新幹線E4系電車
テンプレート:鉄道車両 新幹線E4系電車(しんかんせんE4けいでんしゃ)は、東日本旅客鉄道(JR東日本)の新幹線車両である。
目次
概要
200系の老朽取替とE1系導入後も増え続ける旅客需要に対応するために製造された。E1系と同様に全車2階建車両で「Max」の愛称が与えられている。また、そのユニークな先頭形状から鉄道ファンからは「カモノハシ」「巨大イカ」とも呼ばれている。
構造
車両概観
車体はE1系では普通鋼製であったが、本系列は車内販売ワゴン用の昇降機の設置など重量増分を補うため大型押し出し型材によるアルミ合金製である。トンネル微気圧波現象(トンネルドン)および高速走行時の騒音対策で先頭車両の前頭部はE1系よりロングノーズになった(ノーズ長E1系:9.4メートル、E4系:11.5メートル)。車体塗装は白と青のツートーンでその境目に黄色の帯が入る。標識灯にはHIDランプを使用している。
先頭車には分割・併合装置が収められ、400系やE3系、E4系同士と連結運転が可能である[1]。
- E4 FrontView.jpg
前面形状
- E4 joint.jpg
カバーを開いた状態で見える自動分割・併合装置
(2007年11月 福島駅) - E4+E3 1000 omiya.jpg
E3系1000番台を併結して運転されるE4系(大宮駅)
主要機器
電源・制御機器
2階建車両で床下に各種機器を配置することが困難であるため、床下機器は水タンク、空気圧縮機、主電動機電動送風機にとどめ、主変圧器、主変換装置、補助電源装置は車端部の床上に搭載する。機器室は室内とは気密壁によって仕切り、気密外としている。
4両(T+M1+M2+T)で1ユニットを構成し、M1車に主変換装置・補助電源装置を、M2車に主変圧器・主変換装置を搭載する。
主回路制御には可変電圧可変周波数制御(VVVF制御)が採用された。主変換装置 (CI9)は、IGBT素子を使用した3レベルコンバータ+3レベルインバータで構成されている。E1系に対して編成中の電動車の絶対数が減少しているため(E1系:6両、E4系:4両)、故障などの非常時に冗長性を持たせることを目的に、モーター制御を従来の1両単位での制御から台車単位での制御に変更した。
主変圧器(TM209)は強制風冷式を採用し、4,150kVAの容量を備える[2]。
主電動機(MT206)はかご形三相誘導電動機を採用し、E1系よりも連続定格出力を増強した420kWとした[3]。これによって、編成でのMT比が1:1でありながらも、起動加速度1.65km/h/sとし、E1系より向上させた。
電動空気圧縮機はMH1128-C1200Eを採用する[3]。
空調装置は、集約分散式のAU815(冷房能力37,500kcal/h)を1両あたり2基搭載するが、先頭車両はAU815とAU218(冷房能力18,000kcal/h)を1基ずつ搭載する[3]。
保安装置は、ATC-2型を搭載するが、2001年度落成車(P18編成以降)は当初からATC-2型とDS-ATCを搭載している[3]。それまでに落成した編成に関しては、2003年度にDS-ATC取り付け工事が行われた[3]。
台車
台車は、ゴム併用板バネ式ボルスタレス台車である。電動台車はDT208、付随台車はTR7007と称する。車輪径や軸距は200系やE1系と同値であり(それぞれ910mm、2,500mm)[4]、台車枠や歯車装置はE1系と互換性を持たせている[5]。また、車軸軸受には従来の油浴潤滑に代えてグリース潤滑が採用されている[5]。
ブレーキシステムは回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキであり、高速域からの減速では電動車の回生ブレーキで付随車のブレーキ力も負担する遅れ込め制御を導入している。
集電装置
集電装置は200系と同様の下枠交差型パンタグラフが採用された。PS201と呼称される。集電舟(架線と接触する部分)が可動式となった微動すり板を採用したことにより架線追従性が向上し、台枠をFRP製にすることで誘導障害の低減を図った[6]。さらに、降雪対策として押上げ力を5.5kgから7.5kgまで向上させた[6]。
車体が車両限界ギリギリで作られているためパンタグラフカバーはなく、パンタグラフ設置部の屋根が一段低くなっている。
性能
最高速度は240km/h。8両編成で定員は817人[7]。2本連結した16両の定員は1,634人で高速鉄道車両としては世界最大級。E1系の12両編成から8両編成としたのは需要の関係により必ずしも12両編成で運行する必要がないことがあり、逆に輸送需要の多い時間帯の列車については2本連結した16両編成として、需要の多寡に応じた運用を可能とするのと、東北新幹線の場合、「つばさ」・「こまち」といったミニ新幹線車両を併結する場合にプラットホーム有効長などの地上設備が新幹線車両の標準である25m級車両16両分であることから、併結相手の車両運用についても冗長性を持たせるためでもある。一部、北陸新幹線(長野新幹線)の急勾配区間走行に対応した編成や、それに加えて軽井沢駅以西の商用電源周波数60Hzに対応した編成が存在する(後述)。
8両編成中の電動車1.5両(3台車分)をカットした状態で(2.5M5.5Tの状態)、25パーミル上り勾配での起動を可能としている。
車内
定員確保の観点から、普通車はE1系と同様に東京寄り3両(1 - 3号車)の階上部分の座席は横3列+3列の6アブレストで、リクライニング機能や座席中央の肘掛が省略された回転クロスシートである。シートピッチは980mm。過去に数度繁忙期にこの部分も指定席として供用されたことがあるが、基本的に自由席として供用される。この3両の新潟・新青森寄りのデッキには「ジャンプシート」と称する通常は収納されている補助席が1両につき2席ずつ設置されている。
それ以外の普通車座席(1 - 3・7・8号車の階下席と4 - 6号車)は200系などと同様の横3列+2列の5アブレストで、中央には肘掛があるフリーストップ式リクライニング機能付回転クロスシートであり、座面スライド機構も備える。シートピッチは980mm。
また7・8号車の階上席(グリーン席)は2列+2列の4アブレストのリクライニングシートで、フットレストはないが各席レッグレストを装備。壁際席の足置き台のみは移動できる。リクライニングと連動して座面が沈むことで姿勢の維持を容易にしている。テーブルはE1系では肘掛内蔵だったのに対しE4系では前席背面に設置されている。一部の編成では枕が上下可動式となっている。
普通車のシートモケットは階上席は紫色が、階下席はオレンジ色が、グリーン席のモケットには濃い緑色地に黄色の幾何学模様が描かれている。また普通車においては、階上席の天井デコラは青色系、階下席は黄色系で統一されている。座席カバーは普通席は白であるがグリーン席は黄色である。照明の色も、普通席は白色の直接照明、グリーン席は電球色の半間接照明となっている。
車内販売はE1系では階段がある関係でワゴンが使用できないためにバスケットを使用していたが、各車両に昇降機が設けられたことで他編成と同様にワゴンを使用することが可能になった。
バリアフリー対応として、8号車の昇降機は車内販売用ワゴンだけでなく車椅子にも対応する大型のものとなっている。さらに、6号車1階席と8号車2階席に車椅子を固定することが可能な座席が、5号車と8号車に多機能トイレが設置されている。
駅停車時に「まもなく止まります。手すりにおつかまりください」などと注意を促すアナウンスが流れる。 テンプレート:-
形式および車種
本系列に属する各形式名とその車種は以下のとおり。
奇数形式と偶数形式2両ずつ、計4両(電動車 (M) 2両と付随車 (T) 2両)のT+M1+M2+Tで1ユニットを構成する。
番台区分は2階部分が3列+3列の6アブレストとなっている1 - 3号車は「100番台」、売店のある5号車は「200番台」を名乗り、その他の車両は「0番台」である。 テンプレート:-
- E4系(P編成) 編成表
テンプレート:TrainDirection | |||||||||
号車 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
形式 | E453形 (T1c) |
E455形 (M1) |
E456形 (M2) |
E458形 (T) |
E459形 (Tk) |
E455形 (Mp) |
E446形 (Ms) |
E444形 (Tpsc) | |
番台 | 100番台 | 100番台 | 100番台 | 0番台 | 200番台 | 0番台 | 0番台 | 0番台 | |
座席 | 普通車 | 普通車 | 普通車 | 普通車 | 普通車 | 普通車 | グリーン車 | グリーン車 | |
普通車 | 普通車 | ||||||||
定員 | 75 | 133 | 119 | 124 | 110 | 122 | 91 | 43名 |
- E444形 (Tpsc)
- E446形 (M2s)
- E453形 (T1c)
- 普通席を備える制御付随車。P編成1号車として使用。東京向き運転台、トイレ、洗面所(ともに新潟寄り)を備え、空気圧縮機などを搭載する。定員75名。0番台は存在しない。2011年4月29日より、東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の復興支援スローガンである「つなげよう日本」(1号車)のステッカーが貼付された。
- E455形 (M1,Mp)
- 普通席を備える中間電動車。主変換装置、集電装置などを搭載する。
- 0番台 (Mp)
- P編成6号車として使用。車椅子対応座席を備える。定員122名。
- 100番台 (M1)
- P編成2号車として使用。定員133名。
- E456形 (M2)
- 普通席を備える中間電動車。P編成3号車として使用。公衆電話(東京寄り)を備え、主変圧器などを搭載する。定員119名。
- E458形 (T)
- 普通席を備える中間付随車。P編成4号車として使用。トイレ、洗面所(ともに東京寄り)を備え、集電装置を搭載する。定員124名。
- E459形 (Tk)
- 普通車を備える中間付随車。P編成5号車として使用。トイレ、洗面所(ともに新潟寄り・車椅子対応)を備える。定員110名。
ラッピング
2008年(平成20年)7月19日からは、「ピカ乗りサマー2008」キャンペーンPRラッピングの一環としてP11,P21編成にポケモンのラッピングが施された。
2009年(平成21年)7月18日から、2008年同様「ピカ乗りサマー2009」キャンペーンPRラッピングの一環としてP9,P17編成にポケモンのラッピングが施された。
2009年(平成21年)2009年9月10日から12月にかけて、「新潟デスティネーションキャンペーン」の開催に伴い、P11 - P14編成に「うまさぎっしり 新潟」のラッピングが施された。
2010年(平成22年)7月17日から、2009年同様「ピカ乗りサマー2010」キャンペーンPRラッピングの一環としてP19,P21編成にポケモンのラッピングが施された。
2012年(平成24年)11月上旬から当面の間、P81編成に朱鷺のラッピングが施された。これは、同年10月28日に営業運転を終了したE1系に代わり、本系列に施工された。E1系と同様、「Max」のロゴマークの右上に施工されている。[9]。
2012年(平成24年)11月15日には上越新幹線開業30周年を記念し、P7, P8,P17,P18編成にSuicaペンギンの 「ご当地ラッピング」が施工された。
塗装変更
2014年4月1日から同年6月30日まで開催される新潟デスティネーションキャンペーンに合わせて、塗装変更が実施される[10]。車体色は2012年に引退したE1系のリニューアル塗装に準じたもので、「朱鷺(とき)色」と称されるピンクの帯を配したものにロゴマークには朱鷺3羽のイラストが加えられる[11]。2015年度末までに8両編成24本全ての塗装変更が完了する予定。同年4月7日の「Maxとき 491号」(長岡始発新潟行き)より新塗装車の運用を開始した。(P5編成が塗装変更の第一号となった。)
塗装変更が完了するまでは旧塗装編成との併結運転も見ることができる。
- E4 P5 Max Toki 316 Takasaki 20140407.JPG
P5編成 新塗装
(2014年4月7日 高崎駅) - E4 P5 Max logo Takasaki 20140407.JPG
新塗装のロゴマーク
(「Max」の文字は小さくなる)
編成・運用
東北新幹線・上越新幹線専用のP1 - P22編成と、長野新幹線の一部区間または全線への乗り入れが可能なP51・P52編成、P81・P82編成がある。26編成すべてがデジタルATCに対応している。
P51・P52編成は30‰の急勾配区間走行に対応し、軽井沢駅まで入線可能である。P81・P82編成ではこれに加えて、軽井沢駅 - 佐久平駅間の電源周波数切り替え装置(60Hz対応)を搭載し、長野駅まで入線可能となっている。ただし、関連機器はすべて50Hzでの使用を考慮しているため、長時間の運転や頻繁に入線することはほぼ不可能で、あくまで緊急時に長野駅に乗り入れるためとされている。
運用
新製時は全ての編成が仙台総合車両所(現在の新幹線総合車両センター)に配置されていた。2013年10月現在はP1・P4 - P22・P51・P52・P81・P82編成の全編成が新潟新幹線車両センターに配置される。
2013年4月1日現在、上越新幹線の「Maxとき」、「Maxたにがわ」にのみ使用される。E5系の増備に伴い、東北新幹線大宮駅以北での運用は2012年9月28日をもって終了した。
このほか、試運転により東北新幹線 盛岡駅 - 八戸駅 - 新青森駅間に入線したことがある[12]。
営業運転の変遷
- 1997年(平成9年)12月20日:東北新幹線で営業運転を開始。
- 1999年(平成11年)4月29日:山形新幹線「つばさ」との併結運転を開始。
- 2001年(平成13年)
- 2003年(平成15年)9月15日:長野新幹線東京駅 - 軽井沢駅間における、臨時列車の営業運転から撤退。
- 2005年(平成17年)12月10日:東北新幹線仙台駅以北での定期運用を終了。
- 2012年(平成24年)
東北新幹線からの撤退
東北新幹線仙台駅以北での定期運用終了後、動きがなかった本系列ではあるが、2011年春から投入が開始されたE5系の増備に伴う高速化により、東北新幹線運用が減少し始めた。
まず、2012年3月17日実施のダイヤ改正で本系列充当列車20往復のうち、12往復がE2系に置き換えられ、山形新幹線「つばさ」を併結する「やまびこ」の運用を中心にE2系へ置き換えられた。同時に東北新幹線大宮駅以北にて、16両編成の定期運用が廃止された。
2012年7月7日、JR東日本は9月29日実施のダイヤ改正で東北新幹線内の本系列充当列車を全てE2系へ置き換え、東北新幹線大宮駅以北での定期運用終了を発表した。
上り定期運用最終列車は「Maxやまびこ150号」、下り定期運用最終列車は「Maxやまびこ155号」(いずれも東京駅 - 福島駅間は「つばさ」併結)であった。
定期運用終了を記念し、2012年9月22日に仙台駅→東京駅間で団体専用列車「ありがとう!Maxやまびこ号」が運転された[17]。
運転日 | 列車名 | 運転区間(始発・終着時刻) | 途中停車駅 | 使用 編成 |
備考 |
---|---|---|---|---|---|
9月22日 | ありがとう!Maxやまびこ号 | 仙台 7:20発 → 東京 9:20着 | 福島、郡山、新白河、大宮、上野 | P8 | 団体専用列車 |
今後の予定
2011年3月9日付の毎日新聞において、2012年以降順次廃車となり、2016年を目処に全廃する予定と報じられた。2013年から廃車が開始されているが、2016年の全廃は、現在計画されていない。
脚注
関連項目
外部リンク
テンプレート:日本の新幹線- ↑ 400系との併結運転時では引張力・加減速特性等を400系と同じ性能に調整している。
- ↑ 車両システム・推進制御システム・主変圧器--製品紹介--三菱電機 車両システム
- ↑ 3.0 3.1 3.2 3.3 3.4 ジェー・アール・アール『JR電車編成表』2010夏、交通新聞社、2010年、p.9
- ↑ テンプレート:Cite book
- ↑ 5.0 5.1 テンプレート:Cite book
- ↑ 6.0 6.1 テンプレート:PDFlink富士時報 第55巻第6号(1982年)、富士電機
- ↑ 定員はE2系J編成(10両編成・813人または814人)とほぼ同数である
- ↑ 上越新幹線開業30周年ご当地Suicaペンギンラッピング編成(P7,P8,P17,P18編成)については、ラッピング施工時にステッカーを剥がしている。
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ テンプレート:PDFLink - 東日本旅客鉄道 新潟支社 2014年3月26日
- ↑ E1系とは異なり、「Max」の文字は小さくなる。
- ↑ E4系「MAX」が新青森へ初入線 - 『鉄道ファン』railf.jp鉄道ニュース(交友社) 2010年6月13日
- ↑ 乗客を乗せた状態で安中榛名駅 - 軽井沢駅間の登り連続急勾配を走行できないため、上り列車のみの設定だった
- ↑ テンプレート:PDFlink - 東日本旅客鉄道プレスリリース 2011年12月16日
- ↑ E2系とE3系「つばさ」編成の併結運転が始まる - 『鉄道ファン』railf.jp 鉄道ニュース(交友社) 2012年3月20日
- ↑ テンプレート:PDFlink - 東日本旅客鉄道プレスリリース 2012年7月6日
- ↑ テンプレート:PDFlink - 東日本旅客鉄道仙台支社