泉ヶ岳

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テンプレート:Infobox 山 泉ヶ岳(いずみがたけ)は、宮城県仙台市泉区の北西部に位置し、「宮城県立自然公園船形連峰」内にある標高1175m三角点は1,172.18m、[[[:テンプレート:座標URL]]38_24_41.7562_N_140_42_34.9199_E_region:JP&title=%E4%BA%8C%E7%AD%89%E4%B8%89%E8%A7%92%E7%82%B9%E3%80%8C%E6%B3%89%E3%82%B1%E5%B2%B3%E3%80%8D%EF%BC%88%E6%A8%99%E9%AB%981172.18m%EF%BC%89 地図])のである。七北田川の源流ともなっている。周辺の住居表示は泉区福岡岳山である。

概要

テンプレート:座標一覧

ファイル:Top of Izumigatake.JPG
泉ヶ岳の山頂
市民・県民の山として親しまれている泉ヶ岳には、しばしば課外授業で登頂した小学生の姿が見られる。
山頂は森林限界よりも低いため、周囲には低木があり360°の絶景を楽しむことはできないが、天候の良い日には木々の向こう側に仙台湾を望める時もある。

泉ヶ岳は、奥羽山脈船形山山系の中で最後に形成された火山である[1]。造山時期は第四紀と考えられ、噴出した安山岩により芳の平([[[:テンプレート:座標URL]]38_23_8.1_N_140_43_20_E_region:JP&title=%E8%8A%B3%E3%81%AE%E5%B9%B3 地図])から山頂まで大きく3つの段状の地形を呈している[1]。兎平([[[:テンプレート:座標URL]]38_23_57_N_140_42_57.8_E_region:JP&title=%E5%85%8E%E5%B9%B3 地図])付近は玄武岩質の溶岩により形成された[1]

泉ヶ岳は、周囲の北泉ヶ岳や蘭山、高倉山、黒鼻山、これらの裾野も含めた通称の地域名ともなっている。特に、泉ヶ岳山頂から南東方向で、北は蘭山から南は七北田ダム辺りまでの七北田川流域の裾野を含めた地域が「泉ヶ岳」と呼ばれる。

豊富な湧水)が、池や川をつくりだすことが名称の由来とされている。山の周囲には七北田ダムや大倉ダムなど複数のダムがあり、泉ヶ岳は仙台平野を潤す水源の一つとなっている。泉ヶ岳を有した歴代の自治体は、この山に因んで名称が付けられてきた(泉嶽村⇒泉町⇒泉市⇒仙台市泉区)。若者の間では「ガタケ」と呼ばれ、地元では「岳山(だけやま)」との愛称がある。

林道のみの整備に留まる周囲の山に対し、泉ヶ岳には舗装された道路が接続しているため、仙台市都心部から約1時間のこの地には、登山やスキーなどのレジャーアウトドア目的で市民が訪れる機会が多い。その一方、舗装道路の系が単純で、支路が林道のままになっているため、舗装道路沿い以外は多くの自然が残る。適度な施設や道路を設けながらも豊富な自然が残され、かつ、地元民や来訪者の意識により美しく残されているこの山は、仙台市民はもとより宮城県民の誇りともなっている。

泉ヶ岳山頂部の約115haはもともと国有地だったが、1912年(明治45年)テンプレート:年代要検証に国から民間に払い下げられて以降、何度も所有権が移転され続けた。1991年(平成3年)、地元企業の双葉総合開発が山頂部を買収した。買収金額は3億と伝えられている。このとき、ある市民団体は、同社から市が山頂部を買収して市有財産とするよう要求し、署名活動を展開した。その結果、短期間で4万名以上から署名が集まった。同社は「他県業者の乱開発から泉ヶ岳を守るために買収した」とし、希望するならば仙台市に売却することも可能としていたが、市は財政上の理由から買収しなかった。その後、双葉総合開発は合併して環境建設となり、山頂部を保有し続けていたが、2004年(平成16年)に経営破綻した。その後、2006年(平成18年)5月までに仙台市が山頂部を300万で買収し、名実ともに市民共有の財産となった。

生態系

植物

春先に、ニリンソウが大変豊富に咲くが、そのめずらしい変異種であるミドリニリンソウがある特定の場所でのみ群生するほか、大変まれに見られる白いカタクリも咲くことがある。また、ミズバショウの群生地がいくつかあり、芳の平にある群生地にはミズバショウの他にウメバチソウサワギキョウなどの湿地性植物も咲く。しかしこの湿地面積の減少が進み、急速にその個体数を減らしている。この湿地にはかつてトキソウサギソウが群生していたが、環境の変化と盗掘により消滅した過去があるため、緊急の保護を訴える者もいる。なお、当地のミズバショウの見ごろは、概ね4月中旬から下旬ごろである。

かつては泉ケ岳ではイカリソウシラネアオイカタクリホトトギスラショウモンカズラキキョウシオガマギクナデシコイワウチワギンリョウソウベニバナイチヤクソウササバギンランコケイランが普通に見られたが、近年急速にその姿を消し始め、かなり探し回らなければ見ることができなくなった。

動物

哺乳類・鳥類

哺乳類はニホンカモシカニホンヤマネなど天然記念物のほか、ホンドタヌキホンドギツネニホンアナグマニホンツキノワグマホンドテンハクビシントウホクノウサギヒミズヒメネズミなどの多種の哺乳類が生息している。

ツキノワグマの出没や事故が全国的に問題となった2004年(平成16年)、2006年(平成18年)においては、ツキノワグマが関係する事故や騒ぎは1件も起きなかったが、1999年(平成11年)5月にツキノワグマが関係する事故が発生し、ケガ人が出ている。一方で、人(自動車)による動物への加害事故がしばしば発生している。

鳥類は、オオルリミソサザイカワガラスシジュウカラヤマガラヒガラエナガコゲラアオゲラハシボソガラスノスリトビチョウゲンボウヨタカオオジシギカケスコルリアカゲラなど、留鳥としている種類や漂鳥として繁殖の場としている種類も多く集まる。

爬虫類・両生類

爬虫類では、シマヘビアオダイショウのほか、ヤマカガシニホンマムシも棲息しているが、これら毒蛇による事故はほとんど確認されていない。両生類では、モリアオガエルアカハライモリハコネサンショウウオトウホクサンショウウオヤマアカガエルなどが棲息している。

「芳の平」の林道にできる水たまりには、かつてモリアオガエルの産卵地があった[2]が、2006年にマウンテンバイクコースとして林道を大規模に整備した際にこの水たまりを埋め立てたため、この場所から完全に姿を消した。なお、このモリアオガエルについては、泉ケ岳北側に位置する「桑沼」(大和町[[[:テンプレート:座標URL]]38_26_11.8_N_140_41_51.1_E_region:JP&title=%E6%A1%91%E6%B2%BC 地図])もかつては一大産卵地であったが、周辺環境の変化、特に人為的に放流されたニジマスブラックバスなどが繁殖した影響から、今では見かけることは無く、かつて泉ヶ岳のどの水場でも当たり前に観察できたこのめずらしいカエルも、今、泉ケ岳から姿を消そうとしている。

昆虫類

昆虫類は、オニヤンマオオイトトンボオオルリボシヤンマミヤマクワガタヒョウモンチョウエゾハルゼミヒメギフチョウエゾアカヤマアリなど多く生息しており、夏には、数千キロも旅をする蝶であるアサギマダラも訪れる。

山腹より上には農場やゴルフ場が無く、農薬などが散布されていないが、これがハエアブなどの天敵をバランス良く保っているために快適な自然空間を形成している。その反面、キイロスズメバチなどによる登山者への被害が生じている。また最近では、山腹部を中心に蚊の繁殖が顕著に見られるようになった。

かつては泉ケ岳の裾野の「芳の平」のミズバショウ群生地(仙台市指定天然記念物)にはハッチョウトンボの生息が確認されていた[2]が、近年になってその姿を消した。これは生息地である湿地への水量が減少したことと、この水量が減少したことで湿地面積も減少し周辺の草木が入り込み、それに伴って天敵となる昆虫や競合する昆虫も多く入り込んで来たためと考えられる。

魚類

魚類では、七北田川の源流の1つであるヒザ川やヤシキ川などにイワナが多く生息していたが、著しく数を減少している。また、非常にめずらしいテツギョが繁殖していた沼があったが、2005年(平成17年)ごろから姿を見ることができなくなった。釣り人の乱獲や心無い人による不法乱獲が原因と考えられている。

開発と自然環境への影響

泉ヶ岳では、産業廃棄物残土処分場がいくつも開発され、また、自然林の伐採や山肌を削る工事も行われている。別荘地や飲食店開業のための開発も増加しつつあり、それらのための木々の伐採や外来種である園芸用草花の大量植栽も増えている。さらに昆虫や植物の採取も多く、散策客増加に伴い自動車による排気ガスの増加と動物への交通事故も多く発生するようになり、長年地元民に守られてきた自然がここに来て急速に失われつつある危機が生じている。

2006年(平成18年)、泉ヶ岳スキー場リフトの終着点付近の「兎平」で、行政機関による大規模な伐採が行われたが、これは、許認可権を持つ宮城県への届出がない「無届伐採」であったのと同時に、地元関係団体への連絡もなかった。伐採理由は「熊が出るから」というもので、自然保護の観点からも疑問を持たれた。伐採場所は、ワレモコウオミナエシオトコエシナデシコシオガマギクハギススキツリガネニンジンなどの宝庫であったために、今後の回復状況が注目されている。

市民による山岳利用

ファイル:Suijinhi.JPG
水神碑
「水神コース」全行程の中間付近にある。この碑を過ぎると、それまで比較的ゆるやかだった斜面は傾斜を増してくる。
水神碑より少し下がったところに北泉ヶ岳へ向かう分岐点があるため、付近の沢で休憩を取る登山者がよく見られる。

登山・ハイキング

泉ヶ岳では日帰り登山ハイキングが盛んであり、初心者からベテランまで楽しめる山である。登山家の槙有恒も学生時代にこの山を愛し、北泉ヶ岳への縦走の思い出を著書に記している。春のや秋の紅葉の見物、山菜採りのために入山する者も多い。

登山道は、七北田川支流のヒザ川畔を遡り水神碑を経由する「水神コース」、最も眺望がよい「滑降コース」、兎平までリフト利用可能な「かもしかコース」、古来からの自然度の高いコース「表コース」、水神コースから分岐して、北泉ヶ岳との鞍部に回り込んで登る「北泉コース」の5つがある。

スキー・スノーボード

泉ヶ岳の南東斜面にある泉ヶ岳スキー場[[[:テンプレート:座標URL]]38_23_26.9_N_140_43_15_E_region:JP&title=%E6%B3%89%E3%83%B6%E5%B2%B3%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC%E5%A0%B4 地図])と、北東斜面にあるスプリングバレー泉高原スキー場[[[:テンプレート:座標URL]]38_25_8.2_N_140_43_22.6_E_region:JP&title=%E3%82%B9%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%90%E3%83%AC%E3%83%BC%E6%B3%89%E9%AB%98%E5%8E%9F%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC%E5%A0%B4 地図])の二つのスキー場がある。仙台市街地から1時間程度で到達できる、市街地直近のスキー場であり、平日の勤め帰りに訪れるスキーヤーもいる。スノーボード解禁となったのが比較的早く、ハーフパイプも設置されていたため、東北地方各地からスノーボーダーが集まった時期もあった。ナイタースキーの照明は市街地からも見ることが出来、2つのスキー場の明かりが山の形に沿って「ハ」の字に見えるのが1つの名物ともなっている。逆に、泉ヶ岳でナイタースキーをしていると、仙台市街地の夜景に飛び込むような錯覚を得る。

除雪融雪、道路照明などの整備が行き届いているが、ノーマルタイヤで訪れ渋滞の原因となる者も出るため、かつては地元有志が「泉ヶ岳をなめんなよ!」という看板を立てて注意をうながしていた。また、スプリングバレー泉高原スキー場の駐車場からは、仙台平野とその先の太平洋を一望でき、夜間には仙台市街地を見下ろす夜景スポットにもなっている。市街地の光害の影響がないため、流星群の出現時期などには深夜でも人が訪れる。

2009年(平成21年)7月には泉ヶ岳スキー場内にウォータージャンプ施設が開業し,夏季においてもスキー・スノーボードが可能となった。

その他

積雪期以外に、泉ヶ岳スキー場でパラグライダーが行われている。パラグライダースクールもある。リフトで兎平まで上がり、ゲレンデを使って離着陸を行う。湿った暖かい南東風「イナサ」が吹くと、山肌を上って上昇気流が生まれる。北東風の冷たい「やませ」(コチ)が吹いた場合は不適。積雪期は、山から吹き降ろす西風(ナライ)が主となるので上昇し辛い。

また、例年5月に開催される「仙台泉ヶ岳アウトドアフェスティバル」において、マウンテンバイクの「JCFジャパンシリーズ[3]クロスカントリーJ1第3戦が同時開催される。

山中にある施設など

山腹に泉ヶ岳ロッジ([[[:テンプレート:座標URL]]38_23_26.2_N_140_43_14.4_E_region:JP&title=%E6%B3%89%E3%83%B6%E5%B2%B3%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%B8 地図])、仙台市泉岳少年自然の家([[[:テンプレート:座標URL]]38_23_30.4_N_140_42_47.8_E_region:JP&title=%E4%BB%99%E5%8F%B0%E5%B8%82%E6%B3%89%E5%B2%B3%E5%B0%91%E5%B9%B4%E8%87%AA%E7%84%B6%E3%81%AE%E5%AE%B6%EF%BC%88%E6%A8%99%E9%AB%98583m%EF%BC%89 地図])があり、地元の学童などが野外学習で訪れる機会も多い。同様の施設として宮城県泉が岳自然の家、仙台市泉ケ岳野外活動センターもあったが、2008年に廃止された。

また、山麓には「やまぼうし」、「スパ泉ヶ岳」という二つの温泉施設がある。

沿革

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  • 1889年(明治22年)4月1日 - 町村制施行により宮城郡泉嶽村(いずみだけむら)が成立し、泉ヶ岳は泉嶽村内になる。
  • 1897年(明治30年)9月7日 - 泉嶽村が根白石村(ねのしろいしむら)に改称し、泉ヶ岳は根白石村内になる。
  • 1932年(昭和7年)頃 - 萱刈場油堂に地元のスキーヤーたちが「おきせ小屋」設置[4]
  • 1950年(昭和25年)12月 - 焼失した「おきせ小屋」を再建し「泉山荘」と命名[4]
  • 1951年(昭和26年)10月 - 「泉山荘」完成を機に「泉ヒュッテ」と改称[4]
  • 1955年(昭和30年)4月10日 - 根白石村と七北田村の合併して泉村となり、泉ヶ岳は泉村内になる。
  • 1957年(昭和32年)8月1日 - 泉村が町制施行して泉町となり、泉ヶ岳は泉町内になる。
  • 1960年(昭和35年) - 第1回泉ヶ岳山開き。土日のみ泉ヒュッテまで定期バス運行。泉ヒュッテおよびリフト設備に電気導入[4]
ファイル:Aerial photo of Izumi-ga-take 01, 1976.jpg
1976年度(昭和51年度)に撮影された泉ヶ岳・芳の平周辺の空中写真。国土交通省 国土画像情報(カラー空中写真)を基に作成
写真中央に「芳の平りんご園」(現在は閉園)、上に「泉ヶ岳スキー場」とその左に「仙台市泉岳少年自然の家」が見える。

アクセス

ファイル:Mt.Izumigatake (on R457).JPG
国道457号・根白石バイパスから見た泉ヶ岳

宮城県道35号泉塩釜線(泉ヶ岳通り)を西走すると、道なりに国道457号根白石バイパスとなる。宮城県道223号泉ヶ岳公園線を左折し、道なりに行くとスキー場などがある山腹に行き着く。各スキー場には数百台が駐車できる駐車場がある。スキー場営業期間中は、土日祝日・年末年始のみ除雪協力金名目で利用には1回500円が必要。それ以外の期間は無料。

公共交通機関では、仙台市地下鉄南北線泉中央駅から泉岳少年自然の家まで、また冬季のみスプリングバレー泉高原スキー場まで、仙台市営バスが運行される。

脚注

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出典

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参考文献

  • 泉市史(宮城県泉市 - 当時)

関連項目

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外部リンク

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  1. 1.0 1.1 1.2 泉岳少年自然の家 改築基本構想・計画(仙台市)
  2. 2.0 2.1 「泉ケ岳・芳の平学術調査報告書 芳の平学術調査委員会編」(1988年(昭和63年)3月 仙台市)
  3. JCFジャパンシリーズ
  4. 4.00 4.01 4.02 4.03 4.04 4.05 4.06 4.07 4.08 4.09 4.10 第4回 泉ケ岳(仙台市泉区「泉なつかし写真館」)
  5. みちのくYOSAKOIまつりと泉ヶ岳散策財団法人仙台観光コンベンション協会「せんだい旅日和」)
  6. 6.0 6.1 宮城県観光のあゆみ(宮城県)
  7. みやぎむかし今(昭和35年〜44年)(宮城県)
  8. 8.0 8.1 8.2 「わんからっとL」主催トークライブ 女たちのサクセスストーリー経済産業省東北経済産業局「東北経済産業情報『東北21』」TOPICs3 2005年5月)… 半沢建設、奥羽自動車学校、泉自動車学校、スバ泉ヶ岳、泉ヶ岳温泉やまぼうしはグループ会社。
  9. 9.0 9.1 9.2 やまぼうしの由来(泉ヶ岳温泉 やまぼうし)
  10. 「自然の家の今後の在り方」について(答申)(宮城県)
  11. 11.0 11.1 11.2 11.3 11.4 11.5 11.6 仙台・泉ヶ岳 ふれあい館 7月21日開館 建設中に火災(河北新報 2014年5月14日)
  12. 12.0 12.1 12.2 [仙台市の生涯学習施設全焼 40億円かけ建設中](産経新聞 2013年4月6日)
  13. 泉岳自然ふれあい館の指定管理者を募集します(仙台市 2012年9月21日掲載)