スーパー銭湯
スーパー銭湯(スーパーせんとう)は、日本における公衆浴場の一種であり、銭湯の形態の一つ。公衆浴場法および各都道府県の公衆浴場条例上では物価統制令の制限を受けない「その他の公衆浴場」に分類され、施設規模や利用料金は銭湯と健康ランドの中間的存在である。また、日帰り入浴施設に含まれる。
発祥地については諸説あるが、1980年代半ばより登場し始めたとされる[1][2][3]。船橋ヘルスセンターなど健康ランドが広がる中で、より低料金で回転率がよく、付帯設備が少なく、設置費用がかからない施設として建設されていった入浴施設がスーパー銭湯であるといえる[4]。
一般的な「銭湯」とは、露天風呂、各種アイテムバス、サウナなどの付加的な風呂設備を充実させたり、食堂や理髪店などの各種施設・店舗を併設することで差別化している。多くは水道水や井戸水を沸かして使用しているが、一部または全ての浴槽を温泉としているスーパー銭湯も増えている。
歴史
設備を充実させた“スーパー銭湯”的な施設の走りとして、1985年に富山県高岡市で開業した「万葉ポカポカ温泉」、1986年に大阪府豊中市で開業した「夢の公衆浴場 五色」、さらに遡ると1976年に大阪市生野区で開業した「ニュー富士羽温泉」(2008年廃業)などがある。これらの銭湯は公衆浴場条例における「普通公衆浴場」(入浴料金が各都道府県によって定められる)に分類されており、厳密には現在主流のスーパー銭湯とは区分が異なる。一方、1990年に愛知県名古屋市で開業した「竜泉寺の湯」は、同条例において「その他の公衆浴場」に分類されるスーパー銭湯の先駆けといわれている。同施設の登場は施設側が自由に入浴料金を設定でき、サウナの料金も入浴料金に含まれるなど画期的な事であった[1][2][3]。その後、1990年代後半から2000年代前半にかけて全国でスーパー銭湯の開業ラッシュとなり、2009年までに約770施設が開業している[5]。
1990年代後半以後、近場の温泉からトラックでお湯を運んできて沸かしているスーパー銭湯も見受けられるようになる。この方法はボーリングよりも比較的簡単に天然温泉を確保でき、温泉地・泉質を任意に選択できる利点がある一方で、循環によって使うことになるため、湯の投入量や設備によっては泉質の劣化が激しいという欠点もある。また、2000年代以後に流行している岩盤浴の設備を付加サービスとして設置している店舗もある。さらに、近年では人工炭酸泉を導入する店舗も増えている。最新の設備を導入する一方で、全体的な傾向として建物の造りを和式にしているところが比較的多い。
スーパー銭湯が登場してから「銭湯が家族のレジャーランド」となったが、その反面、従来は単に親(保護者)などに合わせるものである子供の混浴を問題視する人々も現れ、各都道府県でそれぞれ定めている条例などによる入浴制限[6]だけでなく、「身長による制限」や独自の「混浴年齢制限」を設けている店もある。また、誰もが手軽に近場で安価に温泉気分が味わえる一方、タオルを湯船につけるなどの一部の利用客のマナーの悪さも問題視されており、温度差はあるものの各店舗で改善策を講じている。中には「小学生以下入店禁止」などの制限を設けている店もあったり、マナー違反行為を発見した場合即時退店させる旨の掲示をしている店もある。
最近では、OFR48と銘を打ち温浴業界の活性化のため、全国の温浴施設で働く女性従業員により結成されたアイドルグループが各種メディアで取り上げられている。
定義と特徴
スーパー銭湯の明確な定義は存在しないが、設備・環境として以下のような傾向がある[4][7][8][9][10][11][12]。
- 自動車での来店を想定し、駐車場を確保している。
- 上記に関連して、郊外の基幹道路沿いに出店している。
- 内湯のみでなく、ジャグジー、サウナ、露天風呂等の付加的な風呂設備がある。
- 食事スペースや休憩場所がある。レストランと遜色ないメニューを提供している店舗もある。
- 理髪店・ボディケア店と提携している。
- 営業時間が長く、早朝・午前中(朝6時 - 10時頃)から深夜(0時 - 3時頃)まで営業している。
- 休業日が少ない。またはメンテナンス日等を除いて年中無休である。
健康ランドとの比較では、以下のような傾向がある。
- 入浴料金が安く設定されている。通常の銭湯と比較してサウナ利用料など付加的料金を加え、入浴料として700 - 800円に設定していることが多い(入浴料金1000円程度までの類似施設が一般的にスーパー銭湯と呼ばれる)。
- タオルなどの貸し出しは別料金になることが多く、健康ランドにあるような館内着はふつう用意されていない。
- 地域・店舗によっては、シャンプーや石鹸などの備え付けがない店舗もある。特に料金の安い店で、この傾向が見られる。
- 24時間営業に近い施設は少ない(オールナイトによる深夜から早朝の営業を行うところはある)。
- 健康ランドは半日からまる一日をそこで過ごす長時間滞在を前提とし、スーパー銭湯は健康ランドより比較的短い時間(2 - 3時間程度)の滞在を前提とする施設といえる。
主な参入企業
スーパー銭湯への新規参入の障壁は低いことから、様々な業界からの参入がみられる。 (※印はフランチャイズ)
企業名 | 業種 | 運営施設名 | 備考 |
---|---|---|---|
京成電鉄 | 鉄道事業者 | 笑がおの湯 | グループ会社のコミュニティー京成が運営 |
京浜急行電鉄 | みうら湯 | グループ会社の京急開発が運営 | |
相模鉄道 | ゆめみ処ここち湯 | グループ会社の相鉄不動産販売が運営 ※2014年に東京建物グループの株式会社ホットネスに譲渡、全店舗がおふろの王様チェーンに転換 | |
富士急行 | ふじやま温泉 | 富士急ハイランドに併設 グループ会社の富士急ハイランドが運営 | |
さがみ湖温泉 うるり | さがみ湖リゾート プレジャーフォレストに併設 | ||
北海道旅客鉄道 | 極楽湯※ | グループ会社の北海道ジェイ・アール・フーズが運営 | |
北海道中央バス | バス事業者 | 湯めごこち 南郷の湯 | |
神奈川中央交通 | 湯快爽快※ | グループ会社のクリエイトL&Sが運営 | |
大和システム | 不動産業 | やまとの湯 | ※会社分割により湯快生活に事業譲渡、施設も継続 |
東急レクリエーション | 美しの湯 | ||
東京建物 | おふろの王様 | グループ会社のホットネスが運営 | |
サンフジ企画 | 湯楽の里 | グループ会社のスパサンフジが運営 | |
喜楽里 | |||
ナカシロ | 建設業 | 楽の湯 | |
別院建設 | 高槻別院 湯めみの里 | グループ会社のベル・ウッド・ライフサービスが運営 | |
レイモンド綜合設計 | 野田の湯 湯食館 | 子会社のレイモンドコーポレーションが運営 ※2010年閉館 | |
明輝建設 | 天然温泉ゆずき | グループ会社のプロフェシーが運営 | |
橋本建設 | 天然温泉 湯の花 | グループ会社のアースキュアが運営 | |
九州電力 | 電力会社 | 湯あみの郷 | グループ会社の九建が運営 |
中国電力 | 天然温泉 ほの湯 | グループ会社のエネルギア不動産が運営 | |
中部電力 | 葵湯 | グループ会社の中電不動産子会社、Kirai Yuが運営 ※2009年4月に運営子会社を売却したことにより撤退、施設は継続 | |
東京電力 | いこいの湯、極楽湯※ | グループ会社の東電不動産が運営 ※2010年撤退[1](pdf)、施設は継続 | |
北海道電力 | 湯処 花ゆづき | グループ会社の北電興業が運営 | |
オークランド観光開発 | レジャー施設運営 | 竜泉寺の湯 | |
スオミの湯 | |||
癒し湯処 磐田の湯(静岡) | |||
天然温泉 喜盛の湯(岩手) | |||
コロナ | アミューズメント施設運営 | コロナの湯 | |
ジャパンニューアルファ | パチンコ店運営 | 湯花楽[注 1]テンプレート:Refnest | グループ会社のリラフルが運営[注 2] |
コシダカホールディングス | カラオケボックス運営 | まねきの湯 | グループ内の「まねきねこ」と仕入れを共通化 |
中日本興業 | 映画館運営 | 天風の湯 | グループ会社の中日本商事が運営 |
繁田醤油 | 醤油製造 | いるまの湯 | |
グンゼ | アパレルメーカー | 湯の華廊 | グンゼタウンセンター つかしんに併設 グループ会社のつかしんタウンクリエイトが運営 |
脚注
注釈
- ↑ 株式会社リラフルに譲渡されリニューアルした店舗:「天然温泉 湯花楽厚木店」(旧・厚木天然温泉 ほの香 ※2011年1月改称)、「北本天然温泉 湯花楽北本店」(旧・北本天然温泉 楽市楽湯 ※2013年6月改称)
- ↑ スーパー銭湯の他に、健康ランド「JNファミリー」を運営している。
出典
関連項目
外部リンク
- ゆ〜ナビ関西 - 大阪、兵庫【神戸】、京都、奈良、滋賀、和歌山など関西のスーパー銭湯・日帰り温泉を紹介。
- スーパー銭湯全国検索 - 全国のスーパー銭湯・日帰り温泉を紹介したサイト。
- スーパー銭湯の歴史 - 温泉研究家 佐藤茶