ちきゅう
ちきゅう 2005年9月11日撮影</small> | |
船歴 | |
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船級 | 日本海事協会 |
起工 | 2001年4月25日 |
進水 | 2002年1月18日 |
竣工 | 2005年7月29日 |
性能諸元 | |
排水量 | 59,500トン |
全長 | 210m |
全幅 | 38m |
深さ | 16.2m |
喫水 | 9.2m |
機関 | サイドスラスター(2,550kW)×1基 アジマススラスタ(4,200kW)×6基 |
最大速 | 12ノット(22.224km/h) |
乗員 | 150名 |
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ちきゅうは、独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)の一部門である地球深部探査センター(CDEX)が建造・運用し、運航業務及び掘削業務は日本マントル・クエストが担当する科学掘削船(深海掘削船)である。日本・米国が主導する統合国際深海掘削計画(IODP)において中心的な掘削任務を担当する。
巨大地震・津波の発生メカニズムの解明、地下に広がる生命圏の解明、地球環境変動の解明、そして、人類未踏のマントルへの到達という壮大な科学目標を掲げている。船名の「ちきゅう」は一般公募で選ばれ、映画「日本沈没」でも、実名で登場している。
概要
海洋石油掘削に利用されるライザー掘削システムを科学掘削船としては世界で初めて採用しており、水深2,500mの深海域で、地底下7,500mまで掘削する能力を備えている。世界最高の掘削能力であり、マントル物質や巨大地震発生域の試料を採取することができる。掘削機器には最新鋭のものがそろっており、ほとんど全自動なので今まで問題となっていた怪我が皆無である。また、石油・天然ガスなどが噴出するおそれのある海域でも安全な掘削を行うことができる。掘削中はGPSの位置情報や風・波の測定情報を元に、1基のサイドスラスタと6基のアジマススラスタを自動制御して船の位置を誤差半径15メートル以内に固定する「自動船位保持システム」(DPS)を備えている。
船体ほぼ中央に船底からの高さが130mある掘削用デリック(デリックだけでは72m)がそびえ立っているほか、掘削中は半年以上にわたって移動できないため、乗船研究者・乗組員の交代のためにヘリポートが備え付けられていることが特徴である。
船上では単に深海底掘削を行うだけではなく、掘削試料を用いた分析を行うための研究区画も備えられている。研究区画は上階から順に、試料の分割を行う「ラボ・ルーフデッキ」、一次的な分析を行う「コア・プロセッシングデッキ」、さらに高度な分析を行う「ラボ・ストリートデッキ」、それらを管理する「ラボ・マネージメントデッキ」の全4デッキに分かれており、総床面積は約2,300m²。また、外国人研究者に日本の文化に親しんでもらいながら円滑な意志疎通を図るために、レクリエーション施設として、茶室も設けられている[1]。
沿革
- 2001年4月25日 - 起工
- 2002年1月18日 - 進水式、船名決定
- 2003年4月22日 - 海上公式試運転
- 2004年12月3日 - 海上公式試運転
- 2005年7月29日 - 竣工
- 2006年
- 2007年
- 9月~2008年2月 - 統合国際深海掘削計画(IODP)による最初の研究航海となる「南海トラフ地震発生帯掘削計画」(ステージ1)を実施、8箇所でコアを採集。
- 2009年
- 3月 - 日本マントル・クエスト株式会社に運用業務委託し運用開始。
- 5月~7月 - 統合国際深海掘削計画(IODP)「南海トラフ地震発生帯掘削計画」(南海掘削(ステージ2)を実施、3箇所でコアを採集。
- 2010年
- 7月~2011年1月 - 統合国際深海掘削計画(IODP)「南海トラフ地震発生帯掘削計画」(南海掘削(ステージ3)を実施、8月に紀伊半島沖熊野灘でケーシングパイプ、ウェルヘッドランニングツールの一部、ドリルパイプを海中脱落させ遺失。
- 2012年
- 2013年
主な成果
2011年 南海トラフ地震発生帯掘削計画ステージ1の成果として、採集したコアから津波断層の活動痕を初めて発見[6]し、1944年東南海地震の津波断層を特定[7]した。また、過去の東南海地震の活動歴として、C004コアから従来知られていなかった紀元前約1500年±34年と、約10600年前の痕跡を発見した。
2012年4月27日に海洋研究開発機構は、東日本大震災の発生メカニズムを調査する目的で海底の掘削をしていたちきゅうのドリルが海面からの深さ7740メートル(水深6,883.5m + 海底下856.5m)に到達して世界記録を更新したと発表した[8]。
2012年7月16日 水深6,897.5mより海底下854.81mに到る孔内に温度計を設置した。プレート境界断層の摩擦熱の長期変化を観測目的としている[9]。
2012年7月26日からの統合国際深海掘削計画(IODP)第337次研究航海「下北八戸沖石炭層生命圏掘削」において、9月6日に海底下からの掘削深度2111mを超え、9月9日に海底下からの掘削深度2466m海洋科学掘削の世界最深度記録を更新した[10]。
2013年3月12日に愛知、三重県沖80kmの地点においてメタンハイドレートからの天然ガス産出に成功した。海底からのメタンハイドレート由来の天然ガス産出は世界ではじめてである。プロジェクトは経済産業省からの委託をうけた石油天然ガス・金属鉱物資源機構が実施し、深さ1000メートルの海底を300メートル掘削してメタンを回収した[11]。
諸元
- 船級 - NK(日本海事協会)
- 全長 - 210m
- 全幅 - 38m
- 喫水 - 9.2m
- 深さ - 16.2m
- やぐらの高さ - 121m
- 総トン数 - 56,752トン
- 航続距離 - 10ノットで14,800浬
- 機関 - サイドスラスター(2,550kW)×1基/アジマススラスタ(4,200kW)×6基
- 最大速力 - 12ノット(22.224km/h)
- 乗員 - 200名(2010年5月改造)
- 耐氷構造 - IA
- 掘削能力最大稼働水深
- ライザー掘削時 - 2,500m
- ドリルストリング長 - 12,000m
- 防噴装置(BOP)装備
- 建造(掘削装置) - 三菱重工業長崎造船所香焼(こうやぎ)工場
- 建造(船体) - 三井造船玉野事業所
- 船籍港 - 横須賀港
- 船舶番号 - 136960
- ドローワークス National Oilwell / EH-V-5000
- マッドポンプ National Oilwell / 14-P-220, 7,500psi x 3
- トップドライブ Hydralift / HPS 1000 2E AC
- 噴出防止装置 Vetco Gray / KFDS/CSO, 21"bore 500 psi WP, 18-3/4" 15,000psi WP
- ドリルストリングコンペンセーター Hydralift / CMC1000-25
- ライザーテンショナー Hydralift / N-line direct acting tensioner, 800kips x 6
- ライザーパイプ Cameron / LoadKing 4.0, 19.5"ID x 90'/jt
- エンジン Mitsui / 12ADD30V, 5,270KW x 6
その他
- 2005年秋から下北半島東方沖と駿河湾沖で掘削試験航海を行ったあと、2007年9月21日からIODPでの最初のミッションとして、東南海地震発生域において南海トラフ地震発生帯掘削計画(南海掘削)を開始した。
- 2008年3月、同船のスクリュー6基のうち3基について、歯車に損傷があるのが見つかり、翌2009年2月まで稼動できない状況となった。海洋研究開発機構は、製造元である三菱重工業・三井造船・川崎重工業の3社を相手取り計約30億3000万円の損害賠償を求め東京地裁に訴訟を提起。2012年10月4日付で、3社が同機構に対し和解金計約1億7500万円を支払うことで同地裁で和解が成立した[12]。
- 2009年5月中旬からは南海掘削について、熊野灘周辺での本格的な科学掘削を再開したが、同年11月、掘削プロジェクトが行政刷新会議による事業仕分けの俎上にあがり、次年度以降の継続が不透明な状況となった。
- 2011年3月11日には下北八戸沖の海底探査のために八戸港に停留していた際に東北地方太平洋沖地震に遭遇し、津波の被害を避ける為に一時沖合に待避した。このとき見学の為乗船していた八戸市立中居林小学校の生徒・教師は船内で一夜を過ごし、翌12日、海上自衛隊のヘリコプターにより下船した[13]。
- 2012年7月25日、八戸港に入港していた際に、油圧パイプが外れ、積んでいた油約300リットルが甲板上に漏出した上、うち約15リットルが回収中の降雨の影響で海に流れ出るトラブルがあった[14]。
出典
脚注
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ 地球深部探査船「ちきゅう」による統合国際深海掘削計画(IODP)第338次研究航海「南海トラフ地震発生帯掘削計画」ステージ3の実施について
- ↑ 地球深部探査船「ちきゅう」による南海トラフ地震発生帯掘削計画 ~掘削機器の一部損傷と掘削計画の変更について~ 2012年 11月 22日
- ↑ 統合国際深海掘削計画(IODP)第348次研究航海 「南海トラフ地震発生帯掘削計画」ステージ3の実施について 海洋研究開発機構
- ↑ http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20140117/ 地球深部探査船「ちきゅう」による国際深海科学掘削計画(IODP)第348次研究航海「南海トラフ地震発生帯掘削計画」ステージ3の計画変更について]
- ↑ 津波断層の活動痕を初めて発見 ~地球深部探査船「ちきゅう」による南海トラフ地震発生帯掘削計画の成果~
- ↑ 東南海地震(1944年)の津波断層を特定する物的証拠の発見
- ↑ 「ちきゅう」最深掘削の世界記録更新 海面下7740メートルに到達、産経新聞 2012年4月28日
- ↑ 「東北地方太平洋沖地震調査掘削-Ⅱ」(震源域への長期孔内温度計設置)の終了について 、海洋研究開発機構 2012年7月19日
- ↑ 統合国際深海掘削計画(IODP)第337次研究航海「下北八戸沖石炭層生命圏掘削」の進捗状況について(お知らせ)
- ↑ http://www.nikkan.co.jp/dennavi/news/nkx1520130313qtkd.html
- ↑ 地球深部探査船「ちきゅう」損傷で和解 1億7500万円支払い 産経新聞 2012年10月5日
- ↑ テンプレート:Cite news
- ↑ 探査船「ちきゅう」で油漏れ、ボルト腐食 青森・八戸港 産経新聞 2012年7月25日
関連項目
- モホール計画 - 深海掘削計画 - 国際深海掘削計画
- グローマー・チャレンジャー号
- ジョイデス・リゾリューション号
- 日本海洋掘削
- 第一深海丸(日本で最初の深海掘削船)
- いずも型護衛艦(海上自衛隊で最大の護衛艦)
- しきしま(海上保安庁の所有する世界最大の巡視船)
- 出光丸(竣工時には世界最大であった石油タンカー)
- ボーリング
外部リンク
- 国内の大学・研究機関を構成員とする掘削科学推進組織。IODPの国内取りまとめ窓口となっている。
- 「ちきゅう」の運航機関である独立行政法人海洋研究開発機構による紹介サイト。「ちきゅう」の情報発信ポータル。マルチメディア資料も閲覧できる。