パラサイト・イヴ
『パラサイト・イヴ』は、瀬名秀明のデビュー作となったホラー小説。第2回日本ホラー小説大賞受賞。
目次
概要
ミトコンドリア遺伝子の反乱を描いたSFホラー作品である。著者が、大学院博士課程(東北大学薬学部)に在籍する研究者だったことでも話題になった。
著者が大学・大学院生活を送っていた仙台市にある東北大学薬学部や医学部、およびその周辺などが情景として描き出されている。ただし、小説の舞台は、明確に仙台市とはなっていない。
受賞直後の1995年には「角川ドラマルネッサンス」(ファンタジーワールド内。TBSラジオ)としてラジオドラマ化された。発表直後でもあり、原作に沿った内容だった。ラジオドラマはその後、CDとして発売された。
1997年には、映画化もされた。映画はホラーというよりも、切ないラブストーリーとして描かれている。また、この小説を土台にしたプレイステーション用RPG『パラサイト・イヴ』、『パラサイト・イヴ2』がスクウェアより発売された。ゲームは当時最先端の美麗なCGと音楽が話題となり、累計100万本のヒットを記録した。
あらすじ
テンプレート:不十分なあらすじ 現代において、高度に脳が発達して、「遺伝子の支配」から離れたかのように見えるヒト。しかし、太古の昔に存在した利己的遺伝子である「イヴ」が、生物に寄生(パラサイト)して何億年も生き延びていた。
イヴは、生物遺伝子の主導権を得るため人体に対して反乱を起こし、ヒトとの生き残りをかけて争う。
ベースとなった科学的知識
この物語では、下記のような科学的な根拠をもとに描かれている。
- ミトコンドリアの共生起源説(細胞内共生説参照)
- 木村資生の分子進化の中立説
- ヒトの進化におけるミトコンドリア・イヴ説(Mitochondrial Eve参照)
- リチャード・ドーキンスの利己的遺伝子説
現在、ミトコンドリアは細胞内小器官として存在しているが、細胞の核DNAとは別にミトコンドリアDNAを備えているため「共生起源説」が考えられている。
生物の進化について学校では、チャールズ・ダーウィンの自然選択説 (自然淘汰説。適者生存説。survival of the fittest)が主に教えられるが、現代のネオダーウィニズムでは、自然選択説と並立して、木村資生が唱えた「生物の生存にとって有利でも不利でもない中立的な突然変異が偶然的に集団に広まり固定化する」という分子進化の中立説(survival of the luckiest)も基本理論の1つになっている。
分子進化の中立説に基づき、ミトコンドリアDNAの解析によって、人類最初の女性は誰かを探した研究者たちがいた。結局、その女性は、太古のアフリカに存在していたと結論付けられ、その女性を、創世記において神が創った初めてのヒトの女性・イヴになぞらえて、ミトコンドリア・イヴと名付けた。ただし、「人類最初の」と言ってもそれは「すべての人類はたった一人の女性からはじまった」ということではなく、「すべての人類は母方の家系をたどると、約15-30万年前に生きていた一人の女性にたどりつく」とするのが正確である。つまりこの研究では人類最初の女性を発見できたわけではなく、全人類に共通の祖先のうちの一人がアフリカにいたということを確認できたに過ぎない。
科学的な研究が進む分子進化の中立説に異を唱え、「生物は遺伝子が自らのコピーを残すために作り出した『乗り物』に過ぎない」とした利己的遺伝子説 (the selfish gene) が、リチャード・ドーキンスから発表された。
利己的遺伝子説をミトコンドリアDNAまで拡張すると、ミトコンドリアDNA(遺伝子)は、ミトコンドリアを「乗り物」にしており、尚且つ、細胞、更には生物を「乗り物」にしていることになる。
すなわち、ミトコンドリアDNA(遺伝子)は、細胞、および生物と「共生」をしているのではなく、自己の遺伝子のために生物に寄生(パラサイト)していると考えられる。
映画版
テンプレート:Infobox Film 1997年2月1日に東宝系で公開された日本映画。公開当時、ホラー映画は当たらないという理由で、ストーリーを大幅に変更され、ラブサスペンスとして映像化されたテンプレート:要出典。監督は、当時共同テレビのディレクターだった落合正幸。
映画あらすじ
スタッフ
- 製作:村上光一、川合多喜夫
- プロデューサー:小牧次郎、大川裕、堀部徹
- アシスタント・プロデューサー:関口大輔
- ラインプロデューサー:安藤親広
- 協力プロデューサー:遠藤龍之介、 上木則安、 内山浩昭、 菊池信夫
- 監督:落合正幸
- 脚本:君塚良一
- 音楽:久石譲
- 撮影:柴崎幸三
- 編集:深沢佳文
キャスト
- 永島利明:三上博史
- 永島聖美、Eve1:葉月里緒菜
- 吉住貴嗣:別所哲也
- 朝倉佐知子:中嶋朋子
- 大野達郎:稲垣吾郎
- 安斉麻理子:大村彩子
- 安斉重徳:深水三章
- 石原睦男:三谷昇
- 片岡茂:河原崎建三
- 小田切悦子:萬田久子
- 清水学:渡辺いっけい
- 司会者:大杉漣
- 泉田珠華
漫画版
しかくのにより漫画化された。映画版を中心とした設定だが独自の設定も追加されている。全1巻。
- ISBN 978-4048529068
ラジオドラマ版
1995年10月10日から12月8日にTBSラジオ「ファンタジーワールド」内「角川ドラマルネッサンス」(毎週月 - 金 24:00~24:10)にて、5~10分程のドラマが放送された。全44話。
放送後にホラーCDコレクション、パラサイト・イヴとして発売された。角川書店は書籍流通を使って、ハードカバーを模した装丁のCDブックとして上下巻構成で販売。ミトコンドリアに関する図説やシナリオを掲載したブックレットが付属(ケースの表紙部分に直接糊付される形でくっついている)。ポリスターは既存のCD流通を利用した販路で全2巻を発売。こちらのパッケージは4枚のCDを収納できるタイプのケースを利用していた。角川版上下巻・ポリスター版全2巻共に各巻CD3枚構成で、収録内容も同一である。
- 角川書店版 上巻:平成8年4月25日発行 下巻:平成8年5月24日初版発行 発行者:角川歴彦
- ポリスター版 第1巻;平成8(1996)年4月25日発売 第2巻:平成8(1996)年5月25日発売
1995 瀬名秀明/角川書店・ポリスター
製作スタッフ
- プロデューサー:高梨由美子/浅沼一郎/大川裕
- 原作:瀬名秀明
- 脚本:吉田玲子
- 演出:佐藤司
- 音響製作:青二プロダクション
- 音響製作協力:ファブリック
- 音楽:佐藤ヨシユキ
- 効果:東京サウンズアート
- 録音スタジオ:アバコスタジオ(名倉靖)
- 編集スタジオ:アドバルンスタジオ
- 進行:野村美香
- 音響プロデューサー:奥山六郎
- マスタリング:瀧口博達(JVCマスタリングセンター)
- ジャケットデザイン:スタジオWOW!
- 写真提供:メリディアン インスツルメンツ ファーイースト株式会社
- カバーグラフィック:東幸央
キャスト
- 長島利明:難波圭一
- 長島聖美:天野由梨
- 朝倉佐知子:新山志保
- 安斉麻理子:丹下桜
- 安斉重徳:納谷六朗
- 吉住貴嗣:森功至
- 織田あずさ:山崎和佳奈
- 篠原訓夫:磯部弘
- 石原教授:遠藤武
- 聖美の父:田中亮一
- 聖美の母:中友子
- イヴ:榊原良子
各話リスト
- 第一話 「イヴの目覚め」
- 第二話 「脳死判定」
- 第三話 「選ばれた男」
- 第四話 「適合者」
- 第五話 「永遠の命」
- 第六話 「心臓停止」
- 第七話 「腎臓摘出」
- 第八話 「予感」
- 第九話 「遠い記憶」
- 第十話 「移植成功」
- 第十一話 「細胞、EVE」
- 第十二話 「恐怖の足音」
- 第十三話 「悪夢」
- 第十四話 「増殖する魔女」
- 第十五話 「共生」
- 第十六話 「忍びよる影」
- 第十七話 「狂気の愛」
- 第十八話 「恐るべき進化」
- 第十九話 「あやつり人形」
- 第二十話 「宿主殺害」
- 第二十一話 「異常な細胞」
- 第二十二話 「ミトコンドリアの罠」
- 第二十三話 「襲われた女」
- 第二十四話 「奇妙な変化」
- 第二十五話 「冬の嵐」
- 第二十六話 「動く内臓」
- 第二十七話 「新しい女王」
- 第二十八話 「解放の日」
- 第二十九話 「恐るべき演説」
- 第三十話 「最終進化」
- 第三十一話 「イヴの時代へ」
- 第三十二話 「受精卵」
- 第三十三話 「狙われた娘」
- 第三十四話 「地下暴走」
- 第三十五話 「少女の受難」
- 第三十六話 「繁栄への野望」
- 第三十七話 「処女懐胎」
- 第三十八話 「誕生」
- 第三十九話 「イヴの誤算」
- 第四十話 「消滅」
- 第四十一話 「親と子」
- 第四十二話 「最期の賭け」
- 第四十三話 「終結」
- 第四十四話 「果てしない夢」
関連項目
外部リンク
テンプレート:パラサイト・イヴ テンプレート:Asboxテンプレート:Asboxde:Parasite Eve (Computerspiel) fa:پارازیت ایو (سری) fr:Parasite Eve zh:寄生前夜