ホーム・アンド・アウェー
ホーム・アンド・アウェイとは、主にサッカーなどのスポーツにおいて、2チームがそれぞれのホームタウンで1度ずつ計2回対戦する方式のこと。
概説
対戦するスタジアムを本拠としている側のチーム、もしくはまったく無関係なスタジアムであっても試合を主催する側のチームのことをホームチームといい、主催側の立場ではそのゲームをホームゲームと呼ぶ。一方、ホームチームと対戦する相手チームのことをアウェイチームあるいはビジター(visitor)と言い[1]、アウェイチームの立場で行う試合をアウェイゲームあるいはロードゲーム(road game)と呼ぶ。ホーム・アンド・アウェイとは、対戦する特定の2チームの組み合わせについて、ホームゲームとアウェイゲームを1試合ずつ行う対戦方式である。
Jリーグなどのサッカーのリーグ戦では通常、この方式で行う[2]。
この方式においては、選手ユニフォームにはホーム用とアウェイ(ビジター)用の2種類が用意される場合が多い。野球においてはホーム用ユニフォームの胸部には球団の愛称、ビジターユニフォームにはチームの愛称よりチームの親会社の社名か本拠地を置く地元名が入っている傾向がある[3]。しかし千葉ロッテマリーンズがロッテオリオンズと名乗った1969年(昭和44年)-1991年(平成3年)はホーム・ビジターとも「LOTTE」の文字を入れていたり、巨人の場合ではビジター用に親会社名(読売=YOMIURI)を胸部に入れたのは2002年(平成14年)7月~2004年(平成16年)までの3年間だけであり、それ以前は「TOKYO」、以後では2005年のみ帽子のマークを使用し、2006年以降は愛称(GIANTS)がメインとなり、広島東洋の場合、胸部に「東洋(TOYO)」と入れたことは無い[4]。また、日本プロ野球においては、ホーム用のユニフォームは白色を基調にしたデザインの場合が多い[5]。サッカーでもユニフォームは、2パターンの色のユニフォームを準備しているのが基本であるが、野球のように厳密にホーム用、アウェイ用と区別しているわけではない。2種類のうち主に使うユニフォームをファーストユニフォームと呼ぶ。アウェイの試合において双方のファーストユニフォームの色が被る場合に用いるユニフォームをセカンドユニフォームと呼ぶ[6]。色の被りが多いチームはもう1種類、色の異なるユニフォームを、サードユニフォームとして準備している場合もある。MLBにおいてはビジター用のユニフォームは色付きであるが、ホーム用のユニフォームでもセカンドユニフォーム等で色付きユニフォームを使用している場合がある[7]。
利点
ホームタウンでの試合は、ホームチームのほうが施設やその他の環境に慣れている点や、移動による疲労がない点などで有利だと考えられている。また、比較的多く地元のファンの声援を受けられることや、それに伴う判定への影響(ホームタウンディシジョン)などもホームチームに有利に働く要素だとされることがある。国際試合などでは特にそうした傾向が強い。ホーム・アンド・アウェイ方式では、このような開催場所による有利不利を均等化することが期待される。
また、リーグ戦を通した試合数が増えることによる興行収入の増加、それぞれがホームタウンで試合を開催することによる観客動員の均等化など、プロスポーツにおける興行面での理由もある。
欠点
ホームゲームの開催順序や時期に依存した有利不利が発生する可能性は残されており、これを均等化するのは事実上不可能である。特にホーム・アンド・アウェイの2試合によって必ず勝敗を決する必要がある場合(例:ノックアウトトーナメント)、2試合目のみが延長戦になる場合があり、後にホームゲームを行うチームが有利となってしまう[8]。また、プロ野球のプレーオフや日本シリーズ、NBAファイナルのように、勝利数の差によって勝敗を決める場合には試合数を奇数にせざるを得ないといった問題もある。
また、ホームタウンのファンによる応援は時として度を超え、治安上の問題に発展するケースがある。こうした場合問題が発生した試合のホームチーム側に何らかの制裁が課されることがある。問題を未然に防ぐために敢えて双方に無関係なスタジアム(主に他国のスタジアム)で試合をする場合もある。
ホーム・アンド・アウェイ方式は1ゲームで勝敗を決する場合と比較すると、移動距離や日程を増加させるため、金銭的な面や体力的な面で負担になる。特に学生などのアマチュアには負担が大きい。世界規模の大会では移動行程の問題からホーム・アンド・アウェイ方式はあまり行われない。
代替方式
ホーム・アンド・アウェイの欠点を考慮し、試合の一部または全部を以下のような方式で行うこともある。
- セントラル方式。1か所の開催地で全ての試合を行う。参加チームに開催地のホームチームが含まれる場合はかなり不公平な方式であるが、日程の節約や設備確保等の観点から採用されることが多い。例として、阪神甲子園球場の選抜高等学校野球大会および全国高等学校野球選手権大会や近鉄花園ラグビー場の全国高校ラグビー大会などが挙げられる。また、オリンピックやサッカー、バレーボールのワールドカップなども、開催都市(国)が1か所であるということからセントラル方式の一種と考えられる。
- 中立地方式。セントラル方式のうち、特に参加する各チームのホームタウンでない場所を選定して試合を行う。セントラル方式よりは公平性が高いと言えるが、開催地における両チームの習熟度・人気等の面で必ずしも十分な公平性が保てるとは言えない。2004年まで開催されたサッカーのトヨタカップは、かつてはホーム・アンド・アウェイ方式であったが、治安や日程面の問題から中立地方式に変更された。サッカーのUEFAチャンピオンズリーグのように、準決勝まではホーム・アンド・アウェー方式を採用し、決勝戦のみを中立地方式で行うトーナメント戦もある。ただし、決勝戦開催地は早い時点で決められるため、場合によっては決勝進出チームのホームグラウンドが会場となってしまうこともありうる[9]。NFLのスーパーボウルも中立地方式であるものの、こちらも開催地は早い段階で決定されるためやはりホーム開催となる場合もありうるが、開催地を本拠とするチームが、そのシーズンのスーパーボウルに出場したことはこれまで一度もない。
- ダブル・セントラル方式。2か所の開催地で1か所ずつ2回対戦する。ワン・エンド・ワンセントラル方式とも言う。特にアジア地区におけるサッカーの国別対抗リーグ戦でしばしば見られる方式である。自国のホームで試合をする機会のないチームにとって不利であるが、実力差があり過ぎてその2チーム以外に事実上突破の可能性や試合開催の運営能力がない場合に移動負担軽減のためと、ホーム・アンド・アウェイと試合数を合わせる場合に採用される。
その他
日本においては、特定スポーツのホームタウンとなっていない空白地域が多い。これらの地域でスポーツ振興を図り、また市場開拓を行うといった目的のため、特定チームがホームタウン以外の地域において試合を主催することが少なくない。このような場合でも、主催側をホームチームと呼ぶが、ホームであることの有利さはほとんど享受できない[10]。
また、ホームスタジアムで試合を行うより観客動員、収入が期待できる場合、アウェー動員を見込んであえてアウェーチームのファンの多い地域で主催ゲームを行う場合もある[11]。JBLやFリーグのようにホーム・アンド・アウェーに中立地開催を加える場合もある。
その他、日程の都合でホームタウン以外での主催試合が実施される場合もある。2007年9月25日にセーフコ・フィールドで開催されたシアトル・マリナーズ対クリーブランド・インディアンズのダブルヘッダーは、同年4月に雪の影響で中止されたジェイコブス・フィールドでの振替試合を行うため、第1試合のみインディアンズ主催で実施された。また日本でも、試合日程の都合で西鉄ライオンズが1956年の阪急ブレーブス戦、並びに後継の太平洋クラブライオンズ時代の1973年後期に日拓ホームフライヤーズ戦のダブルヘッダーの1試合を後楽園球場で代替開催したことがあった。
脚注
関連項目
- アウェーゴール
- ビジターゲーム (日本プロ野球)
- ホームタウン
- プロ野球地域保護権(フランチャイズ)
- ビジター
- 死のロード - 阪神タイガースが毎年8月から1カ月程度実施する長期ビジター(ロードゲーム)の俗称。