オードリー (テレビドラマ)
テンプレート:基礎情報 テレビ番組 テンプレート:Sidebar with collapsible lists 『オードリー』は、2000年10月2日 - 2001年3月31日までNHKで放送された連続テレビ小説第63作目。
目次
概要
日本映画のメッカ・京都市太秦を舞台に、産みの母と育ての母の間で揺れながら成長したヒロイン・美月が映画に人生をささげていく姿を描く。
主人公・美月のモデルは、作者の大石静本人である。主人公を巡る複雑な家族構成(実母・愛子と養母・滝乃の確執)などが共感されにくかったことが災いしてか、2000〜01年の平均視聴率は20.5%、最高視聴率は24.0%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)[1]と伸び悩んだ。その一方で、堺雅人や佐々木蔵之介ら小劇場出身の若手俳優の出世作となった。
放送と平行して、荻丸雅子作画による漫画版が発売された。
旧局舎で通しで収録する朝ドラとしては、最後の作品となった(NHK大阪放送局は2001年11月に移転)。
物語
少女時代
ヒロイン、佐々木美月は幼い頃より両親よりも隣で老舗旅館、椿屋を営む女主人、吉岡滝乃によって育てられたも同然の生活をしてきた。滝乃は椿屋と美月の家とを繋ぐ渡り廊下を造成し、ぬいぐるみや絵本、おもちゃを買い与え自らを“お母ちゃま”と呼ばせた。それを美月の当の母親である愛子は快く思わず、オードリー・ヘップバーンのファンで美月をオードリーと呼ぶ米国帰りの夫の春夫に滝乃への抗議を頼むが、春夫ははぐらかすだけで愛子は不満を募らせていく。やがて美月は幼稚園で子供ながら自分が周囲とは違う環境に置かれていることを自覚し、登園拒否する。美月の年の離れた遊び相手の宮本君江は、気晴らしに美月を映画の撮影所へと連れていき美月は映画と出会う。その後、美月は撮影所に足を運び続け、エキストラとして映画に出演。その後の人生の深く関わることとなる助監督の杉本英記や子役の中山晋八、さらにはスター俳優の幹幸太郎とも顔見知りとなる。
女優時代
昭和47年。高校の卒業式からの帰り道、美月は両親と滝乃に「女優になる」と宣言。そのまま撮影所を訪れ大京映画の黒田茂光社長に直訴する。一方、家では両親と滝乃に反対されながらもおしきり、吉岡美月の芸名で大部屋女優として採用される。(実情は滝乃が美月を手元に置くために、苦肉の策として黒田に頼み込んだのであった)美月を待っていたのは、朝倉もみじら先輩女優からのいじめだった。いじめが続くなか、美月は映画「無頼人」で端役で出演。撮影でも、もみじらが美月が転ぶように仕組んでいたが、それを見破った大部屋俳優の錠島尚也のとっさの機転で助けられる。それまで錠島と口もきいたことも無かった美月だったが、それをきっかけに錠島に惹かれていく。だが、天涯孤独であった錠島は他人を信じない人物だった。
美月の恋は両親と滝乃に反対されるが徐々に錠島の歪んだ心を解きほぐし、次第に錠島も美月に心を開くようになる。「無頼人」は興行的に振るわず大京映画は膨大な赤字を抱えたため、黒田は杉本にテレビ時代劇の監督を命じ大京映画復活を託す。杉本は晋八を説得して役者から殺陣師に転向させ、錠島を主役に「惨殺浪人・夢死郎」を企画し美月も「駒」という役で出演する。撮影の際、錠島との息が合わずにNGを連発。錠島は腹を立て、一度は通じた二人の心に溝が生まれ錠島は美月を捨てる。「夢死郎」は高視聴率を記録するがその内容に触発された殺人未遂が起こり、その後の黒田の対応に世論が反発し「夢死郎」の続編は頓挫。大京映画は規模を縮小し杉本は助監督に降格、錠島は大京映画を去り美月の女優業は開店休業となる。
女将時代
昭和51年。滝乃のもとに元恋人の麻生祐二が現れプロポーズする。若き日に滝乃に想いを寄せていた春夫は動揺、愛子は春夫に失望し離婚をきりだす。椿屋を畳むとまで言った滝乃に美月は唐突に椿屋の女将を継ぐと宣言。春夫は絶望しアメリカへと逃避する。弟の梓は春夫を探して渡米。落ち着きを取り戻した春夫はアメリカのテレビ局でプロデューサーを務める甥のリチャード佐々木とともに、日米合作映画の話を持って帰国する。日本側の監督には杉本が、主役には行方不明だった錠島が配され大京映画復活は目前に思われたが、円のレートが変動し採算が取れないため撮影は中止され春夫は失意のうちに急逝、愛子は悲しみにくれる。
昭和56年。美月は愛子や晋八の手を借りながら椿屋を続けていたが、その状況に疑問を感じていた。一方、滝乃は麻生との生活に息苦しさを覚え、麻生と別れ椿屋へと帰ってきた。愛子とのわだかまりも解けた滝乃は女将に復帰し、美月は女将から解放されると映画の世界に復帰したい衝動を抑えられなくなり、翌年から大京映画でアルバイトとして制作に携わることになる。
監督時代
大京映画はCMからバラエティ、子ども向けのドラマを制作し一時の危機をしのいでいた。黒田は社運をかけて映画「巌流島異聞」の撮影を計画するが、資金調達が難航しお蔵入りとなる。美月、愛子、滝乃が平穏な日々を手にしたのも束の間、滝乃は心筋梗塞でこの世を去る。
平成12年。大京映画の社長に就任した杉本は、美月を監督に宮本武蔵を題材にした映画の撮影を指示。美月は悩みながらも錠島、杉本、晋八らに支えられて映画「MUSASHI」を完成させる。
登場人物
佐々木家・旅館「椿屋」
- 佐々木 美月(ささき みづき) - 岡本綾(ナレーション兼任)、大橋梓(少女時代)、岸由紀子(幼少時代)
- 物語のヒロイン。愛称オードリー、芸名は吉岡美月。京西女子大付属高校を卒業後、大部屋女優から旅館「椿屋」の女将を経て、大京映画撮影所(通称大京、大映がモデル)のスタッフとなり後に監督となる。幼少期から滝乃の経営する旅館「椿屋」で育てられ、滝乃から「お母ちゃま」と呼ばされている。
- 佐々木 愛子(ささき あいこ) - 賀来千香子
- 美月の母。変わり者の夫・春夫とは対照的に常識人だが、美月を産んですぐに、滝乃によって引き離されるなど不幸な目に遭うことが多い。
- 佐々木 春夫(ささき はるお) - 段田安則
- 美月の父。翻訳家。米国育ちで、片言の日本語を話す。美月にオードリーというあだ名をつけた張本人だが、それが原因で子供の頃からいじめに遭った美月から激しく嫌われる。映画の仕事をする美月を見て、自分も甥のリチャード佐々木とともに日米合作の映画制作を始めるが失敗し、大量の借金を残したまま失意のうちに死去。
- 佐々木 梓(ささき あずさ) - 茂山逸平、小谷力(少年時代)、奥村紫龍(幼少時代)
- 美月の弟。姉と違い、佐々木家で普通に育てられる。のんびり屋だが勘が鋭い。本来“梓”は、姉・美月に名づけられるはずだったが、滝乃が勝手に美月と決定してしまったため、彼が梓と命名された。京都大学医学部を卒業後、医師となる。
- 吉岡(麻生) 滝乃(よしおか(あそう) たきの) - 大竹しのぶ、戸田恵梨香(少女時代(回想))
- 美月の育ての母。老舗旅館「椿屋」女将。春夫の元恋人で、隣家にある佐々木家に何かと介入し(いつでも行けるように、「椿屋」と佐々木家を渡り廊下で繋げる改築まで行う)、美月を愛子から引き離して自分の子供同然に育てる。晋八の家が貧乏だからという理由で美月と晋八が親しくするのを猛反対したり、映画に憧れて大京への就職を考えているのを知るとあらゆる手段を使って妨害するなど、事あるごとに美月を束縛し、現在ならモンスターペアレントとも思えるような常軌を逸した言動が多い。その一方で、麻生と再婚する時に旅館の仕事を美月に押し付けて大京を辞めさせるなど、極めて自己中心な性格でもあるが、にもかかわらず美月からは「お母ちゃま」と呼ばれ慕われている。のちに麻生と離婚して「椿屋」に戻るも、心筋梗塞が原因で死去。
- 宮本 君江(みやもと きみえ) - 藤山直美、大橋絵里加(少女時代(回想))
- 「椿屋」に住み込みで働く滝乃の幼馴染。大雑把だが陽気な性格で、春夫と滝乃からの重圧に苦しむ美月の心の拠り所となり、美月も「君ちゃん」と呼んで慕っている。幹幸太郎の大ファンで、しばしば美月を大京に連れて行き彼女が映画への道を歩むきっかけを作るが、それが原因で滝乃から「椿屋」を不条理にも追い出され、故郷の宮崎に帰る。コミック版では、終盤で再登場を果たす。
- 麻生 祐二(あそう ゆうじ) - 沢田研二
- 滝乃の元恋人で、妻と死別後に滝乃と再婚するが後に離婚。
- ベンガル
- 花尾 武 - 桂米朝
- 「椿屋」の常連宿泊客。
大京映画撮影所
- 黒田 茂光(くろだ しげみつ) - 國村隼
- 社長(後に会長・名誉会長)。黒ぶち眼鏡とちょび髭がトレードマークで、よく「わが大京は永遠に不滅である!」と熱弁を振るう。映画に対する情熱は人一倍で、終盤では90歳を超える高齢ながら、杉本の映画制作にアドバイスを与える。剣之介が主演ドラマで配役に不平を言ったときは、眼鏡を外して髭を剃り、自ら敵役として出演した事もある。
- 関川 徹(せきかわ とおる) - 石井正則
- プロデューサー(後に社長・会長)。生真面目・几帳面な性格で、黒田の秘書のような存在。大京の重役を歴任するが、実権は黒田と杉本が掌握しているため、その間に挟まれてよく貧乏くじを引かされている。美月の母・愛子に片想いしている。
- 杉本 英記(すぎもと ひでき) - 堺雅人
- 助監督(後に監督・社長)。二枚目俳優のように端麗な容姿から、君江やもみじなどファンが多い。映画不振の大京でテレビシリーズの監督を務めて注目される。後に社長に就任し、初の監督を務める美月を様々な形で支援する。密かに美月に想いを寄せ、それが報われる事は無かったが、それでも美月を支え続けた。
- 幹 幸太郎(みき こうたろう) - 佐々木蔵之介
- 大京の新鋭スター役者。「葉隠尖鋭」「若侍七変化」など多くの人気作の主演を努め、時代劇の大御所俳優へと上り詰める。杉本と共に、美月の人生に多大な影響を与える。
- 中山 晋八(なかやま しんぱち) - 仁科貴(少年時代:柴田光)
- 美月の幼馴染。貧乏故に滝乃から煙たがれているが、何かと美月の相談に乗る良き親友。大部屋俳優だが、演技より殺陣の実力を認められ殺陣師に転向する。一度だけ川谷拓三(仁科貴の実父)の物真似を披露した事がある。
- 錠島 直也(じょうじま なおや) - 長嶋一茂
- 大部屋俳優。親に捨てられ施設で育ち、粗野で荒んだ性格をしている。美月の恋人だったが、幸太郎が大京を離れた後に、看板俳優に抜擢されると増長し、平然と美月を捨ててしまう。しかし、出演ドラマを模倣した傷害事件の影響と、低視聴率が原因で失敗、一時は特撮のスーツアクターで食い扶持を稼ぐ。後に美月の監督映画で、再び主演に挑む。
- 栗部 金太郎(くりべ きんたろう) - 舟木一夫
- クリキンの愛称で親しまれている大京のスター俳優。晩年は落ちぶれて、人目を避けて生活していたが、復帰した時にはブランクを感じさせない往年の名優ぶりを見せる。京都の東山に豪邸を建てていることから“東の御大”とも呼ばれている。
- 桃山 剣之介(ももやま けんのすけ) - 林与一
- モモケンの愛称で親しまれている大京のスター俳優。クリキンの“東の御大”に対して、鴨川に居を構えていることから“川の御大”とも呼ばれている。
- 雀蓮(じゃくれん) - 三林京子
- 予言が得意な謎の尼僧。どのような映画を製作すればヒットするかを占う事ができるので、黒田からよく頼りにされている。しかし、なぜか自分に関わる事だけは全く占う事ができない。
- 青葉城 虎之介(あおばじょう とらのすけ) - 菊池隆則
- 大部屋俳優で、錠島のライバル。短気だが熱血漢。実は金太郎と雀蓮の隠し子。大京では切られ役ばかりで芽が出ず、香港に渡り、タイガー・ウォンの芸名でカンフー映画で活躍。帰国後は、改めて時代劇俳優の道を進む。一部の設定のモデルは倉田保昭。
- 二階堂 樹里(にかいどう じゅり) - 井元由香
- 若手女優。美貌と色香を武器に男を垂らしこみ、出世のためなら他人を蹴落としたり傷つける事を平然と行うので、同僚からの受けが非常に悪い。杉本や錠島に次々鞍替えし東京で「ポケットえりかちゃん」という子ども番組の主役となり成功するが、病気に倒れて若くして命を落とす。
- 朝倉 もみじ(あさくら - ) - 三田篤子
- 大部屋女優。入社したての美月をよくいじめたが、後に先輩役者として良き協力者になる姉御肌。
- 原田 寛次郎(はらだ かんじろう) - 腹筋善之介
- 大部屋俳優。晋八や虎之介とよくつるんでいる。愛称はハラカン。
- 村木 六兵衛(むらき ろくべえ) - 夢路いとし
- 麿赤兒
- 大京の裏方スタッフ。
その他
- 中山 八郎(なかやま はちろう) - 佐川満男
- 君江の祖母 - 津島道子
スタッフ
- 作 - 大石静
- 音楽 - 溝口肇
- 主題歌「Reach for the sky」(GIZA studio)
- 語り - 岡本綾(佐々木美月役を兼任)
- 副音声解説 - 関根信昭
- 題字 - 市川崑
- タイトルバック制作 - 中川佳子
- 殺陣指導 - 上野隆三
- 映画史考証 - 西岡善信
- 京ことば指導 - 桃山みつる
- 資料提供 - オードリー・ヘプバーン財団
- 映像資料提供 -
- 撮影協力 - 京都府京都市、京福電気鉄道、太秦駅、西日本旅客鉄道、松竹京都撮影所、車折神社、三十三間堂、旧NHK大阪放送局他
- 制作統括 - 内藤愼介
- 制作 - 加賀田透
- 美術 - 石村嘉孝、青木聖和
- 演出 - 長沖渉、高橋陽一郎、柳川強、訓覇圭、黒崎博
エピソード
- 前々作の連続テレビ小説『あすか』の舞台となった老舗和菓子屋の「扇屋一心堂」「正直屋」が作中のセリフにしばしば登場する。朝ドラ同士のクロスオーバーはこの1作のみである(『てっぱん』では『ちりとてちん』の世界とつながる落語会案内のポスターなどが用いられている)。
- 宮本君江役の藤山直美と黒田茂光役の國村隼はそれから6年後の2006年後期に放送された朝ドラ『芋たこなんきん』でも共演している。
- 2000年12月1日から、BS-2で衛星デジタル放送が開始され、この日からデジタルBS-2でも放送を開始した(BS-hiは2002年「さくら」から)。
- 滝乃が麻生と再会した際には、滝乃が麻生の事を以前より太ったと述べており、麻生を演じる沢田研二がこの時期に太っていた事実をなぞっている。また麻生と再婚した時期には、滝乃は劇中で沢田研二の持ち歌の「勝手にしやがれ」を口ずさんだ事があった。
総集編
2001年8月13日-8月16日にデジタルBS2で午後17:00-18:00、地上波では2001年12月25日-12月28日の午前8:35-9:35に放送された。
脚注
外部リンク
- NHK公式HP(左記オリジナルURLのアーカイブ(2001.8.5時点))
- NHK大阪HP(左記オリジナルURLのアーカイブ(2001.6.11時点))
- 立命館大学校友会報「りつめい」No.204(pdf) - 『オードリー』をめぐる立命人たち