モーリス・メルロー=ポンティ
テンプレート:Infobox 哲学者 モーリス・メルロー=ポンティ(Maurice Merleau-Ponty, 1908年3月14日 - 1961年5月3日)は、フランスロシュフォール生まれの哲学者。主に現象学の発展に尽くした。パリの自宅で執筆中、心臓麻痺のため死去。
思想
テンプレート:独自研究 彼の哲学は「両義性(Ambiguïté[1])の哲学」「身体性の哲学」「知覚の優位性の哲学」と呼ばれ、従来対立するものと看做されてきた概念の<自己の概念>と<対象の概念>を、知覚における認識の生成にまで掘り下げた指摘をしている。
例えば、「枯れ木」について、最初に見た時は、「枯れ木」という存在を眼で見ることで名前のない「現象」としては知ることができるが、「枯れ木」という言葉(記号)を知って初めて、恒常的に認識出来るようになる。これは、それまで現象として見てきた「枯れ木」というものが、言葉(記号)を知ることで同一言語下では共通した認識を得られるということである。
また、精神と身体というデカルト以来の対立も、知覚の次元に掘り下げて指摘し、私の身体が<対象になるか><自己自身になるか>は、「どちらかであるとはいえない。つまり、両義的である。」とした。一つの対象認識に<精神の中のものであるか><対象の中のものであるか>という二極対立を超え、私の身体のリアリティは<どちらともいえない>。しかし、それは無自覚な<曖昧性>のうちにあるのではなく、明確に表現された時に<両義性>を持つとした。そして、その状態が<私という世界認識><根源的な世界認識>であるとした。
そこには、既に言葉と対象を一致させた次元から始めるのではなく、そもそもの言葉の生成からの考察がある。
それは、論理実証主義哲学、分析哲学、プラグマティズムなどの<言語が知られている次元>からの哲学に厳しい指摘をしたといえる。そこには多くの哲学の垣根を越える試みが見られ、また、異文化理解や芸術などに大きな影響を与えた。
また、知覚の優位性からの新しい存在論の試みが絶筆となった『見えるもの見えないもの』で見られる。
主要著作
- 「モーリス・メルロー=ポンティの著作リスト」も参照(フランス語)。
- "La nature de la perception" (1933 - ) [2] 『知覚の本性 -- 初期論文集』 加賀野井秀一編訳(叢書ウニベルシタス) 法政大学出版局(1988)
- "La Structure du comportement" (1942) 『行動の構造』 滝浦静雄・木田元共訳 みすず書房(1964)
- "Phénoménologie de la perception" (1945) 『知覚の現象学1』 竹内芳郎・小木貞孝共訳 みすず書房(1967)
- "Phénoménologie de la perception" (1945) 『知覚の現象学2』 竹内芳郎・木田元・宮本忠雄共訳 みすず書房(1974)
- "Phénoménologie de la perception" (1945) 『知覚の現象学』 中島盛夫訳 (叢書ウニベルシタス) 法政大学出版局(1982)
- "Humanisme et terreur, essai sur le problème communiste" (1947) 『ヒューマニズムとテロル』改訂版 森本和夫訳 現代思潮社(1965)
- "Sens et non-sens" (1948) 『意味と無意味』 永戸多喜雄訳 国文社(1970)
- "Les aventures de la dialectique" (1955) 『弁証法の冒険』 滝浦静雄・木田元・田島節夫・市川浩共訳 みすず書房(1972)
- "Signes" (1960) 『シーニュ1』 竹内芳郎監訳 みすず書房(1969)
- "Signes" (1960) 『シーニュ2』 竹内芳郎監訳 みすず書房(1970)
- "L’Œil et l’esprit" (1961) 『眼と精神』 滝浦静雄・木田元共訳 みすず書房(1966)
- "Le Visible et l’invisible, suivi de notes de travail", texte établi par Claude Lefort (1964) 『見えるものと見えざるもの』 クロード・ルフォール編/中島盛夫監訳(叢書ウニベルシタス) 法政大学出版局、『見えるものと見えないもの』 滝浦静雄・木田元共訳 みすず書房(1989)
- "Résumés de cours, Collège de France 1952-1960" (1968) 『言語と自然 - コレージュ・ド・フランス講義要録 - 』 滝浦静雄・木田元共訳 みすず書房(1979)
- "La Prose du monde" (1969) 『世界の散文』 滝浦静雄・木田元共訳 みすず書房(1979)
- 『メルローポンティの研究ノート - 新しい存在論の輪郭 - 』 菊川忠夫(現象学研究会[3])編訳 御茶の水書房(1981)
- 『サルトル/メルロ=ポンティ往復書簡―決裂の証言』( J.‐P. サルトル、M. メルロ=ポンティ) 菅野盾樹訳 みすず書房(2000)
- 『知覚の哲学――ラジオ講演1948年』 菅野盾樹訳 ちくま学芸文庫(2011)
関連図書
- 『現象学』 ジャン・フランソワ・リオタール著、高橋允昭訳、文庫クセジュ:白水社(1965)
- 『現代フランスの哲学 - 実存主義・現象学・構造主義 - 』 ピエール・トロティニョン(Pierre Trotignon)著 田島節夫訳、文庫クセジュ:白水社(1969)
- 『現象学』 木田元 岩波新書(1970)
- 『現象学』 新田義弘 岩波全書:岩波書店(1978)
- 『メルローポンティの哲学と現代社会』(上・下) L・スパーリング(Laurie Spurling)著 丸山敦子・菊川忠夫訳 御茶の水書房(1981-1982)
- 『知の最前線 -- 現代フランスの哲学』 ヴァンサン・デコンブ(Vincent Descombes)著 高橋允昭訳 TBSブリタニカ(1983)
- 『メルロ=ポンティの思想』 木田元 岩波書店(1984)
- 『現象学の射程 -- フッサールとメルローポンティ』 水野和久、勁草書房(1992)
- 『「自分」と「他人」をどうみるか』 滝浦静雄、NHKブックス:日本放送出版協会(1992)
- 『メルロ=ポンティ』 村上隆夫、清水書院(1992)
- 『メルロ=ポンティの政治哲学 -- 政治の現象学』 金田耕一、早稲田大学出版部(1996)
- 『メルローポンティ -- 可逆性 シリーズ・現代思想の冒険者たち』 鷲田清一 講談社(1997、新版2003)
- 『サルトル/メルロ=ポンティ往復書簡 決裂の証言』 菅野盾樹訳、みすず書房(2000)
- 『メルロ=ポンティの意味論』 河野哲也 創文社(2000)
- 『メルロ=ポンティ入門』 船木亨 ちくま新書 (2000)
- 『メルロ=ポンティ 哲学者は詩人でありうるか? シリーズ・哲学のエッセンス』 熊野純彦、日本放送出版協会(2005)
- 『KAWADE道の手帖 メルロ=ポンティ』(2010.2)河出書房新社
関連項目
- メルロー=ポンティに影響を与えた人物
- アグレガシオン合格後、教員資格取得の教育実習同期生[4]
- シモーヌ・ド・ボーヴォワール
- クロード・レヴィ=ストロース - 雑誌「レ・タン・モデルヌ」を共に著した。
- その他
- ニコス・プーランツァス - メルロー=ポンティと交流があった。
- アーサー・ダントー - メルロー=ポンティに学ぶ。
- ジャン=ポール・サルトル - 雑誌「レ・タン・モデルヌ」を共に著した。