  • 1985年10月 - エアコンと回転ドライバーズシートを装備した特別仕様車「ウィット」を追加。
  • 1986年1月 - インドで2代目マルチ・800として販売開始。ちなみに20年以上に渡りほぼモデルチェンジを実施することなく、2014年1月まで販売されていた。
  • 1986年7月 - マイナーチェンジ。リアサスペンションを全車リーフリジッドからスズキ独自のアイソトレーテッド・トレーリング・リンク(I.T.L)式へ、ヘッドランプを角型(SAE規格)から異型へ、インパネなどをそれぞれ変更する。また、オートエアコンがオプション設定された。
  • 1986年11月 - オートエアコンとカラードバンパーを装備した特別仕様車「ウィットカスタム」を追加。
  • 1987年1月 - 一部改良。2代目アルトと共通の550cc3気筒DOHC12バルブエンジンを搭載した3ドアのスポーティー系グレードツインカム12 GRを追加。
  • 1987年9月 - 一部改良。特別仕様車「ウィヴ」と5ドアに4WDと550cc3気筒DOHC12バルブエンジンを搭載したスポーティー系グレードツインカム12 FRを追加。

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7代目 CN11型(1988年 - 1989年)

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  • 1988年10月 - 発売。全車に新開発の550cc・SOHC3気筒12バルブエンジン(F5B型)が搭載。外観は同時期のアルトの姉妹車そのものでグリル以外は特に変更された箇所もほとんど無く特徴的なクォーターウインドウも同様のものが付いていた。アルトと違う方向性としてカタログなどでは当時としては珍しく5ドアを中心モデルとしていた。廉価グレードを除きフロントディスクブレーキと12インチラジアルタイヤが標準装備となる。特別仕様車のウィットとウィヴは引き続き設定。
  • 1989年3月 - 販売終了。 同年4月1日に物品税が廃止され、代わりに消費税が導入されたことにより軽ボンネットバンのメリットが薄れたため、アルトと統合され、フロンテの商標は7代27年の歴史に幕を下ろした。ちなみに歴代フロンテの中では、およそ6か月と最も販売期間が短かった。

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商用モデル

フロンテバン

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  • 1969年1月登場。スズライトTLではセダンとバンは共通設計で、駆動方式も共に横置きFFであったが、フロンテ360がRRとなったことで、商用車ライトバン)への流用に不都合が生じた。スバル360カスタムがリアエンジンのまま後部を荷室に変更したため積載性に難があったのに対して、スズキはフロンテの名で全く構成の異なるバンを新規に開発することで解決を図った。フロンテバンは荷室容積と登り勾配のトラクション確保が容易なFRが採用された。エンジンもフロンテ360のものをベースにしながら、縦置きに設計変更された。スタイルはコークボトルラインのフロンテ360に対して直線基調のプレーンなスタイルとされた。後にこのモデルでは後席の居住性を高めた乗用モデルのフロンテ・エステートが追加された。
  • 1973年、フロンテハッチにモデルチェンジし、生産を終了した。

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フロンテハッチ

  • 1973年登場。名称が「フロンテ・ハッチ」となる。フロンテエステートといった乗用モデルが廃止され、商用モデルのみとなった。当時のブームを反映して、レジャーユーズを強く訴求しており、リアのラゲッジスペースはハッチ・ルームと名付けられた。
  • 1976年1975年9月の道路運送車両法の改正を受け、新規格に合わせて、排気量(360ccから550ccへ)と車体寸法を拡大(全長+200mm、全幅+100mm)した「ハッチ55」(ハッチゴーゴー)となる。
  • 1979年、アルトにモデルチェンジし生産を終了した。

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脚注

  1. スズキ四輪車 車名の由来 - スズキ公式サイト内 ちなみに同サイト内では「造語」扱いである。
  2. 昭和53年排出ガス規制に対応しておらず、昭和51年排出ガス規制適合車として発売された。

関連項目

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外部リンク

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