仮乗降場

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ファイル:朱文別駅全景.jpg
仮乗降場から施設はそのままに駅に昇格した留萌本線朱文別駅(2004年6月23日)
ファイル:JR北海道宗谷本線糠南駅.jpg
写真中央の白い小屋はヨドコウの物置を改造した新・待合室。写真右の半壊した木造の小屋は旧・待合室(糠南駅、1998年7月5日)
ファイル:急行サロベツ(札幌行,JR宗谷本線糠南駅).jpg
プラットホーム長は非常に短い(糠南駅を通過中の3輌編成の急行サロベツ、1998年7月5日)
ファイル:JR宗谷本線上雄信内駅.jpg
保守が十分でない上雄信内駅のプラットホーム(1998年7月5日)

仮乗降場(かりじょうこうじょう)とは、日本国有鉄道(国鉄)における停車場の形態のひとつ。一般の鉄道駅が国鉄本社の認可に基づき設置されているのに対し、この仮乗降場は地方の管理局の判断のみで設けられた、まさしく仮の乗降場であるという特徴を持っている。1969年10月1日臨時乗降場に統一されるまで本社設定の認可に基づく仮乗降場も存在した。

概要

仮乗降場は、駅を設けるほどではない場所で、利用者の利便性を高めるために、仮に設置されたものである。駅を設けるのには多額の資金や、各種の許認可等煩雑な手続き等が必要なのに対し、仮乗降場は低資金で容易に設けることができた。

そのほとんどが北海道で設置されており、その他の地域には数えるほどしか存在していなかった。

仮乗降場は旅客が対象で、過去には貨物のみを扱う信号場があったが、これは「仮乗降場」とは呼ばれなかった。

北海道での設置が多かった理由

北海道では人口密度が低く、本格的に鉄道駅を設置できる発達した集落が少ない。このため、駅間距離が比較的長く、居住地と駅の距離も遠くなりがちであった。

このため、通学客や高齢者等の公共交通手段の必要な利用者にとっては鉄道へのアクセスに難が生じ、この改善の必要性があった。また、冬季に道路交通が遮断された場合における公共交通手段確保の見地からも、鉄道アクセスの向上が求められた。こうした、正式の駅を設置するほどの客は見込めないが、しかし無視できない需要があった背景から、道内では容易に作れる仮乗降場設置が進んだのである。

また、かつては信号場に勤務する職員が信号場併設の官舎に家族と一緒に居住する場合があった。北海道では鉄道以外に交通手段のない人里離れた場所に信号場が設置されている場合があり、官舎に居住する職員の家族が通学や買い物をするための乗降用として、信号場に併設する形で仮乗降場が設けられた例もある(例:古瀬駅)。

設置基準の差異

仮乗降場の設置基準は、道内の各鉄道管理局によりばらつきがあり、旭川鉄道管理局(現: JR北海道旭川支社[1]が設けた仮乗降場の数は、他の管理局管轄の路線に比して格段に多かった。

一方、釧路鉄道管理局(現: 同社釧路支社)管内では、ほぼ同じ目的で設置される仮乗降場と臨時乗降場が混在していて、臨時乗降場は人口増加で国鉄末期に開設されたものが多かった。例えば、帯広駅に近い根室本線稲士別駅は仮乗降場、柏林台駅は臨時乗降場である(いずれも国鉄分割民営化と同時に旅客駅に昇格)。

構造・設備

仮乗降場の構造は元々「仮」で設置されたこともあって、その構造設備は非常に簡略であった。標準的なものは、単行列車(1両編成の列車)がようやく停車できるような板張りホームと粗末な標柱、それに数人が入れるかどうかの待合室があるかどうかというものである。これらはあくまで標準的なものであって、中には「朝礼台」と呼ばれた1両分にも満たないホームや、バスの廃車体を待合室代わりにした(かつての石北本線生野駅など)ようなケースや、そもそも待合室さえない場合もあった。どちらかといえば駅よりもバス停に近いといえる。また、正規の鉄道駅でも国鉄時代の予讃本線(当時)香西駅讃岐府中駅八十場駅讃岐塩屋駅のように仮乗降場なみの構造設備しかないケースもあった。

中には、正規の鉄道駅として開設され一定の構造設備を持ちながら、乗降客が少ない等の理由で「仮乗降場」に格下げされたもの(列車交換のための信号場に格下げされたが、客の乗降を仮乗降場の扱いで継続した例もある。例えば宗谷本線神路信号場、石北本線上越信号場など)や、前述のように併設して官舎が存在するなどの事情で、信号場が仮乗降場の扱いで客扱いを開始したものもある(現在は駅に格上げされた、函館本線仁山駅根室本線古瀬駅など)。逆に、仮乗降場並みの設備のまま正規の駅に昇格した箇所もあった(名寄本線北興駅1959年昇格など)。

その他

仮乗降場は、駅名標の隣駅表示に記載されないことが多く、全国版の時刻表でも同様だった(後述)。そのため、日常的な利用者以外にとっては突然現れる謎の駅というべき存在だった。このような事情から、その実態がよく分からない仮乗降場もいくつか存在する(胆振線尾路遠仮乗降場など)。

仮乗降場のうち利用者の多いものは順次一般の鉄道駅に格上げされていったが、国鉄の分割民営化まで残っていたものは一斉に民営化と同時に鉄道駅に格上げされることとなった。これについては後述する

その扱い

運賃計算上の扱い

仮乗降場はあくまで地方鉄道管理局の判断により設けられたものであり、国鉄当局の設置した「駅」ではない。このため運賃計算上必要な「営業キロ」が設定されておらず、運賃は仮乗降場で降りる場合だと次の鉄道駅まで、乗降所から乗る場合だとその手前の鉄道駅からの営業キロでそれぞれ計算されていた。

例外として、小松島線の終点に位置した小松島港仮乗降場は、手前の小松島駅と同一(駅構内)とみなされていた。また士幌線電力所前仮乗降場は、少し離れて位置する黒石平駅の代替として設置されたことから、黒石平駅と同一とみなされていた(詳細は電力所前仮乗降場の項を参照)。

乗車券の発売

現在のようにワンマン運転が普及していなかった頃、仮乗降場から乗車した場合は車内で車掌から乗車券を購入することが原則であった。しかしながら乗降客の多い一部の仮乗降場では近隣の商店や個人に乗車券の発売が委託されていた。このような場合、券面に表示される発駅の駅名は仮乗降場の名前ではなく、上記の運賃計算上の扱いで運賃を計算する駅の駅名が表記されることになるが、ごく稀に仮乗降場の名前が表記された乗車券が発売された例があった(羽幌線番屋ノ沢仮乗降場相生線旭通仮乗降場など)。

時刻表上での扱い

日本交通公社(現: ジェイティービー)発行の国鉄監修の時刻表や、その他弘済出版社(現: 交通新聞社)などが発行していた全国版の時刻表では、仮乗降場は一部を除いて掲載されていなかった。北海道地域のみを掲載した「北海道時刻表」(日本交通公社)・「道内時刻表」(弘済出版社)などには多くが載っていたものの、「北海道時刻表」や「道内時刻表」に表記されている名称と実際に駅名標に表記されている名称に違いがあったり(湧網線堺橋仮乗降場名寄本線富丘駅など)、これらの北海道版時刻表にさえ載っていなかったりしたものもある(士幌線新士幌仮乗降場白糠線共栄仮乗降場など)。

駅名標での扱い

仮乗降場は駅名標における隣駅の表示では表記されないことが通常であった。この原則は仮乗降場の駅名標でも適用され、隣り合う仮乗降場同士で互いが表記されないといった奇妙なケースもあった。なお、会津線の舟子仮乗降場(現在の会津鉄道大川ダム公園駅)のように括弧書きで小さく表記された例外もあった。

国鉄の分割民営化と仮乗降場

国鉄分割民営化によるJR発足当日(1987年4月1日)付で、名寄本線など後に廃止された特定地方交通線も含めほとんどの仮乗降場が正式な駅に格上げされた。運賃計算上の扱いは、しばらくは国鉄時代と同様だったが、やがて営業キロも設定された。一方、季節営業をしていた仮乗降場を中心に駅ではなく臨時駅に移行されたケースもある(深名線政和温泉駅など)。ちなみに、北海道以外で数少ない元仮乗降場の一つ八ツ森駅2002年を最後に営業休止し、2014年3月15日廃止)は臨時駅であったが、駅名標では最後まで「八ツ森仮乗降場」と称していた。

しかし中には、幌内線栄町駅のようにその後路線自体が廃止されたため、駅になってから僅か数ヶ月 - 数年で廃止されたものもあった(これらの駅の多くは、営業キロを設定されないまま廃止された)。民営化後に廃止された仮乗降場は、正式の駅として記録され、全国版の時刻表にも掲載されたが、民営化直前に仮乗降場のまま廃止されたところも多い。

また、のちの北海道ちほく高原鉄道ふるさと銀河線大森駅笹森駅は転換と同時に営業キロが設定されていて、JR時代は営業キロの設定がなかった。

また沿線の過疎化が進んで乗降客が激減し、いわゆる「秘境駅」になってしまったものや、駅に昇格したものの廃止されてしまったものも多く存在する。仮乗降場は設備がきわめて簡素であったため、廃止後にその正確な位置を特定することすら難しくなったものも多い。

北海道で普通列車でも通過する駅には仮乗降場起源のものが多い。

脚注

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関連項目

外部リンク

  1. 管轄区域は、函館本線滝川駅以北・札沼線浦臼駅以北・留萌本線羽幌線深名線宗谷本線美幸線天北線名寄本線渚滑線興浜北線興浜南線富良野線石北本線池北線の一部・相生線であった。管轄区域の大半は現在はJR北海道旭川支社が管轄している。