1984年の日本シリーズ

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テンプレート:Infobox プロ野球日本シリーズ 1984年の日本シリーズ(1984ねんのにっぽんシリーズ、1984ねんのにほんシリーズ)は、1984年10月13日から10月22日まで行われたセ・リーグ優勝チームの広島東洋カープパ・リーグ優勝チームの阪急ブレーブスによる日本プロ野球日本選手権シリーズである。

戦評

上田利治監督率いる阪急ブレーブス古葉竹識監督率いる広島東洋カープの対決(1975年以来)となった1984年の日本シリーズは、広島が4勝3敗で勝利し、4年ぶり3度目の日本一を決めた。

広島はクリーンナップ(3番衣笠祥雄・4番山本浩二・5番長嶋清幸)が7ホーマー、17打点と打ちまくった。特に効果的な3本塁打を含め10打点を叩き出した長嶋がMVP。シリーズ男の山根和夫がシリーズの投手陣の軸になった。

阪急は、三冠王ブーマーが広島に徹底的に研究され、7試合でわずか6安打、打率.214、長打は二塁打が1本あるだけで本塁打ゼロ、打点もわずかに2という不振に終わった。第6戦のロングリリーフを含め好救援を重ねた山沖之彦が敢闘賞。山田久志は3試合投げ2試合完投したがシリーズワーストタイの3敗。力投は素晴らしくも打線の援護がなかった。上田監督は敗戦の弁で真っ先に山田の奮闘をねぎらった。

なお阪急ブレーブスにとってこれが最後の日本シリーズとなった。 広島カープもこの年の日本シリーズを最後に、日本一から遠ざかっている。

試合結果

第1戦

10月13日 広島 入場者28863人

阪急 0 0 1 1 0 0 0 0 0 2
広島 0 0 1 0 0 0 0 2 X 3

(急)●山田(1敗)-藤田
(広)山根、○小林(1勝)-達川
勝利打点 長嶋1
本塁打
(急)福原1号ソロ(3回山根)
(広)長嶋1号2ラン(8回山田)

[審判]セ福井(球)パ前川 セ平光 パ大野(塁)セ井上 パ藤本(外)

4回表、ヒットで出塁した小林晋哉が盗塁、達川光男の送球が小林に当たり、大きく逸れる間に小林が一気にホームインし、阪急が勝ち越し。阪急の先発、山田は巧みなコーナーワークで高橋山崎、長嶋、小早川と左の強打者が並ぶ広島打線を懸命に抑えたが、8回、先頭打者の山崎のゴロを弓岡敬二郎がエラー。衣笠三振の後、山本浩二が遊ゴロで併殺かと思われたが、併殺の中継に入った福原峰夫が一塁へ悪投。阪急の誇る内野陣に大事なところでミスが重なった。2死1塁から長嶋が外角球をレフトにはじき返した。フェンスによじ登り差し出した福本豊のグラブのわずか上を越えた打球は逆転2ラン本塁打となった。8回から登板した小林誠二は日本シリーズ史上初の両リーグ勝利投手となった。

この試合で山根、小林はブーマー・ウェルズに対し内角攻めを徹底。ブーマーはバットを3本折り、4打席すべて内野ゴロに倒れ、これをきっかけにナーバスになり、シリーズを通して不振に終わる結果につながった。

第2戦

10月14日 広島 入場者31289人

阪急 0 0 0 0 0 0 0 0 5 5
広島 1 0 1 0 0 0 0 0 0 2

(急)今井、○山沖(1勝)-藤田、中沢長村
(広)●北別府(1敗)、小林-達川
勝利打点 福原1
本塁打
(急)簑田1号ソロ(9回北別府)

[審判]パ藤本(球)セ井上 パ前川 セ平光(塁)パ五十嵐 セ岡田功(外)

広島は北別府、阪急は今井が先発。今井は立ち上がりコントロールが安定せず、1回長嶋に押し出し四球を与えて先制を許す。3回には衣笠2塁打のあと、山本浩の適時打で追加点。北別府は8回まで三塁も踏ませないピッチングで完封勝利目前だったが、9回簑田浩二がレフトに追撃の本塁打。松永浩美、小林晋が連打して代打の村上信一が同点タイムリー二塁打。更に福原の勝ち越し適時打、福本の2点タイムリーで一挙5点を挙げた。8回から今井をリリーフした山沖が勝利投手。

第3戦

10月16日 西宮 入場者19022人

広島 0 1 4 2 0 0 1 0 0 8
阪急 0 0 2 0 0 1 0 0 0 3

(広)○川口(1勝)-達川
(急)●佐藤義(1敗)、宮本、谷村、谷-藤田
勝利打点 山本浩1
本塁打
(広)山本浩1号ソロ(2回佐藤義)、長嶋2号満塁(3回佐藤)、高橋1号2ラン(4回宮本)、衣笠1号ソロ(7回谷村)

[審判]セ岡田功(球)パ五十嵐 セ井上 パ前川(塁)セ福井 パ大野(外)

舞台を阪急西宮球場に移しての第3戦は広島が川口、阪急が佐藤の先発。広島は2回、山本浩が先制アーチを叩き込む。3回には長嶋が日本シリーズ史上4本目となる満塁本塁打。4回達川がヒットで出塁、川口の送りバントで2塁に進んだところで佐藤はKO。代わった宮本四郎から高橋が2ラン本塁打。7回にも衣笠がとどめの一発をレフトスタンドに放ち、広島の一方的な試合となった。川口は3回投手の佐藤に2点タイムリーを許したり、6回には不振のブーマーに初打点を与えるなど苦しい投球だったが大量点に守られ完投勝利。

阪急は佐藤の予想外の早い降板で第4戦の先発を予定していた宮本を投入せざるを得なくなり、試合を落としただけでなくローテーションも厳しくなった。

第4戦

10月18日 西宮 入場者22162人

広島 1 0 0 0 0 1 0 0 1 3
阪急 0 0 0 0 0 0 2 0 0 2

(広)山根、小林、○大野(1勝)-達川、山中
(急)●山田(2敗)-藤田、中沢
勝利打点 山本浩2
本塁打
(広)衣笠2号ソロ(6回山田)
(急)松永1号2ラン(7回山根)

[審判]パ大野(球)セ福井 パ五十嵐 セ井上(塁)パ藤本 セ平光(外)

この年のシーズン中1度もなかった中3日先発を覚悟していた36歳の山田だが、雨で試合が順延、中4日で臨むことになった。広島の先発も中4日の山根で、第1戦と同じ顔合わせ。山田は1回山本浩のタイムリーヒット、6回には衣笠に本塁打を許したものの、この2点以外の失点を許さない粘りのピッチング。7回には内野安打、四球、野選で無死満塁のピンチを迎えるが、高橋、山崎を内野フライ、衣笠を三振に仕留め、ピンチを切り抜けた。このピッチングには敵将の古葉監督すらも「さすが山田」と唸ったという。阪急は1回の福本の盗塁失敗、5回の1死1、2塁のチャンスで無得点など拙攻を繰り返していたが、7回裏、松永が2ラン本塁打を放ち同点に追いつく。さらに8回には山田、福本の連続ヒット、弓岡の送りバントの後簑田が四球で1死満塁と攻め立てたが、ここでリリーフに立った大野の前にブーマー三振、松永投ゴロで無得点に終わった。9回、ヒットで出塁した高橋が盗塁を決める。山崎、衣笠を打ち取った山田だったが、159球目を山本浩にとらえられ、決勝タイムリー二塁打。山田の奮闘虚しく2敗目を喫し、広島が日本一に王手をかけた。

第5戦

10月19日 西宮 入場者14442人(日本シリーズ史上ワースト入場者数)

広島 0 1 0 0 0 1 0 0 0 2
阪急 0 1 0 1 1 0 1 2 X 6

(広)●北別府(2敗)、山本和、小林、大野-達川、山中
(急)○今井(1勝)、S山沖(1勝1S)-藤田
勝利打点 小林晋1
本塁打
(急)小林晋1号ソロ(4回北別府)

[審判]セ平光(球)パ藤本 セ福井 パ五十嵐(塁)セ岡田功 パ前川(外)

第4戦とは一転して阪急が本来の攻撃を見せて快勝。特に5回、7回は福本が出塁、送りバントで進め、犠牲フライで得点という阪急本来の得点パターンが出た。今井は7回2/3を投げ、23のアウトのうち11が内野ゴロと、本来の持ち味を発揮。西宮での胴上げを阻止した。 (西宮で開催された最後の日本シリーズ試合となった)

第6戦

10月21日 広島 入場者30442人

阪急 0 0 7 0 0 1 0 0 0 8
広島 2 1 0 0 0 0 0 0 0 3

(急)佐藤、宮本、○山沖(2勝1S)-藤田
(広)●川口(1勝1敗)、川端、北別府、新美、山本和-達川
勝利打点 福原2
本塁打
(急)福原2号満塁(3回川口)
(広)達川1号ソロ(2回佐藤)

[審判]パ前川(球)セ岡田功 パ藤本 セ福井(塁)パ大野 セ井上(外)

再び広島が舞台に。阪急は初回、ここまで大活躍していた福本がいきなり頭部死球を受け、退場。広島は1回裏、長嶋の適時打で2点先制、2回にも達川の本塁打で追加点を挙げ、日本一を引き寄せたかに見えた。しかし阪急は3回、2死無走者から安打、押し出し四球で同点に追いつき、さらに2死満塁で福原が初球をバックスクリーンに打ち込み、一挙7点を挙げた。第3戦の広島・長嶋に続くこのシリーズ2本目の満塁本塁打で、1シリーズに2本の満塁本塁打が出たのは日本シリーズ史上初。阪急は3回に早くもリリーフエースの山沖を投入、山沖が最後まで投げ抜き、広島の反撃を抑えた。シリーズは最終戦にもつれ込むことになる。

第7戦

10月22日 広島 入場者25720人

阪急 1 0 0 0 0 1 0 0 0 2
広島 0 0 1 0 0 1 3 2 X 7

(急)●山田(3敗)、今井、山沖-藤田
(広)○山根(1勝)-達川
勝利打点 山崎隆1
本塁打
(急)弓岡1号ソロ(1回山根)
(広)衣笠3号ソロ(3回山田)、長嶋3号ソロ(6回山田)
[審判]セ井上(球)パ大野 セ岡田功 パ藤本(塁)セ平光 パ五十嵐(外)

広島・山根、阪急・山田の3度目の顔合わせ。1回弓岡、3回衣笠と本塁打の応酬に始まり、6回簑田のタイムリーヒットで阪急が勝ち越せば、広島もその裏すぐ長嶋の本塁打で同点に追いつき、互角の展開が続いた。試合が動いたのは7回裏。先頭打者の山根が中前打で出塁。阪急はここで山田から今井にスイッチしたが、その今井が高橋のバント処理を誤りピンチを広げてしまう。続く山崎が勝ち越し2点タイムリー、さらに長内孝もタイムリーヒットを放ち、この回3点。8回にも高橋、山崎の連続タイムリーで2点を追加し、試合を決めた。山根は9回1死1、2塁のピンチも村上、石嶺和彦を連続遊撃ゴロに仕留め、完投勝利。敗戦投手は7回勝ち越しのランナーを許した山田。第4戦の162球完投からシーズン中も1度もない中3日で奮闘した36歳の山田だったが、力投も報われずシリーズタイ記録の3敗目を喫することとなった。

表彰選手

※なお、本来MVP受賞者にはトヨタ自動車協賛の乗用車が贈られるが、カープの資本関係上マツダ協賛のものが贈呈された。

テレビ・ラジオ中継

テレビ中継

  • 第1戦:10月13日(土)
ゲスト解説:田淵幸一西武、この年をもって引退し翌年からTBS解説者となる)
リポーター:川島宏治(RCC・広島サイド、共同インタビュアー)、城野昭毎日放送(MBS)・阪急サイド)
  • 第2戦:10月14日(日)
ベンチリポーター:脇田義信(HTV・広島サイド)、佐藤忠功讀賣テレビ(YTV)・阪急サイド)
試合開始が13時(JST)だった関係上『WAッ!熊が出た!!』は12:50まで放送。『スーパーJOCKEY』、『日曜スペシャル』、『日曜映画劇場』は休止となった。
  • 第3戦:10月16日(火)
副音声マーティ・キーナートによる英語実況。当時、ビジター側の系列局・テレビ新広島(TSS)は音声多重放送未実施のため視聴不可だった>
試合開始が13時(JST)だった関係上『森田一義アワー 笑っていいとも!』は12時55分で終了となり、後座番組『ライオンのいただきます』は休止となった(第4・5戦も同様)。
  • 第4戦:10月18日(木)
ブルペンリポーター:米田哲也(阪急サイド。翌年から阪神コーチ)、大崎三男(広島サイド) <副音声:マーティ・キーナートによる英語実況> 
  • 第5戦:10月19日(金)
  • 関西テレビ≪FNN系列≫ 実況:塩田利幸 解説:吉田義男(翌年から阪神監督) ゲスト解説:鈴木啓示、高木豊(横浜大洋)
ブルペンリポーター:米田哲也(阪急サイド)、大崎三男(広島サイド) <副音声:マーティ・キーナートによる英語実況> 
ベンチリポーター:馬場鉄志(KTV・阪急サイド)、神田康秋テレビ新広島(TSS)・広島サイド)
当時のクロスネット局と以下の系列外局(RABIBCYBSJRTRKC)でも同時ネット放送され、1回裏攻撃中にテロップが表示された。
  • 第6戦:10月21日(日)
実況:太田真一テレビ朝日) 解説:野村克也 ゲスト解説:高木豊、大石大二郎(近鉄)
ベンチリポーター:野崎賢治(UHT・広島サイド)、黒田昭夫朝日放送(ABC)・阪急サイド)
  • 第7戦:10月22日(月)
ベンチリポーター:川島宏治(RCC・広島サイド、共同インタビュアー)、城野昭(毎日放送・阪急サイド)

ラジオ中継

  • 第1戦:10月13日(土)
実況:深山計(RCC) 解説:大下剛史小林繁 リポーター:鈴木信宏(RCC)、和沙哲郎(ABC)
実況:枇杷阪明 解説:江本孟紀 ゲスト解説:山崎裕之(西武、2000本安打を達成し引退) リポーター:胡口和雄
  • 第2戦:10月14日(日)
実況:鈴木信宏(RCC) 解説:長谷川良平 ゲスト解説:田淵幸一 リポーター:川島宏治(RCC)、和沙哲郎(ABC)
  • 文化放送(NRN) 解説:豊田泰光 ゲスト解説:江夏豊
  • ニッポン放送 実況:胡口和雄 解説:西本幸雄 ゲスト解説:山崎裕之  リポーター:森中千香良
  • 第3戦:10月16日(火)
実況:城野昭(MBS) 解説:杉下茂 ゲスト解説:田淵幸一、梨田昌孝 リポーター:結城哲郎(MBS)、山本昭(RCC)
  • 第4戦:10月18日(木)
実況:三宅定雄(MBS) 解説:一枝修平 ゲスト解説:田淵幸一 リポーター:結城哲郎(MBS)、山本昭(RCC)
  • 第5戦:10月19日(金)
実況:井上光央(MBS) 解説:長池徳士 ゲスト解説:田淵幸一、梨田昌孝
  • 文化放送 解説:別所毅彦 ゲスト解説:江夏豊
  • ニッポン放送・朝日放送テンプレート:Smaller(NRN・朝日放送製作)
実況:武周雄(ABC) 解説:小山正明 ゲスト解説:岡本伊三美 リポーター:和沙哲郎(ABC)、深山計(RCC)
  • ラジオ日本 解説:有本義明
  • 第6戦:10月21日(日)
実況:上野隆紘(RCC) 解説:大石清 ゲスト解説:田淵幸一 リポーター:深山計(RCC)、因田宏紀(ABC)
  • 文化放送 解説:豊田泰光 ゲスト解説:江夏豊
  • ニッポン放送 実況:深澤弘 解説:土橋正幸 ゲスト解説:関根潤三(大洋監督を辞任)、稲尾和久 リポーター:森中千香良
  • 第7戦:10月22日(月)
実況:山本昭(RCC) 解説:大石清、張本勲 リポーター:鈴木信宏(RCC)、因田宏紀(ABC)
  • 文化放送 解説:別所毅彦 ゲスト解説:江夏豊
  • ニッポン放送 実況:胡口和雄 解説:西本幸雄 ゲスト解説:関根潤三 リポーター:深澤弘
  • ラジオ日本 解説:中村稔

関連項目

外部リンク

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