細胞核
細胞核(さいぼうかく、テンプレート:Lang-en)とは、真核生物の細胞を構成する細胞小器官のひとつ。細胞の遺伝情報の保存と伝達を行い、ほぼすべての細胞に存在する。通常は単に核ということが多い。
歴史
オーストリアの植物画家フランツ・バウアーによって1802年に発見された。イギリスの植物学者ロバート・ブラウン(Robert Brown、1773年12月21日 - 1858年6月10日)により1831年に再発見され、ロンドンのリンネ協会に説明された。
構造
通常、核は細胞に1つある(例外は後述)。また核内には1つ以上の核小体がある。細胞の他の部分(細胞質)とは、核膜と呼ばれる2層の脂質二重膜によって隔てられており、核と細胞質間で物質輸送が行われるときには、核膜に空いた多くの穴(核膜孔)を通って行われる場合が多い。核内には遺伝情報であるDNAのほか、核タンパク質、RNA(リボ核酸)が含まれており、DNAの遺伝情報は核でRNAに転写される。細胞分裂時には、核内のDNAは凝集し、染色体と呼ばれる棒状の構造をとり、細胞分裂後の2つの細胞に分かれて移動する。このとき、核の表面は二重の核膜で包まれる。その後、それぞれの細胞では、再び核が形成され、染色体が消失、DNAが核内に広がる。
核内には、糸状に連なったDNA分子が結合蛋白質と複合体を構成しながら散らばっており、クロマチン(chromatin)あるいは染色質と呼ばれる。染色質の名前は、ヘマトキシリン染色などの染色をした細胞を光学顕微鏡で観察すると、核内が濃く染色されることから、クロマチンは大きく2種類に分けられる。
- ユークロマチン(euchromatin)、あるいは真正染色質 - RNA転写活性が高く、DNAがよく広がり、多種の蛋白質と共存する部位
- ヘテロクロマチン(heterochromatin)、あるいは異質染色質 - 遺伝子発現が不活性化され、DNAと結合蛋白質の複合体は凝集されたままの状態になっている部位
核が特徴的な細胞の例
多核体
多核体(たかくたい)は、合胞体(ごうほうたい)、シンシチウム(syncytium)、coenocyte、apocyte、polykaryocyteとも呼ばれ、1個の細胞に核がたくさんある細胞のことで、核が1個ある通常の細胞が細胞融合して形成されたものや、細胞質分裂を行わずに核分裂のみが進行した細胞。
- 骨格筋の筋細胞
- 筋肉の長軸方向に伸びる非常に大型の細胞で、1個の細胞を筋線維とも呼ぶ。この細胞は、筋肉の分化過程で多数の筋芽細胞が細胞融合してできる。長い筋肉の端から端まで強い力を出すために、細胞内に規則正しく配列した筋原線維(アクチンとミオシン)によって発生した張力を効率的に筋肉全体の力とするために役立っていると考えられている。
- 胎盤の絨毛膜絨毛の合胞体栄養膜細胞
- 合胞体栄養膜細胞(ごうほうたいえいようまくさいぼう、syncytiotrophoblast)は、胎盤にあって、胎児の血液と母体の血液とが混ざらないような仕組み「胎盤関門」を構成している。胎児の血管が通る絨毛膜絨毛の外側をすっぽりと被い、その外側の母体血との間で物質が自由に移動できないようになっている。細胞性栄養膜が細胞融合して形成される。
- 骨髄造血細胞の巨核球
- 巨核球(きょかくきゅう、Megakaryocyte)血小板のもとになる細胞で骨髄中に存在し周りの細胞よりひときわ大きい。
- 骨中の破骨細胞
- 骨を溶かし、再構築にかかわる。
真核細胞であるが、核のない細胞
- 赤血球は成熟に際し、酸素を運搬するという役割に特化するためにすべての細胞小器官を吐き出す。核もその例外ではなく、それゆえ in vivo でも3ヶ月程度の寿命しか持たず、老化した際は異物として異化される。