モダン・タイムス
テンプレート:Infobox Film テンプレート:External media 『モダン・タイムス』(Modern Times)は、1936年のアメリカ映画。チャーリー・チャップリンが監督・製作・脚本・作曲を担当した喜劇映画で、彼の代表作のひとつである。モノクロ、サウンド版。
概要
資本主義社会や機械文明を痛烈に風刺した作品で、労働者の個人の尊厳が失われ、機械の一部分のようになっている世の中を笑いで表現している。自動給食マシーンの実験台にされるシーンや、チャップリンが歯車に巻き込まれるシーン、ラストのチャップリンとヒロインが手をつないで道を歩いてゆくシーンなどが有名である。
この作品は前作の『街の灯』(1931年)に続いてのサウンド版で、一部にセリフが入る以外は音楽の伴奏と効果音のみによるサイレント映画となっている。また、チャップリンが初めてスクリーンで肉声を発した映画であり、キャバレーでインチキ外国語(一説にはフランス語風と言われる。また、「taxi」と聞き取れる部分がある)による「ティティーナ」を歌うシーンで、チャップリン自身の歌声を聴くことができる。自作の映画音楽も映像にのせており、前述の「ティティーナ」とラストシーンで印象的な「スマイル」を作曲し、その音楽的才能も開花させている(後述)。公開当時はすでにトーキー映画が普及していたため、この作品は「時代遅れ」と呼ばれてあまり高い評価は得れなかった。
公私にわたるチャップリンのパートナーで、本作でヒロインを務めたポーレット・ゴダードは、チャップリンによる次作で反ナチス・ドイツ映画の『独裁者』(1940年)においてもチャップリンと共演している。他キーストン社時代からチャップリンと共演しているチェスター・コンクリンが出演し、キーストン社時代に演じた「ウォルラス氏」の扮装で登場した。
本作はルネ・クレール監督作品『自由を我等に』と内容が酷似している(ベルトコンベアが走る流れ作業、それから起こるドタバタ騒ぎ、ラストの野原の直線道路を行く構図などが似ているといわれる)。そのため『自由を我等に』の製作会社・トビス社はチャップリンを著作権侵害で告訴しようとした。しかし、証人に立ったルネ・クレールは、「もし『モダン・タイムス』が自分の映画からヒントを得ているならば、光栄に思う」と証言したため、告訴は取り下げられている。
作品は資本主義を批判していることから、作品を「共産主義的である」と非難した評論家もいたという。そのため当時ファシズム政権にあったドイツなどの国では、作品が共産主義的であるとみなして上映を禁止されていた。
日本では1938年2月に封切られており、同年度のキネマ旬報ベストテン第4位にランクインされている。
評価
本作はチャップリンの作品の中でも特に傑作と呼ばれ、『黄金狂時代』『街の灯』『独裁者』と並ぶチャップリンの代表作と称される。
1989年にはアメリカ国立フィルム登録簿に登録された。
ランキング
- 「映画史上最高の作品ベストテン」(英国映画協会発表)※10年毎に選出
- 「AFIアメリカ映画100年シリーズ」
- 1998年:「アメリカ映画ベスト100」第81位
- 2000年:「コメディ映画ベスト100」第33位
- 2007年:「アメリカ映画ベスト100(10周年エディション)」第78位
- 2000年:「20世紀の映画リスト」(米『ヴィレッジ・ヴォイス』紙発表)第67位
- 2008年:「史上最高の映画100本」(仏『カイエ・デュ・シネマ』発表)第65位
以下は日本でのランキング
- 1980年:「外国映画史上ベストテン(キネマ旬報戦後復刊800号記念)」(キネマ旬報発表)第8位
- 1988年:「大アンケートによる洋画ベスト150」(文藝春秋発表)第16位
- 1989年:「外国映画史上ベストテン(キネ旬戦後復刊1000号記念)」(キネ旬発表)第14位
- 1995年:「オールタイムベストテン・世界映画編」(キネ旬発表)第29位
- 1999年:「映画人が選ぶオールタイムベスト100・外国映画編(キネ旬創刊80周年記念)」(キネ旬発表)第13位
ストーリー
大きな製鉄工場で働くチャーリーは、スパナを手にひたすらベルトコンベアーを流れる部品にねじを回し続けるという単純作業を繰り返していた。その様子はテレビモニターで監視され、休む暇もなく働かされていた。ある日、チャーリーは労働者の食事時間を節約する自動給食マシーンの実験台にされる。しだいにチャーリーの頭がおかしくなり、歯車に巻き込まれたり、工員や社長の顔に油をかけたりするなど様々なトラブルを起こしてしまう。結局精神病院送りになった彼は、退院した矢先にトラックから落ちた赤旗を拾う。するといつの間にかデモ隊の先導をきってしまい、そのリーダーと間違われて捕まってしまう。拘置所に入るが、脱獄囚を撃退した功績で模範囚として放免される。造船所の仕事を紹介されたが上手くいかず辞めてしまい、街をうろつく生活に。 テンプレート:Multiple image 拘置所が恋しくなったチャーリーはわざと無銭飲食をして捕まえられるが、護送車の中でパンを盗んだ浮浪少女(ポーレット・ゴダード)と出会う。護送車が急カーブで横転し、外へ投げ出されたチャーリーと少女は逃亡する。少女と意気投合したチャーリーは、2人のために家を建てるという夢を胸に一念発起とばかり働き出す。デパートの夜回り、工場の技師の助手と仕事を獲得するが結局駄目で、しかも2件とも警察沙汰になるという不運な結果に終わってしまう。その後少女が勤め始めたキャバレー(今日見られる男性向けのものとは違い、ダンスステージつき居酒屋のような所)のウェイターの職を得る。見世物の「ティティナ」を歌って大成功したが、少女の微罪のため、そこも追われてしまう。
最後に2人は、現代社会の冷たさと束縛に囚われない自由な生活を求め、旅立っていく。 テンプレート:Clear
音楽
ティティナ
前述した「ティティナ」は(YouTube「Projeto Abridor de Cabeças」では1:15:56から)、1917年にフランスの作曲家テンプレート:仮リンクによって "Titine Je cherche après Titine" というタイトルで作曲され、本作で使用されて世界的に有名なメロディとなった。
2004年には、ロサンゼルス出身の歌手J-FIVEによって "Modern times" というタイトルで、チャップリンの歌とともにカバーされ、ヨーロッパを中心に大ヒットした。なお、この曲のミュージック・ビデオにはチャップリンの孫娘ドロレスが出演している。
近年、日本国内のCMソングとしてたびたび使われている(トヨタ・ist、キヤノンのピクサス、NTTの企業CM)。
スマイル
テンプレート:External media テンプレート:See also 本作のラストシーンで印象的な「スマイル」は、チャップリンが作曲したもので、彼が作曲した音楽の中では特に有名である。喜劇映画にあってコード進行は暗い(ニ短調)。
この曲は映画の中盤、少女(ポーレット・ゴダード)とチャーリーが警察の護送車から飛び降りて逃亡した後に断続して2回流れる(YouTube「Projeto Abridor de Cabeças」では0:40:22からと0:42:44から)。次に、少女がチャーリーに住むところ(粗末なロッジ)を見つけた報告をする場面(0:52:16から)。次に、少女がおしゃれをしてチャーリーを待つ場面(1:06:39から)。最後に、映画の最終局面、絶望してふさぎ込む少女をチャーリーが元気付け希望へといざなう場面で流れ(1:21:25から)、曲の盛大なフィナーレと共に映画は幕切れする。
1954年、その暗い曲調とは裏腹に「スマイル」という曲名が付けられ、ナット・キング・コールによって歌詞付きの歌が歌われた。その後、マイケル・ジャクソン、ダイアナ・ロス、エルヴィス・コステロらがカバーしている。
また、チャップリンがアメリカを追放されてから20年後、再び同国の地を踏む契機となった第44回アカデミー賞授賞式のフィナーレで、彼がオスカー像を受け取る際、会場のゲスト全員で歌詞の付いたこの曲が歌われた。
スタッフ
- 製作・監督・脚本・作曲:チャールズ・チャップリン
- 撮影:ローランド・トザロー、アイラ・モーガン
- 美術:チャールズ・D・ホール、ラッセル・スペンサー
- 編曲:アルフレッド・ニューマン、デイヴィッド・ラクシン
- 演奏指揮:エドワード・バウエル
キャスト
- 工員:チャールズ・チャップリン
- 浮浪少女:ポーレット・ゴダード
- キャバレーの主人:ヘンリー・バーグマン
- 工場の技師:チェスター・コンクリン
- 製鉄会社社長:アラン・ガルシア
- ビッグ・ビル(チャップリンと同じ工場で働く工員、後にデパートの強盗):スタンレー・サンドフォード
- 強盗:ハンク・マン、ルイ・ナトー
- 少女の父:スタンリー・ブリストーン
- 工員と同房の服役囚:リチャード・アレクサンダー
- 牧師:セシル・レイノルズ
- 牧師夫人:マイラ・マッキニー
- カフェーの給仕:フレッド・マラテスタ
- タービンの交換手:サミー・スタイン
- 流れ作業の工員:チャールズ・コンクリン
- 流れ作業の職長:ウォルター・ジェームズ
- 工員:ボビー・ワーカー、C・ハミルトン、ジャック・ロン
- 囚人:フランク・モラン
- 少女の妹:グロリア・デ・ヘイヴン
- 造船会社の労働者:フランク・ハグニイ
- 警官:パット・ハーモン
- 医師:エドワード・キンボール
- デパートの売り場主任:J・C・ニュージェント
- ウエイター:ジョン・ランド
波及
- フランスの哲学者サルトル、ボーヴォワール、メルロー=ポンティは、彼らの雑誌名『レ・タン・モデルヌ』 "Les Temps modernes" を映画『モダン・タイムス』(仏語版映画名: "Les Temps modernes")から命名した[1]。
脚注
外部リンク
テンプレート:チャールズ・チャップリン- ↑ Appignanesi, Lisa, 2005, Simone de Beauvoir, London: Haus, ISBN 1-904950-09-4, p. 82.