ID3タグ

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テンプレート:Infobox file format ID3タグ(アイディースリータグ、ID3 tag)は、MP3ファイルの中に、アーティスト・作成年・曲名等の情報を書き込むための規格である。

概要

ID3タグはMP3ファイルに元々組み込まれていた仕様ではなく、1996年に公開された「Studio3」というソフトウェアに組み込まれたのが始まりである。以後、様々なバージョンの規格が作られた。

ID3を追加したり、書き換えたりするソフトウェアはいくつか存在する。代表的な物はWinamp、SuperTagEditorシリーズ、mp3infpMp3tag等。

バージョン

ID3はいくつかのバージョンが存在する。このうち、ID3v1はファイルの末尾に、ID3v2はファイルの先頭に書かれるため、同時に1つのファイルに含めることができる。

ID3v1

もっとも広く対応されている形式。サイズは128バイト固定で制限が厳しいため、多くの情報は記録できない。 文字列には日本語を使用することができるが、文字コードに関する定義がないため、プラットフォームをまたぐ際に互換性の面で問題が生じることがある。

ID3v1 形式
開始位置 長さ 説明
0 3 "TAG" の識別子3文字
3 30 曲名文字列。
33 30 アーティスト文字列。
63 30 アルバム文字列。
93 4 日付文字列。
97 30 コメント文字列。
127 1 ジャンル番号。

ID3v1.1

ID3v1.1 形式
開始位置 長さ 説明
0 3 "TAG" の識別子3文字
3 30 曲名文字列。
33 30 アーティスト文字列。
63 30 アルバム文字列。
93 4 日付文字列。
97 28 または 30 コメント文字列。
125 1 コメント文字列が 28 バイト以内の場合に 0 が格納される。
126 1 トラック番号。
127 1 ジャンル番号。

ジャンル番号一覧

'型 ID #
0 ブルース
1 Classic Rock
2 カントリー
3 ダンス
4 ディスコ
5 ファンク
6 グランジ
7 ヒップホップ
8 ジャズ
9 メタル
10 ニューエイジ
11 オールディーズ
12 その他
13 ポップ
14 R&B
15 ラップ
16 レゲエ
17 ロック
18 テクノ
19 Industrial
20 オルタナティブ
21 スカ
22 デスメタル
23 w:Pranks
24 サウンドトラック
25 Euro-Techno
26 環境
27 Trip-hop
28 ボーカル
29 Jazz+Funk
30 フュージョン
31 トランス
32 クラシカル
33 Instrumental
34 Acid
35 ハウス
36 ゲームミュージック
37 Sound Clip
38 ゴスペル
39 ノイズ
40 Alt. Rock
41 バス
42 ソウル
43 パンク
44 Space
45 Meditative
46 Instrumental pop
47 Instrumental rock
48 フォークソング
49 Gothic
50 Darkwave
51 Techno-Industrial
52 Electronic
53 Pop-Folk
54 Eurodance
55 Dream
56 サザン・ロック
57 喜劇
58 Cult
59 Gangsta
60 Top 40
61 Christian Rap
62 Pop/Funk
63 Jungle
64 Native American
65 Cabaret
66 ニューウェーブ
67 Psychedelic
68 Rave
69 Showtunes
70 Trailer
71 Lo-Fi
72 Tribal
73 Acid Punk
74 アシッドジャズ
75 ポルカ
76 Retro
77 w:MusicalMusical
78 Rock & Roll
79 ハードロック
80 フォーク
81 フォークロック
82 National Folk
83 スウィング
84 Fast Fusion
85 ビバップ
86 ラテン
87 Revival
88 Celtic
89 ブルーグラス
90 Avantgarde
91 Gothic Rock
92 プログレッシブ・ロック
93 Psychedelic Rock
94 Symphonic Rock
95 Slow Rock
96 Big Band
97 Chorus
98 Easy Listening
99 アコースティック
100 ユーモア
101 Speech
102 シャンソン
103 オペラ
104 Chamber Music
105 ソナタ
106 交響曲
107 Booty Bass
108 Primus
109 Porn Groove
110 Satire
111 Slow Jam
112 Club
113 タンゴ
114 Samba
115 Folklore
116 バラード
117 Power Ballad
118 Rhythmic Soul
119 Freestyle
120 Duet
121 パンク・ロック
122 Drum Solo
123 ア・カペラ
124 Euro-House
125 Dance Hall
126 Goa
127 ドラムンベース
128 Club-House
129 Hardcore
130 Terror
131 Indie
132 ブリットポップ
133 Negerpunk
134 Polsk Punk
135 Beat
136 Christian gangsta rap
137 ヘヴィメタル
138 ブラックメタル
139 クロスオーバー
140 Contemporary Christian
141 Christian Rock
142 Merengue
143 Salsa
144 スラッシュメタル
145 アニメ
146 JPop
147 Synthpop

ID3v2

ID3v1.1を拡張、改良した形式。ID3v1のネックだった字数制限がほぼ無くなり、Unicodeのサポートなど非常に便利になっている。しかし、タグを記録するときに増えるファイルサイズがID3v1より大きかったり、古いプレイヤーでは表示に対応していないものがある。

v1からの主な変更点

  • 項目別のサイズ制限は16MB、全体のタグサイズ制限は256MBになった
  • 記入できる項目の増加
  • Unicodeのサポート
  • 画像が含められる(ただし、対応しているプレイヤーは少ない)

バージョン番号

現在、ID3v2には「ID3v2.2」「ID3v2.3」「ID3v2.4」の3つがある。仕様書[1]によれば、例えば「ID3v2.3」というバージョン表記は、「ID3v2」という規格の「メジャーバージョン3」となる。決して「ID3」の「バージョン2.3」ではない。

前記仕様書によれば、メジャーバージョン間の下位互換性は保証されていない。そのため、例えば「ID3v2.3」をサポートするソフトウェアは「ID3v2.4」のタグ情報は読み込めない。この場合、サポートするメジャーバージョンより大きなバージョンのタグを読み込もうとする場合は、単純にタグ全体を読み飛ばすべきと記述されている。

各バージョン間の違いは、「ID3v2.2」から「ID3v2.3」に変更されたとき、フレームIDが3桁から4桁に増えた。このため、メジャーバージョン2と3ではフレームIDに互換性がなくなった。「ID3v2.3」から「ID3v2.4」に変更されたとき、メジャーバージョン4からは文字コードとしてUTF-8のサポートが追加された(これ以前のユニコード対応はUTF-16のみ)。

ID3タグを制定している組織「ID3.org」によれば、現在最も普及しているバージョンは「ID3v2.3」である。最新バージョンとなる「ID3v2.4」は、一部の改訂箇所に不同意があったり、ソフト・ハードウェア市場がなかなか対応を行おうとしないため、いまだ普及に至っていない、と説明されている[2]

仕様

ID3v2タグはファイルの先頭に配置され、大まかに分けて、ID3v2ヘッダ、拡張ヘッダ、フレーム(複数)、パディング領域の4領域から構成され、この順に並んでいる。以下に各領域ごとの詳細を示す。

ID3v2ヘッダ
開始位置 長さ 説明
0 3 "ID3" のマジックナンバー3文字
3 2 バージョン
5 1 フラグ
6 4 サイズ

計10バイト。サイズは各バイトの最上位ビットが無効であり、有効な値は28ビットとなる。

拡張ヘッダ
開始位置 長さ 説明
0 4 この拡張ヘッダのサイズ
4 2 拡張フラグ
6 4 パディング領域のサイズ
各フレーム
offset 長さ 記述
0 4 フレームID(種別1バイト+ネーム3バイト)
4 4 フレームサイズ
8 2 フラグ
10 可変長 フレームデータ

参考

  1. セクション3.1. ID3v2 header
  2. ID3.orgのWelcomeの節

外部リンク