カトキハジメ
テンプレート:存命人物の出典明記 カトキ ハジメ(1963年12月3日 - ) は、アニメ、ゲーム、玩具などを中心に手がける日本のメカニックデザイナー、イラストレーター。埼玉県出身。
目次
人物
デビュー当時の名は かとき すなを 後に かとき はじめ 。同人作家時代は本名の 加藤 一 の表記もみられた。メジャーデビュー作の『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』発売のタイミングより片仮名の カトキ ハジメ 表記にしている。
模型雑誌モデルグラフィックス連載企画『ガンダム・センチネル』のメカニックデザインで一躍脚光を浴びる。その後も「機動戦士ガンダムシリーズ」のメカデザイン、二次創作(リファイン版、通称“カトキ版”)、同シリーズのプラモデル(ガンプラ)のコンセプトデザインを担当するなど、「機動戦士ガンダムシリーズ」に関わる事が多い。
『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』においては、河森正治がデザインを行った前半の主役機ガンダム試作1号機の、機構部分などのデザインを担当した際に自らの観点で修正(リファイン)を行い、その延長として後半の主役機ガンダム試作3号機をデザインした。 オリジナルである河森の試作1号機について「デザインはあまり好きじゃないけど」「(カトキハジメの主観で、特にガンダムという作品において既存のものから浮いたデザインは)メカデザイナーの自己満足であってファンは喜ばないと思います」とコメントをしている[1]。その主張は、既存作の『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』用に起こされたメカニックデザインを、『ガンダム・センチネル』『機動戦士ガンダム0083』中に取り入れる試みなどにも現れている。
仕事はメカニックデザインが中心ではあるが、『ガンダム・センチネル』などで、キャラクターデザインも手がけることがある。CG作品集『GUNDAM FIX』などイラストレーターとしてもいくつかの誌面イラストレーションやパッケージアートを手がけているほか、『GUNDAM FIX』から派生した塗装済完成品フィギュアシリーズ『GUNDAM FIX FIGURATION』の監修・プロデュースを担当するなど、アニメーションのメカデザイナーの枠だけには収まらない、多彩な活動を行っている。2013年には短編映画オムニバス作品『SHORT PEACE』の中の一編『武器よさらば』で初めて映像作品の監督を務めた。また、2014年7月から上映・発売された『ガールズ&パンツァー』OVA「これが本当のアンツィオ戦です!」に、絵コンテで参加している。
活動の場をプロに移してからはリアル志向のメカ・人物以外の画風を披露する事は稀だが、同人作家時代の『超時空要塞マクロス』のオペレーター三人娘の水着カット等、『電脳戦機バーチャロン』のCDジャケットに女性型メカのフェイ・イェンの擬人化イラスト、『涼宮ハルヒの憂鬱』のアンソロジー出版物にイラストを描く等、その芸の幅はパブリックイメージよりも広い。
ガンダム関連ではアレンジワークが多い事から、オリジナルのデザイナーである大河原邦男と対比されることが多い。主役機デザインコンペで『機動戦士Vガンダム』は採用されたが、続く『機動武闘伝Gガンダム』『新機動戦記ガンダムW』では大河原のデザインが採用された。 『新機動戦記ガンダムW Endless Waltz』では、作品の主要支持層である女性に対してデザインの方向性についてアンケートを取るなど、それまでには無かったアプローチを試みる事もあった。
作風
現実の兵器・銃器や航空機、宇宙船などの特徴を採り入れた、情報量の高いメカデザインを得意とする。工業製品的と評される作風は、パブリックな記号をデザインに取り込む事でフィクション性を低くする為の手法としている。
ガンダムの原作者富野由悠季からは、Vガンダムのデザインワークに対し「彼の絵の晴れやかなルックスがあったおかげで救われた」「エンジェル・ハイロウのデザインを彼にまかせたらもっといい物になっていたでしょう」[2]と評価する一方、「旧来のガンダム的なものに汚染されている」「オーバーデコレーションにしかならない」との酷評もある。同監督作品の∀ガンダムにカトキの方から参加の意向を伝えたものの断られた[3]。
漫画家の吉崎観音、作家の福井晴敏、イラストレーターの新川洋司等は彼のファンを公言している。柳瀬敬之や藤岡建機など彼の作風の影響を受けたデザイナーも数多い。
カトキ立ち
大河原邦男の「ガワラ立ち」と呼ばれるロボットの設定画における典型的なポーズに似た概念として、カトキハジメの設定画のポーズは「カトキ立ち」と呼ばれる。彼の描くロボットの設定画では、両脚を肩幅程度に開き、左足の爪先を画面の右斜め下方向、右足の爪先を画面の左斜め下方向に向け、軽く両肘を曲げて拳を握り、胸を張っているポーズしか描かれない。この時の視点は真正面ではなく多少横にズレた位置であり、ロボットの顔はいわゆるカメラ目線である。カトキハジメの設定画に限らずアニメのイラストやプラモデルのディスプレイでも広く用いられている。ちなみに本人は「カトキ立ち」について「(ロボットが)最もスタイリッシュに見える素立ち姿として」考えたものであるという。既存のロボットの設定画において、足首の立体感・接地感が表現されていない場合が多かった事に対する不満がその原点としている。
カトキ版(ver.Ka)
『機動戦士ガンダム』など既存作品に関するイラストの内、その本来の設定イラストや劇中イメージとは異なり、カトキハジメが作品内の歴史や系統を重視し「本来こうなるべきではないか?」といった主観に基づき描いた二次創作物を「カトキ版」・「ver.Ka」(version Katoki)と呼ぶ。
「ver.Ka」という名は、B-CLUB製のガレージキットで用いられたのが発祥である。当初は「ガンダム・センチネル0079版」として発売予定だったが、当時センチネルの版権の関係でバンダイとモデルグラフィックスが揉めており、この名称が使えなかったための措置だった。それ以降は、バンダイのマスターグレード(以下MG)シリーズやGUNDAM FIX FIGURATIONでも使用されている。
関わった作品・商品
ガンダムシリーズ作品
アニメ作品
- 機動戦士ガンダムΖΖ
- かときはじめ名義、アニメデビュー作[4]。
- 機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY
- 最終話に原画でも参加
- 機動戦士Vガンダム
- 機動武闘伝Gガンダム
- 新機動戦記ガンダムW
- 新機動戦記ガンダムW Endless Waltz
- 機動新世紀ガンダムX
- 機動戦士ガンダム 第08MS小隊
- SDガンダムフォース
- 機動戦士ガンダム MS IGLOO
- 劇場版 機動戦士ΖガンダムIII A New Translation -星の鼓動は愛-(設定協力)
- 機動戦士ガンダムUC
雑誌展開
- Ζplus G.U.N.D.A.M.システム(モデルグラフィックス別冊『Project Ζ』表紙)
- 設定協力・画稿、かときすなを名義、実質的デビュー作
- ガンダム・センチネル
- 設定画稿・イラスト・漫画・一部立体監修、かときはじめ名義
- ガンダム・センチネル0079
- 設定画稿、かときはじめ名義
- 機動戦士クロスボーン・ガンダム
- 設定画稿
- GUNDAM FIX
- イラスト
- 機動戦士ガンダムUC
- 設定画稿・メカニックデザイン
- トニーたけざきのガンダム漫画II
- 「シャア専用ボール」メカニックデザイン
立体物
- ビームライフル
- Vガンダムのなりきり玩具アイテム。玩具用のハイディテール画稿が存在する。
- GUNDAM FIX FIGURATION
- ZEONOGRAPHY
- 共に全アイテムのコンセプトデザインならびに監修
- ハイグレード・ユニバーサルセンチュリー (HGUC) シリーズ
- マスターグレード (MG) シリーズ
- 共に一部を除いたアイテムのコンセプトデザイン
- マスターグレード・Ver.Kaシリーズ
- 全アイテムの監修とコンセプトデザイン
ゲーム
- 機動戦士ガンダムSS版
- 機動戦士ガンダム めぐりあい宇宙(バンダイ)
- 機動戦士ガンダム 戦場の絆(ハーモニー・オブ・ガンダム)
- ガンダム無双シリーズ(武者ガンダム/武者Mk-II)
その他のグッズ類
- 劇場版機動戦士ガンダムLDジャケットイラスト
- ファミリーソフト機動戦士ガンダムジャケットイラスト
- エンジェルジグソーパズル機動戦士ガンダム0083
- エンジェルジグソーパズル機動戦士Vガンダム
- バンダイカードダスフュージョン戦記ガンダムバトレイヴ
その他の作品
アニメーション作品
- 機動警察パトレイバー 2 the Movie
- 機動警察パトレイバー WXIII
- ケロロ軍曹(OPスタッフ、第38話・第73話絵コンテ)
- 超劇場版ケロロ軍曹(メカデザイン)
- ザ・コクピット(メカデザイン)
- N・H・Kにようこそ!(第24話デザインワークス)
- スーパーロボット大戦OG -ジ・インスペクター-(メカニックデザイン・原画)
- 8話、26話でエクスバインの原画で参加
- SHORT PEACE「武器よさらば」(監督・脚本)
- ガールズ&パンツァーOVA「これが本当のアンツィオ戦です!」(絵コンテ・作画協力・素材提供)
※デザインが世の中に出ていないが、『機甲戦記ドラグナー』のリフターやドラグナー改修機のデザインコンペに参加している。ドラグナーのLD-BOXに注釈コメント無しだがラフ画が掲載されている。
※『超劇場版ケロロ軍曹』に関しては、架空の(現実には発売されていない)ガンプラとして劇中に登場するジム・スナイパーカスタムVer.Kaのリファインデザインも担当している。後にそのデザインをGUNDAM FIX FIGURATION用に一部修正して流用している。
雑誌展開
- 灼熱の竜騎兵 RED HOT DRAGOON(著:田中芳樹、富士見書房・月刊ドラゴンマガジン1988年5月号-10月号)
- 6億kmの燐光(イラスト&設定担当 著:宇童ケン、角川書店・月刊ニュータイプ1992年5月号-12月号)
立体物
- オリジナルドール KATOKI DESIGN momokomono(PetWORKS)
- イメージセンサーマウス M-MAPP1KHシリーズ(エレコム)
- 完成品フィギュア"KERORO FIX FIGURATION"
- 全アイテムのデザインと監修を担当
- 福井晴敏6ステイン付属ピンズ
ゲーム
- グラディウスII
- X68000版の説明書用イラスト(かときはじめ名義)。
- 電脳戦機バーチャロンシリーズ(セガ)
- メインメカニックデザイン
- CGスタッフの一人である尾崎弘一は、セガに入社する以前に『ガンダム・センチネル』のフォトストーリーで使われたSガンダムのスクラッチビルド作品を制作した螺子頭ボンドの本名であり、カトキハジメと面識のあった尾崎がバーチャロンのプロデューサーに紹介することで起用が決まった。
- スーパーロボット大戦シリーズ(バンプレスト)
- 超機大戦SRXやヒュッケバインなどを中心としたパーソナルトルーパーのデザイン
- ポリスノーツ(コナミ)
- 超攻合神サーディオン
- メインマシンの内2体(他は森木が担当)のデザインを担当。後に版権イラストになるサーディオン自体の図版も担当した。
- ファンタズム・アドベンチャー(TRPG)1990年、大日本絵画発行のTRPG。本文中の種族・モンスターのイラストを担当している。
その他
- アニメ映画『武器よさらば』監督(オムニバス短編映画『SHORT PEACE』の一編)
- 2007年シーズンのSUPER GTに出場していたBANDAI DUNLOP SC430のカラーリング
- 第5戦からガンダムカラーとなり、エントリー名は「BANDAI 00 DUNLOP SC430」となった。
注釈
- ↑ キネマ旬報別冊 動画王Vol.05 1998年6月10日号。
- ↑ ササキバラ・ゴウ著『それがVガンダムだ』(銀河出版、2004年)ISBN 978-4-87777-054-9
- ↑ 『聖戦士ダンバイン・ノスタルジア』富野由悠季vs湖川友謙対談。
- ↑ 『機動戦士ガンダムΖΖ』のメカデザイナー対談で、出渕裕から「作中自分のメカの扱いにどう思っているのか」と問われ(放送当時はΖΖの)「存在自体が許せなかったのでどうでもいい」と答えていた。ガンダムシリーズが嫌いというわけではなく、『∀ガンダム』では、自分から参加を望んだが、叶わなかった。