ガンダムエピオン

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ガンダムエピオン(Gundam Epyon)は、テレビアニメ新機動戦記ガンダムW』に登場する架空の兵器

軍事秘密結社「OZ(オズ)」の一派閥によって開発された格闘戦用ガンダムタイプMS(モビルスーツ)。双頭の竜のような飛行形態に変形する。機体名の「エピオン」とは、ギリシア語で「次の」「次世代の」という意味を持つ。劇中では主人公・ヒイロ・ユイが最初に搭乗するが、のちに紆余曲折を経てライバルであるゼクス・マーキスの搭乗機となる。

メカニックデザイン大河原邦男が担当。漫画新機動戦記ガンダムW Endless Waltz 敗者たちの栄光』、小説新機動戦記ガンダムW Frozen Teardrop』(以下『FT』)では、カトキハジメによってリファインされたEndless Waltz(以下EW)版デザインで登場する(詳細は後述)。

本項では、ゲームSDガンダム GGENERATION』シリーズに登場する兄弟機ガンダムアクエリアスについても併せて記述する。

機体解説

テンプレート:機動兵器 OZ総帥の任を解かれルクセンブルクに幽閉されたトレーズ・クシュリナーダが、幽閉先の古城地下にて極秘に完成させたMS。機体設計には、トールギスウイングガンダムゼロ(ウイングゼロ)、オペレーション・メテオに投入された5機のガンダムのデータが反映されている。

本機は、人間同士の崇高な決闘を美徳とするトレーズの騎士道精神が色濃く反映されており、右腕の大型ビームソード、左腕シールド先端のヒートロッドといった接近戦用武装以外の射撃武装(飛び道具)を一切持たない[1]。その設計思想は兵器としての実用性に欠いているが、本機はあくまでトレーズの理想とする戦士としての信念・生き様を具現化するための象徴であり、乗り手の戦いへの解答を指し示す道標として生み出された存在である。ただし、機動性・パワーなどの基本性能は、A.C.(アフターコロニー)年代最強の機体であるウイングゼロと同等もしくはそれ以上の戦闘性能を誇り、同じくウイングゼロの「ゼロシステム」と同等の機能を持つ特殊インターフェイスの採用により、パイロットの潜在能力を限界以上に高めることができる。だが、操縦に伴うトールギス以上の殺人的な加速度に耐えうる屈強な肉体と、ゼロシステムを使いこなす強靭な精神力が必須で、並のMSパイロットには乗りこなすことはまず不可能。

アビリティレベル

リーオーをオールレベル100として換算)

  • ファイティングアビリティ:レベル160
  • ウエポンズアビリティ:レベル140
  • スピードアビリティ:レベル160
  • パワーアビリティ:レベル150
  • アーマードアビリティ:レベル140

Endless Waltz版

OVAおよび劇場版『新機動戦記ガンダムW Endless Waltz』では、カトキハジメによって主人公達のガンダムのデザインが一新されたが、『EW』で未登場のエピオンのみは、『敗者たちの栄光』『FT』が発表されるまでの14年間リファインが行われていなかった[2]。リファイン後の大まかなシルエットや配色はテレビ版から大きく変化していないが、翼(エピオンウイング)の展開ギミックが新たに設定されるなど、各部にカトキ独自のアレンジが加えられている。

『FT』ではゼクス搭乗機が改良されて登場するほか、プリベンターの火星支局にて、一部仕様変更を加えた上で再製造された「エピオンパイ」(後述)が登場する。

ゼロシステム

ウイングゼロと同様、コクピットに採用された特殊インターフェイス[3]

このシステムは、リアルタイムで推移する戦況を演算処理し、導き出された最良の戦術、および実行後予測される結果を搭乗者の脳に直接伝達する。逆に搭乗者の意思を機体に反映することで、操縦桿やペダルなどの物理的操作を省略した直接的な制御も可能であるという。また、脳内神経伝達物質の分泌量をコントロールすることでドーピング的な身体強化を行うことも可能で、これを利用して機動時のG負荷や痛覚などの感覚を麻痺させ、人体の限界以上の環境下での制御を可能としている。端的に言えばパイロットに実力以上の結果を出させる機能である。

本機では情報伝達をよりダイレクトに行うため、搭乗時はシステムや各部センサーと直結した専用のデータヘルメットを着用する。このため、コクピット内部は他の機体に比べモニターやコンソール類が極端に少ない。

MSのインターフェイスとしてはある種理想的とされるゼロシステムだが、それに等価して負の面も存在した。そもそも、システムが志向する「最良の戦術」とは、あくまで自機の勝利のみを追求したものであり、目的達成のためであれば味方の犠牲や搭乗者自身の死さえもいとわない。そして、伝達した戦術と搭乗者の理性・倫理を天秤に掛け、戦術の実行を強制させようとする。また、ゼロシステムは機体の限界性能を引き出すようパイロットに作用するので、搭載機の性能が高いほどパイロットに掛かる負荷も大きくなる。システムに屈した者は衝動のままに破壊を繰り返し、最悪廃人に至るか脳が耐えきれず死亡する危険性もはらんでいる。このため、搭乗者にはシステムからの望ましくない命令を取捨選択し跳ね除け、耐えられるだけの強い精神力が要求される。

トレーズは「敵」を見失うヒイロ・ユイに道標としてこのエピオンを託すが、「その機体に乗って勝者になってはならない」と忠告する。それはつまり、確固たる意志がなければ、システムに翻弄され無意味な勝利しかもたらされないということに他ならない。正にトレーズ独特の美学が凝縮されたガンダムと言える。しかしヒイロには彼の哲学が理解し難かったため、のちにゼロに搭乗していたゼクス・マーキスと互いの機体を交換する。

モビルアーマー形態

高速移動用の飛行形態。外見だけでなく内装機器の配置を組み換えることでエネルギー効率を向上させ、同じ可変機であるウイングゼロのネオバード形態を凌ぐ機動性と航続性能を発揮する。変形時は両脚が股間ブロックごと背部に折り畳まれるのが最大の特徴で、その配置から双首竜を思わせる形状となる。なお、変形後の名称はプラモデルの付属解説書では「モビルアーマー形態」と呼ばれるが、資料によってはウイングゼロ・ウイングガンダム同様「バード形態」の呼称も用いられる。

EW版ではテレビ版の変形方法をほぼ踏襲しているが、両爪先に牙を持つ口のような開閉構造が追加されるなど、より竜らしい意匠を持つ。

テレビシリーズの小説版ではモビルアーマー形態は削除されている。

武装

ビームソード
右腰にマウントされた大型ビームサーベル。従来機で採用されているサーベルの柄にエネルギーを充電する方式ではなく、柄尻と右腰エネルギーサプライヤーに接続されたケーブルを介し、機体のジェネレーターから直接エネルギーを供給する。このため桁外れの出力を持ち、長大な両刃剣状のビーム刃を形成する。その刀身のサイズから「サーベル」ではなく「ソード」と呼称される。標準出力状態においてもガンダニュウム合金製のビルゴを数体まとめて両断し、高出力状態では巨大宇宙要塞バルジを一刀両断してしまうほどの規格外の力をみせた。
エピオンシールド
小型だが格闘時の取り回しに優れた左腕のガンダニュウム合金製シールド。表面に施された特殊コーティングによって、ビーム兵器に対しても高い防御力を発揮する。
EW版では、MA形態時の取り付け位置が大腿側からフロントスカート側に変更されている。
ヒートロッド
エピオンシールド先端に接続された鞭のような打撃武器。使用時は表面が灼熱化し、ガンダニュウム合金をも熔断する威力を発揮する。また、単純な打撃や敵の捕獲、武装の奪取などにも使用される。ビームサーベル以上の間合いと、その変則的な攻撃軌道故の動きの読み辛さが強みだが、使いこなすには相応の技量が求められる。
ガンダム無双など一部ゲームでは、不使用時に先端を残してシールドに収納可能であり、EW版では格納機能が実装されている。この機能は、同じくトレーズが製造させたトールギスIIIのヒートロッドにも採用されている。
エピオンクロー
両前腕のガンダニュウム合金製対装甲クロー。MA時の着陸脚としても使用される。
EW版ではより腕と一体化したデザインとなり、MA形態時に大きく展開する方式に変更されている。

劇中での活躍

ルクセンブルクの古城にある地下施設に隠されていた本機は、ヒイロに再び戦う意義を見出させるために、トレーズによって託される。トレーズは、エピオンで戦った結果選択すべき未来がなければ共にこの世に別れを告げようと提案したが、ゼロシステムに翻弄されルクセンブルク基地で交戦中だったOZのトレーズ派・ロームフェラ派双方のMS、MDを見境なく破壊してしまったヒイロは、自分にはその資格はないと申し出を拒否する。ヒイロはこの機体でサンクキングダム王国防衛戦に参加するが、結局王国は陥落。戦艦ピースミリオンから地球に降下してきたゼクスのウイングガンダムゼロと交戦した後、お互いの機体を交換する。

その後エピオンは、ゼクスが本名ミリアルドを名乗り、ホワイトファングの司令官になるとともにその象徴となり、バルジ攻防戦や、ピースミリオンのガンダムチーム、トレーズ率いる地球軍と戦う。リーブラ攻防戦では全世界が見守る中ヒイロのウイングゼロと激突。だが最終的には一歩およばず、機体の左腕を斬り落とされゼクスは敗北する。最後は地球へ降下し始めたリーブラのエンジンブロックにビームソードを突き立て、機体とともに爆炎に飲み込まれる(漫画版ではヒイロに敗れた後、ゼクスはヒイロたちに協力して6機のガンダムのエネルギーをツインバスターライフルで放ち、リーブラを破壊する)。漫画版では前述の経緯から破壊されていないが、その後の処遇は不明。

『敗者たちの栄光』では、レディ・アンからガンダムに関する報告を受けていたトレーズが、デスクの端末で機体の設計データを閲覧するシーンが描かれている。

『FT』ではリーブラ攻防戦後に極秘に回収され、ラナグリン共和国のゼクス・マーキス上級特佐の搭乗機となる。脚部(MA形態時の機首部分)に連装ビーム砲が追加されている。

ガンダムエピオンパイ

テンプレート:機動兵器

『FT』に登場。オリジナルのエピオンの設計データを基に、老師・張(張五飛)が独力で完成させた機体。「パイ(中国語の白)」は純白と蒼の機体カラーに由来し、張からはかつての愛機シェンロンガンダム(アルトロンガンダム)と同じ「ナタク」の愛称で呼ばれている。

機体はほぼオリジナルを複製しているが、武装が伸縮機能を持つ右腕の大型クロー「ドラゴンハング」、三叉のビーム刃を形成する槍「ビームトライデント」に変更されている。ドラゴンハングはMA形態時に機体中央に位置し、ちょうど三つ首の龍のような姿となる。ドラゴンハングにはビームカノンとマシンキャノンが内蔵されており、オリジナル機と異なり射撃戦にも対応している。

劇中では、ラグナリン共和国所属のオリジナル・エピオンと交戦する。張の手によって念入りに整備されており、序盤はゼロシステム未起動の状態で、システム発動状態のオリジナル機を圧倒する。

ワイバーン

『FT』に登場。搭乗者はカテリナ・ピースクラフト。

ジェイ(のちのドクターJ)が制作した機体で、形状はエピオンのモビルアーマー形態に酷似している。ゼロシステムも搭載している。カラーリングは白銀。

ガンダムアクエリアス

テンプレート:機動兵器

『SDガンダム GGENERATION』シリーズのオリジナルMSで、エピオンの支援を目的に開発された機体。アクエリアスとはみずがめ座を意味する。対MD用の電子戦装備「アンチMDシステム」を搭載している。これは本機から半径100km以内に存在する全MDにコンピュータウイルスを送信し、機能障害を発生させる。アクエリアスがMDを行動不能に陥れ、エピオンがその間に有人の指揮機を撃破すると言う戦法が考案されていた。

ジェネレーター出力の大半をシステムの稼働に費やしているため、「本体からのエネルギー供給を必要とするビーム兵器」は使用しない[4]。また、システム自体も大型なため自重が増加しているが、大気圏内飛行が可能なほどの大出力スラスターを搭載しており、エピオンに追従できるだけの機動性は備えている。

この機体はトレーズがOZ総帥の地位を追われた後、彼の支持者によって開発された機体であるが、実戦には一度も参加していない。一説によると、デルマイユ派によって開発者ごと闇に葬られたとも言われている。 テンプレート:Clear

脚注

  1. ただし、テレビシリーズの最終話である第49話ではエピオンがバルカン・マシンキャノンらしき飛び道具を使っている描写があった。エピオンに追加武装としてホワイトファングの手で装備されたのか、リーブラ内の防衛システムが作動したのかなど諸説あるが真相は不明。
  2. 『EW』に先立つ1996年に『GUNDAM FIX』においてカトキがエピオンを描いているが、モビルアーマー形態が後部からの視点で描かれているために全体が把握できず、また判別可能な部分も『EW』においてリファインされた他の機体と違い、航空機風のアレンジとなっている。
  3. 一部媒体あるいはゲームでエピオンシステムと書かれていることがあるが、機体初起動時にデータヘルメットのディスプレイに表示された「SYSTEM-EPYON」との関係は不明。
  4. もとはビーム兵器全般について装備しない設定だったが、『GGENERATION WORLD』では設定に反してドーバーガンがビームを発射できる仕様に変更された。『GGENERATION OVER WORLD』では設定も「本体からの~」と文が変更されている。

外部リンク

テンプレート:アフターコロニーfr:Liste des armures mobiles de Gundam Wing#Gundam Epyon