平成狸合戦ぽんぽこ
テンプレート:Infobox Film 『平成狸合戦ぽんぽこ』(へいせいたぬきがっせんぽんぽこ、英題:Pom Poko)は、1994年7月16日公開のスタジオジブリ制作の劇場アニメ作品。原作・監督・脚本は高畑勲。
開発が進む多摩ニュータウン(多摩市)を舞台に、その一帯の狸が化学(ばけがく)を駆使して人間に対し抵抗を試みる様子を描く作品。数年に1度、日本テレビ『金曜ロードSHOW!』枠で放送されている。スタジオ内の初のCG使用作品でもある。
1994年の邦画・配給収入トップ26億円を記録した[1]。日本で「ジブリがいっぱいCOLLECTION」シリーズとして発売されたセルビデオは、40万本を出荷した[2]。
目次
あらすじ
多摩丘陵で静かに暮らしていたタヌキたち。しかしある時、餌場の争いが発生、原因がニュータウン建設工事に伴う造成地の開拓による餌不足であることがわかった。自然への畏怖を忘れた人間を懲らしめ、静かな生活を取り戻すため、タヌキたちは長く忘れられていた力「化学(ばけがく)」を駆使し、四国と佐渡から狸の長老を招いて人間への抵抗を開始する。
抵抗の手段は、当初一部の過激派による開発業者のトラック等への妨害行為により人間の死亡者が出る等の打撃を与えるが、次第に化け学を駆使して超常現象を目の当たりにさせることで人間の畏怖を引き出そうという方向に変化していく。同時期に四国と佐渡へそれぞれ長老招聘の為の使者が派遣される。長老の到着を待つ間も作戦は行われていたが、大した効果が表れないことから狸達は作戦で疎かになった食料集めに精を出すことになる。一方で四国へ向かった玉三郎は長老達に助力を願い出ることに成功したが、誰を派遣するか、有事の際の跡目相続など議論百出し半年経っても結論が出ないでいた。佐渡へ旅立った文太も高名な長老狸の消息が掴めないでいた。多摩でも手ぬるい作戦に苛立った権太を筆頭とする過激派がついに温和派へクーデターを決行するが、四国から玉三郎が多摩に帰郷し、彼と共にやって来た3人の長老達の指導の下化け学を駆使した「妖怪大作戦」は決行される。当初は狸たちの総力を結集して具現化された百鬼夜行の大行列に、人間界は騒然となる。しかし、見えないものへの畏怖の念を忘れ去った人間たちには魑魅魍魎の百鬼夜行も拍手喝采のイリュージョンにか映らず、レジャーランドの宣伝に利用されてしまう。さらに四国の長老の一匹・隠神刑部も命を落とし、作戦は失敗に終わってしまう。
無念の結果に落胆し、無気力に陥る狸たちに対し、彼らと同じく住処を追われたキツネは四国の長老の一匹・六代目金長と接触し、自分たちのように化け術を駆使して人間社会に溶け込んで生きる方がよいと忠告する。しかし人間社会への迎合を良しとしない権太は仲間を率いて人間たちに玉砕覚悟で挑みかかるも、敗北の末に、トラックに轢かれて命を落としてしまう。そして一部の変身できない狸達は四国の長老の一匹・太三朗禿狸と共に船に乗り込み、賑やかに歌いながら補陀落を目指し死出の旅に出る(補陀落渡海)。さらに佐渡の高名な長老も既に落命していたことが判明し、敗北を確信した正吉たちは、せめても最後の抵抗にと、掟を破り人間のTVクルーの前に姿を現して自分達の思いをぶつけ、金長や佐渡から帰郷した文太を含め残った全員の力を結集し、草や木や石に化け、かつての美しい自然の名残の幻を人間たちに見せつけた。これが功を奏し、狸たちとの共生を謳い文句にして、わずかばかりの手つかずの自然が残してもらえることになった。</br>その後、化け術を使える狸たちの内、正吉を始めとする温和派の狸たちはキツネの忠告通り人間として生きる道を選び、変身術を使えない狸たちは、わずかに残された山奥にこもり、自然界に踏み込む人間たちの足音に怯えつつ、ひっそりと暮らすことを余儀なくされた。こうして、かつての仲間たちは散り散りになり、狸たちの戦いは終わりを告げた。それから月日は流れ、正吉は人間社会のストレスに耐えながら人間として暮らしていた。
ある夜、仕事の帰り道に1匹の狸を見つけた正吉は、後を追った先で、都会の片隅でたくましく生きるぽん吉らかつての仲間たちを見つける。喜びと共に変化の術を解き、正吉は宴会を開いて賑やかに騒ぐぽん吉たちの元へ駆けつけて、再会を喜びあうのだった。
キャッチコピー
- 「タヌキだってがんばってるんだよォ」(糸井重里)
キャラクター
- 語り
- 終盤で、正吉が回想して語っていることが判明する。
- 正吉
- 本名影森の正吉。冷静な性格で思考が人間臭い。狸たちの実質的なリーダー的存在。終盤では人間のサラリーマンとして生活している。
- おキヨ
- 本名縁切り寺のキヨ。正吉の妻となり、四匹の子狸を授かる。終盤ではスナックで働いている。なお、正吉とおキヨが演じた「双子の星作戦」の名称とその時の台詞は、宮沢賢治の童話「双子の星」からとったものである。
- 鶴亀和尚
- ぼたもち山万福寺に住み着く狸。年齢は105歳。僧侶らしく、術による作戦で人間の命を奪った形となった際は手厚く供養をしている。終盤では人間の世界で和尚として活動している。
- おろく婆
- 本名火の玉のおろく。若手狸の変化の講師を担当する。終盤では「多摩の母」として占い師をしている。
- 権太
- 本名鷹ヶ森の権太。過激派の狸達のリーダー格。血の気が多く、故郷の森を奪った人間を激しく憎んでいる。最期は機動隊を相手に奮戦するも敗北、その後仲間と共にデコトラに轢かれて命を落とす。
- 青左衛門
- 鈴ヶ森の長老。権太とはライバル関係にあるが、森の危機から共に手を携える。終盤では不動産業で成功を収めていることが正吉によって語られている。
- ぽん吉
- 正吉の幼馴染。変化できない普通の狸。怠け者だが、温厚で狸らしい性格の持ち主。
- 文太
- 本名水呑み沢の文太。二つ岩団三郎狸をたずねて佐渡へ旅立った。終盤で多摩に帰還した際には森の変貌ぶりに落胆していた。その後は人間として生活している。
- 玉三郎
- 本名鬼ヶ森の玉三郎。四国に旅立ち、後に小春の夫となり金長の跡目を継いだ。男前な狸。
- 佐助
- 眼鏡をかけたインテリ風の変化狸。頭脳明晰。
- 六代目金長
- 徳島県小松島市にある金長大明神(金長神社)の主。小春の父親。
- 太三朗禿狸
- 屋島に住む狸。年齢は999歳で、屋島の戦いの那須与一を見物していたという。妖怪大作戦後は変化できない狸を集めて踊念仏の教祖となる。
- 隠神刑部
- 愛媛県松山市の狸で、八百八狸を統率している。江戸時代には松山藩の御家騒動に関与した。妖怪大作戦で力を使い果たし命を落とし犠牲になる。
- 二つ岩団三郎狸
- 佐渡に住む高名な変化狸。劇中では名前のみの登場で直接登場していない。六代目金長も一目置くほどの存在であるが、文太が佐渡を訪れる45年前の戦後の食糧難の際に猟師に撃たれ落命していた。
- お玉
- 権太の妻。
- 小春
- 六代目金長の一人娘。玉三郎との間に、三匹の子狸を儲ける。
- 花子
- ポン吉のガールフレンド。
- お福
- 正吉達の仲間の雌狸。
- 熊太郎
- 馬の背山の稲荷神社に住む狸。正一位のお使い狐に化けて人間達を化かした。
- 林
- 神奈川県藤野町(現・相模原市)に住む狸。自分たちの森に運ばれてくる土がどこから運ばれてくるかを調べるために多摩にやってくる。「藤野町」を「ふじのちょう」と言っているが、現実には「ふじのまち」と読む。なお、相模原市が政令指定都市に移行するまでは相模原市藤野町(ふじのちょう)となっていたが、政令指定都市移行に伴い藤野町表記は消滅している(現在は「緑区」)。
- 竜太郎
- 多摩堀之内の変化狐。狸同様土地開発で住処を失い、人間として生活している。金長に接触し狸達に人間として化け社会に出るように勧める。
- 水木先生
- 狸たちが行った化かしを超常現象として扱っているテレビ番組に出演したコメンテーター。漫画家の水木しげるをモチーフにしたと思われる。
化け学
化け学[注釈 1]は人を脅かし、あるいは見誤らせる技術全般を指す。「身体の全組織組み替えの驚異」[3]であり、擬態と比べてより高度なものであるという。
作中ではタヌキ以外に化け学を身に付けているのは狐と一部の猫のみとされる。また、同じタヌキであっても化け学の修得状況には個人差や地域差が大きく、舞台となる多摩丘陵においては変化本能を維持してきた変化ダヌキは少なく、変化本能をほとんど失った並ダヌキが大半となっている[3]。一方で阿波、讃岐、伊予、佐渡のように変化の伝統を守り続けてきた地域も存在し[3]、作中では多摩丘陵のタヌキ達が化け学指南役として四国と佐渡から有名な変化ダヌキの長老たちを招聘している。
タヌキが得意とするものは変身術(特にお化けや妖怪への変身)と幻影や幻覚を与える能力であり、それ以外にも、物体を他のより高価なものに化かす事や、人間への憑依も可能である[3]。映画中で演じられる様々な化かし方は、その大部分がきわめて伝統に則ったものである。また、雄のタヌキは陰嚢を広げ、これを様々に変形させて非常に効果的に使用する[注釈 2]。頭に葉を乗せることで変身するとの伝承があるが、これは精神集中の為の手段の一つでしかなく、これにこだわる必要はない[3][注釈 3]。
衣装や小道具を持った人間に化ける場合のように、極めて精巧な変化を行う場合は体力の消耗が激しく、長時間の変化では疲労素が目のまわりに溜まる事によって『タヌキ隈』と呼ばれる隈が生じる事が多い。タヌキ隈が現れた場合は元の狸に戻ってしまいやすいため、変化を持続させなければならない場合には、漢方薬や栄養ドリンクを用いて体力回復を図る必要がある[3]。また、大掛かりな幻術を仕掛ける場合には多大なエネルギーを必要とし、強力なタヌキ集団が団結しても、しばしば力を使い果たして失神したり、果ては妖怪大作戦中の隠神刑部のように絶命する事も珍しくない[3]。
声の出演
他のジブリ作品と同様、俳優が多く起用されている。また、落語家やベテラン俳優が数多く出演している。なお高畑は日本のアニメでは珍しいプレスコを用いることが多い。
キャラクター | 日本語版 | 英語版 |
---|---|---|
語り[4] | 3代目古今亭志ん朝 | モーリス・ラマーシュ |
正吉 | 野々村真 | ジョナサン・テイラー・トーマス |
おキヨ | 石田ゆり子 | トレス・マクニール |
鶴亀和尚 | 5代目柳家小さん | アンドレ・ストウカ |
おろく婆 | 清川虹子 | トレス・マクニール |
権太 | 泉谷しげる | クランシー・ブラウン |
青左衛門 | 三木のり平 | J・K・シモンズ |
ぽん吉 | 林家こぶ平(現・林家正蔵 (9代目)) | デヴィッド・オリヴァー・コーエン |
文太 | 村田雄浩 | ケビン・マイケル・リチャードソン |
玉三郎 | 神谷明 | ウォレス・カース |
佐助 | 林原めぐみ | マーク・ドナート |
六代目金長 | 3代目桂米朝 | |
太三朗禿狸 | 5代目桂文枝 | ブライアン・ジョージ |
隠神刑部 | 芦屋雁之助 | ジェス・ハーネル |
お玉 | 山下容莉枝 | ルシー・テイラー |
小春 | 黒田由美 | オリヴィア・ダボ |
花子 | 永衣志帆 | |
お福 | 水原リン | |
林 | 加藤治 | ブライン・ポゼーン |
竜太郎 | 福澤朗 | ジョン・ディマジオ |
水木先生 | 藤本譲 | |
地元の人 | 北村弘一 | |
正吉とおキヨが化けた子供 | 稲葉祐貴 江碕玲菜 |
|
屋台の客 | 矢田稔 中庸助 |
|
警官 | 森川智之 岸野一彦 |
|
狸を見た兄妹 | 林優 児玉英子 |
|
機動隊員 | 藤巻直哉 | |
キャスター | 阿川佐和子 井口成人 |
マーク・モーズリー |
アナウンサー | 石川牧子 岩隈政信 芦沢俊美 永井美奈子 保坂昌宏 舛方勝宏 |
マーク・モーズリー |
その他の狸 | 佐久間レイ 鈴木弘子 菅原淳一 石川ひろあき 坂東尚樹 関智一 西村智博 峰あつ子 高山みなみ |
音楽
テーマ曲
- ぽんぽこ愛のテーマ『アジアのこの街で』
- 歌 - 上々颱風 / 作曲 - 猪野陽子 / 編曲 - 上々颱風、古澤良治郎 / 作詞 - 紅龍
- エンディング『いつでも誰かが』
- 歌 - 上々颱風 / 作曲 - 紅龍 / 編曲 - 上々颱風 / 作詞 - 紅龍
スタッフ
- 製作:徳間康快、氏家齊一郎、磯辺律男
- 企画:宮崎駿
- 原作・脚本・監督:高畑勲
- 音楽:紅龍、渡野辺マント、猪野陽子、後藤まさる(上々颱風)、古澤良治郎
- 画面構成:百瀬義行
- 作画監督:大塚伸治、賀川愛、河口俊夫
- 美術監督:男鹿和雄
- 音響監督:浦上靖夫
- 整音:大城久典
- 整音助手:山本寿
- 制作:スタジオジブリ
- 配給:東宝
- 協力:多摩市・多摩市教育委員会
関連商品
作品本編に関するもの
- 映像ソフト
- 平成狸合戦ぽんぽこ VHS - ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント(1995年1月1日)
- 平成狸合戦ぽんぽこ LD - 徳間書店(1997年6月19日)
- 平成狸合戦ぽんぽこ DVD ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント(2002年12月18日)
- 平成狸合戦ぽんぽこ Blu-ray Disc - ウォルト・ディズニー・スタジオ・ホーム・エンターテイメント(2013年11月6日)
- 出版
- シナリオ 平成狸合戦ぽんぽこ(1994年6月30日)ISBN 4-19-860115-1
- 菩提餅山万福寺本堂羽目板之悪戯―総天然色漫画映画「平成狸合戦ぽんぽこ」イメージ・ボード集(1994年7月31日)ISBN 4-19-860144-5
- 平成狸合戦ぽんぽこ(ジス・イズ・アニメーション)(1994年9月1日)ISBN 4-09-101540-9
- 平成狸合戦ぽんぽこ(徳間アニメ絵本)(1994年9月30日)ISBN 4-19-860170-4
- 平成狸合戦ぽんぽこ―フィルムコミック(1)(1994年10月30日)ISBN 4-19-770017-2
- 平成狸合戦ぽんぽこ―フィルムコミック(2)(1994年10月30日)ISBN 4-19-770018-0
- 平成狸合戦ぽんぽこ―フィルムコミック(3)(1994年11月30日)ISBN 4-19-770023-7
- 平成狸合戦ぽんぽこ―フィルムコミック(4)(1994年11月30日)ISBN 4-19-770024-5
- スタジオジブリ作品関連資料集Ⅴ(1997年2月28日)ISBN 4-19-860660-9
- 平成狸合戦ぽんぽこ(スタジオジブリ絵コンテ全集9)(2001年11月30日)ISBN 4-19-861451-2
- 音楽
- 平成狸合戦ぽんぽこ イメージアルバム 徳間ジャパンコミュニケーションズ((再発版CD/1997年4月21日)TKCA-71140(オリジナル盤/1994年6月25日))
- 平成狸合戦ぽんぽこ サウンドトラック 徳間ジャパンコミュニケーションズ((再発版CD/1997年4月21日)TKCA-71140(オリジナル盤/1994年7月16日))
- 平成狸合戦ぽんぽこ ドラマ編 徳間ジャパンコミュニケーションズ(1994年9月25日)TKCA-71140
受賞歴
- 第49回毎日映画コンクールアニメーション映画賞
- 第12回ゴールデングロス賞予告編コンクール賞、マネーメイキング監督賞
- アヌシー国際アニメーション映画祭 長編部門グランプリ(1995年)
テレビ放送の視聴率
回数 | 放送日 | 視聴率 |
---|---|---|
1 | 1995年10月テンプレート:06日(金) | 19.2% |
2 | 1998年テンプレート:03月13日(金) | 17.8% |
3 | 2000年テンプレート:02月25日(金) | 17.5% |
4 | 2002年10月18日(金) | 14.4% |
5 | 2004年テンプレート:08月27日(金) | 13.0% |
6 | 2006年11月10日(金) | 11.4% |
7 | 2013年テンプレート:07月12日(金) | 13.2% |
関連項目
脚注
- ↑ 高畑勲による書籍版においては化け学と表記しているが、映画では鶴亀和尚が『化学復興・人間研究』と記すシーンがあり、科学の分野の一つである化学(かがく)と同じ表記となっている。尚、この場合の化学も、同音の科学との区別のためにばけがくと読まれる場合がある(「ばけ‐がく【化学】 の意味とは」 - Yahoo!辞書)。ここでは書籍版における表記を採用する。
- ↑ 作中では、鶴亀和尚が雄狸を対象とした特別講義として陰嚢を百畳の緋毛氈に化かしている他、太三朗禿狸が大金玉を伸ばして宝船を作っている。
- ↑ おろくはぽん吉からの質問に対し、「それは初心者のやることじゃ」と返答している。
出典・参照元
外部リンク
- 平成狸合戦ぽんぽこ - 金曜ロードショー(2006年11月10日放送分)
- 平成狸合戦ぽんぽこ - 金曜ロードSHOW!(2013年7月12日放送分)
- テンプレート:Jmdb title
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- 平成狸合戦ぽんぽこ - Movie Walker
- 平成狸合戦ぽんぽこ - 映画.com
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