親王
テンプレート:出典の明記 親王(しんのう)は、東アジアにおいて、嫡出の皇子や最高位の皇族男子に与えられる称号[1]。もともと中国諸王朝(魏朝以後)において用いられ、日本や、朝鮮(大韓帝国期)、ベトナムにおいても採用された。
これらに倣って、非漢字圏の君主の親族男子を親王と呼ぶことや、プリンスの訳語として用いることもままある。
目次
概説
「王」は本来は君主を指す語であるが、漢朝以後、王よりも上級の君主号として皇帝号が位置づけられるようになると、「王」の称号は、皇帝の配下のうち特に高位の者に対して用いられ、諸侯の称号として(諸侯王)だけでなく、皇族男子の称号としても用いられるようになった。そして、魏朝以後、皇族男子としての「王」のうち、特に皇帝と近縁であるなど一定の者に対しては「親王」というさらに上位の称号が与えられるようになり、これが後に日本や大韓帝国に波及した。
日本の親王
現在は天皇の嫡出の子、及び、天皇の嫡男系の嫡出の子(皇孫)で男子である者、また、天皇の兄弟を親王という(皇室典範6、7条参照)。なお、女性の親王号を内親王、親王でない皇族は王、女王という。
皇族身位令(皇室令。既に廃止)に準じて、成年となった場合は大勲位の勲等に叙せられ、大勲位菊花大綬章が授けられる。なお、内親王は勲一等に叙せられ、勲一等宝冠章が授けられ、王は勲一等に叙せられ、勲一等旭日桐花大綬章が授けられ、女王は勲二等に叙せられ、勲二等宝冠章が授けられることになっていた。戦後でも親王には、大勲位菊花大綬章が授けられ、内親王、親王妃には勲一等宝冠章(現、宝冠大綬章)が、女王には勲二等宝冠章(現、宝冠牡丹章)が授けられている。
歴史
かつては、天皇の子女の称号として皇子及び皇女が使われていたが、律令制では天皇の子及び兄弟姉妹が親王(女性形「内親王」は令の条文にはない)と改称され、位階を授けられ、給田や俸禄が与えられて、家司(けいし)が付属せられた。皇孫は二世から四世(場合によりそれ以降も)が諸王と称せられた。淳仁天皇は二世王から践祚したので、平安時代以降は親王宣下をもって親王とする慣習となり、たとえ天皇の子供であっても親王宣下を受けない限り親王にはなれなかった(たとえば以仁王など)。逆に世襲親王家の当主などの皇孫以下の世代に相当する皇族であっても、天皇・上皇の養子・猶子となることで親王宣下を受けて親王となることもあった。
律令により、親王は「一品」から「四品」までの品位に叙せられた。品位を受けない(もしくは罪などで品位を剥奪された)親王は無品親王と呼ばれた。江戸時代以前において出家した親王を入道親王(にゅうどうしんのう)、出家後に親王宣下を受けた皇族を法親王(ほっしんのう)と称したが、実際の用例はそれほど厳格ではない。
平安時代、桓武天皇の政策により東宮(皇太子)とならなかった親王を八省卿にする方針が打ち出されたが、のちには親王に政治責任を負わせることに消極的な立場から中務卿、兵部卿、式部卿、弾正尹、大宰帥といった名誉職に就いて俸禄のみを得て、政務には携わらないという慣習ができた。この慣習に従い、政治実務から棚上げにされた人物の例として兼明親王がいる。
現代において、特定の皇族子女の呼称として親王及び内親王のみが用いられるが、第一皇子、第二皇子、第一皇女というように、天皇との続柄を指す場合に限っては皇子及び皇女が使用され、第一親王や第一内親王といった呼称は使わない。
中国諸王朝の親王
清朝の親王
清朝皇族愛新覚羅氏爵位の最高位。世襲親王と非世襲親王がある。世襲特権が認められている者には、建国時期に活躍した6人の親王と2人の郡王の他に、清朝中期、末期に特別な功績があるとして世襲が許された4人の親王がいる。その他の非世襲親王は1代ごとに爵位が下がり、鎮国公まで下がってからは世襲になる。
なお、初期には清朝の中国制覇に大功のあった漢人の将軍呉三桂(平西王)にも親王位が授けられている。
清朝皇族の爵位
- 和碩親王(ホショ=イ=チンワン)
- 世子(親王の嗣子)
- 多羅郡王(ドロ=イ=ギユンワン)
- 長子(郡王の嗣子)
- 多羅貝勒(ドロ=イ=ベイレ)
- 固山貝子(グサ=イ=ベイセ)
- 鎮国公
- 輔国公
- 不入八分鎮国公
- 不入八分輔国公
- 鎮国将軍
- 輔国将軍
- 奉国将軍
- 奉恩将軍
世襲皇族
清朝初期の世襲皇族
- 礼親王 代善(ダイシャン)
- 睿親王 多爾袞(ドルゴン)
- 予親王 多鐸(ドド)
- 粛親王 豪格(ホーゲ)
- 承沢親王 碩塞(ショセ) - 後に荘親王と改称。
- 鄭親王 済爾哈朗(ジルガラン)
- 克勤郡王 岳託(ヨト)
- 順承郡王 勒克徳渾
中期、末期に認められた世襲皇族
大韓帝国の親王
李氏朝鮮が大韓帝国に国号を改めた際に、親王位が定められた。それまでは、王族の男子には親王ではなく「○○君」といった称号が与えられていた。
脚注
参照文献
文献資料
- 新村出編『広辞苑 第六版』(岩波書店、2011年)ISBN 400080121X
- 松村明編『大辞林 第三版』(三省堂、2006年)ISBN 4385139059