マラサイ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

マラサイ (Marasai) は、テレビアニメ機動戦士Ζガンダム』、劇場用アニメ『機動戦士Ζガンダム A New Translation』シリーズ、『機動戦士ガンダムΖΖ』およびOVA機動戦士ガンダムUC』に登場する架空の兵器

地球連邦軍特殊部隊「ティターンズ」の主力量産型モビルスーツ (MS)。メカニックデザイン小林誠が担当(クリンナップは藤田一己の手による)。

本項では、各派生機についても併せて記述する。

機体解説

テンプレート:機動兵器

グリプス戦役勃発当初、保有戦力の大半がジムIIなどの旧式機であったエゥーゴは、ティターンズの新鋭機に対抗し得る汎用主力MSの開発をアナハイム・エレクトロニクス社に要請した。

アナハイム社は吸収合併した旧ジオニック社の技術を土台に、ジム系の外観にまとめ上げたネモと、旧ジオン系MSの外観を持つハイザックをベースとしたマラサイの2機種を主力候補として提示した。

マラサイは、エゥーゴがティターンズから奪取したガンダムMk-IIムーバブルフレーム構造と、同じくエゥーゴを通じてアクシズ(後のネオ・ジオン)からもたらされた新装甲材ガンダリウムγを採用した本格的な第2世代MSとして完成した[1][2]。カタログ上の基本性能はエゥーゴの高コスト機であるリック・ディアス百式にも匹敵し、操縦性の高さと相まってグリプス戦役中の傑作機と評価されている。

エゥーゴ向けに開発されたマラサイには「MSA-002」のナンバーが予定されていた[3]。しかし、エゥーゴへの納入直前にティターンズから「ガンダムMk-II強奪事件」への関与を疑われたため、急遽アナハイム社は追及の矛先をそらすべく、ネモより先に完成していたマラサイの一次生産分数機をティターンズに無償供給した[1]。その後は正式に量産が開始され、グラナダ基地(登録ナンバー10)が8番目に開発した機体として「RMS-108」の型式番号が与えられた。なお、一次生産分の維持費および追加生産分に関しては、さすがに無償というわけではなかったとされている[1]

外観はハイザックやそれ以前のザク系MSを踏襲しており、モノアイカメラ内蔵の頭部と右肩のシールド、左肩の格闘用スパイクアーマーが特徴である。頭部にはの錣(しころ)のように首周りを覆う大型の装甲が追加され、ジオン系の指揮官用MSに見られる高性能大型ブレードアンテナが標準装備されている[1]。バックパックは、大容量コンフォーマルタンクと一年戦争期の高機動型ザクII1機分の推力を発生する高出力スラスターを備えており、重力下でも短時間の飛翔や空中機動が可能となっている[1]。ハイザックでは外装式だった脚部スラスターユニットは内装式に改められ、これのみでも地表をホバー走行することができる[1]

左肩のスパイクアーマーや右肩のシールドも大型化して2枚で構成され、基部でフレキシブルに可動し、折りたたむことも可能。ハイザックにあった左腕用のオプションシールドは廃止されたが、ラッチは両腕に残されている。

頭部にはバルカン砲を2門内蔵する。一部機体ではこれを小型ミサイルポッド(2発×1双)にしたものもある。シールド裏面にはゲルググ系のデバイスが採用された長柄の専用ビーム・サーベル2基を装備し、射撃武装としてハイザックと共用の小型ビーム・ライフルを携行する。本機はジェネレーター出力の向上が図られている[4]ため、ハイザックと異なりこれらビーム兵器の同時運用が可能である。劇場版の新作カットではガブスレイのフェダーインライフル(出力6.6Mw)を装備した機体も登場するが、劇中では未使用である。

ハイザックをベースとしているために各種部品や武装の流用が容易であり、腕部をハイザックのものに交換した機体(マラサイ改)も存在している[5]。これは初期に生産された機体に動力駆動系の不具合があったことや、「速射の妨げになる」とのクレームに対する現場での処置だといわれている。

ティターンズだけでなく、ジオン共和国も運用していると解釈できる場面がある[6]。第一次ネオ・ジオン抗争時にはハマーン・カーン率いるネオ・ジオン軍にも何らかのルートで流出したようで、『機動戦士ガンダムΖΖ』にも登場している[7]。ラプラス紛争時では地上のジオン残党軍によって運用されており、OVA版『機動戦士ガンダムUC』でグリーン系統に塗装された2機が連邦軍トリントン湾岸基地襲撃作戦に参加する。フェダーイン・ライフルとハンブラビの海ヘビを装備しており、フェダーイン・ライフルのビームサーベルを銃身を逆手に持って槍のように使用している。

『ADVANCE OF Ζ 刻に抗いし者』では、マラサイはアナハイム社から提供されたものだけでなく、グリプスでも生産されているという。

リメイク版の漫画『機動戦士Ζガンダム Define』では、マラサイはリック・ディアスの基本構造を持ち、装甲形状などを変更したものと再設定されており、コックピットが腹部から頭部に変更され、肩部の前後にスラスターが追加されている。マラサイの図面を見たクワトロ・バジーナはリック・ディアスの利点をスポイルしており、統合性能では同機に劣ると評している。アレキサンドリアに初期配備された機体のうち、シェリー・ペイジ少佐(本作オリジナルキャラクター)機は右肩のシールドも左肩同様のスパイクアーマーに変更されたうえ、左腕にハイザック用のシールドが装備されているほか、顔面もGM系のゴーグル型モニターに換装されているなど、印象がかなり変更されている。シェリー少佐の部下2名の機体は頭部のブレードアンテナを除去し、シェリー機を含めた3機全機がティターンズカラーに再塗装されている。また、テスト用にターゲットパターンを描き込まれた試験運用機をヤザン・ゲーブル大尉が運用し、カミーユ・ビダンと交戦して撃破されている。一方、アニメ版でマラサイに搭乗していたカクリコン・カクーラーは、本作ではマラサイに搭乗していない。なお、初期生産機の請求書の金額を見たバスク・オムはその高額さに激怒して正式な量産機にはかなりのコストダウンを要求し、そのためなら性能低下もやむなしとしている。

その後のアナハイム機との関係
ネオ・ジオン軍のギラ・ドーガ系統とは同じアナハイム製ということから結びつけられることがあり、『ニュータイプ100%コレクション 機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』では、ヤクト・ドーガの開発チームはマラサイを担当した旧ジオン系のチームではないかと推測している。そのほか、ギラ・ドーガと関連づける書籍が一部ある[8]
漫画『機動戦士ガンダム ジオンの再興』でも、ギラ・ドーガはマラサイの後継機と設定されている。ただし、本作登場MSの設定は完全に独自のものであり、マラサイ自体も型番が変更されているなどの違いがある。
設定の変遷
当初はエゥーゴの量産機としてデザインされていたが、「友軍量産機はGM顔、敵軍量産機はモノアイ系で統一しないと、敵味方がわかりにくい」という意見が製作サイド内部から出たため、急遽ティターンズ側の機体に変更された。上記の政治的設定は、この実話を参考にしている。
初期設定時の名称は「ドミンゴ」だったが同名の車が存在していたため、急遽「マラサイ」にネーミングが変更された。なお、マラサイの命名は監督の富野によるもので、その由来は富野以外知らないとのこと[9]。ファンの間では前述の設定変更を知ったスタッフの「いまさら…」というつぶやきが変化してマラサイとなったといわれる[10]。ただし、語呂の順序こそ違うが、ニューギニアには『マサライ』と呼ばれる蛇の姿をした氏族神が存在している。
デザインを担当した小林誠は、「マラサイはザクにヘルメットを被せ、特徴的なスパイクアーマーとシールドは大型化して、強そうに見せる事で低年齢層に受けるよう意識した」という旨のデザインコンセプトを語っている[11]
ドミンゴという名が設定内で言及されたことはないが、『ADVANCE OF Ζ 刻に抗いし者』ではエゥーゴが過去にテストしていた機体の1つとしてドミンゴの名が挙げられており(第十二話)、この名称を持った何らかの兵器は存在していたようである。ただし、名前が挙がっているのみであり、形態やマラサイとの関係は語られていない。
ギャプランの初期設定にも同名が見られ、こちらを踏まえた機体がゲームブックに登場したことがある。これについては同機の項を参照。

RX-107[ロゼット]

雑誌企画『ADVANCE OF Ζ ティターンズの旗のもとに』に登場。

アナハイム・エレクトロニクス社が地球連邦軍のハイザックを基に作った発展型後継機である。その外見はマラサイに酷似しており、アナハイムにおける実質上の試作機と考えられる。装備にもマラサイと互換性がある。

評価試験用として連邦軍に納入されたが、連邦軍はアナハイムの機体を評価せずT3部隊に送りつけた[12]。その後ジェネレーター出力の高さをティターンズに見初められてTR-4のコアMSとして使用された。基にされたハイザックと腕部・脚部等の換装が容易であり、ダンディライアン時に脚部を換装してビグウィグのブースターを装備したり、腕部・脚部を交換してビグウィグのコアとしてビームキャノンの出力安定をはかるなどが試案された。

TR-4 ダンディライアン

大気圏突入モジュール用に開発された機体。大気圏突入形態からMA形態、そしてMS形態と状況に合わせて3形態への形状変化[13]を行うことが出来る。

背部スペースにMSや折りたたんだロングブレードライフル等の武装を格納することが可能である。戦況によりダンディライアンのパーツを排除しコアMSであるRX-107[ロゼット]に戻ることや、大気圏突入形態のまま背部に搭載したMSを固定してのサブフライトシステムとしての運用も可能である。のちのバウンド・ドックの元になった機体とも考えられている。主な武装として脚部クロー(MA時)、ロングビームライフル(MS時)などがある。

RX-107[ロゼット] 強化陸戦形態

RX-107[ロゼット]に地上用の高速ホバーユニットを装着した形態である。高速制圧戦闘などに効果を発揮する。

地上用ホバーユニット(ホバリング・スカート・ユニット)に搭載されている強力な熱核ジェットエンジンによってホバリング機動を行うことができる。また、ホバーユニットにはミノフスキー・クラフトを搭載する案もあったが、ユニットを小型化することができなかったため、結局ミノフスキー・クラフトの搭載は見送られている。武装としてはキハールとほぼ同型のビームライフルを使用するが、グリップの規格が合わないため、右肩部に大型のマニピュレーター・ユニットが増設されている。

カラバのカムチャッカ基地を強襲する際に使用された。

RX-107[ロゼット] 強化陸戦形態(試作プラン)

熱核ジェットエンジン搭載型の強化陸戦形態が完成する以前に開発されていたものである。

当初は熱核ロケットエンジン搭載型として計画されていたが、途中で熱核ジェットエンジンを搭載するように仕様変更され、また、「イカロス・ユニット(ヘイズル用の空中機動ユニット)」の開発計画が優先されたことも重なった結果、この熱核ロケットエンジン搭載型はペーパープランのみに終わっている。

RMS-156 グリフォン

近藤和久の漫画版『機動戦士Ζガンダム』に登場。

グリプス戦役後半においてマラサイは旧式化しつつあり、アップグレードしてバーザムのポテンシャルまで引き上げ、性能的な面での延命処置を施した機体である。右肩のシールドはスパイクアーマーに換装され、ビームライフルもより大型のものを装備している。また頭部はモノアイ・タイプからガンダム状のツインアイ・タイプに変更されるなどの改良が施されている。劇中ではメールシュトローム作戦においてドルク大尉(オリジナルキャラクター)らが搭乗。

脚注

テンプレート:Reflist

テンプレート:宇宙世紀

テンプレート:Gundam-stub
  1. 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 テンプレート:Citation
  2. 古い設定では必ずしもそうではなく、プラモデル 1/144ネモ(旧キット)の説明書では、ティターンズに提供されたマラサイの装甲材は「ガンダリウム・アルファ系合金」であるような記述がされている。
  3. この型式番号も、 1/144ネモの説明書に見られる。
  4. プラモデル「HGUC(ユニコーンver)」の機体解説には、出力の向上によりEパックの複数携行を必要とせず収納スペースを装備していない、とした新規設定が記載されており、ジェネレーター出力と弾数に関係性がないとする既存のEパックの設定とは矛盾している。
  5. モデルグラフィックス誌に発表された非公式設定による機体。
  6. 『機動戦士Ζガンダム』第14話冒頭。ア・バオア・クーでドム等の共和国所属らしいMSの中にジムIIとマラサイが混ざっている。これらがジオン側の機体との説明は特にない。
  7. 『機動戦士ガンダムΖΖ』第27話で通常カラーのマラサイが1機登場する。第45話ではキャラ・スーンの部隊の通常機と、グレミー配下の灰色の機体の両方が数秒ずつだが確認できる。
  8. 株式会社レッカ社『ガンダムMS列伝』194-195頁。
  9. 学研ムック『機動戦士Ζガンダム 完全収録』91ページ。
  10. 双葉社刊「機動戦士ガンダムの常識モビルスーツ大全Ζ&ΖΖ&逆シャア編」テンプレート:要ページ番号
  11. ホビージャパンムック『ガンダムゲームズ』でのインタビューテンプレート:要ページ番号
  12. 『ADVANCE OF Ζ ティターンズの旗のもとに Vol.3』70頁より。
  13. 後の可変MS・MAとは異なり、基本的に一度形態を変更すると前の形態に戻ることを考えられていないため、この機体のシステムは「形態変化(いわゆる可変型)」ではなく「形状変化」と表記される。