オリーブ・オイル
項目 | 分量 (g) |
---|---|
脂肪 | 100 |
飽和脂肪酸 | 13.808 |
16:0(パルミチン酸) | 11.29 |
18:0(ステアリン酸) | 1.953 |
一価不飽和脂肪酸 | 72.961 |
16:1(パルミトレイン酸) | 1.255 |
18:1(オレイン酸) | 71.269 |
多価不飽和脂肪酸 | 10.523 |
18:2(リノール酸) | 9.762 |
オリーブ・オイル(テンプレート:Lang-en)、またはオリーブ油(おりーぶゆ)は、オリーブの果実から得られる植物油である。
概要
酸化されにくいオレイン酸を比較的多く含むため、他の食用の油脂に比べて酸化されにくく固まりにくい性質を持つ(不乾性油)。ギリシア語での語源が「喜び」と共通することから正教会では斎の対象となる。
主に地中海に面した地域(イタリア、スペイン、ギリシャ、マシュリクなど)で好んで使われる。ギリシャでの消費量は世界一で、日常の食卓に置いて様々な料理に使われており、日常生活に欠かせない食材である。イタリアなどでは毎年オリーブの収穫の季節に、ブルスケッタなどと一緒に絞りたてのオリーブ油を賞味して収穫を祝う習慣がある。
主な生産国はスペイン (40.1%)、イタリア (19.5%)、ギリシャ (12.9%) などとなっている。 食用のほか、化粧品、薬品、また石けんなどの原料としても用いられる。これらの地方では単に油といえばオリーブ・オイルをさすことが多い。
オリーブオイルは紫外線により劣化するが、紫外線は太陽光線のみならず蛍光灯の光にも含まれているため、冷暗所で保存する。手に取りやすい食卓や台所に置く場合は黒い瓶やアルミホイルで覆った瓶により遮光すると同様の効果がある[2]。
製法
種子や果実から採取される植物油の多くが、加熱工程や溶剤抽出工程を経て得られ、特にほとんどの場合植物組織から油を分離するのに加熱工程が不可欠であるのに対し、オリーブ・オイルは生の果肉から非加熱で果汁を絞って放置しておくだけで、自然に果汁の表面に浮かび上がり、これを分離することで得ることが出来る。オリーブと同様に果肉から多量の油が得られるアブラヤシの果実からパーム油を採油する場合、原産地であり伝統的栽培地帯である西アフリカの熱帯雨林地帯における伝統的手法でも、パーム油は飽和脂肪酸を多く含むため常温では固形であり、砕いた果肉を煮沸しなければ抽出できないのと大きな違いであり、この点がオリーブ・オイルの最大の特質となっている。つまり、ワインが本来、限られた季節にしか得られないブドウの果汁を一年中飲むことが出来る保存果汁としたものとして発展したのと同様、同じ地中海文化の中で利用が発展したオリーブ・オイルも、正に油という形で保存された生の果汁としての性質を、食品化学的にも、文化的にも、色濃く持っている。
収率向上のため、果実をすりつぶして絞った果汁を遠心分離機に掛け採油する。伝統と品質を重んじる採油所では、この果実のすりつぶしに伝統的な石臼が用いられているが、工業的に大量に処理する採油所では機械による粉砕が行われている。オリーブ絞り用の石臼は、東アジアの穀物粉砕用の石臼のように溝を切った二枚の石の円板が水平に重なり合って回転し、磨り合う形態ではなく、巨大な石の皿の上で垂直に立てられた石の円板が、車輪のように転がりながら円運動をする形態のものである。
果汁から遠心分離などによって直接得られた油をヴァージン・オイルと呼び、その中でも果汁としての香りが良好で油としての品質も高いものを特にエクストラ・ヴァージン・オイルと呼ぶ。
また、品質の悪いヴァージンオイルを精製(脱酸・脱臭・脱色等)したもので、酸度が0.3%以下のものを精製オリーブオイルといい、この精製オイルと中程度の品質のヴァージンオイルをブレンドし、酸度1.0%以下にしたものをオリーブオイル(日本では「ピュアオリーブオイル」の名で知られる)と呼ぶ。
果実に含まれる油を無駄なく回収するため、果汁を絞った絞りかすを石油系有機溶剤を使って抽出したオイルをポマースオイルと呼ぶ。溶剤はサラダ油類の抽出でも一般的に使用されている。ポマースオイルは上記のオリーブオイルとは成分が異なるため、IOC(国際オリーブ協会)[3]の規定により「オリーブオイル」と表示してはいけないと定められており、食用ではなく工業用として扱われている。ただし、ポマースオイルを精製し、酸度を0.3%以下にした場合、その国の基準(日本であればJAS)をクリアしていれば、食用としての販売は可能である。(ただし「ポマース」と明確に表記しなければならない)格安のオリーブオイルとして出回っているものの多くはこのポマースオイルである。
オリーブの種子から溶剤抽出によって得られた油をオリーブ核油と呼んでいる。
歴史
オリーブ栽培とオリーブ・オイル発祥の地は地中海沿岸である。広く信じられている説では、オリーブ・オイルの使用はクレタ島で始まったという。オリーブ・オイルを貯蔵するための最古のアンフォラはここから出土しており、紀元前3500年ごろのものとみられる。もう一つの説では、カナン人が紀元前4500年ごろに初めてオリーブ・オイルを絞ったという。
宗教的な用途に用いられることもあった。キリスト教の祖イエスの名の別名「キリスト」は救世主を意味するが、原義は「油で聖別された者」の意で、聖別にオリーブ油が使われたと見られるほか、聖書にオリーブ油が頻繁に登場するのはパレスチナの文化にオリーブ油が根付いていた証拠である。また、ギリシャなどの教会では灯火用にも用いる。
古代ローマでは不作の年に備えて公共の貯蔵庫を設け、祝賀の時には人々にふるまわれることもあった。カエサルがウティカの戦いで勝利を収めたときには軍の兵士に一人あたり2ガロンもの油が与えられたという。 マシュリクでは、美容と健康のためにそのまま飲むこともある。
育苗・栽培・製造方法の技術の発達により、アメリカ合衆国やオーストラリアなどの新世界から、非常に優れた品質のオリーブオイルが出荷されるようになった。オリーブのよく育つ環境はワイン用のブドウ(特にシラーやカベルネ種)が育つ環境と非常に似ているからである。風土や苗・製造方法、生産者の嗜好などにより、色や味に個性が出る。
日本のオリーブ・オイル
1908年(明治41年)、魚の油漬け加工に必要なオリーブ・オイルの自給をはかるため[4]、農商務省がアメリカ合衆国から導入した苗木を三重県、鹿児島県と香川県に試験的に植えた。香川県の小豆島に植えたオリーブだけが順調に育ち、大正時代の初めには搾油が出来るほどの実が収穫された[5]。小豆島では今でも島のあちこちにオリーブの樹が植えられており、純国産のオリーブ・オイルが作られている。 小豆島で栽培されているものは、主に「ミッション」「マンザニロ」「ネバディロ・ブランコ」「ルッカ」の4種類[6]。
健康とオリーブ・オイル
- オレオカンタールは、特にエクストラ・バージン・オイルに含まれている天然成分である。オレオカンタールは、風邪薬の中に入っている抗炎症剤であるイブプロフェンに似た抗炎症作用を示す。オレオカンタールは、炎症作用を有するプロスタグランジンをアラキドン酸から合成するシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害するのである。このことは、オリーブ・オイルからこの物質を長期間、少量摂取することが、地中海料理が心臓病の発生の予防に貢献しているかもしれないことを示唆しているものである[7][8]。
- オリーブオイルの主成分であるオレイン酸が、腸を刺激して排便を促す効果がある。これは、オレイン酸が小腸などで消化吸収されにくいという特徴があるためである。またオリーブオイルによって、便が適度に油分を含むので、便の滑りが良くなることも便秘解消につながる。ただし体質によっては、オリーブオイルの摂取によって下痢を起こす場合もある。
料理の例
イタリア料理(特に南部)、スペイン料理、ギリシャ料理、トルコ料理、レバノン料理、フランスのプロヴァンス料理やバスク料理では、オリーブ・オイルが多く使われる。
- バター代わりにパンや野菜につけて食べる
- フムス
- サラダ
- パスタのソースなど。オイルソースの項に詳しい。ペスト・ジェノヴェーゼにも欠かせない。
- マリネ
- ブルスケッタ
- バーニャ・カウダ
- アイオリソース
- 魚介類(主にイワシやマグロ)や果実の油漬け。
- 冷やして、または常温で食べる料理全般
- カトリック教会と正教会の大斎や小斎など動物性食品が制限される期間の料理
- ペペロンオイル - オリーブ・オイルに唐辛子を漬け込んで作る調味料。辣油のイタリア版。
この他、一般的な料理法とは異なるが、日野原重明は毎朝、朝食として、果汁100%のジュースとオリーブ・オイルを混ぜたものを飲むという。
変わったところでは、ご飯を炊く際に数滴入れるというものがある。オリーブオイルにより、ふっくらと炊きあがり、見た目もテカテカするようになる。
用途
- 食用油
- 天婦羅油、炒め物、サラダ用などに使用。
- 化粧品
- 髪油、スキンオイルなど
- 薬用
- 日本薬局方に収載されており、他の薬効成分と配合して用いられる。
- 工業用
- 塗料などの樹脂原料
- その他
- 棒、杖、棋具、櫛の手入れのため塗布して使用する。
関連項目
出典
外部リンク
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