アオダイショウ

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アオダイショウ(青大将、Elaphe climacophora)は、ナミヘビ科 ナメラ属に分類されるヘビ。

分布

日本北海道本州四国九州国後島奥尻島佐渡島口之島(南限)、伊豆諸島壱岐隠岐対馬五島列島大隅諸島固有種[1][2][3][4]

形態

全長100-200センチメートル[1]直径は5cmほどになる。全長の平均はオスの方が大きいが、一方で大型の個体はオスよりもメスのほうが多い[4]。日本本土では最大のヘビで、南西諸島のサキシマスジオシュウダホンハブに次ぐ大きさとなる。頭部は角張り、吻端は幅広い[2][3]。斜めに列になった胴体背面の鱗の数(体列鱗数)は23列、もしくは25列[3][4]。腹面を被う鱗(腹板)は221-245枚。腹板の両端に隆起(側稜)があり、これにより木に登ることができる[2]。 体色は主に暗黄褐色からくすんだ緑色であるが、個体差が大きい[2][4]。また、北海道には青みの強い個体が多い[4]。脱皮前の個体は色みが濃く逆に脱皮直後の個体は青みが強い[2][4]。背面に4本の不明瞭な黒褐色の縦縞が入る個体が多いが、縦縞がない個体もある[1][4]。脱皮前の個体では縦縞が明瞭になる[2]

虹彩は褐色みのあるオリーブ色で、瞳孔は丸く、黒褐色[4]

幼蛇の体色は灰色で、梯子状に褐色の斑紋が入る[1][2]滋賀県には幼蛇から斑紋が縦縞で、成蛇も明瞭な地域変異個体がいる[1][2]。縦縞褐色がかっているので、ニホンマムシと間違われることも多い。これは、ニホンマムシへの擬態であると考えられている[4]

毒は持たない。

生態

平地から山地にかけての森林堤防農地などに生息する[1][3]樹上性の傾向が強いが、地表での活動も多い。生息域は高いの上から地表、そして地中下水道まで、幅広い範囲で活動している。餌であるネズミの生息環境に対応し人家周辺でよく見られ、深山などで見かけることは稀である[4]。ネズミを追って家屋内に侵入することもある。昼行性で、夜間は岩の隙間や地面に空いた穴の中などで休む[2]。危険を感じると総排出口から臭いを出す[2]

樹上に上るときには枝や幹に巻きついて登っていくのではなく、腹盤の両端には強い側稜(キール)があり、これを幹や枝に引っかけることでそのまま垂直に登ることができ、樹上を移動する[4]。壁をよじ登ることもでき、その習性が他のヘビがいなくなった都市部でも、本種が生息できる原動力となっている。

天敵はイヌワシタヌキイノシシカラスなどで、幼蛇はノネコシマヘビなども天敵となる。天敵に襲われた場合、川底に潜って隠れることもできる。

食性は肉食で、主に鳥類やその卵、哺乳類を食べる[1]。幼蛇はトカゲやカエルを食べる傾向が強く、成体になるにつれ鳥類や哺乳類を捕食するようになる[1][4]。噛み付いて捕らえた獲物に身体を巻き付けて、ゆっくり締め付ける。

飲み込んだ卵は食道で脊椎下部の突起を押しあてて割る[1][3]。また卵を丸呑みした場合、卵の殻を割るために高い所から落ちると言われるが、これを意図して落ちるのではなく、誤って落ちることが理由である[4]。木登りが得意なので、鳥類の繁殖期には樹上の鳥の巣を襲い卵やひな鳥を食べることもある。

繁殖形態は卵生。5-6月に交尾を行い、7-8月に7cm弱の卵を、4-17個を産む[1][3][4]。卵は47-63日で孵化する[2]。飼育下では17年7か月の飼育記録がある[2]

アオダイショウの祖先はヨナグニシュウダだと考えられている。

人間との関係

人家や倉庫で生活することもあり、ネズミを捕食することから重宝されることもあった[2][3]。一方で飼い鳥やその卵を食べることから敬遠されることもある[3]

本種はとともに暮らすヘビと言われ、人のいない深山などでこのヘビが観察されることは少ない[4]。人との関わりが深く、都市部でも緑の多い公園河川敷などに生息している。民家の庭先に現れることも多い。

本種は昼行性で、活動する時間帯が一般的な人間の活動時間帯と重なることが多いため生息場所では見かけることも多く、人を恐れることはあまりないといわれる。性格には個体差があり、人にいじめられた経験のある個体などはかえって攻撃的になることもある。これはアオダイショウに限らず、全てのヘビについて言える。

本種は温帯域に生息するため、冬は冬眠する。そのため冬眠しない熱帯性のヘビとは違い、飼育に関して暖房などの特別な設備を必要としないので飼育しやすい。日本在来種であることから日本でのペットとしての人気はそれほど高くないが、海外では北海道・国後島産のものは特に青みが強いことから「クナシリラットスネーク」と呼ばれ喜ばれている。また飼育下で環境に慣れた個体は総排出口から臭いを出すことは無くなる。 ちなみに肉には臭みとアクがあり、食用としては適さない。

都会への順応性もあり身体能力も高い本種ではあるが、近年は餌のネズミが薬剤による駆除対象になったことと、コンクリート上では青緑の体色はかえって目立ちやすいため、都市部では減少傾向にある。

本種の白化型は「神の遣い」として、信仰の対象とされることもある[2][4]。山口県岩国市周辺に白化型が多く、これは信仰の対象として駆除されずに残され、アルビノの形質が固定されたからであると考えられている[4]。この地域のシロヘビの個体群は、1924年に国の天然記念物に指定(1972年に「岩国のシロヘビ」に変更)されている[2]。保護の対象とされていて、飼育・繁殖のための施設があるが野生個体の生息地は減少している[1][2]

画像

参考文献

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関連項目

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  • 1.00 1.01 1.02 1.03 1.04 1.05 1.06 1.07 1.08 1.09 1.10 千石正一監修 長坂拓也編 『爬虫類・両生類800種図鑑 第3版』、ピーシーズ、2002年、322頁。
  • 2.00 2.01 2.02 2.03 2.04 2.05 2.06 2.07 2.08 2.09 2.10 2.11 2.12 2.13 2.14 2.15 小林章 「日本のヘビを楽しむ 第2回 ヒバカリ(Amphiesma vibakari vibakari)」『クリーパー』第23号、クリーパー社、2004年、24-28頁。
  • 3.0 3.1 3.2 3.3 3.4 3.5 3.6 3.7 深田祝監修 T.R.ハリディ、K.アドラー編 『動物大百科12 両生・爬虫類』、平凡社1986年、162頁。
  • 4.00 4.01 4.02 4.03 4.04 4.05 4.06 4.07 4.08 4.09 4.10 4.11 4.12 4.13 4.14 4.15 4.16 富田京一、山渓ハンディ図鑑10 日本のカメ・トカゲ・ヘビ、山と渓谷社、2007年7月15日初版、pp. 154 - 159、ISBN 978-4-635-07010-2