ファッションショー
ファッションショー(英語:fashion show)とは、服飾の作品発表、あるいは、流行創出や販売促進などを企図し、モデルに服を着せて観衆に提示すること。イベントとして大きくなると、日本では『コレクション』と呼ばれることが多いが、英語では数日に渡る所に着目して『ファッション・ウィーク』(fashion week) と呼ぶ。
概要
服飾は立体的であり、光の加減や着る者のプロポーション、あるいは着て動いた場合に見え方が異なるため、陳列棚に並べるよりはマネキン人形に着せた方が、さらに、マネキン人形に着せるよりは人のモデルに着せた方が、顧客にとって自分が着た場合をよりイメージし易い。そのため、ターゲット顧客層を集めて、売り手側が売りたい服を着せたモデルを次々提示するファッションショーが開かれる。
ファッションショーでは、予め選ばれたモデルが売り手側が用意した服を着て、観客席に挟まれた細長い舞台(キャットウォークまたはランウェイと呼ばれる)を音楽に合わせて歩いたりポージングしたりして服を表現する。
ファッションショーは、エンゲル係数が小さく、可処分所得が多い上流階級に向けて行われていたためオートクチュールから始まるが、戦後は先進国において新たに生まれた富裕層に向けてプレタポルテのファッションショーも開かれるようになった。
その後、先進国において増大した中産階級に向けて服飾市場が拡大するが、その需要には大量生産により供給されるため、ファッションショーは卸売や小売業者に対する「新作発表会」などの形で行われ、末端の消費者には、ファッション雑誌においてファッションモデルに、あるいは、テレビ・映画などにおいて俳優やタレントに、売り手側が売りたい服を着せて提示する手法が主流になった。一方、オートクチュールやプレタポルテのファッションショーは、中産階級にとっては実際に購買する対象ではなく、すなわちそれらの売り手側にとっては顧客ではないこともあって、ファッションデザイナー及びファッションブランドの(芸術)作品発表の場、あるいは、中産階級の服の流行の発信源などと見られるようになる。
2000年代に入ると日本では、中産階級の若者向けの服(リアル・クローズ)を対象としたファッションショーが、有料の興行として成立し始めた。
オートクチュールとプレタポルテ
オートクチュールはパリとローマで開催される。プレタポルテは、ニューヨーク、ロンドン、ミラノ、パリの順で続けて開催され、これらは「世界四大コレクション」とも呼ばれている。
オートクチュールとプレタポルテを購買出来る層にとっては、そのファッションショーは展示即売会と同じである。そのため、実際に購買出来るであろう世界的なセレブリティや、各界の著名人などが多く招待される。他方、中産階級から見ると、ファッションデザイナー及びファッションブランドが、自らの服飾作品を発表するイベントである。その情報を伝え、流行創出に関係する各国のファッションジャーナリストやフォトグラファーなどがマスメディアとして招待される。
近年では、日本でも「ジャパン ファッション ウィーク(JFW in Tokyo)」が開催されており、特に日本人デザイナー、ブランドを意識したコレクションが開催されている。2011年 S/Sで13回目となるが、この回からは冠スポンサーに「メルセデス ベンツ」を迎え、「Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO」とし、新たなスタートを切る。
これらのショーが一段落すると、今度は、春夏物の場合は夏まで、秋冬物の場合は冬までの数ヶ月間に、世界各国において、ファッションブランド、デパート、ブティックなどが主宰して、上顧客やバイヤー向けのファッションショーが幾度となく開催される。開催場所はホテルや専用ミュージアムが見られる。開催形式は、モデルのウォーキングがある場合にもステージ上ではなくフロア上の場合もあり、モデルのウォーキングは無しで着て見せるだけの展示会形式で執り行われる場合もある。
リアル・クローズ
近年の日本では、リアル・クローズと呼ばれる中産階級の若者向けの服を対象としたファッションショーが成立している。買い手側にとっては、憧れのファッションモデルが見られるイベントであり、売り手側にとっては、消費の低迷や少子化によるパイの減少の打開策としての囲い込みの面がある。
複数のブランドが参加する大規模なものは、公演時間が昼から夜まで6時間以上かかるのが一般的で、プロのファッションモデルの他に、読者モデルや一般参加者もモデルとしてステージに上がれるオーディションが存在し、参加型のファッションショーとなっている。また、流行のポピュラー音楽のアーティストのライブが加わることが通例で、興行の面も強い。
一般的には民間の企業・団体が主催して屋内施設において観覧有料で開催することが多いが、仙台コレクションでは経済産業省の後援により[1]観覧無料とし、歩行者専用道路で開催することで都市イベント化させている。また、東京ガールズコレクション (TGC) およびTGCから派生した渋谷ガールズコレクションでは、日本のリアル・クローズを海外に情報発信する目的で外務省や国土交通省などが後援し、福岡アジアコレクションでは、地場産業振興とアジアへの情報発信を目的に産学官連携の「福岡アジアファッション拠点推進会議[2]」が組織され、同コレクションを主催している[3]。
この手のショーの場合、観客席の後ろ側や出品者の実店舗などでモデルが着た服の展示即売が行われ、携帯電話やインターネットのウェブサイトでも販売する例も見られる。また、コレクションが終わった後の深夜に、場所を替えるなどして「Official After Party」などと称した公式クラブイベントが付随して開催される例も見られる。
名称 | 略称 |
S/S |
A/W |
会場 | 観客数 (人) |
開始年 |
AP |
---|---|---|---|---|---|---|---|
札幌コレクション[4] | サツコレ | ○ | - | きたえーる | 7,400 | 2007年 | ○ |
仙台コレクション | 仙コレ | - | ○ | 一番町アーケード | 55,000 | 2008年 | ○ |
日本カワイイ博 IN NIIGATA[5] | JKE | ○ | - | 新潟市産業振興センター | 9,047 | 2012年 | - |
東京ガールズコレクション | TGC | ○ | ○ | 横浜アリーナ(S/S) さいたまスーパーアリーナ(A/W) |
25,500 | 2005年 | ○ |
ガールズアワード | GA | ○ | ○ | 国立代々木第一体育館 | 20,000 | 2009年 | - |
東京ランウェイ | ○ | ○ | 国立代々木第一体育館 | 4,752 | 2005年 | - | |
渋谷ガールズコレクション | SGC | 国立代々木第一体育館 | 19,800 | 2006年 | - | ||
原宿スタイルコレクション[6] | ○ | ○ | 有明コロシアム | 8,600 | 2009年 | - | |
ナゴヤコレクション[7] | 栄の複数会場[8] | 2006年[9] | ○ | ||||
大阪インポートコレクション[10] | OIC | ザ・リッツ・カールトン大阪 | 3,800 | 2007年[11] | ○ | ||
関西コレクション | 関コレ | ○ | ○ | 京セラドーム大阪 | 26,000 | 2011年 | - |
神戸コレクション | 神コレ | ○ | ○ | ワールド記念ホール | 16,692 | 2002年 | ○ |
福岡アジアコレクション[12] | FACo | ○ | ○ | 福岡国際センター(S/S) Zepp Fukuoka(A/W) |
7,115 | 2009年 | - |
総曲輪コレクション | 総コレ | ○ | ○ | (富山)グランドプラザ | 2,200 | 2013年 | ○ |
- ※「S/S」は春夏コレクション、「A/W」は秋冬コレクション。定期的に開催している場合は「○」、不定期開催の場合は空欄、開催していない場合は「-」とした。
- ※仙台コレクションは、アーケード(歩行者専用道路)で観覧無料で開催されるため、屋内で入場有料で開催される他のファッションショーとは観客数の算出方法が異なる。
- ※AP:アフターパーティ。一般入場可のものを「○」、一般入場不可あるいは実施していないものは「-」とした。
ファッションショーが一部行われる、ライブやDJプレイを中心としたクラブイベントも行われている。この場合、ライブハウスやホテルのコンベンションルームなどを使用して、飲酒も可能なパーティ形式で行われる。場合によっては、深夜に始まり、夜通し行われる例もある。以下に主な例を列挙する。
- 渋谷コレクション(渋コレ):渋谷や六本木のライブハウスで開催。1000人規模の集客。2006年~
- SWEETsociety:ハイアットリージェンシー大阪と新木場ageHaで開催。2007年~
- 福岡ラブ&コレクション(ラブコレ)[13]:2008年には福岡Yahoo!JAPANドームで開催し、20,000人を集めたとされる[14]が、2009年および2010年にはソラリア西鉄ホテルでの開催となり規模も2,000人程度の集客に縮小された。それ以降の開催は現在まで行われていない。
- 沖縄×渋谷エッジコレクション (ecolle) [15]:沖縄市のライブハウスで開催。環境省協力。2009年~