ガンダムMk-II
ガンダムMk-II(ガンダム・マークツー)は、テレビアニメ『機動戦士Ζガンダム』『機動戦士ガンダムΖΖ』に登場する、モビルスーツ(MS)に分類される架空の兵器の一機種。
地球連邦軍特殊部隊「ティターンズ」の試作型モビルスーツ (MS)。後に反連邦組織「エゥーゴ」に奪取され、その所属機となる。本項目では、ゲーム、雑誌などのメディアミックス企画で設定された系列機の解説も記述する。
目次
機体解説
テンプレート:機動兵器 ティターンズが名機RX-78 ガンダムの名と設計を受け継ぐフラッグシップMSとして開発した機体。初期のティターンズ主力機ジム・クゥエルなどに使用された最新技術が投入されている。主にスペースコロニー内部での戦闘[1]を想定し、グリプス開発基地において8番目に開発された。
本機の意義は戦術兵器としてのそれに留まらず、アースノイドのスペースノイドに対する示威の象徴でもあった。ゆえにその完成式典に際しガンダムMK-IIは、ティターンズ側をして「我々の、我々による、我々のためのガンダム」[2]と称されたのである。一年戦争で活躍したガンダムを復活させることは、地球連邦軍内や世間に対してティターンズの行為を正当化するための好材料でもあった。そのためティターンズが機体開発を統括し、ジオン系の技術者を排除、純粋な連邦系技術のみを使用して完成に漕ぎ着けた。開発にあたっては、タキム重工のトップエンジニアを技術士官として招聘するなど、かつてのガンダム開発に携わった人材が破格の待遇で集められた。開発主査はフランクリン・ビダン大尉が務めた。
MS用新素材の研究が進まなかったため、装甲やフレームに旧来の規格品を用いる等、技術的に旧式な部分も少なくないが、初めて本格的にムーバブルフレームを採用した画期的な機体である。ベースとなったRX-78 ガンダムの基本設計の優秀さもあり、総合的に高性能な機体として完成した。脚部の可動部の露出が目立つのは、ビーム兵器を効果的に防御できる装甲が存在しない以上、重装甲化によって機体重量の増加を招くよりも、軽量化によって機動力を向上させ、被弾率を低下させるという当時主流となっていた設計思想に基づく。
マニピュレーターはビーム・ライフルのエネルギーパック化に伴い、エネルギーサプライシステムを廃止している。脚部にはムーバブルフレームに組み込まれる形でスラスター直結型のコ・ジェネレーターを搭載する。バックパックには4基のメインスラスターに加え、ビーム・サーベルホルダーを兼ねたフレキシブルバーニアスラスターを装備する。これによって重心点より離れた位置に作用点を配することができるため、有効なAMBACシステムとして機能している。本機の稼動データはΖガンダムを初めとする可変MSの開発に大きく貢献した。ただし、構造材にガンダリウムγが使用されていないことから厳密な意味での第2世代MSではなく、第1世代から第2世代への過渡期にある機体と言える(第1.5世代MSと言われる場合もある)。また、脚部のムーバブルフレームは構造的に柔軟性を有してはいたが、構造材の強度に問題があったため、瞬発的な外力に対し剛性が不足していたとされる。このムーバブルフレームは合計6回に渡る設計変更が行われたが、問題点を解決するには至らなかった [3]。
当初本機は全部で3機が建造されていたとされ、宇宙世紀0087年3月2日、サイド7グリーンノア1内での運用試験中に3号機がフランクリンの息子カミーユ・ビダンにより奪取され、エゥーゴの手に渡った。その後もティターンズ所属のエマ・シーンの離反により、結局3機全てがエゥーゴの手に渡る結果となった。後に4号機の存在が確認されたが、この4号機はMk-II強奪事件以前にグリーンノア1内で実施された高速機動試験中に墜落事故を起こしていたことが判明した[4]。この時搭乗していたパイロットはほぼ即死状態であったとされている。この墜落事故にも見られる本機の不安定さと新素材開発の遅延が重なり、ティターンズは予定していた本機の量産計画を見送り、ガンダム復活そのものを断念している[5]。
エゥーゴに渡った3機のうち1機は月のアナハイム・エレクトロニクス社にて機体構造の研究に使用され、1機は保守部品確保用として解体され(ただし解体の途中、カミーユによって左腕のない状態で出撃したことが数回ある[6])、残る1機(3号機)はアーガマ艦内にてティターンズカラー(濃紺)から白を基調としたカラーリング(灰色がかった白に、紺色と赤)に再塗装されて実戦投入された。武装についてもデータバンク内に存在したものを全て再現し、さらには新たな追加オプションまでも開発して運用された。一年戦争におけるガンダムを連想させる白い機体となった本機は、皮肉にも開発したティターンズに対する戦闘で高い戦果を挙げた。ガンダムの正当な後継機である本機を手に入れたということは、エゥーゴにとって勝利の象徴としても大きな意味を持った。
エゥーゴではアーガマやラーディッシュで運用され、ニュータイプとして最も優れた資質を秘めていたカミーユの能力もあり、グリプス戦役中盤頃まで最新機と互角以上に渡り合って多くの戦果をもたらした。ただし、本機自体は突出した性能は持たず、装甲も第2世代MSと比較して脆弱であり、コロニー内戦闘を想定していたことから火力面でも標準の域を出なかった。また構造材の問題から、設計値の性能を発揮できないという欠点も抱えていた。しかし機体の汎用性は非常に高く、ムーバブルフレームによる優れた運動性もあり、総合的な性能面では当時の最新鋭機にも十分対抗可能であった。本機は配備後も数回に渡る改修によって性能向上が図られ、高性能化が進むティターンズのMSに対抗していった。前述の墜落事故の原因となった構造上の不備もエゥーゴによって改善された。後に旧式な装甲の補強及び火力・機動力の強化策としてGディフェンサーが開発され、これによりグリプス戦役終盤までエゥーゴの主力機として活躍することになった。
本機は機能的に不完全な点もあったが、ムーバブルフレームをはじめとする設計思想は斬新であり、以後のMS開発に多大な影響を与えている。ムーバブルフレームの概念と本機およびフライングアーマーの稼働データはΖガンダムの設計に大きく貢献した他、地球連邦軍(エゥーゴ、カラバ)はジムIIIに設計の一部を取り入れている。雑誌企画『ADVANCE OF Ζ 刻に抗いし者』では、バーザムの解説として「グリプスの主力機開発計画」という一節があるが、本機との関係は言及されていない。
本機は第一次ネオ・ジオン抗争時にもアーガマやネェル・アーガマに配備された。ネオ・ジオンの最新鋭MSと比較して旧式化は否めなかったが、新たに配備されたアナハイム製の支援用MAメガライダーとのマッチング(相性)は極めて良好であり、ガンダム・チームの一翼を担って第一次ネオ・ジオン抗争の最終決戦まで戦い抜いている。
性能不足が指摘されて以降も本機が第一線で運用され続けた事実は、フラッグシップとしての存在意義と共に本機の汎用性と基本性能の優秀さを証明している。また、操作の容易さも大きな利点であり、本機のメインパイロットを務めたカミーユ・ビダンやエル・ビアンノは(ある程度の操縦の基礎はあったとはいえ)極めて短期間で同程度以上のカタログ性能を有する軍用MSに対して優勢に戦えるまでになっている。テンプレート:要出典範囲
ムーバブルフレーム
本機に搭載されたムーバブルフレームの構造は斬新かつ優秀で、同時期に開発されたリック・ディアスやプロトΖガンダムに搭載されたフレームの設計を凌駕している。そもそもジオン系MSはモノコック構造、連邦系MSはセミモノコック構造と設計概念が異なっており、この時代のMSは両者を必要に応じて使い分けていた。純粋な連邦系技術のみで開発することにより、統一したフレームで機体を構成するムーバブルフレームの発想に至ったとも言われている。
ムーバブルフレームは装甲や武装を機体の基本構造(フレーム)と分離させることによってフレーム自身を可動優先の理想的な構造に設計することが出来、可動に応じて装甲がスライドすることによってフレームを保護するものである。これによって機体の運動性能が大幅に向上し、メンテナンス性も向上することになった。このムーバブルフレームにはフィールドモーター技術が使用されており、フレーム自体が伸縮し、更には捻れることでストレスを軽減することが可能である。また、フレーム各部に設けられたヒンジやシリンダーは自重や加速、衝撃時の応力を分散させる機能も兼ねている。
フレームには各種のセンサーが内包され、得られたデータの管制を頭部に設けられたコ・プロセッサーを介してメイン・プロセッサーに伝達するとともに、プロセッサーから各アクチュエーターに指令を出し、応力や衝撃の分散を最適化する機能を有している。しかし、これらのデータは極めて膨大な量であり、全てをメイン・プロセッサーで統制することは不可能であったため、データに優先度を設けて処理が行われていた。
本機はフレーム材質の問題から関節軸の摩耗が生じ、データ処理の優先度の関係からこの軸の偏摩耗の情報が機体制御へ十分に反映されていなかった[7]。ムーバブルフレームの採用によって可動軸が増えたため、機体全体としてこの偏摩耗による影響を無視することができなくなり、パイロットはこれを補正しながらの操縦を強いられた。これらの機体の不安定さが、後述する墜落事故をはじめとする頻発する事故の要因となっていた。後にエゥーゴはこれらの欠陥を改良し、本機を主戦力として活用した。結果として、本機はエゥーゴに強奪されることによって本当の意味で完成したMSとなり、その性能を発揮することとなった。
また、本機はコア・ブロック・システムを廃し、一年戦争末期に提案された球形コクピットを発展させた全天周囲モニター・リニアシートを採用している。コア・ブロック・システムは「機体制御」と「パイロットの保護」の2つの役割を兼ねていたが、イジェクション・ポッドの採用でこれらを分離することが可能となり、機体制御を四肢にまで委ねるというムーバブルフレームへと昇華したとも言われる。
武装
時期によって型式番号が異なるため、0087年3月前後、0087年7月末、0087年8月27日の順で表記する[8]。
- 頭部バルカンポッド(型式番号:VCU-505EX-Gry/Ver.009、VCU-505EX-V・B/Ver.012、VCU-505EX-V・B/Ver.021)
- RX-78 ガンダムでは頭部に内装されていたバルカン砲を、装弾数向上のためオプション化している。銃口は左側に2門有し、右側はマガジンおよびバランサーとして機能する。このオプション化は頭部にコ・プロセッサーを搭載したため、バルカン砲の搭載スペースが確保できなかったことにも起因する。
- ビームサーベル(型式番号:XB-G-1048L、A・E-Br・G-Sc-L(7月末以降は共通))
- バックパックに2基装備される。出力は0.45MWで、当時としては高出力の部類に入る。設定画には「ビームジャベリンとしては使用不可です」という注意書きがある。
- ビームライフル(型式番号:BOWA・XBR-M-86-C2、A・E-Br・XBR-87-C、A・E-Br・XBR-87-D)
- エネルギーパックを採用。出力は2.6MWだが、マニピュレーターによるモード変更によって出力調節が可能である。1パックあたりの射撃回数は使用出力によって変動し、通常出力で7発、最大出力は6.07MWで3発の射撃が可能である。テンプレート:要出典最大出力時の威力は当時の戦艦の主砲と同程度とされている。不使用時はサイドスカートにマウント可能。ある程度の耐久性はあるようで、『ZZ』第12話ではガザDのビームサーベルをライフルで受け止めている。
- ハイパーバズーカ(型式番号:H-Baz-85-Gry/Ver.045、H-Baz-87-A・E/Ver.004、H-Baz-87-A・E/Ver.009)
- 通常弾と散弾の撃ち分けが可能。腰部のマウントラッチに装着することができる。なお、ほぼ同じデザインのもの(グリップのデザインが多少異なる)が『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』に登場し、ジム改、パワード・ジム、ステイメン(オープニング・フィルムのみ)が所持している。
- ロングライフル
- Gディフェンサーの主砲である高出力ビームライフル(出力6.8MW)。戦艦を一撃で沈める程の威力がある。Gディフェンサーとの合体状態での使用が原則だが、テレビ版『Ζ』第33話、劇場版『星の鼓動は愛』のようにGディフェンサーと分離しての使用も可能である。
- シールド(型式番号:RX・M-Sh-VT/S-0001B、RX・M-Sh-VT/S-001、RX・M-Sh-VT/S-008)
- GP01で試験採用された伸縮可能な盾。RX-78 ガンダムで採用されていたシールド同様に覗き窓が付いており、グリップはなく腕部のマウントラッチを介して装着する。なお、テレビ版『Ζ』第49話及び劇場版『Ζ-III 星の鼓動は愛』では、シールドをマウントしている左腕が破壊されたため、応急処置として左肩の付根にシールドを装着した本機でエマが出撃した。数回のビームの被弾にも耐えられるよう耐ビームコーティングが施されており、裏面には予備のエネルギーパックをマウント可能。ただし、この状態では覗き窓は使用不可となる。その他、ミサイルランチャーを装備することもできる(劇場版『Ζ』のみ)。
劇中での活躍
『Ζ』第1話から登場。黒いガンダムとして黒を基調としたティターンズカラーで塗装されている[9]。パイロットはジェリド・メサ、カクリコン・カクーラー、エマ・シーンの3人であったが、最終的には3機ともエゥーゴに奪われてしまう。その際、1号機を機体解析、2号機を予備のパーツ用に解体。残る3号機の機体色をRX-78 ガンダムを彷彿とさせる白を基調としたものに塗装し直している。
Ζガンダムが登場するまでの前半は主にカミーユが搭乗し、主役機として活躍した。カミーユがΖガンダムに乗り換えてからはエマが搭乗した。グリプス戦役開戦時にはすでに多少旧式化していたものの、エゥーゴ所属MSの中では突出した戦果をもたらしている。性能的に劣勢となった戦争後期においても、Gディフェンサーとの連携もあって最新機を相手に互角に渡り合い、多数のMSや戦艦を撃墜した。
劇場版『Z-I 星を継ぐ者』では、大気圏突入時におけるライラのガルバルディβとの交戦シーンで回し蹴りによる格闘戦を行い、ムーバブルフレームが破格の運動性をもたらすことを裏付けるような躍動感あふれるアクションを披露している。『Ζ-III 星の鼓動は愛』では、最終決戦でエマの遺体と共にコロニーレーザーによって消滅している。
『ΖΖ』でも引き続きアーガマに配備され、主戦力として活躍する(ただし、Gディフェンサーは補充されなかった)。この時期においては旧式化は否めなかったが、本機に搭乗したエル・ビアンノは初陣で新型MSであるガザDを中破させる戦果を挙げている。その後もガンダム・チームの一員としてエゥーゴの戦力の中核を担い、戦争終盤まで第一線で戦い抜いた。最後はアクシズ内部におけるクィン・マンサとの戦闘で大破し、Ζガンダム共々放棄されている。その後については不明だが、一説によれば地球連邦軍によって回収され、他のガンダムタイプMSと同様封印された。本機はグリプス戦役から第一次ネオ・ジオン抗争までの長期間に渡って第一線で活躍した。
『Ζ』作中、登場してから僅か数話で、その性能に関して貶されるシーンが多く、カミーユの父で本機の開発者であるフランクリンには「(データは十分に収集され、すでにそれをもとに新型機が開発中だから)あんなもの、もういらんでしょう」、クワトロには「(特に装甲材質に関して)所詮はMk-IIか」、パプテマス・シロッコには「(RX-78 ガンダムの)マイナーチェンジ」呼ばわりされ、『ΖΖ』でもネオ・ジオンのパイロットに「MK-IIごとき」と蔑まれた。ただし、実際に本機へ搭乗したクワトロは「加速性能は抜群」と高評価を下しており、小説版『Ζ』でもパワーでリック・ディアスを上回る描写がある。
OVA『GUNDAM EVOLVE II』では、月でのAMBACによる高機動戦闘テストの様子が描かれており、機体各所には試験用マーキングが施されていた。また、漫画『機動戦士ガンダム エコール・デュ・シエル』でも、月面都市アンマンのアナハイム・エレクトロニクス工場にて、ティターンズより奪取した1機を用いた性能テストを行っており、肩が黒いままの機体に同様のマーキングが施されていた。
ゲーム『サンライズ英雄譚2』では、ゲームオリジナル設定としてRX-78-2に準じた配色のアムロ・レイ専用機と赤く塗装されたシャア・アズナブル専用機が登場する。
設定の変遷
本機はテレビ版放送当時は3機製造されたという設定であった。機体番号は
- RX-178-1 ガンダムMk-II 1号機
- RX-178-2 ガンダムMk-II 2号機
- RX-178-3 ガンダムMk-II 3号機
となっている。しかし、2006年刊の書籍『ガンダムMSグラフィカ』で4号機が存在することになった。
- RX-178-4[10] ガンダムMk-II 4号機
本機は純粋な連邦系技術のみで作られている[11]となっているが、放映当時にキット化されたガンダムMK-IIの1/100スケールのプラモデルの機体解説には、一部ジオン系の技術が導入されているという旨の記述がある。 なお、劇場版『Ζ』では4機が存在する。
本放送当時のアニメックの(本機の操縦マニュアルと題した)記事によると、本機は一度に20機もの敵をロックオン可能という。この設定が公式なものかは不明。
また、フライングアーマーはエゥーゴが開発したものという設定(Ζ計画の「大気圏突入時の機体形状及び使用素材の評価試験用試作機」として開発されたとする説もある)であったが、劇場版『Ζ』ではティターンズが開発したものをエゥーゴが奪ってきたという設定に変更されている。このフライングアーマーは「ウェイブライダー」と呼ばれていた。
デザインの変遷について
実は『Zガンダム』の企画が動き始めた頃は、ガンダムMk-IIは登場する予定がなかった。当初は物語の冒頭から主役メカとなる“ニューガンダム(仮称。後のZガンダムに相当)”が登場する事を前提に、監督の富野からの直々の指名で永野護がデザインを進めていたが、先行して提出したリック・ディアスやガルバルディβのデザインはサンライズやバンダイから良い評価が得られなかった。ここで永野はデザイン作業から外れる事となり、前作『機動戦士ガンダム』でメカデザインを担当した大河原邦男や新たにメカデザイナーとして起用された藤田一巳が“ニューガンダム”のデザインを担当する事となる。
しかし「新しいガンダムを」という意欲の下描かれた新規性溢れるデザインはマーチャンダイジング等の観点から却下され、この時点で制作スケジュールの都合上、冒頭から“ニューガンダム”を登場させる事が不可能となった。またバンダイでは、富野によって提案された変形という新要素がともすればオモチャ的、あるいは旧来のスーパーロボット的とも捉えられていて、そういったギミックを持つ“ニューガンダム”が最初から登場することは前作からのファンはもとよりガンプラで『ガンダム』の世界を知った層にも違和感を抱かれるのではという危惧があった。そこで主に見た目、すなわちデザイン的に世界観を繋ぐ上でのリリーフエースとして、前作およびヒット商品であったMSVにおけるイメージを踏襲したガンダムを登場させる事が決定する。これがガンダムMk-II誕生の経緯である。
以後、大河原と藤田による準備稿が提出され、これらは『Zガンダム』製作決定の報に合わせてバンダイの模型情報等で公開される事となる。放送前年の模型見本市でも、新商材である『Zガンダム』をアピールするために準備稿をベースとしたフルスクラッチモデルが参考出品という形で展示された。このモデルは模型情報誌上でも製作を担当したプロモデラー・小田雅弘が製作記事を書く形で紹介され、多くのファンの目に触れている。また近藤和久がコミックボンボンで連載した漫画版『Zガンダム』において、準備稿のうちの2案(うち1案は、上記のモデル化されたもの)がガンダムMk-IIの1号機および2号機として登場した。
月刊ホビージャパン1988年5月号で当時を振り返った藤田は「どんなデザインを描いても誰も納得しないのではないか」と感じていたと明かしている。同記事によると、藤田がMK-IIのデザインに参加した段階で、すでに永野、大河原、ともに現場を離れ、二人の描いた絵が残されているだけの状態で打ち合わせなどはできず、二人のアイデアなどは生かせなかったという。
小説版ガンダムMK-II(エプシィガンダム)
富野由悠季によって著された「原作小説」[12]『小説 機動戦士Zガンダム(1)』で、表紙に描かれたガンダムMK-IIは永野護によるものである。頭部しか描かれていないが、RX-78系ガンダムの記号たる二重“への字”型インテークが無いなど、アニメ版のMK-IIとは大幅にデザインが異なる。また、カラーリングも全面グレーとなっている。これにはさらに裏話があり、この“小説版ガンダムMK-II”のデザインは本来、「エプシィガンダム」という名で、アニメにおけるガンダムMK-IIとZガンダムの間を埋める存在として登場させるべくデザインされたものであった[13]。しかし、アニメでの同機の役どころは「百式」が担うこととなり、「エプシィガンダム」としての同デザインはお蔵入りとなっていた。「エプシィ」とはガンダリウムガンマの改良合金「ガンダリウムエプシロン」を使用したガンダムを意味する。また今日、「デルタガンダム」といえば「百式」を指すが、1985年当時富野由悠季は「デルタガンダム」の名をガンダムMK-IIを指すものとしており、さらに「エプシィガンダム」はアニメにおけるそのデルタガンダムたるガンダムMK-IIの競作機デザインであると位置づけられてもいたため、事情は非常に複雑なものとなっている(エゥーゴの機体なのかティターンズの機体なのかも不明だという)。
アニメ版ガンダムMK-IIの競作機であり、アニメ版ガンダムMK-IIとZガンダムの中間機であり、小説においてはガンダムMK-IIの役を務めることになったこのエプシィガンダムは、先述のように当初小説表紙の頭部デザインしか発表されていなかった。しかし、『モデルグラフィックス1986年3月号別冊 ガンダムウォーズ・プロジェクトゼータ』(大日本絵画・1986)の模型作例として立体化されるにあたり、デザイナー永野護自身により全身デザインと背景設定が作られることとなる。それによれば、核融合パルス推進システムによる中距離単独飛行能力、グライバインダーによる高加速性、核パルスセイル「ブラッサム」による対ビーム偏向シールド、といった特殊装備を持つとされ、高コスト故実機製作が断念されたのだという。そして、高コストの原因たる「ブラッサム」を省いて造られたのが後の「百式」であるとされた。
バリエーション
Mk-IIディフェンサー(スーパーガンダム)
次世代試作機
雑誌企画『ADVANCE OF Ζ ティターンズの旗のもとに』で描かれたジム・クゥエルをベースとした試作機の一つで、ガンダムMk-IIと装備や外見に共通点が多く見られる。詳細は「ジム・クゥエル#次世代試作機」を参照。
フルアーマーガンダムMk-II
テンプレート:機動兵器 『Ζ-MSV』に登場。
装甲にガンダリウム合金を用いておらず防御力の脆弱性を指摘されていたガンダムMk-IIにガンダリウム合金製の追加装甲「FXA-03」を装着し、火力と装甲を強化する案。スラスター増設による推力向上が重量増加をカバーできる程ではなく、早くから機動性の低下を指摘されていた。結局、Gディフェンサーによる強化案(スーパーガンダム)が採用され、本機のプランは実現しなかった。
FXA-03
アナハイム社がMSの自社製強化パーツ開発計画の一環として、Gディフェンサー、Dディフェンサーと共に開発した装備。ちなみに、このデザインは漫画『プラモ狂四郎』に登場したHCMパーフェクトガンダム(デザイン:藤田一己)そのものである(ただし、作中の中身はRX-78 ガンダム)。 テンプレート:Clear
アーマードガンダムMk-II
雑誌「電撃ホビーマガジン」での特集「ティターンズMSの系譜」に登場。RX-178 ガンダムMk-IIの強化プランとして、当初ティターンズによって考案されていた。
エゥーゴによるRX-178用フルアーマー化プランとは異なり、「ティターンズ用フルアーマーガンダム」と銘打ち、FSWS計画の流れを受継ぎ、終戦後に計画を再開させたものとされている。火器強化案などはFA-78-1にほぼ準じているのが特徴。装甲は胴体を中心とした個所にチョバムアーマーを装備しているのみで、どちらかといえば動きやすさと火力を重視している。だが、エゥーゴによるRX-178強奪事件に前後し計画は頓挫。実現に移されることはなかった。
ガンダムMk-II 試作0号機(プロトタイプ・ガンダムMk-II)
ゲーム『機動戦士ガンダム ギレンの野望 ジオンの系譜』などに登場。 テンプレート:機動兵器 ガンダムMk-IIの先行型として、コストを度外視して開発された機体。そのためガンダムMk-IIよりも高性能だが、操縦性や整備性に多大な問題を抱えており、稼働時間も極めて短い。その扱い辛さ故に並みのパイロットではまともにコントロールできず、パイロットにはムラサメ研究所の強化人間プロト・ゼロが選ばれている。また、装甲とフレームが脆弱であるという課題はガンダムMk-IIまで持ち越された。製造コストはペガサス級戦艦数隻に匹敵すると言われているが、存在自体を疑問視する意見もあり、データ上にのみ存在する架空の機体とする説もある。頭部の角(センサー)と盾がガンダム試作1号機の物と酷似していることから、アナハイム社の関与が疑われる[14]。外装はジム・クゥエルと同一形状の部品が部分的に使用されている。
ゲーム中ではガンダムMk-IIの開発と無関係に、特殊な条件で開発提案される隠し機体として扱われており、正式なMk-IIの開発に際し本機を開発する必要はない。
ガンダムMk-II B
漫画『機動戦士ガンダム ジオンの再興』に登場。(形式番号:RX-178B)。
ガンダムMk-IIの陸戦型。陸上戦闘では不要となるスラスターが除去されている。主に指揮官やエースパイロットに配備された。PCゲーム『機動戦士ガンダム アドバンスドオペレーション』では、宇宙世紀0089年に地球連邦軍のパイロット、ゲーリー中尉の愛機として登場した。
武者ガンダムMk-II
『SD戦国伝』シリーズとは別に、宇宙世紀の世界観上で展開された雑誌「コミックボンボン」のオリジナルストーリー「プロジェクトMUSHA」に登場(1989年6月号掲載)。
木星の宇宙海賊掃討を目的として始動した連邦軍の「プロジェクトMUSHA」機体群の内のひとつ。その名が示すとおり、旧世紀の日本の鎧武者を模した外観を持つ。頭部に電磁場を発生させる角が2本搭載され、実体剣「コテツ」を装備している。
注釈
関連項目
- ガンダムシリーズの登場機動兵器一覧
- バーザム(ただし、関係性の初出は近藤和久のコミック版独自の要素であった。詳細は該当項目参照)
- ビルドガンダムMk-II - ガンダムビルドファイターズに登場するガンプラ。「HGUC ガンダムMk-II」を改造したもの。
- ↑ ジオン残党や反地球連邦意識を持つスペースノイドの居住地であるコロニーを制圧する軍事行動という意味でもある。
- ↑ バンダイ「1/144HGガンダムMK-II」(旧製品)付属解説書による。
- ↑ 『ENTERTAINMENT BIBLE .2 機動戦士ガンダム MS大図鑑【PART.2 グリプス戦争編】 』38頁より。
- ↑ 1号機と3号機も軽度の事故をおこしている。
- ↑ 『ガンダムMSグラフィカ』は当時の事故報告書を97年に再検証した体裁であるが、ジャミトフとバスクのMk-II視察時の写真にアッシマーとギャプランが映っていることから、既に上層部の関心は可変MSに移っており、当時提案されたであろう設計改善案が黙殺されAEに流れたのではないかという推測が描かれている。
- ↑ テレビ版。劇場版ではフランクリンの奪ったリック・ディアスとの交戦で破壊されたものとなっている。
- ↑ これはRX-78に施されたマグネット・コーティング時の設定が継承されたためであるという。
- ↑ 『マスターグレード』解説より。なお、『マスターグレード スーパーガンダム』記載の武装型式番号は誤って翌月発売の『マスターグレード ジム』に転載されてしまっている。
- ↑ アムロ・レイを演じた声優の古谷徹は、ティターンズカラーの本機をお気に入りのMSとして挙げている。
- ↑ 事故報告書内では「RX-178-04」。
- ↑ 『月刊ニュータイプ』創刊号(角川書店・1985)掲載「ザ・オフィシャルアート・オブ・Zガンダム」の記述による。
- ↑ 「原作」でありながら実際の発表時期はアニメ放映開始より後になってしまっていたため、富野は自らを「無様」と述べている。
- ↑ 『モデルグラフィックス1986年3月号別冊 ガンダムウォーズ・プロジェクトゼータ』(大日本絵画・1986)による。
- ↑ これらはGP計画が隠蔽されなかったというifの歴史に基づいたゲームオリジナル設定である。