フェレット
テンプレート:出典の明記 テンプレート:生物分類表 フェレット(テンプレート:Lang-en-short)は、イタチ科に属する肉食性の哺乳小動物である。イタチの一種であるヨーロッパケナガイタチもしくはステップケナガイタチから家畜化されたもので、古くからヨーロッパで飼育され、現在は世界中で飼われている。狩猟、実験、毛皮採取、愛玩用に用いられる。同じイタチ科の仲間には、ほかにイタチ、カワウソ、アナグマなどがある。体長は、成体で35 - 50 cmほど。メスの方が小さい傾向にある。毛色は様々である。 かつて狩りに使われるフェレットは獲物と見分けやすいように、アルビノが多く使われた。 そのためフェレットが日本に紹介される際にフェレットの別名であるフィッチ(テンプレート:Lang-en-short)が「白イタチ」と訳されるようになった。実際に日本で動物実験で使われるフェレットはアルビノなどの白い毛皮を持つ個体が多かった。博物学者であり二名法を定着させたリンネもフェレットのことを白イタチと記述している。 フェレットが野生のヨーロッパケナガイタチと異なり、白色か薄い黄色であるので「白イタチ」と呼ばれるというのは誤解である。寿命は約6 - 12年である。
目次
歴史
フェレットは野生のヨーロッパケナガイタチ (Mustela putorius) もしくはステップケナガイタチ ( M.eversmanni) を家畜化、改良したものとされているが、詳細は不明であり、3000年ほど前から飼育されていたと考えられている。 アリストテレスは「動物誌」の中で「イタチ」と「野生イタチ」を分けて記述しており、「イタチ」は今でいうフェレット、”野生イタチ”は野生のケナガイタチを指しているのだと考えられている。 ギリシアの歴史家ストラボンはその著書の中でフェレットはアフリカからスペインに移入されたと記している(しかしヨーロッパケナガイタチもステップケナガイタチももともとアフリカには生息していない)。 学名 M. p. furo は、ヨーロッパケナガイタチの亜種の扱いである。また、 M. putorius の亜種とせず、M. furo とされる場合もある。
その昔、ヨーロッパにおいて、フェレットは狩りに珍重されていた。フェレットがウサギや齧歯類などの獲物を巣穴から追い出し、それを猟師が狩るという方法で、今でもイギリスやオーストラリアでは続いている。また、ネコと同様、ネズミ退治にも利用された。
フェレットは狭い菅の掃除にも用いられた。フェレットの習性を利用して紐を2点の菅に通して、それからブラシを通して管の中を掃除するという方法である。電気が普及すると、フェレットに電線やケーブルに繋いだ紐を繋ぎ、狭いところの配線を手伝わせていた。ロンドンオリンピック (1908年)でもフェレットは上記の工事に大活躍をした。
現在は、アメリカ合衆国・カナダ・ニュージーランド等に、ペット等としてのフェレットを繁殖させる大規模なファームがあり、出身ファームごとに「マーシャル」、「パスバレー」、「カナディアン」、「ミスティック」、「サウスランド」、「マウンテンビュー」などと、ファームの名称が冠されて販売されている。ただし、犬・猫のように明確な品種の差があるわけではなく、基本的には全て同様のフェレットであるが、ファームにより体格・性格・毛色等の傾向に一定の差があり、それぞれにファンがついている。
なお、近年新たなファームが出現と消滅を繰り返している状況で、一時アジア、オセアニア圏の新興ファームが日本向けに生体を輸出したこともあった。また、現在では中華人民共和国で繁殖された個体もペットとして輸入、販売されている。
コンパニオンアニマルとしての繁殖、飼育以外に、実験動物としてもフェレットは世界中で広く飼育されている。
ペットとしてのフェレット
フェレットの行動は、まるで成長しない子猫のようであり、一生活発で好奇心が強い。しかしフェレットは、一般的にネコよりも人間に懐き、飼い主との遊びを好む。
トイレのしつけや簡単な芸を覚えさせることも可能で、YouTubeなどの動画投稿サイトでは飼い主がフェレットに芸をさせている様子を撮影した動画が多数公開されている。
普段の鳴き声はあまり大きくなく、機嫌が良い時は「クックックッ」、機嫌が悪い時は「シャーッ」と小さく鳴く程度である。したがって、鳴き声によって隣家や隣室に迷惑をかけることはほとんどない。ただし、非常に驚いた時などは「キャン!」と犬が吠える程の大声で鳴くことが稀にある。
家畜用に品種改良されてきたため飼い主から離れたフェレットが自然界で生き延びることができる可能性は非常に低いと考えられている。また、ペットのフェレットは、発情期に体臭が非常に強くなったり、凶暴になることを嫌う飼い主が多いため、大手供給社のペットは去勢・避妊されている。このような理由から、逃げ出したフェレットが野生化して増え、群れを形成するという心配はないと考えられている。
アンゴラフェレットについて
前述したように、一般的にフェレットには犬・猫における犬種・猫種のようなものはなく、主に出身ファーム、披毛のカラー・パターンなどで分類される。品種差で分類される例外的なフェレットとしては、北欧で突然変異的に発生した披毛が極端に長くなる個体の遺伝的性質を、選択的な繁殖によって人為的に固定した「アンゴラフェレット」が挙げられる。この種類のフェレットは、その体格、骨格、性質などの面で他の一般的なフェレットと異なる点が多いと言われる。
特に目立つ差異としては、前述したように披毛が非常に長くなること(ただし個体差があり、非常に長い披毛を持つものから、一般的なフェレットと変わらないものまでいる)、鼻の形が独特で、鼻腔内や鼻の表面にも短い毛が生えていること(こちらも個体差があり、一般的なフェレットと変わらないものもいる)等が挙げられる。また、性格がきつく、攻撃的で懐きにくい個体も多いと言われている。
なお、北米や日本で開催されるフェレットショーにおいては、アンゴラフェレットは一般的なフェレットとは異なるものとされ、原則として出場できない。ただしアンゴラの人気が高く、飼育頭数の多い日本においては、特例的にアンゴラフェレットに特化したクラスが設けられており、このクラスにのみ出場することができる。なお、ヨーロッパなどで開催されているフェレットショーはこれらとは全く異なる基準で行われているため、出場制限のない場合もある。
飼う際の注意
フェレットは壁の穴や戸棚、電化製品の裏側に好んで入り込む。そのため、ファンや配線が露出していないか、暖房の排管がないか、危険な物が落ちていないか、などに留意する。また、落ちているものを運んだり噛んだりする。
フェレットにとっての適温は、一般的には15℃から22℃と言われている(多少の個体差有り)。目安としては、フェレットの体感温度は実気温+7℃。
汗腺が全くない(生まれた直後は肉球にのみあるが、生後数日で消失)ので夏の暑さにとても弱く、室温が28℃を越えると熱中症になる危険がある。冬でもよく晴れた日に窓際にケージを長時間置いて熱中症になったというケースがある。ペットショップで店員に「フェレットは犬や猫より飼いやすいですよ」などと言われても、それを真に受けてはならないその最大の原因がこの温度調節の問題である(現行の動物の愛護及び管理に関する法律第八条では、「動物販売業者の責務」として「動物の販売を業として行う者は、当該販売に係る動物の購入者に対し、当該動物の適正な飼養又は保管の方法について、必要な説明を行い、理解させるように努めなければならない」とされており、ペットショップ店員などによる前述のような不正確な説明はこの規定に反していると思われる。ただし、この規定に違反した場合の罰則は定められていない)。
フェレットについてあまり知識のないままインターネットなどを通じてフェレットを譲り受けてしまい、届いてみるとまだ避妊、去勢、肛門腺(所謂「臭腺」)除去の手術がされておらず、予想外の臭いや発情行動に不快感をもち、処分してしまった、という無責任な飼い主のケースもある。
上記の通り、元来がイタチ科であるフェレットの肛門脇には肛門腺があり、外敵に襲われた時や興奮した際などにスカンクのように非常に臭い液を飛ばす。「イタチの最後っ屁」とも呼ばれる自己防衛行動である。前述のしっかりと管理された大手メーカー・ファームにより繁殖されたものであれば、除去済み生体がショップで販売されているが、個人のブリーダーや繁殖元が不明のものだと、除去手術されていない場合もある。また、除去手術がされてあっても、きちんと抜糸されていない場合や、少数ながら除去手術に失敗している場合もある。
上記のような未手術のフェレットは、動物としてのフェレット本来の姿を保っているものとして一部の愛好家によって好まれるが、発情時の行動や体調の問題(フェレットの病気を参照)、肛門腺分泌物や体臭による強い臭気などの問題もあり、一般的なペットとは言いがたい面もある。
アメリカの例であるが、一家が寝ている夜間に生後約6ヶ月のペットのフェレットが約4ヶ月の乳児の指7本を食いちぎったニュースがあった[1]。乳幼児のいる家庭では注意が必要である。
フェレットの病気
耳をかきむしる・食欲不振・下痢・嘔吐・脱毛・陰部の腫れ・鼻水・便の異変・肉球の硬化等、いつもと違うことがあれば「病気」の可能性がある。病気の早期発見は、飼い主の日頃の観察によるものである。フェレットのような体の小さい動物は、ちょっとしたことが命取りになる。また、転落や異物の飲み込みも、好奇心の旺盛なフェレットに多い事故である。
フェレットをペットとして飼育する場合、最寄りの動物病院で、必ずアレルギー検査の後、「フィラリア予防・ジステンパー予防接種」を受ける。
- ジステンパー
- 正確には「犬ジステンパーウイルス感染症」といい、犬に感染するタイプと同じウイルスがフェレットに感染して起こる病気である。
- ほかに、アライグマ科の動物にも感染する。ウイルスを含んだ糞や目・鼻の分泌物が空気中に飛散し、予防接種をしていない個体がこれを吸い込んだり接触することで感染する。
- フィラリア
- 犬の病気として知られており、フィラリア(犬糸状虫)と呼ばれる寄生虫が心臓に寄生する病気である。すでに感染している犬の血液を吸った蚊が「媒体」となり、別の犬もしくはフェレットから吸血した際に寄生虫(フィラリアの幼虫)が移ることで感染する。
- フェレットの場合は、数匹のフィラリア幼虫が寄生しただけで、重度の心不全の症状が現れ、元気がなくなった頃に病院に連れて行っても手遅れの場合も多く、死に至る。ジステンバーとともに、フェレットにとって死亡率の高い病気である。
- 副腎腫瘍
- 副腎腫瘍は他の病気を併発することもあり、副腎に腫瘍ができることでエストロゲン、テストステロンなどの性ホルモンが過剰分泌され、さまざまな症状が現れる。主な症状として、脱毛、メスの生殖器の腫大、去勢済みのオスの前立腺疾患(尿もれ等)、その他皮膚の乾燥や貧血、体重減少などもある。
- この場合の腫瘍は「良性」のものが多く、転移も起こりにくいといわれているが、「悪性腫瘍(癌(がん))」の場合もある。
- フェレットは比較的腫瘍のできやすい動物である。フェレットの半数以上が、(良性・悪性を問わず)何らかの腫瘍にかかるとも言われている。
- しかし、悪性の場合でも、腫瘍の種類もさまざまなので、早期発見で助かることもある。
- 去勢・避妊
- 発情したメスは交尾をしないと排卵できないため、エストロゲンの過剰分泌の状態が続き、その結果命に関わることがあるので、繁殖予定の無いメスには避妊手術を施す必要がある。オスの場合は去勢しなくても問題は無いが、ペットとして飼育する場合、体臭がきつくなったり気性が荒くなったりして、尿でマーキングすることもある。
- 現在市場に出回っている個体のほとんどは「去勢・避妊」されているものである。
- ノミ・耳ダニ・その他
- ネコなどにも見られる「ノミ」だが、フェレットが頻繁に体をかゆがる場合は、寄生していることが考えられる。
- フェレット用のノミ取りシャンプーなどが手軽で便利である。赤黒い耳垢が多い場合は、耳ダニが発見される場合がある。
- 耳の分泌物が多い個体によく発見されるが、比較的簡単に駆除できる。その他、個体によっては「ハウスダスト(埃)」に敏感なものもいる。
- 中毒を起こしたり、病気の原因となる食物
- チョコレート、タマネギ、コーヒー、茶など。
- チョコレートの場合、原料のカカオ由来のアルカロイドであるテオブロミンの覚醒効果が原因で中毒を起こす。
- これは、テオブロミンを体内で代謝する能力が低いため、一旦フェレットがテオブロミンを含む食物を摂取すると、長時間にわたって高濃度のまま体内に留まるためである。チョコレートをうっかり1枚食べさせてしまい、死んでしまったという症例もある。
- タマネギなどのネギ類の場合、含有するアリルプロピルジスルフィドなどの硫化物がヘモグロビンを変性させることにより、赤血球を破壊し、溶血性貧血を発症させる。一般にタマネギ中毒と呼ばれるが、タマネギ以外にも長ネギ、ニンニク、ニラなどのネギ属に属する野菜の摂取によっても発症する可能性がある。ネギ類に含まれるスルフィド類の多くは水溶性であり、加熱しても分解されないため、直接原因となるネギ類を食べさせなくても、そのエキスを含む食品を摂取するだけで発症する可能性がある。
- 緑茶、コーヒー、紅茶などに含まれるカフェインは、テオブロミンに似た構造を持ち、同様の覚醒効果を持つため(カフェインとテオブロミンは共通の骨格を持ち、カフェインの1位のメチル基が外れたものがテオブロミンである。詳細はカフェイン および テオブロミンの項を参照の事)。
- その他の人間が口にする食品や飲料などについても、フェレットにとっては塩分や糖分などが過剰となる可能性が高いため、このような物を日常から摂取していると、人間で言うところの生活習慣病に近い病気に罹りやすくなることが考えられる。
フェレットに関する法規制など
- オーストラリア
- クイーンズランド州およびノーザンテリトリーでは、ペットフェレットの飼育は違法である。オーストラリア首都特別地域およびビクトリア州では、飼育にはライセンスが必要である。
- ブラジル
- 識別用のマイクロチップを埋め込み、避妊・去勢された個体のみ飼育が許可される。
- アイスランド
- 販売、流通、繁殖、飼育は全て違法である。
- ニュージーランド
- 2002年より、販売、流通、繁殖は違法となった。
- ポルトガル
- ペットとしての飼育は違法であり、政府の許可の下、狩猟用としての飼育のみが許可されている。
- アメリカ合衆国
- 当初は多くの州で飼育が禁止されていたが、1980年代から 1990年代にかけて、フェレットが一般的なペットとなったことから、ほとんどの州で飼育が解禁された。
- しかし、カリフォルニア州では今もフェレットの飼育を法律で禁じている。ハワイ州ではフェレットは「狂犬病ウイルスのキャリアとなる可能性がある」とされ、ペットとしての飼育は法律により禁じられている。合衆国領プエルトリコでも、同様の理由でフェレットの飼育が禁じられている。また、ワシントンD.C.、ニューヨーク市など、都市単位で個別に飼育が禁止されている場合もあり、多くの米軍基地においても飼育が禁じられている。
- ロードアイランド州などではフェレットの飼育に許可が必要である。イリノイ州およびジョージア州では、飼育に制限はないが、フェレットの繁殖には許可が必要である。
- テキサス州ダラスでは、過去においてフェレットの飼育が禁じられていたが、現行のダラス市の動物飼育に関する規則には、フェレットに対する予防接種の義務に関する記述が盛り込まれている。
- 日本
- 現在のところ、国内でフェレットの販売、流通、飼育、繁殖を制限する法律等は無い。
- ただし、北海道では、2001年10月に施行された「北海道動物の愛護及び管理に関する条例」第2条第3号に基づき、施行規則においてフェレットが「特定移入動物」に指定され、「飼い主が特定移入動物の飼養を開始したときは、その開始の日から30日以内に、規則で定めるところにより、その旨を知事に届け出なければならない。飼養を休止し、又は廃止したときも、同様とする」とされている。
フェレットを使った作品・キャラクター
商品
- 魔法少女リリカルなのはシリーズ - ユーノ・スクライア(フェレットモード)。
- nimoca - フェレットのキャラクターが描写されている。
脚注
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