晋書

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テンプレート:Sidebar テンプレート:Wikisourcelang晋書』(しんじょ テンプレート:Lang-zh-tw)は、中国晋王朝西晋東晋)について書かれた歴史書二十四史の一つ。648年太宗の命により、房玄齢李延寿らによって編纂された。帝紀十巻・載記五胡単于・天王・皇帝に関する記述)三十巻、列伝七十巻、志二十巻によって構成される紀伝体

成立までの経緯と構成

玄武門の変により兄で皇太子の李建成を排除して帝位を簒奪した太宗・李世民は、房玄齢を総監として未編纂の史書を作ることを命じ、『北斉書』・『梁書』・『陳書』・『隋書』・『周書』と『晋書』が編纂された。太宗は代表作である「蘭亭序」を陪葬することを命じるほど王羲之に傾倒しており、『晋書』「王羲之伝」は自ら執筆している。既存の正史である『史記』『漢書』『三国志』などはいずれも個人が編纂したものを後に正史と定めたものであったが、太宗の欽定史書として『晋書』が編纂されて以降は史書編纂は国家事業となり、滅亡した王朝の史書を編纂することが正統王朝としての義務となった。

本紀に記載されるのは晋の実質上の始祖である司馬懿から東晋最後の恭帝・司馬徳文までであるが、載記では東晋滅亡の年後に死去した赫連勃勃なども入っている。

評価

『晋書』については、批判的な評価が多い。

史通』「採撰篇」で劉知幾は、『晋書』が『語林』『世説新語』『幽明録』『捜神記』といった書物に記載された怪しげな話を採用していることを指摘した。「分量さえ多ければいい、資料収集が広ければいいという態度だ。小人は喜ばせられるだろうが、君子のあざ笑うところである。」と手厳しく非難している。また、『旧唐書』の著者劉昫は、「房玄齡伝[1]」の評語で、「以蔵栄緒晋書為主、参考諸家、甚為詳洽。然史官多是文詠之士、好採詭謬碎事、以広異聞、又所評論、競為綺豔、不求篤実、由是頗為学者所譏。」と、筆を極めて酷評している。つまり、「『晋書』は諸書を参考に詳しく書かれている。ところが、編纂に当たった史官は文士・歌詠みが多く、デマや誤報、くだらないゴシップを喜んで書いているような程度の低い連中で、広く異聞を集め、所々で評論家ぶって美文を書こうとしているが、真実を追求していないので学者はひどくバカにしている」というのである。すなわち、正史であるにもかかわらず後世からあたかもイエロージャーナリズムのような評価しか受けなかった史書、それが晋書であった。この評価は後世も概ね踏襲されており、清朝の考証学者である趙翼なども、晋書はデマや誤報、くだらないゴシップを信じ過ぎると低い評価を行なっている。

また、晋書の部分訳を行った越智重明は「晋書には多くの誤りがあり、敦煌文書に含まれる干宝の晋紀や、世説新語などで校正しなければならない」「占田制課田制のような重大な歴史学の問題でも、晋書には誤りがあるので鵜呑みにしてはいけない」と批判している。宮川寅雄も「おおかたは逸話や伝承のたぐいで埋められ ており、枝葉なことがらを洗いおとしてゆくと、家譜や歴任の官職の大まかな推移になってしまう」と述べている。

既存の史書と比較すると、それまで個人が執筆・編纂していたものに対して、複数の編者が存在することで前後矛盾する内容となっている箇所もあり、内藤湖南から批判された。例示すれば「李重伝」の中に「見百官志」(百官志に見える)と記述されるにもかかわらず、『晋書』の中には「百官志」が存在しないこと、などである。

一方で『冊府元亀』の評では、「前代の記録を広く考証し、残存する記録を広く探し、雑草を刈り取るように肝心な部分を抜き出している」と、『晋書』の資料収集を高く評価しているが、そのような好意的評価は非常に少ない。

上記の理由により『晋書』は史書としての評価は低いものであるが、『三国志』に「地理志」が存在しないことから、三国志愛好家の間では「地理志」に限って『晋書』の記録が多用される傾向がある。また、三国志には司馬懿の伝記がなく、晋書には司馬懿の伝記「宣帝紀」があるので参考にされる事も多い。ただし、「宣帝紀」には司馬懿の首が180度回転したなどと、ウソとしか思えない話が多く、清朝考証学では論難されている。

内容

巻目 巻題 節目
巻1 帝紀第1 宣帝 高祖宣帝
巻2 帝紀第2 景帝 文帝 世宗景帝太祖文帝
巻3 帝紀第3 武帝 世祖武帝
巻4 帝紀第4 恵帝 孝恵帝
巻5 帝紀第5 懐帝 愍帝 孝懐帝孝愍帝
巻6 帝紀第6 元帝 明帝 中宗元帝粛宗明帝
巻7 帝紀第7 成帝 康帝 顕宗成帝康帝
巻8 帝紀第8 穆帝 哀帝 海西公 孝宗穆帝哀帝廃帝海西公
巻9 帝紀第9 簡文帝 孝武帝 太宗簡文帝孝武帝
巻10 帝紀第10 安帝 恭帝 安帝恭帝

巻目 巻題 節目
巻11 志第1 天文上
巻12 志第2 天文中
巻13 志第3 天文下
巻14 志第4 地理上
巻15 志第5 地理下
巻16 志第6 律暦上
巻17 志第7 律暦中
巻18 志第8 律暦下
巻19 志第9 礼上
巻20 志第10 礼中
巻21 志第11 礼下
巻22 志第12 楽上
巻23 志第13 楽下
巻24 志第14 職官
巻25 志第15 輿服
巻26 志第16 食貨
巻27 志第17 五行上
巻28 志第18 五行中
巻29 志第19 五行下
巻30 志第20 刑法

列伝

巻目 巻題 節目
巻31 列伝第1 后妃上 宣穆張皇后景懐夏侯皇后景献羊皇后文明王皇后武元楊皇后武悼楊皇后恵賈皇后恵羊皇后懐王皇太后元夏侯太妃
巻32 列伝第2 后妃下 元敬虞皇后明穆庾皇后成恭杜皇后康献褚皇后穆章何皇后哀靖王皇后廃帝孝庾皇后簡文宣鄭太后簡文順王皇后孝武文李太后孝武定王皇后安徳陳太后安僖王皇后恭思褚皇后
巻33 列伝第3 王祥鄭沖何曾石苞
巻34 列伝第4 羊祜杜預
巻35 列伝第5 陳騫裴秀
巻36 列伝第6 衛瓘張華
巻37 列伝第7 宗室 安平献王孚彭城穆王権高密文献王泰范陽康王綏済南恵王遂譙剛王遜高陽王睦任城景王陵
巻38 列伝第8 宣五王・文六王 平原王榦琅邪王伷清恵亭侯京扶風王駿梁王肜斉王攸城陽王兆遼東王定国広漢王広徳楽安王鑑楽平王延祚
巻39 列伝第9 王沈荀顗荀勖馮紞
巻40 列伝第10 賈充楊駿
巻41 列伝第11 魏舒李憙劉寔高光
巻42 列伝第12 王渾王濬唐彬
巻43 列伝第13 山濤王戎楽広
巻44 列伝第14 鄭袤李胤盧欽華表石鑒温羨
巻45 列伝第15 劉毅和嶠武陔任愷崔洪郭奕侯史光何攀
巻46 列伝第16 劉頌李重
巻47 列伝第17 傅玄
巻48 列伝第18 向雄段灼閻纘
巻49 列伝第19 阮籍嵇康向秀劉伶謝鯤胡毋輔之畢卓王尼羊曼光逸
巻50 列伝第20 曹志庾峻郭象庾純秦秀
巻51 列伝第21 皇甫謐摯虞束皙王接
巻52 列伝第22 郤詵阮种華譚
巻53 列伝第23 愍懐太子
巻54 列伝第24 陸機陸雲
巻55 列伝第25 夏侯湛潘岳張載
巻56 列伝第26 江統孫楚
巻57 列伝第27 羅憲滕脩馬隆胡奮陶璜吾彦張光趙誘
巻58 列伝第28 周処周訪
巻59 列伝第29 汝南王亮楚王瑋趙王倫斉王冏長沙王乂成都王潁河間王顒東海王越
巻60 列伝第30 解系孫旂孟観牽秀繆播皇甫重張輔李含張方閻鼎索靖賈疋
巻61 列伝第31 周浚成公簡苟晞華軼劉喬
巻62 列伝第32 劉琨祖逖
巻63 列伝第33 邵續李矩段匹磾魏浚郭黙
巻64 列伝第34 武十三王・元四王・簡文三子
巻65 列伝第35 王導
巻66 列伝第36 劉弘陶侃
巻67 列伝第37 温嶠郗鑒
巻68 列伝第38 顧栄紀瞻賀循薛兼
巻69 列伝第39 劉隗刁協戴若思周顗
巻70 列伝第40 応詹甘卓卞壼劉超鍾雅
巻71 列伝第41 孫恵熊遠王鑑陳頵高崧
巻72 列伝第42 郭璞葛洪
巻73 列伝第43 庾亮
巻74 列伝第44 桓彝
巻75 列伝第45 王湛荀崧范汪劉惔張憑韓伯
巻76 列伝第46 王舒王廙虞潭顧衆張闓
巻77 列伝第47 陸曄何充褚翜蔡謨諸葛恢殷浩
巻78 列伝第48 孔愉丁潭陶回
巻79 列伝第49 謝尚謝安
巻80 列伝第50 王羲之
巻81 列伝第51 王遜蔡豹羊鑒劉胤桓宣朱伺毛宝劉遐鄧嶽朱序
巻82 列伝第52 陳寿王長文虞溥司馬彪王隠虞預孫盛干宝鄧粲謝沈習鑿歯徐広
巻83 列伝第53 顧和袁瑰江逌車胤殷顗王雅
巻84 列伝第54 王恭庾楷劉牢之殷仲堪楊佺期
巻85 列伝第55 劉毅諸葛長民何無忌檀憑之魏詠之
巻86 列伝第56 張軌
巻87 列伝第57 涼武昭王李玄盛
巻88 列伝第58 孝友 李密盛彥夏方王裒許孜庾袞孫晷顏含劉殷王延王談桑虞何琦吳逵
巻89 列伝第59 忠義
巻90 列伝第60 良吏
巻91 列伝第61 儒林
巻92 列伝第62 文苑 応貞成公綏左思趙至鄒湛棗據褚陶王沈張翰庾闡曹毗李充袁宏伏滔羅含顧愷之郭澄之
巻93 列伝第63 外戚 羊琇王恂楊文宗羊玄之虞豫庾琛杜乂褚裒何準王濛王遐王蘊褚爽
巻94 列伝第64 隠逸 孫登董京夏統朱沖范粲(付范喬)・魯勝董養霍原郭琦伍朝魯褒氾騰任旭郭文龔壯孟陋韓績譙秀翟湯(付翟莊)・郭翻辛謐劉驎之索襲楊軻公孫鳳公孫永張忠石垣宋纖郭荷郭瑀祈嘉瞿硎先生謝敷戴逵龔玄之陶淡陶潛
巻95 列伝第65 芸術
巻96 列伝第66 列女 荀灌
巻97 列伝第67 四夷 夫餘国馬韓辰韓肅慎氏倭人吐谷渾焉耆国亀茲国大宛国康居国大秦国林邑国扶南国匈奴
巻98 列伝第68 王敦桓温桓熙桓済桓歆桓褘桓偉
巻99 列伝第69 桓玄卞範之殷仲文
巻100 列伝第70 王弥張昌陳敏王如杜曾杜弢王機祖約蘇峻孫恩盧循譙縦

戴記

巻目 巻題 節目
巻101 載記第1 劉元海
巻102 載記第2 劉聡
巻103 載記第3 劉曜
巻104 載記第4 石勒
巻105 載記第5 石勒下
巻106 載記第6 石季龍
巻107 載記第7 石季龍下
巻108 載記第8 慕容廆
巻109 載記第9 慕容皝
巻110 載記第10 慕容儁
巻111 載記第11 慕容暐
巻112 載記第12 苻洪苻健苻生
巻113 載記第13 苻堅
巻114 載記第14 苻堅下
巻115 載記第15 苻丕苻登
巻116 載記第16 姚弋仲姚襄姚萇
巻117 載記第17 姚興
巻118 載記第18 姚興下
巻119 載記第19 姚泓
巻120 載記第20 李特李流
巻121 載記第21 李雄李班李期李寿李勢
巻122 載記第22 呂光呂纂呂隆
巻123 載記第23 慕容垂
巻124 載記第24 慕容宝慕容盛慕容熙慕容雲
巻125 載記第25 乞伏国仁乞伏乾帰乞伏熾磐馮跋
巻126 載記第26 禿髪烏孤禿髪利鹿孤禿髪傉檀
巻127 載記第27 慕容徳
巻128 載記第28 慕容超
巻129 載記第29 沮渠蒙遜
巻130 載記第30 赫連勃勃

関連項目

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外部リンク