普天堡電子楽団
普天堡電子楽団(ポチョンボでんしがくだん)は、1985年に結成された朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の音楽ユニット。正式名称は普天堡軽音楽団。
概要
極めて閉鎖的な体制をとる北朝鮮では最先端を行く音楽グループであるため、若年層を中心に高い人気を誇る。
ユニット名の「普天堡」は1937年に金日成率いる抗日パルチザン部隊が両江道普天堡の駐在所などを襲撃した「普天堡の戦い」にちなむ。
聯合ニュースは2007年、『普天堡電子楽団の音楽活動が北朝鮮の民族情緒にふさわしくないと保守的な老年層からの批判があり現在は既に活動を中断しメンバーらは事務所に顔を見せているもののほぼ解散同様の状態にある。』と報じた[1]。
2008年に朝鮮新報が同楽団の新たな創作活動について報じており[2]、YouTubeにも新たな歌曲が投稿されていることから現在も活動を継続しているものと見られる。なお2004年に第152集まで発売して以降、長らくCDのリリースが途絶えていたが、2010年には新作のCDが多数リリースされ、2013年現在第182集まで発売されている。
また、この楽団は1991年9月に来日し、日本公演が行われている。
楽曲
「金日成大元帥万々歳」や「あなたがいなければ祖国も無い」などの金日成や金正日を称える歌曲、朝鮮労働党や朝鮮人民軍・政治体制を称える歌曲、軍歌・革命歌謡・労働歌謡のカバー曲などプロパガンダ的な楽曲が非常に多いが、「アリラン」「トラジ」などに代表される朝鮮半島の民謡、「青い山脈」「津軽海峡・冬景色」「アロハ・オエ」「ジングルベル」「恋はみずいろ」など日本や諸外国の歌曲のカバーも手がけている。
1993年に文学芸術総合出版社から出版された「普天堡電子楽団歌集」の歌集目次において楽曲は次のように分類されている。
- 創作された歌
- 再形象した歌(不朽の古典的名作、革命歌謡)
- 映画の歌
- 歌劇の歌
- 民謡
演奏形態
曲により異なるが、指揮者が立ちギター・ベースが1人ずつ、ドラムが1〜2人、キーボード・シンセサイザーが5人程度で演奏される。演奏は男性のみで行われていると見られ、コーラスも同時に行う。またメインの歌手の他にコーラス専門で女性が3人程登場することもある。
楽器にはヤマハ・DXシリーズなどの日本製も多く使用されている。
主な歌手
- 金光淑(キム・グァンスク)
- 金貞女(キム・ジョンニョ)
- 趙錦花(チョ・グムファ)
- 全惠英(チョン・ヘヨン)
- 玄松月(ヒョン・ソンウォル)
- 尹惠英(ユン・ヘヨン)
- 李京淑(リ・ギョンスク)
- 李粉姫(リ・ブンヒ)
楽曲の視聴・入手方法
日本国内では国際ラジオ放送の朝鮮の声放送で聞くことが出来るほか、CDやカセットテープも発売されている。CDアルバムは1980年代から2004年までにおよそ150集発売されており、日本ではミカサ通商が「朝鮮民謡曲集」として販売している。直輸入盤はレインボー通商や朝鮮総連直営のコリア・ブックセンターなどの専門店で購入が可能である。動画投稿サイトにも多数の楽曲が投稿されている。
韓国では1990年頃から大学生を中心に人気が出始めており、現在では韓国政府から販売許可を得たE&E MEDIAが販売を行っている。
日本公演
日本公演が行われた1991年当時は日朝関係が冷え切っている現在とは異なり、前年度に行われた当時の日本の副首相・金丸信の訪朝をはじめとする外交交渉が行われ、国交正常化の兆しが見えていた。そのような社会情勢であったため、両国間で親善発展を目的とした文化交流が行われることもあった。普天堡電子楽団の日本公演もそうした文化交流事業のうちの一つであり、またその中では最大規模のものであった。公演は日朝文化交流協会が主催でNHKと朝日新聞の後援で実現し、東京、仙台、広島、北九州、大阪、京都、神戸、姫路の八都市で9月17日から10月27日まで行われた。公演の曲目の中には北国の春をはじめとする日本歌曲も多数含まれていた。ちなみに同楽団は平壌から成田まで朝鮮民航(現高麗航空)の直行便で来日しており、来日した歌手は金光淑、全惠英、李京淑、李粉姫、趙錦花の五人であった。また金光淑と全惠英は学生少年芸術団に在籍していた時に、訪日メンバーとしてそれ以前に来日したことがあった。
関連項目
- 牡丹峰楽団(モランボン楽団)
- 銀河水管弦楽団
- 旺載山軽音楽団(ワンジェサン軽音楽団)
- 朝鮮人民軍協奏団
- 功勲国家合唱団