日本赤軍

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
テルアビブ空港事件から転送)
移動先: 案内検索

テンプレート:混同 テンプレート:Infobox 組織 日本赤軍(にほんせきぐん)は、中東など海外に拠点を置いて活動を行っていた日本の新左翼系団体。1971年共産主義者同盟赤軍派重信房子らが結成し、1970年代から1980年代にかけて多数の無差別テロ事件(日本赤軍事件)を起こした。2001年に解散。アメリカ合衆国国務省の国際テロリズム対策室は日本赤軍を「国際テロ組織」と認定していたが、解散したために認定を解除した。

歴史

結成

冷戦時代の1971年2月26日に、共産主義者同盟赤軍派の「国際根拠地論」に基づき、「海外にも運動拠点と同盟軍を持つ必要がある」と判断し、赤軍派の重信房子や元「京都パルチザン」の奥平剛士らがパレスチナへ赴き、同地で創設した。創設当初は「アラブ赤軍」、「赤軍派アラブ委員会」、「革命赤軍」等と称したが、1974年以降、「日本赤軍」を正式名称とした。

テロ事件

テンプレート:日本の新左翼 テンプレート:Main 日本赤軍は当初はレバノンベカー高原を主な根拠地に活動し、1970年代から1980年代にかけてパレスチナ解放人民戦線(PFLP)などパレスチナ極左過激派と連携し、主に日本のフラッグキャリアである日本航空機を対象とした国内外における一連のハイジャック、反イスラエル闘争としての空港襲撃に伴う一般人を対象にした乱射事件、大使館などの外国公館への武装攻撃、身代金や同志奪還を目的としたハイジャックなどの事件を繰り返した。

1972年5月30日イスラエルベン・グリオン国際空港で起こした「テルアビブ空港乱射事件」では、搭乗客や駐機中の旅客機を対象にした無差別乱射を行い、一般市民を中心に100人以上の死傷者を出した。この事件はPFLPの要請によって行われたものである。この自称「リッダ闘争」により、反イスラエル感情が強いアラブ諸国で日本赤軍は英雄視され、過激派が日本赤軍の自爆テロを模倣するようになった[1][2]

末期

その後も1980年代中盤にかけて、いくつかの武装ゲリラ活動をアジア諸国やヨーロッパ諸国を舞台に引き起こした他、「三井物産マニラ支店長誘拐事件」などにおいて他の武装組織への協力を行ったが、欧米各国・イスラエル・日本などの対テロ対策や資金規正の厳重化、アラブ諸国政府からの支援減少などにより、活動は先細りとなっていった。さらにソビエト連邦が崩壊により冷戦が終結した1990年代には、新規の支持者や支援の獲得が更に困難となり、またイスラエルや西側諸国と対立していた政府や各国の反政府組織からの資金協力や活動提携がほぼ完全に途絶えたこともあり、1990年代に入ると「日本赤軍」としての活動はほとんど行えない状況となった。

壊滅

さらに1980年代後半から1990年代後半にかけて、逃亡を続けていた丸岡修和光晴生等の中心メンバーが相次いで逮捕され、組織は完全に壊滅状態に追い込まれた。

その上に2000年11月には、「最高指導者」の重信房子も潜伏していた大阪府高槻市旅券法違反容疑で大阪府警警備部公安第三課によって逮捕された。その際に、押収された資料により1991年から日本での武力革命を目的とした「人民革命党」及びその公然活動部門を担当する覆面組織「希望の21世紀」を設立していたこと、またそれを足がかりとして社会民主党(旧日本社会党)との連携を計画していたことが判明したと新聞等で報じられた。

「希望の21世紀」は同事件に関連し警視庁と大阪府警の家宅捜索を受けたが、日本赤軍との関係を否定している。社会民主党区議自宅なども「希望の21世紀」の関連先として同時に捜索を受けたが、社会民主党は「何も知らなかったが事実関係を調査する」として関係があったことを否定した。

解散

上記のように、1980年代後半以降の主要メンバー逮捕、既存「シンパ」の多くの高齢化、新規の支持者や資金調達などの獲得困難などにより、1990年代後半に事実上の自然解散状態となった。これを受けて2001年4月に重信房子は獄中から「日本赤軍としての解散宣言」を行ない、正式に解散した。

後継組織としてムーブメント連帯が設立され、現在も設立当時からの支持者などを中心に全国に少数の「シンパ」がいるとみられているが、その多くは上記のように高齢化が進み、さらにこれを受け継ぐ支持者も少ないために年々その数は減少している。

2005年1月、元メンバーの山本万里子は東京都板橋区内のスーパーマーケットでさきいか二袋(一二〇〇円分)を盗んだ所を警備員に見つかり取り押さえられ、警視庁高島平署窃盗容疑で逮捕された[3]

解散後

重信房子は産経新聞インタビューで「世界を変えるといい気になっていた。多くの人に迷惑をかけていることに気づいていなかった。大義のためなら何をしても良いという感覚に陥っていた」と自己批判した。

ハーグ事件等に関与し1979年に日本赤軍を脱退した和光晴生は「この件(元メンバーの山本万里子がさきいかを万引きして逮捕されたニュース)は日本赤軍の実態・実状を示したものであり、かつてヨーロッパで商社員誘拐未遂だとか、大使館占拠や飛行機乗っ取り等を実行してきた組織には、反社会的・反人民的性格があった」と批判した[4]

主なメンバー

日本赤軍の主なメンバー
氏名 立場 参加 出身 主な日本赤軍事件 判決とその後























































重信房子 最高幹部
政治委員
1971年 赤軍派 懲役20年(服役中)
奥平剛士 最高幹部
軍事委員
1971年 京都パルチザン テルアビブで死亡
丸岡修 軍事委員 浪共闘及びベ平連 無期懲役(死亡)
和光晴生 軍事委員 1973年 若松プロダクションスタッフ 無期懲役(服役中)
奥平純三 軍事委員 1974年 京都パルチザン 国外逃亡(国際手配)中
安田安之 1971年 京都パルチザン テルアビブで死亡
岡本公三 1971年? 国外逃亡(国際手配)中
西川純 軍事委員 1973年 無期懲役(服役中)
日高敏彦 軍事委員 1971年 ヨルダン逮捕後、自殺
坂東國男 1975年 連合赤軍 国外逃亡(国際手配)中
佐々木規夫 1975年 東アジア反日武装戦線 国外逃亡(国際手配)中
大道寺あや子 1977年 東アジア反日武装戦線 国外逃亡(国際手配)中
泉水博 1977年 統一獄中者組合 無期懲役(服役中)
仁平映 1977年 統一獄中者組合 国外逃亡(国際手配)中
城崎勉 1977年 赤軍派 アメリカ合衆国で懲役30年
松田久 赤軍派 国外逃亡(国際手配)中
山田修 1971年 1972年、訓練中に死亡
檜森孝雄 国内で丸岡らのオルグなどの後方支援活動 1971年 2002年、焼身自殺
足立正生 政治委員 1974年 映画監督(若松プロダクション所属) 懲役2年・執行猶予4年
戸平和夫 軍事委員 赤軍派 懲役2年6ヶ月(2003年5月満期出所)
山田義昭 軍事委員 1973年 1986年2月出頭、懲役1年4ヶ月
山本万里子 欧州工作員(連絡役) 日系百貨店パリ支店勤務 懲役2年6ヶ月・執行猶予5年、2005年に窃盗で逮捕(板橋区スーパーで裂きイカ2点を万引き)
吉村和江 政治委員 懲役2年6ヶ月・執行猶予4年, 被拘禁者奪取罪, 国際指名手配にてペルーで逮捕、送還
菊村憂 正式なメンバーかどうかは不明。1988年、アメリカ合衆国で爆発物所持で逮捕、19年服役。2007年、日本に強制送還後、偽造有印公文書行使容疑で逮捕。懲役2年・執行猶予4年

日本赤軍が登場する作品

  • 『幽閉者 テロリスト』
  • 『カルロス』 - 2011年 フランスのテレビ映画

関連項目

脚注

テンプレート:Reflist

関連書籍

  • 足立正生『塀の中の千夜一夜 アラブ獄中記』愛育社、2005年9月、ISBN 4750002321
  • 石井一『ダッカハイジャック事件 日本赤軍との闘い』講談社、1978年5月、[1]
  • 河出書房新社(編)『赤軍 1969→2001 総特集』河出書房新社、2001年1月、ISBN 4309976018
  • 今野正義『槐夢 「赤軍」誕生から終焉までの軌跡 ドキュメント』碧天舎、2004年1月、ISBN 4883464571
  • 塩見孝也『赤軍派始末記 元議長が語る40年』彩流社、2003年3月、ISBN 4882027984
  • 世界革命戦線情報センター、査証編集委員会(共編)『隊伍を整えよ 日本赤軍宣言』 査証出版、1975年
  • 高木規矩郎『日本赤軍を追え 「ドキュメント」中東記者15年の取材ノート』現代評論社、1986年2月、[2]
  • 日本赤軍(編著)『日本赤軍20年の軌跡』話の特集、1993年5月、ISBN 4826401302
  • 松下竜一『怒りていう、逃亡には非ず 日本赤軍コマンド泉水博の流転』河出書房新社、1993年12月、ISBN 4309008739、河出文庫: 1996年2月、ISBN 4309404723、松下竜一その仕事刊行委員会版: 河出書房新社、2000年9月、ISBN 4309620736
  • 和光晴生「赤い春―私はパレスチナ・コマンドだった」集英社インターナショナル 2007年10月 ISBN 4797671688

外部リンク

テンプレート:冷戦
  1. 立花隆『イラク戦争・日本の運命・小泉の運命』講談社、2004
  2. フランソワ=ベルナール・ユイグ『テロリズムの歴史』創元社、2013
  3. テンプレート:Cite news(夕刊)
  4. テンプレート:Cite web