アウェーゴール
アウェーゴールルール(テンプレート:Lang-en-short)は、サッカーのホーム・アンド・アウェー方式による2チーム間での対戦において、その勝敗(勝ち上がるチーム)を決定する必要がある場合に多く採用されている勝敗決定方式の一つで、合計のスコアで並んだ場合、アウェーでの獲得得点の多いチームを勝利とするというものである。
目次
概要
クラブチーム間で争われる国際公式戦(UEFAチャンピオンズリーグ、AFCチャンピオンズリーグなど)や、FIFAワールドカップ予選のプレーオフなどでは、対戦するそれぞれのチームのスタジアムで試合を行うホーム・アンド・アウェー方式が採用されており、2試合の通算スコアによって成績を決定している。しかし、2試合の得点が同じ場合、単なる通算スコアの比較では両チームの勝敗が決まらず、勝ち上がるチームを決定できない。そこで、このような場合、アウェーでの獲得得点の多いチームを勝ちとする方式で勝敗を決定する。
2試合目の後半終了時に総得点、アウェーゴール数ともに同点の場合は、そのスタジアムで延長戦を行うが、延長戦での得点が同点となった場合もアウェーゴールのルールが適用されることがある[例 1]。すなわちその場合、延長戦での得点が1 - 1以上の同点ならば、延長戦を行ったスタジアムにおけるアウェーチームの勝利となる。採用しない場合はアウェーチームにとっては延長戦がアウェーの地でのみ行われることになり、2試合目をアウェーで戦うチームがやや不利といえる一方、採用した場合は前述の様に、延長戦ホームチームはアウェーゴールを奪うことができないため、アウェーチームがやや有利となる。なお、日本においては、延長戦では採用されていない。
延長戦終了時に総得点、アウェーゴール数ともに同点の場合は、多くの場合PK戦にて勝敗が決定される。
同じ1点差の勝ち(負け)でも、無失点(無得点)で終わるのと1点でも取られる(取る)のとでは大きな差が生じ、また、スコア展開によっては差をつけて勝っていても1失点も許されないなど[例 2]、緊張感のある方式である。
なお、ホーム・アンド・アウェーで総当たり戦を実施する場合にも、アウェーゴール数を順位の決定に用いる場合がある[例 3]。
注
- ↑ 例えば2014 FIFAワールドカップ・予選の大会規定[1](18.9節を参照)においては、"If both teams score the same number of goals in extra time, the visiting team is declared the winner on the basis of away goals counting double."(日本語:「もし両チームが延長戦で同数のゴールを挙げた場合についても、アウェーゴールを2倍とし、アウェーのチームを勝者とする」)と規定されている。
- ↑ 具体的には以下の事例において、1点が入るのみで優位に立つチームが入れ替わる。
- 第2戦のアウェーのチームが、相手に合計得点で1点劣っているものの、アウェーゴール数で勝っているか並んでいる状況で1点獲得する。例えば第1戦(Aチームのホーム)が A 2 - 2 B で終了し、第2戦(Bチームのホーム)の途中 A 2 - 3 B という状態では、このままだとBチームが勝利となる一方、Aチームが1点獲得するとAチームが優位に立つ。
- 第2戦のホームのチームが、相手に合計得点で1点劣っているものの、アウェーゴール数で勝っている状況で1点獲得する。例えば第1戦(Aチームのホーム)が A 2 - 2 B で終了し、第2戦(Bチームのホーム)の途中 A 1 - 0 B という状態では、このままだとAチームが勝利となる一方、Bチームが1点獲得するとBチームが優位に立つ。
- 合計得点で並んでいるもののアウェーゴール数で劣っているチームが1点獲得する。例えば第1戦(Aチームのホーム)が A 2 - 2 B で終了し、第2戦(Bチームのホーム)の途中 A 1 - 1 B という状態では、このままだとBチームが勝利となる一方、Aチームが1点獲得するとAチームが優位に立つ。
例
1勝1敗で総得点が同一の場合
2010 FIFAワールドカップ・ヨーロッパ予選プレーオフより。総得点が2-2であるものの、アウェーゴールがスロベニア1点・ロシア0点のため、スロベニアが勝ち上がった。
2引き分けの場合
2010 FIFAワールドカップ・アジア予選 プレーオフより。アウェーゴールがサウジアラビア0点、バーレーン2点のため、バーレーンが勝ち上がった。
アウェーゴールにより決着が付かない場合
2010 FIFAワールドカップ・アジア予選1次予選より。総得点が2-2で、アウェーゴールがともに0点であり、決着が付かない。このような場合は延長戦が行われる(この試合は延長戦でも両者得点が入らず、PK戦でヨルダンが6-5で勝利)。
延長戦アウェーゴールによる場合
UEFAヨーロッパリーグ 2012-13 ラウンド16 より。延長戦でもアウェーゴールルールを採用しており、アウェーゴール数1-0でトッテナムが勝ち上がった。
特殊な例
対戦する2チームが同一の競技場を本拠地としていた場合など、2試合が厳密にホーム1試合・アウェー1試合という形で行われない場合においても、規定上アウェーゴールルールを適用しなければならない場合においては、どちらの試合をどちらのホームゲームとみなすかを決定した上で対戦する(ただしコパ・ド・ブラジルなど、「同一競技場を本拠地とするチーム同士の対戦においては、例外としてアウェーゴールルールを適用しない」と規定している大会もある)。
- 前者はUEFAチャンピオンズリーグ 2002-03準決勝より。同一の競技場を本拠地とするチーム同士の対戦となったものの、規定上第1戦をACミランのホームゲーム、第2戦をインテルのホームゲームと扱うこととされていた。その対戦の結果、総得点で並んだものの「第1戦のインテルの得点<第2戦のACミランの得点」となったため、ACミランが勝ち上がった。
- 後者は2010 FIFAワールドカップ・北中米カリブ海予選1次予選より。イギリス領ヴァージン諸島のスタジアムがFIFA規定外であったため、イギリス領ヴァージン諸島のホームゲームもバハマで開催され、2戦目がイギリス領ヴァージン諸島のホームゲームと扱われることとされた。前記の例同様、(バハマでの開催であったものの)イギリス領ヴァージン諸島のホームゲームと扱われた第2戦のアウェーゴールが多かったバハマが勝ち上がった。
名称について
大会規定によっては、このルールのことを「2試合での実スコア合計が同じだった場合は、アウェーゴールを2倍とする」と記述しているテンプレート:Refnest。このため、このルールは「アウェーゴール2倍ルール」などといった呼び方がされることもある。ただし「2試合での実スコア合計が同じだった場合に限り」アウェーゴール数を2倍とするのであって、単にアウェーゴール数を2倍するわけではない。単にアウェーゴール数を2倍とすると、以下のような場合において、本来のルールの趣旨と異なる結果が生じる。
- AチームとBチームの対戦において、第1レグ(Aのホームゲーム)が A 4-2 B、第2レグ(Bのホームゲーム)が B 1-0 A となった場合、トータルスコアでは A 4-3 B となり、Aチームの勝ちである(トータルで同点ではないため、アウェーゴール数の比較には至っていない)。しかし、「アウェーゴール2倍」と呼ぶと、単純にアウェーゴール数を2倍した A 4-5 B でBチームの勝利と勘違いする可能性が出る。
- AチームとBチームの対戦において、第1レグ(Aのホームゲーム)が A 0-0 B、第2レグ(Bのホームゲーム)が B 3-2 A となった場合、対戦成績では1勝1分けでBチームの勝ちである。しかし、「アウェーゴール2倍」と呼ぶと、単純にアウェーゴール数を2倍した A 4-3 B となり、Aチームは負けたが、スコアでは上回るのでAチームの勝ちになるのではないかと勘違いする可能性が出る。
制度趣旨
かつては単に2戦での得失点差のみを比較し、これが同じであれば第2レグで延長戦を行い、それでも決着が付かなければPK戦を行うことになっていた。
サッカーはホームとアウェーの有利不利が比較的顕著に出るスポーツと呼ばれ(ホームタウンディシジョンなども参照)、また、多少強い相手に対して、あるいは多少不利な状況下でも、守りを固めれば0-0の引き分け(スコアレスドロー)に持ち込める可能性が高い。
そこで、不利とされるアウェーゲームを、とにかく引き分けか、最悪でも僅差の敗戦で乗り切り、ホームゲームで多くの得点を挙げて勝ち上がるという戦術が流行した時期があった。しかし、このような方法が流行し、アウェーチームが守りを固めるようになると、得点の入らないスペクタクル性の乏しい面白くないゲームになりがちであった。
また、従前のルールでは第2レグが延長戦になることが多く、両チームが延長戦への体力温存のため、第2戦の前後半90分の運動量を落としてしまう傾向も見られた。加えて、延長戦でも決着が付かずPK戦になることも多かったが、PK戦は偶然の要素が強く、これにより勝ち上がりチームが決まってしまうのはあまり面白いことではない。
そこで、アウェーゲームで積極的にゴールを奪うインセンティブを与え、また両チームが前後半90分で全力を尽くせるようにしゲームを面白くすべく、このようなルールが導入されるようになった。
このルール下では、第1レグのアウェーチームがその試合を無得点で終わることは、かなりのリスクが生ずることになる。例えば、第1レグが0-0だった場合、第2レグが1-1以上の(スコアレスではない)引き分けだと、第1レグのアウェーチームが敗退することになる。また、第1レグが0-1の敗戦だった場合は、第2レグのホームゲームでは2-1や3-2で勝っても敗退になるのであり、無失点で勝つか、失点した場合は2点差をつけて勝たねばならないという難しいミッションが残ることになる。逆に、同じくアウェーの第1レグで負けたとしても、そこで1点でも取っておくと第2レグの様相は相当に異なる事になる。
日本での適用
日本国内の大会としては、2006年Jリーグヤマザキナビスコカップ(決勝戦を除く決勝トーナメント)と同年のJ1・J2入れ替え戦(2008年で終了)で採用され、ナビスコカップ決勝トーナメント準々決勝の川崎フロンターレ対浦和レッドダイヤモンズで初めて適用された。その内容は、川崎が第1戦をアウェーで3-4で負け、第2戦はホームで2-1で勝利し2戦1勝1敗となり合計得点も5-5となったため、アウェーでのゴール数(3-1)により川崎の準決勝進出となった。また、入れ替え戦でも採用初回で初適用となった(詳細は同記事参照)。2012年より制度化されたJ2・JFL入れ替え戦(2014年よりJ2・J3入れ替え戦と改組)でもアウェーゴール方式が採用される。なお、日本フットボールリーグ(JFL)・地域リーグ間の入れ替え戦では2006年以降もアウェーゴール制を採用しておらず、実際に2012年の入れ替え戦ではアウェーでのゴール数に差があったものの延長戦・PK戦を行っている(気候事情により2試合とも同会場であったものの、これはアウェーゴール制の不採用とは関係ない。詳細は当該記事参照)。
なお、日本のクラブチームがアウェーゴール決着を経験している例は、国際大会としてはそれ以前から存在しており、アジアスーパーカップ1998-99でジュビロ磐田がアル・イテハドを破った(ホーム1-0、アウェー1-2)例や、アジアカップウィナーズカップ2000-01準々決勝で名古屋グランパスが大連実徳に敗れた(アウェー0-0、ホーム1-1)例などがある。
日本代表チームが出場したサッカーの国際大会では、以下の試合でアウェーゴールルールが適用される可能性があったものの、いずれもアウェーゴールによらず決着がついている。 テンプレート:節stub
- 1986 FIFAワールドカップ・アジア予選最終予選(ホーム・アンド・アウェーでのノックアウトトーナメント)
- 2003 FIFA女子ワールドカップ・予選#大陸間プレーオフ(女子代表)
- 2007 FIFA女子ワールドカップ・予選#大陸間プレーオフ(女子代表)
- ロンドンオリンピック (2012年) サッカーアジア予選2次予選(U-22代表)
脚注
出典
関連項目
- サッカー
- ホーム・アンド・アウェー
- アウェーゴールで決着した試合の例